超次次元ゲイムネプテューヌ Re;夢のヒーローを目指して   作:ホタチ丸

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はい、皆さんこんばんわ!
今回から新タイトルです!
気分も新たに頑張っていきますよ!
それでは、 落ちてきたニート はじまります


落ちてきたニート

 ――かつて、ゲイムギョウ界は1人の女神によって統治されていた。

 

 彼女がどうして女神と呼ばれたのかは単純な理由だ。

 当時、各地で暴れ回るモンスター達の被害に晒されていた人々を救った救世主だったのである。

 

 機械的な翼を身に纏って空を華麗に舞い、モンスター達に襲われている人々を救っていく女性。

 瞳に刻まれている特異な文様。

 体のラインをくっきりと浮かび上がらせているボディースーツ。

 その手に持つ白い輝きを放つ剣と、体の各部位に纏った鎧。

 

 人々は最初、天からの使者が現れたのだと錯覚してしまった。

 それほどまでに女性は神々しく、モンスター達に立ち向かう様は勇ましく、その優雅な一挙手一投足は見ている者達を魅了した。

 そして何より、人々の心を惹きつけたのは彼女の美しさだった。

 まるで舞を踊るようにモンスター達から人々を救った彼女の顔には、慈愛を感じさせる笑みが浮かべられていたのだ。

 その溢れんばかりの愛を感じさせる笑みを向けられた人々は、ここでようやく彼女が何者であったのかを悟った。

 彼女はモンスターを退治するためでなく、自分達を救うために天から降りてきた御使いであったのだと。

 人々は最大限の感謝と心からの畏敬の念を持って、彼女を“女神”と呼んだのである。

 

 その後も女神と呼ばれた女性は、ゲイムギョウ界の各地で起こる問題を解決するために尽力した。

 その身に宿す力をゲイムギョウ界に生きる全ての人達のために惜しげもなく使い続けたのだ。

 ゲイムギョウ界の平和は彼女の存在によって維持されていたのである。

 平和になった日々の中で人々は各大陸に彼女を信仰するための教会を作り、いつまでも感謝の気持ちを忘れることはなかった。

 これが後に現代まで続く女神と人間との関係における礎となったものである。

 

 ……だが、彼女によってもたらされた平和が永遠に続くことはなかった。

 彼女に代わってゲイムギョウ界を統治する4人の女神が誕生したのである。

 そのせいで、彼女を信仰することで1つにまとまっていたゲイムギョウ界は4つの国に別れてしまったのだ。

 

 女神ブラックハートが治める重厚なる黒の大地“ラステイション”。

 女神ホワイトハートが治める夢見る白の大地“ルウィー”。

 女神グリーンハートが治める雄大なる緑の大地“リーンボックス”。

 女神パープルハートが治める革新する紫の大地“プラネテューヌ”。

 

 4人の女神と国が生まれたことで、元々1つであった大陸は4つに切り離されてしまった。

 ゲイムギョウ界が4つの浮遊した大地に姿を変えてしまったのである。

 そのため4人の女神はそれぞれの大陸の守護を司り、より一層の発展を促した。

 結果的にゲイムギョウ界は1人の女神が治めていた時よりも、それぞれの国を治める女神達のおかげで格段に進歩したのである。

 これにより、各国でそれぞれの特色が生まれたのだ。

 横並びの成長しかしなかった大陸の技術に差が生じたと言ってもいい。

 それぞれが独自の発展を遂げ、国の象徴となった女神によって新たな平和が築かれたのである。

 

 しかし、これもよいことばかりではなかった。

 4人の女神は、自身の力と国の繁栄を強く望んでいた。

 そのためより多くの人々からの信仰――シェアを競い争っていたのである。

 いずれ、先代の女神がしていたように自分の国がゲイムギョウ界を統一することを夢見て、4人は今も尚戦い続けている。

 

 ――守護女神戦争。

 先代のようなゲイムギョウ界を統治するに相応しい完璧な真の女神を決めるための闘争。

 気の遠くなるような長い年月を費やしても、誰ひとり脱落することなく続けられている。

 4つの大陸よりもさらに上空、雲よりも高く浮かんでいる大地の上で……

 

 

*     *     *

 

 

「はああああああ!!」

 

