超次次元ゲイムネプテューヌ Re;夢のヒーローを目指して   作:ホタチ丸

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はい、皆さんこんばんわ!
今日は久しぶりに気持ちのいい青空を見た気がします。
でも、来週あたりにまた台風が来るんですよね(白目)。
それでは、 保・険・失・策 はじまります


保・険・失・策

 ――総合技術博覧会の会場は恐慌状態に陥っていた。

 

「シイイィィィンンンゥゥゥッ!!」

 

 突如、会場に現れた夢人の叫びが響く。

 周りの被害など気にせず、ひたすらシンに向かって禍々しくなった右腕を振るい続ける。

 

「っと!? 少しは加減を――っ!? してくれるわけないか」

 

 夢人の標的にされているにも関わらず、シンにはどこか余裕があるようであった。

 展示品や壁などを利用して上手く夢人の攻撃を避けている。

 

(まあ、こんな単調な攻撃に当たるわけないけどね)

 

 シンが軽口を叩けるほど余裕な理由の1つは、夢人の攻撃がワンパターンだからである。

 ルウィーの時もそうであったが、今の夢人は右腕の大振りしかしていないのだ。

 いくらワンダーのボディを砕く以上の力があろうとも、当たらなければ意味がない。

 そんな夢人の行動を分析したからこそ、シンの命はまだ無事である。

 

(しかし、予想通り過ぎて怖いなぁ)

 

 命の危機にひんしているシンが冷静なもう1つの理由は、この事態を引き起こした黒幕に見当がついているからだ。

 つまり、夢人をシンにけしかけた人物が居る。

 

(本当にえげつないと言うか容赦ないなぁ。そんなに御波夢人が欲しいのかい――デルフィナス?)

 

 ――デルフィナス。

 自らのことを一切明かそうとしない代わり、夢人に執着している謎の人物。

 だからこそ、シンを狙う理由がある。

 何故なら、それがもっとも効果的かつ有効な手段であるからだ。

 

(だからと言って、大人しく殺されてあげるつもりはないんだけどね)

 

 デルフィナス同様、シンにも目的がある。

 その目的を達成するために、わざわざアヴニールの社長などと言う面倒な役を演じ、総合技術博覧会と言う大勢の人が集まる場にまで姿を現したのだ。

 

 ……全ては自分を狙って襲撃してくる状況を逆に利用するために。

 

 

*     *     *

 

 

「ねえ、夢人はどうしてああなっちゃったのかな」

 

「……ハア、あなた今の状況分かっているの?」

 

 そんなに呆れないで答えて欲しいかなって思ってしまう。

 私だって、自分がやらなきゃいけないことぐらい分かっている。

 でも、やっぱり心配で気になってしまう。

 

「そんなことを気にしている暇があるなら、さっさとあの箱を開けなさいよ」

 

「そんなこと、なんかじゃないよ。知りたいんだ。夢人が今、どんな状態でどうすれば助けられるのかを私なりに」

 

 確かに、ゲイムキャラの力を感じる緑色の箱を開ければ打開策が見つかるかもしれない。

 でも、何故かそれだけじゃいけない気がする。

 心の奥でざわついた何かがそう叫んでいるような感覚がある。

 

「……まあ、聞きたいのなら教えてあげるわ。あまり気分のいい話じゃないけどね」

 

 渋々ながらも、フィーナはようやく夢人のことを話してくれるらしい。

 教えてくれるのなら、どんなことでも構わない。

 今は少しでも夢人がどんな状態になっているのかを知りたい私は頷いて先を促す。

 

「簡単に言うと、今の父様はシェアエナジーの暴走でああなっちゃったわけよ」

 

 シェアエナジーの暴走?

