超次次元ゲイムネプテューヌ Re;夢のヒーローを目指して 作:ホタチ丸
今回からついに新章突入、ようやくこの作品のメインとなる舞台へと移りますよ!
……ただ注意事項として今回の話を読む際、前章のラストシーンのイメージが壊れてしまう可能性があります。
それでは、 ニューワールド はじまります
ニューワールド
何もない白い空間。
奥行すら感じさせないそこに1つの影が存在していた。
混じり気のない綺麗な黒髪を白いリボンでツインテールにしている薄い紅色の浴衣に似た着物を着た少女。
そこまでならどこにでもいる普通の子どもようであったが、天女が纏う水色の羽衣が少女の容姿を神秘的に彩っている。
さらに、この不思議な空間に存在していること自体が少女の特異性を2つの意味で浮き彫りにしている。
「にゃふふふふ、よーやく始まったんだね!」
誰もいない、何もない空間で少女はにこにこと笑いながらつぶやく。
少女の感情に合わせてぴょんぴょんと跳ねている白いリボンで纏められた2つの髪の毛は、本当に黒い尻尾のように見える。
それだけならば、少女が1人で興奮しているだけのように思える。
しかし、少女はまるで誰かに話しかけているみたいに言葉を投げかけているようであった。
この白い空間には少女の姿しかないので、当然何の反応も返ってこない。
だが、少女は空間の一点を見つめて親しげに言葉を続けていく。
「ねーねー、これからどーなると思う? 彼、どーなっちゃうと思う? やっぱり、あれかな? テンプレやっちゃうかな? それとも、意外性狙っちゃう? 後々、残されたあの子達もどーするんだろーね? あっ、そーだよ! あの子達を特等席に案内するの忘れてたよ! あの子達もワタシ達と一緒にここで見てもいいかな? いいよねー、別に! だって、ゲームは皆で楽しむものだもんねー! ワタシだってそれぐらいちゃんと知ってるんだよーだ! どー、偉い? ねーねー、どー思う? ねーったらねー!」
「……何やってんだよ、お前」
1人で楽しそうに話す少女以外の声が突然白い空間に響く。
少女の上からグルグルと旋回するように紫色の本が飛来してくる。
声の主はその本の上に胡坐をかいて頬づえをつきながら、呆れた目で少女を見ていた。
リビートリゾートで夢人を穴の中に落とした妖精である。
急に声を掛けられたにもかかわらず、少女は驚いた様子を見せない。
それどころか、妖精が来たことがわかるとビシッと敬礼をするように右手のひらを真っ直ぐに伸ばしてこめかみの辺りに添える。
「おっかえりー! ちゃーんと留守番してたよー!」
「おー、そっかそっか。まー、寝てる奴を見てるだけだし、誰でもできるよなー」
誇らしそうにする少女とは対照的に妖精はおざなりな対応しかしない。
テンションが高い少女を白けた目で見つめる妖精の声は抑揚に欠けていた。
そんな妖精のどうでもいいと言わんばかりの態度に、少女は頬を膨らませて抗議する。
「ぶーっ、ノリが悪いぞー! これからよーやくって感じで始まるって言うのに……そーだっ! それじゃ、ワタシもテンプレやっちゃうよ!」
不満を漏らしていた少女であったが、何かいいことを思いついたようでパッと顔を明るくさせる。
すると、少女はその場でくるりと1回転して、肩の高さまで上げた手首を軽く外側に曲げながら妖精に向かってウインクをする。
「おかえりなさい! お菓子にする? トイレにする? それとも、げ、え、む?」
「……おい、待て。それはどこの世界のテンプレだよ?」
「うーんとねー、遊びから帰ってきた子どもを出迎えるお母さんのかな?」
「そんなこと言うわけねーだろ!? ってか、俺は子どもじゃねーよ!?」
ふざけたことを言いだした少女に口元をひくつかせていた妖精だったが、続けられた言葉に我慢ができずに叫んでしまう。
急に叫びだした妖精の姿を見て、少女は嬉しそうににやつき始める。