 ――掛け声とともに刀剣が振り下ろされる。

 しかし、その振り下ろされる先にいる女性からは余裕にも似た笑みが浮かんでいた。

 

「甘いですわ、よっ!!」

 

「っ、くっ!? これしきのことで……っ!!」

 

 笑みを浮かべた女性は手に持つ槍で刀剣を受け流すと、そのまま流れるように槍を回転させる。

 自分を攻撃してきた女性に対して槍の横薙ぎで反撃を試みたのである。

 だが、体勢を崩された女性は体を捻り、無理やり刀剣を横薙ぎで襲ってくる槍の盾とした。

 その結果として、刀剣を持った女性は軽く吹き飛ばされるだけで最悪の事態を免れることに成功したのだ。

 

 もとより、刀剣を持った女性も槍を持った女性が簡単にやられるとは思っていなかったため、すぐに行動に移せたのである。

 刀剣で防御したとはいえ、後ろへ吹き飛ばされてしまう程の衝撃を完全に防ぐことができなかった女性の顔は痛みに歪んでしまう。

 しかし、女性は無様に倒れることなく、その背中にある機械の翼で体勢を整える。

 空中で踏ん張るように制動を掛けた女性は体の動きが完全に止まると、すぐに刀剣の切っ先を槍を持つ女性へと向けて構える。

 それに応えるように、槍を持つ女性も刀剣を構える女性へと穂先を向け、今度はこちらからと言わんばかりに地面を蹴って飛翔していく。

 

「ったく、いつまでもその馬鹿でかい物を振り回してんじゃないわよっ!!」

 

「誰が馬鹿力だぁ!! テメェこそ、さっさとくたばりやがれ!!」

 

「冗談っ!!」

 

 一方、2人の女性が戦っている近くで、別の2人による戦闘が繰り広げられていた。

 

 身の丈ほどの斧をブンブンと振り回し、大剣を持つ女性へと強襲を掛けている小柄な女性。

 大剣を持つ女性の方は悪態をつきながらも、斧による一撃を避けたり逸らしたりしながら直撃を受けないように上手く立ち回っていた。

 しかし、いつまでも攻撃に晒されていたことが癪に障ったらしく、自分に向かってくる斧を大剣で大きく弾き飛ばし、一気に距離を詰めようと身を屈めた。

 あわや大剣の一撃が女性を斬り裂くと思われた瞬間、弾き飛ばしたはずの斧が下から襲いかかってきたのだ。

 斧を弾き飛ばされた段階で、女性は力に逆らわずに体ごと回転して1歩後ろへ下がっていたのである。

 そのまま後ろ足に力を入れ、全力で斧を振り上げたのであった。

 

 しかし、女性が下がったことから嫌な予感を感じていた大剣を持つ女性は、突然死角から現れた斧にも冷静に対処することができた。

 狙いを女性の体から斧へと変更し、大剣で完全に振り上がる前に潰してしまおうとした。

 結果、それぞれの武器は動きを止め、2人は額がくっついてしまうのではないかと思うくらい互いに顔を突き合わせて睨みあう膠着状態になってしまった。

 

 大剣を持つ女性は押しきれない内心の悔しさを表に出さず、敢えて余裕を見せるように口元に笑みを浮かべて飛び退る。

 浮かべられた笑みが気に障ったらしく、斧を持つ女性は表情を険しくして大剣を持つ女性へと、すぐさま突っ込んでいく。

 

 ……彼女達こそ、守護女神戦争を行っている4人の女神である。

 

 刀剣を持つ紫色の髪の女性、女神パープルハート。

 大剣を持つ白銀の髪の女性、女神ブラックハート。

 槍を持つ緑色の髪の女性、女神グリーンハート。

 斧を持つ青色の髪の女性、女神ホワイトハート。

 

 彼女達4人によって、戦いの舞台となった大地は見るも無残な姿を晒していた。

 でこぼこと地面は荒れ放題になっており、近くにあった水晶も砕け散り、景観を彩っていた緑の木々や色とりどりの花々も姿を消してしまった。

 美しく幻想的であったはずの大地は、今やかつての名残を感じさせない状態になっていたのである。

 

