超次次元ゲイムネプテューヌ Re;夢のヒーローを目指して   作:ホタチ丸

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はい、皆さんこんばんわ!
今回で、ようやく皆さんお待ちかねのあの子の登場です。
それでは、 旅する一陣の風 はじまります


旅する一陣の風

 魔窟。

 バーチャフォレストの地下に張り巡らされた空洞をプラネテューヌのギルドが暫定的にそう呼称したダンジョンである。

 隠されていた入り口や内部の構造から、何らかの目的のために作られた人為的なダンジョンであることは判明しているのだが、その詳細は一切不明である。

 また、内部はモンスターで溢れていることもあり、安全に調査活動をすることも非常に困難である。

 そのため、ギルドはクエストとして冒険者達を雇い、モンスターの分布調査はもちろん、内部構造の調査やダンジョンの作られた目的の調査にも懸賞金をかけている。

 

 そんな未だ謎の多いダンジョンである魔窟に、夢人達は再び足を運んだのである。

 ネプテューヌが朝食を終えた後、1度ギルドの方で魔窟に関する情報を集めたのだが、発見されて未だ2日しか経っていないせいでまともな情報はほとんどなかった。

 入口付近の地図とモンスターの出現情報だけを貰い、3人はギルドを後にした。

 その際、コンパの提案で夢人の落し物を探すついでに調査クエストも受注して、旅をするための資金を稼ぐことになったのである。

 

「はふぅ、何だか暇だねえ」

 

「ダンジョンで暇なのはいいことなんですけどね」

 

 現在、3人は虫のようなモンスターと戦った場所――天井に大穴の開いた場所まで戻って来ていた。

 周りにモンスターの影はなく、手持無沙汰になってしまったネプテューヌはあくびをしてしまう。

 隣にいたコンパは苦笑しながら、ギルドに提出するために入り口からここまでの道のりやモンスターの情報などを貰った地図に書き込んでいる。

 コンパの描くモンスターは可愛らしくデフォルメされており、がおーと雄叫びをあげているシカベーダーやゴーストボーイとゴーストガールがハートマークで囲われたりしている。

 

「ねえ、まだ見つからないの?」

 

「悪い。もう少しだけこの辺を探させてくれ」

 

 痺れを切らしたネプテューヌが眉をひそめながら、懐中電灯を片手に四つん這いの体勢で探し物をしている夢人へと声をかけた。

 返事をしたものの、夢人はネプテューヌの方へ顔を向けることなく、必死に辺りを見回していた。

 

「本当にここで落としたんですか? 上の方で落としたってことはないんですか?」

 

「うっ、水晶の方はともかく、携帯端末はこっちで落としたと思ったんだけどなあ」

 

 心配そうに眉を八の字にして尋ねてくるコンパの指摘に、夢人は言葉を詰まらせてしまう。

 

 事実、夢人はNギアとプレゼント用に加工した水晶をいつ落としたのかわかっていない。

 別の次元に来てしまったことやレイヴィスから聞いていた話と違うことばかりであったこと、極めつけにネプテューヌの記憶喪失があり、夢人も冷静ではなかったのである。

 コンパからジャージを借りてメイド服から着替えた時も焦っていたため、自分がその時何を持っていたのかの記憶も曖昧になっていた。

 ようやく落ち着けたのは、ネプテューヌが寝ている間にコンパに事情を説明していた時である。

 その際、コンパに自分達が別の次元から来た証拠としてNギアに保存してあるネプギア達との画像を見せようとしたのだが、そこで初めてNギアがないことに気付いたのだ。

 加えて、他にも持っていたはずの水晶がなくなっていたことも判明し、夢人はいつ失くしたのかを考えようとするのだが、思い出そうとすればするほど自分の記憶が信じられなくなっていったのである。

 少なくともNギアはバーチャフォレストに行った時に持っていったはずだと思いだし、その中で落とした可能性が1番高い自分達がモンスターと戦った場所を探していたのだ。

 しかし、いくら探しても水晶はおろか、Nギアも一向に発見することができず、夢人は焦りを感じていた。

 

「もう誰かが拾っちゃったんじゃないの? 落としてから2日も経ってるんだし、交番に届けられてるとかさ」

 

「そうですね。わたし達と同じようにこの洞窟を調査に来た冒険者さん達に拾われちゃってるかもしれないです。ここは1度ギルドに戻って聞いてみた方がいいですよ」

 

「……そう、だな。わかった。悪かったな、結構長い時間つき合わせちゃってさ」

 

 さすがにいつまでも見つからないものを探し続ける夢人が心配になり、ネプテューヌは1度魔窟を出ることを提案した。

 その意見にコンパも賛同し、夢人も悔しそうに表情を歪めながらも立ち上がって2人の意見に従った。

 