「もー、そんなのジョークに決まってるでしょ? 最初から1択しかないクイズゲームなんてつまんないもんねー」
「まあ、そりゃそーなんだけどよー……はあ、お前と話してると本当疲れるわ」
少女の言葉に同意をするも、やるせない気持ちになってしまった妖精は肩を落としてため息をついてしまう。
しかし、少女は気にした様子もなくけらけらと笑い続ける。
「にゃはははは、それでエキストラの準備も終わったの?」
「全員問題なくあっちに送ったぜ……ただなー」
「にゃ? どーかしたの?」
妖精は話題を変えることで無理やり話を進めようとする少女に苛立ちを感じて両目を険しく細めたが、すぐにそれが無駄だと悟って目を閉じてしまう。
まるで話を聞かない少女に何を言っても意味がないと、自分に言い聞かせて怒りを堪えた妖精は目を開いてわざとらしくにやりと笑う。
だが、すぐに気がかりなことを思い出し、顔をしかめる。
この変化には少女もさすがに反応を示し、不思議そうに首を傾げながら妖精へと詳しく尋ね出す。
「いやなー、あのぽわぽわした女神を送った時に傍にいた子どもまで巻きこんじまったんだよ。まさか穴の中に自分から突っ込んでくとは思わなくてよー。慌てて気付いたんだが、あっちへの穴を閉じるわけにもいかねーし、何とか女神と同じ場所に落ちるよーに調整はしたんだが、上手くいってかなーと思ってよー」
「ふーん、優しーんだね。でも、その子なら大丈夫だと思うよ」
「は? 何でそんなことが言えんだよ?」
眉間にしわを寄せながら難しそうに顔をしかめている妖精に少女はにっこりと笑う。
少女の無責任ともとれる発言に目つきを険しくしながらも妖精は理由を尋ねた。
すると、少女ははにかむように口元を緩めながら妖精から視線をそらして上を見上げる。
「自分から飛び込んだってこともそうだけど、彼が何も言ってこないのならその子のゲームへの参加は問題ないってことでしょ? 彼、そー言うところシビアと言うか、ストイックと言うか、結構厳しーと思うんだよね」
「うーん、言われてみりゃそーだよな。そもそも今回はアイツが主催のゲームだし、何も言ってこねーのなら問題ないのかも知れねーな」
「そーそー。それにその子、ただの子どもじゃないよ」
少女の言葉を聞いた妖精は腕を組んで考え始める。
少女と妖精が何度も口にしているゲームを本来企画した人物はこの場にいない。
実際に妖精の不手際が問題となるのならば、この場にいなくてもすぐさまゲームの中止を宣言する力も持っているのだ。
しかし、その人物から何の連絡もないと言うことは妖精が送ってしまった子どものゲーム参加が認められていることに繋がってしまう。
少女の話す理由に反論もできずに納得しだす妖精であったが、その表情は未だ晴れない。
その人物の性格を知っているからこそ、妖精は頭の片隅に引っかかりを感じていたのだ。
しかも、それを言葉で表すこともできないからもやもやとした気持ちが膨らみ、妖精の眉間に刻まれたしわは深まるばかりであった。
そんな妖精の様子を横目で見ながら少女は笑みを崩さない。
人差し指を唇に添えて口の端を吊り上げた表情は、少女が先ほどまで浮かべていた子どもっぽい笑みではなく、どこか余裕を感じさせる大人を連想させる。
「本人はただその女神の子と離れたくなかっただけなのかもしれないけど、その子はプレイヤーであるあの子以外で唯一能動的にゲームへの参加を決めた子だよ。そんな子が普通に可愛いだけの子どもなわけがない。何かしらの素質を持ってるんじゃないかな。そう、例えば――ワタシのような、ね」
会ったことはおろか、姿を見たことさえないはずなのに少女は確信めいたものを感じていた。
だからこそ、少女は得意げな顔で最後を強調したのだが、妖精の反応は芳しくない。
むしろ、妖精は少女の言葉に引いてしまっていた。
「お前の同類とか……あの子どもが可哀想に思えてくるな」