 全ては4人の戦いによって引き起こされた被害である。

 しかし、いくら自然が破壊されようとも4人が戦いをやめることはない。

 守護女神戦争の勝者――――ゲイムギョウ界を統べる真の女神が決まるまで、4人は戦い続けなければならないのである。

 それが彼女達に課せられた運命の1つであるのだから……

 

「はあ、まったくこの戦いもいつまで続くのでしょうね」

 

「んだよ。遂にへばったか、このデカ乳」

 

「なっ、そう言う意味ではありませんわよ!?」

 

 いつまでも決着をつけられず、互いに睨み合ってうかつに動けない状況で、グリーンハートはふと愚痴のように疑問を漏らしてしまう。

 それを1番近くで耳にしたホワイトハートは、にやりと挑発するように口の端を大きく吊り上げた。

 事実、挑発めいた言葉も添えられ、グリーンハートは思わず両腕で胸を隠そうとしてしまう。

 咄嗟のこととはいえ、いつもなら自慢するはずの他者よりも豊かに育った母性の象徴を自分から隠すように動いてしまったことに、妙な気恥かしさを覚えたグリーンハートの頬に朱色が差す。

 その反応に気をよくしたホワイトハートはあくどく吊り上げていた頬をさらに歪めて鼻で笑った。

 

「ハッ、そんな下品で無駄なものをぶら下げてる方が悪いんだよ。垂れる未来しか見えねえババアはさっさと休んだらどうだ?」

 

「っ、そうですわね。あなたみたいな話も聞かない幼児体型で生意気な子どもを躾けてからゆっくりと休ませてもらおうかしら」

 

「んだと、ゴラァァァ!! 望み通り、真っ二つにして休ませてやるよ!!」

 

 口汚く罵られたグリーンハートは、さすがに我慢の限界を迎えたようで眉根を寄せてしまて表情を険しくさせる。

 それでも口元を緩めて言い返すあたり、ホワイトハートに対する憤りがにじみ出ているだろう。

 コンプレックスである体型を含めた挑発に、ホワイトハートは怒りの声を上げてグリーンハートをぎろりと睨みつける。

 元々赤く染まっていた瞳が、さらに獰猛な光を宿す。

 互いに武器を強く握り直し、一触即発の空気が流れる。

 

 ――しかし、それを断ち切ったのは2人の間に躍り出たブラックハートであった。

 

「隙あり!!」

 

『っ!?』

 

 死角から突如現れたブラックハートに2人の動きは完全に停止してしまっていた。

 その隙をつき、ブラックハートはにやりと笑いながら大剣を横に振るう。

 自分を中心に円を描くように振るわれたブラックハートの大剣が硬直している2人に襲いかかる。

 位置の関係上、まず最初に狙われたグリーンハートは慌てて槍で防ごうとするのだが、踏ん張りが足らずに吹き飛ばされてしまう。

 それを気にした様子もなく、ブラックハートは次の狙いであるホワイトハートへと刃を加速させるために腰を入れて大剣を振り回す。

 だが、グリーンハートよりも時間があったため、ホワイトハートはその全力を持って大剣の一撃を斧で押し止めることに成功した。

 

 一方で、吹き飛ばされてしまったグリーンハートだったが、前のめりになりながらも地面に手をつき、前転するように空中で体を捻って体勢を整える。

 それでも衝撃の全てを受け流すことはできず、着地と同時に片足を後ろへ大きく滑らせてしまう。

 しかし、不格好な姿を晒しながらもグリーンハートは射抜くようにブラックハートを睨んで槍を向ける。

 

「よくもやってくれましたわね。さすがに今のはカチンときましたわ」

 

「気を抜いたあなた達が悪いんでしょ? 私達は皆敵同士だって言うのに、いつまでも仲良くおしゃべりなんてしてたら狙いたくもなるわよ」

 

「誰と誰が仲良くだぁ!! ふざけたこと言ってんじゃねぇ!!」

 

「いい加減、あなたのその子どもみたいに怒鳴り散らす様が目障りなのよ!! さっさと負けなさいよ!!」

 

「――その言葉、そっくりそのままあなた達にあげるわ」

 

『っ!?』

 

 再び均衡状態を破る者が現れた――パープルハートである。

 至近距離で互いのことしか見えていなかったブラックハートとホワイトハートは自身の武器が刀剣によって叩き落とされたことで、ようやくパープルハートの接近に気付くことができた。