 でも、夢人は私達女神と違って普通の人間だ。

 それなのにどうしてシェアエナジーが関係してくるのだろうか。

 

「父様のブレスレットは知っているわよね? 私が作ったものだけど、あの水晶の1つ1つにはかなりの量のシェアエナジーを込めていたのよ。まあ、そのおかげで姉様の代用が出来たのだけど」

 

「えっと、夢人が私やレイヴィス、フェルみたいにゲイムギョウ界の“歪み”として認識されないようにだよね?」

 

「そう、ゲイムギョウ界と違う世界から来た父様を受け入れるための通行証……とは違うけど、証明みたいなものよ」

 

 レイヴィス曰く、この世界にはモデルとなっているゲームがあって正しい流れみたいなものがあるらしい。

 それに対して、私達みたいな『転生者』や夢人はイレギュラーで何らかの悪影響を及ぼす可能性があると聞いている。

 

「でも、私達はもうその“歪み”じゃないんでしょ? だったら、むしろアカリが体の中に居た頃の夢人の方が“歪み”になるんじゃ……」

 

「あなた達と父様の状況は違うわ。あなた達の場合は持って生まれた“特典”が原因だけど、父様はゲイムギョウ界と違う世界で生まれたことが問題なのよ」

 

 今まで聞けなかったことを尋ねると、フィーナは苦々しげな表情で答えた。

 

 ……“特典”。

 よく覚えてないけど、私が今の私になる前に出会った女性に願った能力。

 私は自分にないキラキラとした生き方をする人達に憧れて、『才能』を願った。

 その『才能』のせいで孤立して生みの親には捨てられたけど、女神として覚醒して今の私になっている。

 

「例えるなら、“特典”は服のようなものよ。ゲイムギョウ界にドレスコードがあって、それにそぐわない服を着て来たあなた達が周りから異物扱いされていたってことよ。でも、父様の場合はそもそも人間でなく、式典に迷い込んできた犬とかそんな感じよ」

 

「……ごめん、例えがよく分からないや」

 

 と言うよりも、夢人の例えば適当すぎじゃないかな?

 ニュアンス的に何を言いたいのかは分かるけど。

 

「だから、父様はペット厳禁の会場に連れて来られた犬みたいなものなのよ」

 

「……うん、場違いだってことはよく分かったよ」

 

 ある意味で、フィーナの例えは夢人の状況をよく言い表しているような気もする。

 『シェアクリスタル』……いや、アカリやフィーナのような『再誕』の女神を生み出した女神の卵によって選ばれた勇者。

 こちら側が一方的に生け贄のような役割を押し付けてゲイムギョウ界に連れて来た辺り、飼い主に連れて来られただけの犬って言うのは間違ってないと思う。

 

「服を着替えれば済むあなた達と違って、人間ですらない父様は当然パーティーに参加できない。でも、誤魔化して会場に入れることは出来るの」

 

「それがアカリやブレスレットのシェアエナジーなの?」

 

「そうよ。会場の中に居ても大丈夫だと思わせるの。例えば、盲導犬とか」

 

 ……何でそんなにフィーナは夢人を犬に例えようとしているのだろうか。

 本人、トラウマ覚えているくらい苦手なのに。

 

「話を戻すけど、父様がゲイムギョウ界で生きていくためにはシェアエナジーと言う許可証が必要不可欠で手放してはいけないものだったと理解してくれればいいわ」

 

「車を運転する時の免許証みたいな物、みたいな感じかな?」

 

「……間違ってないけど、なんか安っぽく聞こえるわね。シェアエナジーって、一応女神の生命線なんだけど」

 

 不満そうに言うフィーナだけど、夢人を犬に例えた時点で台無しだと思う。

 

「とりあえず、ブレスレットのシェアエナジーが暴走して夢人がああなったって言うのは分かったよ。でも、どうして暴走なんかしたの?」

 

 ここからが本題だ。

 夢人の状態にシェアエナジーが関係しているのは分かったけど、肝心の暴走した理由をまだ聞いていない。

 

「……あーまー、何もなければシェアエナジーは暴走しなかったわよ? それこそ、私も父様が水晶のシェアエナジーを使って『再誕』の力を“再現”できるなんて思わなかったから」

 

「どう言うこと?」

 

 歯切れが悪そうに話すフィーナに、私は首を傾げてしまう。

 

「えーと、その……ね? 実を言うと、姉様がいない父様が『再誕』の力を使えるなんて思わなかったわけよ」

 

「でも、夢人はこっちに来てから『再誕』の力を使ったはずだよ?」

 

 夢人本人も言ってたし、何よりブレイブソードの存在が『再誕』の力を使ったことを表していた。

 アレは夢人が『再誕』の力で、錆びた剣をブレイブソードに変化させたものなのだから。

 