「そんな暗い顔しなくても、ちゃんと見つかるまでわたし達も付き合うか――ねぷっ!?」

 

「きゃあっ!?」

 

 落した物が見つからないことで落ち込んでいる様子の夢人を元気づけようと、ネプテューヌは困ったように笑みを浮かべながら後ろ向きに歩く。

 しかし、いくら3人がいた場所は天井に開いた穴から日の光が差し込んでいるとはいえ、少しでもその範囲から離れれば心もとない松明の灯りしかない薄暗い洞窟。

 ネプテューヌは曲がり角から歩いてきた何かにぶつかってしまった。

 

 何かは、ネプテューヌと同じくらいの背丈をしている少女であった。

 長い茶髪の一部をサイドテールのように縛る緑色のリボンは、まるで植物の双葉のように見える。

 明らかにサイズの合っていないぶかぶかの青いコートに、黒い上着に黒いショートパンツ、さらに黒いベルトなど、茶髪が明るく見える分だけ全体的に寒色のファッションが目についてしまう。

 

「イタタタ……ちょっと、アンタ何やってんのよ」

 

 ネプテューヌとぶつかった人物は強くお尻を打ち付けてしまったらしく、軽く腰を浮かして擦りながら怒りを滲ませた言葉を発した。

 眉尻は吊り上り、前のめりに倒れそうになって四つん這いになってしまったネプテューヌを鋭く睨んでいる。

 

「ご、ごめんごめん。ちょっと余所見してて」

 

「……まったく。まあ、私も他人のこと言えた義理はないし、忠告だけしといてあげるわ。次からは何が起こるかわからないダンジョンで余所見なんてしないよう、気をつけなさいよね」

 

「はーい」

 

 軽い感じで謝罪をしてくるネプテューヌにいつまでも怒気を向けているのが馬鹿らしくなったのか、その人物は疲れたように肩を落とすと、近くに落ちていた携帯電話を拾い上げて立ちあがった。

 明るく返事をするネプテューヌを見て、少女は呆れながらも携帯の中に記録されている情報が衝撃で消失していないかを確かめる。

 

「ねぷねぷが迷惑をかけてごめんなさいです。これでもちゃんと反省しているので、どうか許して欲しいです」

 

「あれ? どうしてコンパがわたしの保護者みたいな感じで話を進めてるの?」

 

「もう怒ってないから平気よ。でも、ただでさえここは危険なモンスターが出るって噂があるんだから、その子を連れてさっさと街に戻りなさい」

 

「あれれ? もしかして、わたしかなり子供扱いされてる? ねえ、ゆっくんはどう……って、どうしたの?」

 

「っ、いや、何でもないって」

 

 頭を下げながら謝罪をするコンパと携帯をコートの裏側にしまって真剣な顔をする少女の間に挟まれているのに話に入れないネプテューヌは、助けを求めるように夢人へと顔を向けた。

 しかし、そこには少女を見て驚きの表情を浮かべている夢人の姿があった。

 ポカンとしていた夢人であったが、ネプテューヌから呼ばれるとハッと正気に戻り、誤魔化すように首を左右に振りながら答える。

 

(コンパが赤ちゃんじゃなかったから、ある程度予想はしてたけど、やっぱり……)

 

 またレイヴィスから聞いていた話とは違うが、目の前の少女が誰なのかを夢人は既に知っていた。

 なにせ、彼女との付き合いは夢人がゲイムギョウ界に初めて召喚された時からの長いものである。

 ネプギアやコンパと同じく、ずっと一緒に旅をした仲間の1人。

 しかも、一緒に過ごした時間はもしかしたらネプギアよりも長くなるかもしれないのだ。

 夢人が初めて戦い方を師事した人物でもあり、魔法の特訓にも何度も協力してくれた大切な恩人。

 

「ぶーっ、わたしのことを子供扱いするなら、そっちだってまだ子供じゃん」

 

「はあ、アンタみたいなおこちゃまと私を一緒にしないでよね。私はギルドから正式にこのダンジョンの調査を請け負った冒険者よ。遊び半分で来ているようなアンタ達と一緒にしないでもらえる?」

 

「何をー! わたし達だって、このダンジョンを調査しに来たんだよ! しかも、このダンジョンを1番最初に見つけたのはわたし達なんだからね!」

 

「……嘘でしょ?」

 