 拮抗していた大剣と斧は別方向からの刀剣による力が加わることで容易く弾かれてしまい、2人は横に倒れるように体勢を崩してしまう。

 そんな明らかな隙をパープルハートが見逃すはずもなく、2人の間に体を滑り込ませて刀剣でなぎ払おうとする。

 

 しかし、普通の人間であれば絶対に回避ができないであろうパープルハートの一撃も、プロセッサユニットを身に纏う女神ならば話は違ってくる。

 2人はパープルハートが割り込んできた瞬間、瞬時に退避を選択してプロセッサユニットのウイングを無理やり稼働させて大きく跳び退ったのである。

 目標を見失って空振りになるかと思われた刀剣であったが、パープルハートはすぐに次の獲物に狙いをつけて1歩踏み込んだ。

 

 ――そう、先ほどブラックハートによって吹き飛ばされてしまったグリーンハートである。

 自分に狙いが移り代わったとわかったグリーンハートであったが、足が大きく開いてしまっている現状では素早く逃げることができない。

 

「せいっ!!」

 

「うぐっ!?」

 

 仕方なくグリーンハートはパープルハートの攻撃を受けとめようと、刀剣に槍の刃を打ち合わせた。

 しかし、グリーンハートもただ無策で防御を選択したわけではない。

 何度も戦いを重ねることで、パープルハートの一撃が強力であることは身を持って知っている。

 だからこそ、前に出されている足を軽く上げて自分から後ろへと飛んで逃げようと考えたのだ。

 その目論見は見事に成功し、グリーンハートはパープルハートの力を利用して退避できたのである。

 だが、グリーンハートの表情は2度も続けざまに吹き飛ばされてしまった悔しさに歪んでいた。

 

 振り切った刀剣をゆっくりと構え直し、パープルハートを自分の周りを囲むように存在する他の女神達に宣言する。

 

「あなた達がいがみ合おうが仲良くしようが関係ないわ――――――最後に勝つのはわたしよ」

 

 パープルハートの大胆な勝利発言に3人の顔は険しくなる。

 その言葉に余裕と自信が溢れていることが余計に3人の怒りを募らせていた。

 

「本当、あなたって女神化前と後じゃ性格が違いすぎるわよね。でも、私は今のあなたの方が好きよ」

 

「別にあなたに好かれようとは思わないわ。だって、もうあなたとは会うこともなくなるんだから」

 

「あはははははは!! 言ってくれるじゃないのよ!!」

 

 遠慮のないパープルハートの物言いに、ブラックハートは怒りを感じる前に自然と口の端が吊り上ってしまう。

 その緑色の瞳は爛々と輝き、大剣の狙いをパープルハートへと固定する。

 

「そうでなくちゃ、あなた達を倒した私が真の女神であることを証明できないわよね!! 私が1番強いこと、今日こそ思い知らせてあげるわ!!」

 

「テメェらだけで勝手に盛り上がってんじゃねぇ!! それにテメェらのような奴にゲイムギョウ界を好きになんてさせてたまるかよ!!」

 

「生憎ですが、わたくしも崇高な目的のために負けてさしあげることはできませんもの。その驕り高ぶったあなた達の態度、今日で見納めにして差し上げますわ!!」

 

 3人は同時にパープルハートへと突撃していく。

 それがわかっていながら、パープルハートは頬を緩めて余裕と自信を崩さない。

 

「……いいわ。今日でこのくだらない争いを終わらせてあげる」

 

 大剣と斧と槍が一斉にパープルハートに襲いかかる。

 だが、パープルハートはそれらが直撃する直前で宙に舞い上がる。

 避けられた3人の驚愕の顔を見るためと言ったふざけた理由で、背面跳びのように頭を下にしたのは余裕の表れだろう。

 行き場を失くした3人の武器が激しくぶつかり合う様を直接見下ろしながらパープルハートは笑みを浮かべる。

 だが、パープルハートが隙を晒している3人に敢えて刀剣を振り下ろすことはなかった。

 そのまま空中でくるりと体勢を整えて3人から距離を取ると、パープルハートはゆっくりと正眼に刀剣を構えて言い放つ。

 

「わたしの勝利でね」

 

 自信満々に言い切られた言葉を否定する声は上がらなかった。

 事実として、パープルハートが強いことは他の3人も当然理解している。

 今まで誰ひとりとして脱落することなく守護女神戦争で戦い合った仲なのだ。

 嫌でもその実力を認めてしまっていたのである。

 

 ……しかし、だからと言って納得ができるわけではない。

 

(ちっ、さすがにやるわね。でも、そうでなきゃ張り合いがないわ!!)