「……うん、そうなのよね。まあ、これについては仮説として、父様自身の体の中に『再誕』の力を行使できる回路みたいなものが出来上がっているんじゃないかって思うのよ」

 

「夢人の中に? え、水晶の中に居たフィーナの力じゃないの?」

 

「無理無理。私、消える前に全部の力を姉様にあげちゃったから。今の私は『再誕』の力なんて微塵も使えないわよ」

 

 正直、私はフィーナの話を信じ切れずにいた。

 今まではブレスレットが特別で、夢人が『再誕』の力を使えるのだと思っていた。

 でも、そうでなく夢人自身が『再誕』の力を使っていたのだと思うと……

 

「話を続けるわよ。どうして『再誕』の力を使うための回路が父様の体に出来上がったのかと思った理由だけど――って、話を聞いているの?」

 

「っ、ご、ごめん!? ちょっとボーっとしていたみたい」

 

「しっかりしなさいよね」

 

 一瞬、思い浮かんだ感情を振り払うようにフィーナの話に集中し直す。

 仕切り直しだと言わんばかりに大きく息を吐くと、フィーナは続きを話し始める。

 

「もう1度言うけど、どうして父様の中に回路が出来上がったのか――多分、姉様と私のせいなのよね」

 

「アカリとフィーナの?」

 

「そう。確認しておくけど、1度元の世界に戻った父様が元の世界からゲイムギョウ界に帰ってきた段階で、姉様はもう父様の中に居たのよね?」

 

「う、うん。多分、そうだと思う」

 

 あまり詳しいことは分からないけど、アカリがゲイムギョウ界に帰って来た夢人の中に最初からいたことは間違いないはず。

 確か、帰って来た直後にアカリが現れてパニックを起こしたって聞いたから。

 

「だったら、もう確定かもしれないわね」

 

「とりあえず、説明してくれないかな? 私、まだよく分からないんだけど」

 

「そうね。まず、ここで問題になるのは、ゲイムギョウ界から帰って来た時点での父様の状態よ。父様は姉様が体の中に居るのが当たり前の状態でゲイムギョウ界に帰って来た。ここまではいいわね?」

 

「うん」

 

「次に、その姉様を私はゲハバーンを使って父様の体の中から切り取った……つまり、この時点で父様の体の中に空白が出来上がったわけよ」

 

「な、なるほ……ど?」

 

 理屈の上では合っているのかもしれないけど、いまいち納得が出来ない。

 そもそもその引き算は合っているのだろうか、と疑問に感じてしまう。

 

「私や姉様もそうだったけど、『再誕』の力は欠けたものをシェアエナジーで“再現”しようとする動きがあるの」

 

「……つまり、アカリが抜けた空白をシェアエナジーが“再現”した結果が、夢人の中に出来上がった『再誕』の力を使うための回路ってこと?」

 

「そう。だから、私と姉様は別々の独立した存在になることが出来たわけよ」

 

 確かに、似たような話をエヴァから聞いたことがある。

 元々1人しか生まれる予定の無かった『再誕』の女神だけど、その力が別れて生まれたのがアカリとフィーナ。

 その時に足りない部分をシェアエナジーで“再現”していたとか。

 

「しかも、父様はその時に姉様抜きで『再誕』の力を使ってしまったのが致命的だったわ。エヴァの補助もあったと思うけど、シェアエナジーが体の空白に『再誕』の力を“再現”するためには充分過ぎた。結果、父様は人間でありながら『再誕』の力を行使するための回路を持つことになったのよ」

 

 あの時――ギョウカイ墓場からのシェアエナジー流出を止める時のこと。

 夢人が『再誕』の力でシェアエナジーの流出を止めなければ、私やユニ達もほぼ無敵の状態になった偽ブレイブやジャッジに勝てなかった。

 そう言う意味では、夢人が回路を持つことを避けることは出来なかったのかもしれない。

 ……でも、私はそれにどこかモヤモヤした気持ちを抱いてしまう。

 

「まあ、そんな訳で父様が『再誕』の力を使える理由は分かったわね? さっきの例えで言うのなら、吠えることしかできなかった犬が人間の言葉を喋れるようになる発声器官を身に付けた、ってところかしらね」