 少女を見つめたまま、そっけない態度の夢人に不満を感じたネプテューヌは頬を膨らませながら気持ちの矛先を変更した。

 しかし、ぶつけられる対象になった少女はため息をついて呆れることしかできない。

 諭すように少女から投げかけられた言葉に、馬鹿にされたと思ったネプテューヌは我慢できず声を張り上げた。

 胸に手を当てて顔を前に突き出すネプテューヌの話が信じられず、少女は困惑しながらコンパと夢人に視線を向ける。

 その視線を受けたコンパはにっこりと笑みを浮かべて口を開く。

 

「はいです。確かに、このダンジョンを見つけたのはわたし達です。あそこの穴から落ちた時に、ここを見つけたんですよ」

 

「落ちたって……ああ、なるほど。この辺がやけに明るいと思ったら、あんなところに穴が開いていたのね」

 

「ふっふーん、嘘じゃなかったでしょ? それにどんな強いモンスターが出てきても、『変身』しちゃえばへっちゃらだもんね。わたしの強さにお前が泣いた、ってな感じでモンスターの方が逃げ出すよ、きっと」

 

「……ねえ、この子が『変身』とか言ってるけど、頭大丈夫なの?」

 

「え、えっと、記憶は失ってるので大丈夫と言えないんですけど、ねぷねぷが強いのは本当です」

 

 天井に開いた穴を指さしながら事情を説明するコンパの話に少女が納得していると、ネプテューヌは得意げな顔で両手を腰に添えて胸を張りだす。

 すると、少女は気の毒そうな顔でネプテューヌのことを見つめながら、小声でコンパに尋ねる。

 事実として、記憶喪失になっているネプテューヌの頭は大丈夫と言えないことが分かっているので、コンパは少女の問いに困ってしまう。

 それでも、ネプテューヌが自分達の中で1番強いことをコンパが伝えると、少女は何かを考えるように固く瞳を閉じてぶつぶつとつぶやきだす。

 

「……ありえないわ……こんな頭のおかしなことを言う子供が強いなんて……それに記憶喪失ですって? ……ますます怪しいじゃないのよ」

 

「もー、そんなに疑わなくてもいいじゃん」

 

「簡単に信じられるわけないでしょ、まったく……まあ、いいわ。アンタが本当に強いのか、それとも頭がおかしいのかなんて私には関係ないものね。騒ぎ過ぎてサンドウォームに見つからないように気をつけなさいよ」

 

「サンドウォーム?」

 

 思考を切り替えるように頭を左右に振ると、少女はぶっきらぼうに夢人達に忠告をする。

 しかし、その意味がわからず、夢人達は首を傾げてしまう。

 声を出した夢人だけでなく、ネプテューヌとコンパも同じ様子であることに少女はうんざりしたように肩を落とす。

 

「呆れた。そんなことも知らないでここに来てたの? ここを調査に来た冒険者のほとんどがサンドウォームにやられたのを知らないわけ? ……仕方ないわね。私が出口まで案内してあげるわ。ちゃんとついてきなさい」

 

「ちょ、ちょっと待ってよ!? 勝手に話を進めないでよ!?」

 

「文句を言うんじゃないわよ。アンタ達だけじゃ無事に街に戻れなさそうだから、わざわざ私が案内してあげるって言ってんのよ」

 

「ムッ、大体何でさっきからわたしの話を信じてくれないくせに、そんなに偉そうなの! あなたの方こそ、本当に強いの!」

 

「まったく、口だけは立派みたいね。いいわ、特別に教えてあげる」

 

 呆れ顔のまま踵を返して出口に向かおうとする少女に、ネプテューヌは慌てて待ったをかけた。

 しかし、少女は取り合おうとせずに顔だけを3人に向けると、命令するように言い放つ。

 ムッとするネプテューヌと同じように、少女も能天気な3人に苛立ちを感じていたのである。

 そのため少女の言葉が刺々しくなってしまい、ネプテューヌは怒りを抑えることができない。

 自分のことを指さしながら睨んでくるネプテューヌの態度に少女もカチンときてしまい、3人の方を振り返ると自信満々に胸を反らしながら口を開く。

 

「私の名前はアイエフ。ゲイムギョウ界を渡り歩く冒険者――」

 

 少女、アイエフはそこで言葉を区切ると、口元に笑みを浮かべたまま目を閉じ、リボンで縛っている髪の方を手で梳かしてなびかせる。

 髪を梳かした手を大きく弧を描くように動かして腰に添え、パッと瞳を開いて片側の口角だけ吊り上げる。

 

「人呼んで、ゲイムギョウ界に咲く一陣の風――と言ったところかしら」

 

 ドヤ顔で宣言するアイエフであったが、夢人達からは何の反応も返ってこない。

 正確にいえば、3人ともピシリと固まってしまい、どう反応したらいいのかわからないでいたのである。

 シーンと静まり返った3人の様子を勘違いしたらしく、アイエフはにやにやと笑いながら言葉を続ける。

 