 

(ったく、相変わらずふざけたことばかり言いやがる。アイツら全員女神に相応しくねぇんだ。ゲイムギョウ界のためにも、わたしが絶対に真の女神になってやる!!)

 

(はあ、このままだといつもと同じ感じで終わってしまいますわね。本当にいつまでこんな不毛なことを続けなければなりませんのかしら)

 

 ブラックハートはパープルハートに対する闘争心を燃やし、ホワイトハートは女神としての義憤に駆られ、グリーンハートは現状を達観しだす。

 これもすでに何度も繰り返されたやり取りであったのである。

 女神だからこそ時間を気にせずに戦い続けられているのだが、4人の心の中には確実に焦りにも似た感情が存在している。

 

 守護女神戦争はゲイムギョウ界を統治する真の女神を決める戦いである。

 決して、女神達が自分の力を誇示するために始めた争いではない。

 ここより下の大陸、下界と呼ばれる人間達の住む世界を繁栄させるためでもある。

 自分達を信仰してくれる人達のためにも、早く決着をつけなければならないと考えている。

 しかし、いつまで経っても同じことの繰り返しで4人の戦いは終わりを見せない。

 グリーンハートほどではないにしても、他の3人もこの状況に心が穏やかなままではいられない。

 

 ピリピリとした空気が流れる中、1人の声が聞こえてくる。

 

「――――だったら、まずは1人。脱落者を決めてみてはどうだ?」

 

 その誰とも知れない声は、パープルハートを除く3人の心にジワリと染み込んだ。

 3人は誰が言ったのかと言う疑問を挟むことなく、その提案を受け入れてしまったのである。

 

「それはいいですわね。でも、それでしたら脱落してもらうのは1人しかいませんわよね」

 

「ああ、そうだな。正直、テメェらと手を組むってのもムカつくんだが、これもゲイムギョウ界のためだ。仕方なく協力してやるよ」

 

「それはお互い様でしょ。私もあなた達なんかと仲良くなんてしたくないわよ」

 

「……ねえ、さっきから何の話をしているの?」

 

 急に自分のことを無視して話しだす3人にパープルハートは不審に思いながら尋ねる。

 しかし、3人はパープルハートの疑問に答えることなく、言葉を交わし続けていく。

 

「まあまあ、いいではありませんか。これでようやく、この不毛な争いを終わらせるきっかけができるのですから」

 

「それもそうね。私はいつまでもこんなところで燻ってるほど暇じゃないのよ」

 

「ハッ、勝手に言ってろ……と言いたいところだが、まずは確実に1人目を、だな」

 

 話の内容について来れず、完全に蚊帳の外になってしまったパープルハートは眉間に深くしわを寄せてしまう。

 明らかに不機嫌なまま、やや早口で3人に対して不平を漏らす。

 

「無視? 無視なの? 無視したのね? わたしを無視して、今度は何を企んでいるって言うの?」

 

 怒気を孕みながら向けられたパープルハートの言葉に、今度は3人が口元を緩めてしまう。

 完全に先ほどまでと立場が逆になってしまっていた。

 

「企むだなんて、人聞きの悪いことをおっしゃらないでくださいまし」

 

「わたし達は女神としての責務を果たそうとしているだけだ」

 

「女神としての責務? それっていったい……」

 

「相変わらず鈍いわね。そんなの決まってるじゃない」

 

 戸惑うパープルハートをよそに、ブラックハートは決定的な一言を発する。

 

「私達3人であなたを守護女神戦争の舞台から引きずりおろしてあげるって言ってるのよ!!」

 

 そう宣言すると、3人は横並びになってそれぞれの武器をパープルハートへと構えだす。

 