「ちょっとー!? それって、どー言う意味なのー!?」
「いやいや、そのままの意味だろ。お前みたいな奴が増えるなんて嫌過ぎるぞ」
目の前の少女と同じような性格になってしまった子どもの姿を想像し、妖精は顔色を青くさせる。
その態度に納得のいかない少女は威嚇するように両手を妖精に向かって伸ばす。
その表情は怒りに染まっており、目尻がつり上がるとともにツインテールがぴょーんと重力に逆らって逆立てた。
しかし、妖精は意見を変えるどころか少女を呆れた目で見つめてしまう。
「ワタシが言いたいのはそー言うことじゃなくて……もー、いーよ。それよりも、先に落とした彼がどーなったのかを確認しよーよ」
「おっ、それもそーだな」
自分の言いたいことがちゃんと妖精に伝わっていないと知った少女は勘違いを指摘しようとしたのだが、すぐに疲れたように肩を落としてやめてしまう。
懇切丁寧に説明したところで時間の無駄だと悟ったからだ。
そんなことよりも少女の中で優先順位がゲームに意識が向いてしまうのは、ある意味で当然の帰結であった。
話を振られた妖精も楽しそうに頬を緩めて少女の意見に賛同する。
「結果が出るのは最後だからって、序盤をスキップで飛ばしちまうのはつまんねーからな。さーて、アイツはいったいどーなってんだろーなー」
「そんなの面白いことになってるに決まってるよ。だって、彼も残されたあの子達も勘違いしたままなんだもん」
「確かになー、あの銀髪眼帯もいー仕事してくれたよな」
「まったくだよねー! それにワタシはこう思うんだよねー……」
2人は楽しそうにけらけらと笑いながら言葉を交わす。
だが、急に少女は声のトーンを低くして口元を控えめに緩めながら言葉を続ける。
「攻略本を片手にゲームしててもつまんないよね。何が起こるかわからないからこそ、ゲームはわくわくドキドキして楽しいんだよ……だから、彼にも同じ気持ちを味わってもらわないとね」
「まー、アイツが感じるのは困惑と恐怖かもしれねーけどな……おっ、出てきた出てきた!」
話しているうちに、突然2人の目の前の空間が歪み始める。
渦を巻くように段々と円形に広がっていく穴からは、ここではないどこかの風景のようなものが映し出されていく。
まるで映画のスクリーンである。
しかし、ピントが合っていないのか、色も輪郭もぼやけていてそこに2人が探している人物がいるのかさえも判別できない。
「いよいよかー……あっ、お菓子用意するの忘れちゃった!?」
「そんなの後で用意すりゃいいだろ。もー始まっちまうぞー」
「あーうー、失敗しちゃったなー。後であの子達を呼ぶついでに用意しとこーっと。何かリクエストある? 定番のポップコーン? それともチョコレートとかビスケットとかの方がいーかな?」
「何でもいーっつーの」
のんきに話しながらも2人の視線がスクリーンから外れることはない。
そうこうしているうちに、映し出されている映像は次第に鮮明になっていく。
――そこは不思議な場所であった。
まるで雲の上にあるかのように大地が空に近い場所。
そのことを裏付けるように、奥の方には浮遊しているとしか思えない大地がアーチを描く虹によって繋がれている。
他にも地面から生えているとしか考えられない水晶があちこちにあったり、奥の方ではさらに天高くそびえている白い塔の存在など目を引くものが多数存在していたのだが、2人の目をくぎ付けにしているのはそこにいた4人の女性であった。
腰まで軽く波打っている白い髪と緑色の瞳が特徴的な女性。
前髪の一部がアンテナのように逆立っているのが目立つ青い髪を全体的に短めにしている赤い瞳の女性。
ボリュームのある緑色の髪の毛をポニーテールにして束ねている紫色の瞳をした女性。
十字の絵柄がある黒い丸いアクセサリーをつけた紫色の髪を編んで2つのおさげにしている瞳を青く染めた女性。