 

「……すごい、シュールだね」

 

「例えばの話よ。しかも、私達が流暢に喋れるのに比べて、父様は片言の単語を並べるぐらいの」

 

 それ空耳と同じレベルじゃ……いや、そもそももう犬押しはやめてよ。

 本当、なんか今までの重たい話が全部台無しにされた気分だよ。

 

「で、ここからが重要なんだけど、いくら回路があっても父様にはその使い方が分からない。これは人間だから当然よね。ましてや、普通の人間である父様の体の中にシェアエナジーが巡っている訳はなく、必然的に回路は動くはずもなかった」

 

「でも、実際はその回路が動いて『再誕』の力を“再現”しちゃったわけだよね?」

 

「――そこよ。そこが1番計算外だったのよ」

 

 ビシッと私を指さして、フィーナは言い切った。

 何だか楽しそうに口元を緩めていることは指摘しないでおこうと思う。

 

「回路が起動する条件は、父様の体の中にシェアエナジーが侵入してくること。でも、普通の人間である父様が女神のようにシェアエナジーを取り込める訳はない。だから、必然的に身に着けていたブレスレットの水晶からシェアエナジーが漏れだしたとしか思えないわ」

 

「あの水晶から? でも、そんな簡単にシェアエナジーが漏れだしたら……」

 

「私が父様のために作ったものよ? そんな簡単にシェアエナジーが漏れだすような設計にしたつもりはないわよ」

 

 自信満々に胸を張っている所悪いけど、こうして接してみてフィーナのポンコツ具合を知っている身としてはあまり説得力がない。

 まあでも、夢人がゲイムギョウ界に居続けるための許可証代わりの大切なものの器がそう簡単に壊れても困るよね。

 

「だから、本当に予想外だったのは外からの干渉だったのよ」

 

「外からって――あっ、そう言えば、1度元の世界に戻った後に水晶が1つ減っていたね」

 

「あの時は姉様が父様を元の世界からゲイムギョウ界に引っ張り戻したからね。あれも水晶の中に溜まっていたシェアエナジーを目印にした移動法だもの」

 

 ……うん、何だか話が見えてきた。

 つまり、夢人がこっちの世界に来てから、水晶の中のシェアエナジーは何らかの影響を受けて漏れだしてしまった。

 漏れだしたシェアエナジーは夢人の体内の回路を起動させてしまい、ブレイブソードを“再現”してしまう。

 でも、それは外部からの干渉があったからであり、夢人自身が自由に回路を起動させられるわけじゃない。

 だから、『再誕』の力を上手く使えないことに悩んで……うん、全部繋がった気がする。

 

「でも、いったい誰がそんなことをしたの? もしかして、こっちの世界のネプテューヌさん?」

 

「違うわ、厚化粧ババアよ」

 

「厚げ……えっ、誰それ?」

 

「こっちの世界のマジェコンヌよ。まあ、あなたの知っているマジェコンヌとは似ても似つかないでしょうけど」

 

 こ、こっちの世界のマジェコンヌさんって厚化粧だったんだ。

 私の知っているマジェコンヌさんは、腰まで届く綺麗な銀髪をしたノーメイクのクールな感じの女性なのに。

 まあ、大きさは手乗りサイズの人形みたいだけど。

 

「その厚化粧ババアが父様に当てた光線みたいなの……アレが不味かったわ。直接的な殺傷能力とかなかったけど、凄まじく相性が悪かったのよ。アレのせいで水晶の中のシェアエナジーが引っ張り出されちゃって、父様の中の回路が起動しちゃったの」

 

「待って。引っ張り出したって、どう言うこと? もしかして、こっちの世界のマジェコンヌさんも『再誕』の力を……」

 

「そう言う意味じゃないわ。厚化粧ババアの光線が水晶の中に溜まっていたシェアエナジーと似すぎていたことが問題だったのよ」

 

「似すぎていた?」

 

 私の頭は混乱するばかりだ。

 つまり、こっちの世界のマジェコンヌさんはシェアエナジーに近い何かを使えるってことなのかな?