 何も3人はパープルハートが孤立していたから狙ったのではない。

 ただ、残られたら厄介な相手だと判断したからである。

 それは先ほどの攻防でも明らかであり、誰もパープルハートを狙うことに異論を挟まなかったことも原因である。

 

「喜べよ。今日、テメェは守護女神戦争での記念すべき1人目の脱落者になるんだ。せめて、名前だけは覚えといてやるよ」

 

「わたくし達も鬼ではありませんわ。今ここで自主的に守護女神戦争を降りるというのなら、命だけは助けてさしあげますわよ」

 

 にやにやと笑いながら挑発してくるホワイトハートとグリーンハートに、パープルハートの目つきは鋭くなるばかりであった。

 侮辱されて傷つけられたプライドは怒りに燃え、刀剣を握る指の力が強くなる。

 

「ふざけないで!! わたしは絶対に負けないし、逃げもしないわ!! あなた達3人が束になってこようとも、勝つのはわたしよ!!」

 

「あははははははは!! そのくだらない減らず口、すぐに叩けなくしてあげるわ!!」

 

 パープルハートの怒りを滲ませた啖呵からは、先ほどまで溢れていた自信が微塵も感じ取れなかった。

 3人にはただの強がりにしか聞こえなかったのである。

 それに気をよくしたブラックハートは笑いながら大剣を構えてパープルハートへと飛翔していく。

 続くようにホワイトハートとグリーンハートも飛翔しようとする――――しかし、その動きを突然止めてしまわねばならない事態が発生してしまう。

 

「おい、待て!?」

 

「ちょっ、危ないですわ!?」

 

 突如として自分の行動を止めようとする2人のことを不思議に思うも、ブラックハートの動きは止まることがなかった。

 何故か理由はわからないが、パープルハートも驚愕の表情を浮かべている状況を、ブラックハートは最大のチャンスだと認識したからだ。

 

「上から来るわよ!? 気をつけて!?」

 

「ふん、そんな戯言に耳を貸すわけが……へっ?」

 

 腕を伸ばして注意を促すパープルハートをブラックハートは鼻で笑い飛ばす。

 だが、大剣を振りかぶった瞬間、パープルハート達が自分に言ってきた言葉の意味を理解し、ブラックハートは間抜けな声を上げてしまう。

 

 ……それは空中から振ってきた黒い物体であった。

 下界の大陸よりも空に近いこの大地の上にあるのは、青空と太陽だけである。

 それなのにも関わらず、謎の物体が空から降ってくることにブラックハートの思考は停止してしまった。

 

「わああああああああああああ!?」

 

「なっ、もしかしてに……へぶっ!?」

 

 空中を回転しながら落ちてくる黒い物体から悲鳴のような物が聞こえてきた段階で、ようやくブラックハートの思考は正常に戻った。

 しかし、それはあまりにも遅すぎた復帰であった。

 

 黒い物体は大剣を振り上げた態勢で棒立ちになっていたブラックハートに直撃し、もみ合いになりながら地面を転がる。

 砂埃を舞い上がらせながら止まった場所を見ると、そこには2人の人物の姿があった。

 

 1人は仰向けの体勢のまま転がるブラックハート。

 手に持っていたはずの大剣は転がっていくうちに手放してしまったようで、地面に放り出されている。

 

 そして、もう1人……落ちてきた黒い物体の正体である人物はブラックハートに馬乗りになっていた。

 人が空から降って来たこと自体驚くべきことだが、その人物の恰好を見てパープルハート達は言葉を失ってしまった。

 

「イタタタ……ここはどこなんだ?」

 

 守護女神戦争が行われていた場所に落下した人物、御波夢人はメイド服を着たまま、のんきにも痛む顔を擦りながら辺りを見渡してつぶやくのであった。

 そのスカートの下にブラックハートの顔があることに気付かないまま。

 

「……落ちてくるのはヒロインだけだと思ってたわ」

 

 状況が飲み込めるようになったパープルハートがようやく発した言葉は、元の人格を彷彿とさせるものであった。

 その目は胡乱げに夢人を見つめるのであった。




という訳で、今回はここまで!
……展開が全然進んでませんね。
まあ、前回が前回ですから。
それでは、 次回 「流れ星のように」 をお楽しみに!
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