まったく異なる容姿をしていながらも、4人には共通していることがある。
まず、色は違えどそれぞれ機械的なアーマーを体の各所に纏っているのだ。
頭、腕、腰、足、背中にいたっては翼のような物が備わっている。
だからと言って、ゴテゴテしているわけでなく、むしろ女性的な美しさを引き立たせているように見える。
肌に直接着ているであろうインナーのようなスーツも日の光に晒されてキラキラと輝いていた。
さらに、4人の瞳の奥には同じおかしな文様が浮かび上がっていたのだ。
4人の女性らしい可憐な容姿と合わさって神秘的な雰囲気を醸し出す要因の1つとなっている。
そんな人間離れした美しさを備えている4人の女性であったが、全員が目を鋭くさせて互いを睨みあっている。
各々の武器である大剣、斧、槍、刀剣を油断なく構え、牽制し合っている状態であった。
「あっれー? 彼、まだ着いてないのかな?」
「さー、どーだろーなー。送った場所はここで間違いねーんだし、時機に現れるだろーよ」
「そーだねー。もーちょっと待ってみて……おっ、何か始まるみたいだよ!」
送ったはずの人物が映し出されていないことを少女は疑問に思って首を傾げながらも、妖精の言葉に納得して頷く。
すると、すぐにスクリーンに映し出されている女性達に動きがあり、観客である少女の瞳が輝きだす。
白い髪の女性を真ん中にして青色の髪と緑色の髪の2人が並び立つ。
先ほどまで剣呑な雰囲気を放っていたのが嘘のように、揃って残っている紫色の髪の女性へと武器を向ける。
状況を理解できないのだろうか、紫色の髪の女性は驚いたように目を見開いてしまう。
それを見て気をよくしたらしい白い髪の女性は、にやりと笑って大剣を振りかぶって紫色の女性へと飛翔していく。
続くように青色の髪と緑色の髪の2人も続こうとする。
――しかし、突然慌てた様子で立ち止まってしまう。
それどころか、先行する白い髪の女性へと何かを叫んでいた。
2人だけでなく、紫色の髪の女性もその原因を視界に収めると白い女性へと止まるように手を伸ばす。
だが、白い女性は3人の注意に耳を貸そうとしなかった。
ふん、と鼻を鳴らして喜色を含んだ表情で紫色の髪の女性へと突っ込んでいく。
そして、空中で跳躍したかのように浮き上がり、大剣を大きく振りかぶって紫色の髪の女性へ………………振り下ろそうとした時、悲劇が起こってしまう。
白い髪の女性の顔に何かが直撃したのである。
普段の彼女ならば、それを避けることは容易かっただろう。
しかし、今は紫色の髪の女性へ攻撃することと頭上から聞こえてきた悲鳴に気を取られてしまい、間抜けにも棒立ちになってしまったのだ。
頭上から声なんて聞こえるはずがないと考えつつも上を向いて確認してしまったことが仇となったのである。
空から人が降ってくると言う非常識な事態に直面した白い髪の女性の思考は停止してしまったのだ。
さらに、少しでも威力を上げようと上体を反らしていたことも災いした。
落ちてきた人物と共に白い髪の女性も頭から地面へとなだれ込むように倒れてしまったのである。
白い髪の女性ほどではなくとも、空から人が降ってきた事実に言葉を失くしていた他の3人であったが、すぐに違う意味で驚愕の表情を浮かべてしまう。
声の質で男性だとわかったその人物が着ている服が問題だったのだ。
黒いワンピースにフリルのついた白いエプロン、頭には白いフリルのついたカチューシャと言う、大凡普通の男性がするような服装ではなかったのである。
――――――そう、彼はメイド服を着ていたのだ。
という訳で、今回は以上!
私は神次元に行くとは一言も言ってない(きりっ)。
……いや、神次元編を期待していた読者の皆様には本当にすいませんでした!!
あとがきで長々と話すのも難なので、詳しくはこの後載せる活動報告をご覧ください。
それでは、 次回 「落ちてきたニート」 をお楽しみに!