 

「厳密に言えば、厚化粧ババアの力はシェアエナジーと違うわ。でも、水晶の中のシェアエナジーに限りなく近い性質を持っていたのよ」

 

「……うん、そこまでは分かるんだけど、性質って何? シェアエナジーにそんなものがあるの?」

 

「そうね、信仰の対象に対する指向性って言えば分かるかしら? 色で例えるなら、プラネテューヌの女神が青色のシェアエナジー。ラステイションが黒で、ルウィーが白、リーンボックスが緑って感じの」

 

「それなら分かるかも」

 

 犬の例えよりも断然分かりやすい。

 でも、それはそれで疑問が出来てしまう。

 

「水晶の中に溜まっていたシェアエナジーって、どんなものだったの?」

 

 女神に対する信仰を色で表せるなら、当然水晶の中に溜まっていたシェアエナジーにも色がある。

 しかも、それはこっちの世界のマジェコンヌさんの力の色でもある。

 気にならないわけがない。

 

「えっ!? あ、それは……えっと……その……」

 

 質問を投げかけると、フィーナは目に見えて慌てだした。

 忙しなく視線を彷徨わせ、言い辛そうに人差し指同士をツンツンと突き合わせ始める。

 

「……最初に言っておくけど、これが父様が暴走する最大の原因だったりするんじゃないかなとか思っているのよ」

 

「本当なの!?」

 

「え、ええ。と言うか、ほぼ確実って言うか……」

 

 何故か、気まずそうな雰囲気を漂わせて言い淀むフィーナ。

 原因が特定できれば、それだけ夢人を助ける方法が見つかるかもしれないのに、どうしてそんな態度なのだろうと思ってしまう。

 

「最初に話した通り、あのブレスレットも水晶の中にシェアエナジーを込めたのも私だって言ったわよね?」

 

「うん、確かに言ったね」

 

「でね? 知っているかもしれないけど、私って姉様と違って“カット”と“ペースト”もどき――つまり、シェアエナジーを対象から取り除いて別の場所に張り付ける、もしくは破棄することしかできなかったわけよ」

 

 これも前にマジェコンヌさんや初代勇者から聞いた。

 『再誕』の女神の力の本質として、シェアエナジーを自在に操ることが出来ると。

 それをPCでよく使う“カット”や“ペースト”と呼んで……あれ? 何か忘れているような気がする。

 

「だから、ね? 私、姉様のように出来なくて、自分の体の中に残っていたものと周囲にあったシェアエナジーをそのまま掻き集めて水晶に込めたわけよ。つまりね……」

 

 私はフィーナが何を言いたいのかを察し、顔から血の気が引いてきた。

 どうして今まで忘れいたのかと、自分を罵ってしまいたくなる。

 初代勇者も、『再誕』の女神が“何”を力の源にしてゲイムギョウ界を救うのかを話してくれていたのに。

 しかも、フィーナはそれを全うしていたと言うことは……

 

「――水晶の中身、犯罪神の1部なのよ」

 

 

*     *     *

 

 

(あ、あはは、これはまいったね)

 

 場違いな状況だと分かっていても、シンは込み上げてくる笑いを抑えきれなかった。

 しかし、それは決して目の前の光景が面白いからではない。

 むしろ、想定外過ぎて笑うことしかできなかったのである。

 

「グルルルッ……!」

 

 本来であれば、シンにとって心強い味方になったはずの唸り声が響く。

 ルウィーの時同様、シンはディスクからモンスターを呼び出して、自分は夢人から距離を取るつもりだった。

 だが、その目論見は他ならぬ夢人の予想外の力で潰されてしまった。

 

「シン……ッ!」

 

 自分を睨みつけるいくつもの赤い瞳に、シンは己の失策を悟った。

 シンにとって、目的を大きく進ませるための存在……ディスクから呼び出したモンスターが自身に牙を剥こうとしていたのである。

 

 ――その身を夢人の右腕のように、まるで汚染されたかのように赤黒く染めて。




と言う訳で、今回はここまで!
8月終わりに台風ラッシュ。
皆さんも防災対策をしっかりしてくださいね(庭がすごい有様になった経験談)。
それでは、 次回 「援・軍・到・着」 をお楽しみに!
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