「ふふふ、どうやら分かってくれたみたいね――そう、私は風のようにゲイムギョウ界中を旅してきた凄腕の冒険者。素早くモンスター達を倒す姿は、まさに青い旋風。しかも、このリボンがまるで花を咲かせる若葉のように風に揺れることから、人は私のことをつぼみを実らせる前に咲いた風の花と例えて……」

 

「って言う設定なんでしょ」

 

「そうそう、そう言う設定……って、そんなわけないでしょ!! ってか、設定って言うな!!」

 

 得意げに語り続けるアイエフの言葉に割り込ませるように、ネプテューヌはジト目でつぶやいた。

 すると、最初はうんうんと頷いていたアイエフであったが、すぐに声を荒げて怒りだす。

 

「えー、だって、青い旋風とか風の花とか、わたし的にすごく痛々しい単語が並べられたからさ。ついつい黙っていられなくって」

 

「っ、アンタ!! 冒険者の2つ名を馬鹿にすると死ぬわよ!! ってか、痛々しいってどう言う意味よ!!」

 

「いやあー、とにかくあなたがその……ゲイムギョウ界のなんちゃらさんって言う設定だってことは、ちゃーんとわかったから」

 

「……今すぐアンタを冥界に叩き落としてやろうかしら」

 

 感情をむき出しにして怒りだすアイエフに、今度はネプテューヌがにやついてしまう。

 先ほどまでとは逆になってしまった関係に気をよくしたネプテューヌは、わざとらしく笑みを浮かべながらアイエフを挑発するようなことを言いだす。

 明らかに馬鹿にしているネプテューヌの態度に、アイエフは必死に怒りを堪えようとするのだが、こめかみの辺りがぴくぴくと痙攣している。

 加えて、吊り上った頬もぎこちなく引きつり出し、小刻みに肩を震わせるアイエフの声は低くなってしまう。

 そんな2人の険悪な雰囲気を察知したコンパは、慌てて間に割り込むとアイエフを宥めようと必死に言葉を探す。

 

「け、喧嘩は駄目ですよ!? そ、それに、えっと……か、かっこいいじゃないですか」

 

「そ、そう? ふ、ふーん、アンタの方はなかなか分かってるじゃない。そうよ、冒険者のような危険が付きまとう日陰者は軽率に本名を名乗らないことが常識よ。だから、私のような2つ名――所謂、コードネームが必要になるの。理解してくれて嬉しいわ」

 

 苦し紛れにコンパの口からこぼれた言葉がアイエフの琴線に触れた。

 それまで感じていたネプテューヌへの怒りを忘れ、アイエフは恥ずかしそうに頬を染めてしまう。

 しかし、アイエフの表情はどこか誇らしく、コンパに柔らかくほほ笑みかけながら語りだす。

 

「そ、そうなんですか? え、えっと、じゃあ……風の花さんって呼んだ方がいいんですか?」

 

「今回は特別に本名を教えたんだから別に構わないわ。それに、私のことを風の花さんなんて呼んだら、アンタにも危険が……って、どうしてそこを拾うのよ!! それは私のことを例えただけよ!! やっぱり、アンタもわかってないじゃない!!」

 

「ひゃいっ!? だ、だって、風の花さんって呼び方の方が可愛いって思ったんですぅ!?」

 

 だが、アイエフにそんなことを説明されてもコンパはどう反応していいのか困ってしまうだけであった。

 遠慮がちにコンパが尋ねると、ネプテューヌの時同様に初めは笑みを浮かべていたアイエフの顔が急に憤怒の表情へと変化してしまう。

 怒鳴られて涙目になってしまったコンパは、ビクッとアイエフから1歩退いてしまうのであった。

 自分の話をまったく理解できていない2人を睨みながら、アイエフは残っている1人――今までの成り行きをボーっと眺めていた夢人へと視線を向ける。

 

「アンタは!! アンタはちゃんとわかってるわよね!!」

 

「アイエフ……」

 

「っ、は、はいっ!?」

 

 アイエフが懇願にも似た叫び声をあげると、夢人はゆっくりと歩きだした。

 そして、真面目な顔でアイエフを見つめながら、その両肩に手を置いて名前を呼んだ。

 いきなり初対面の相手にそんなことをされたアイエフはドキッとしてしまい、返事を上ずらせてしまう。

 ドギマギしているアイエフの様子を見ながらも、夢人は表情をきりっとさせたまま口を開く。

 

「お前、B.H.C.を飲んでるわけじゃないよな?」

 

「――意味わかんないわよ!!」

 

「おぶっ!?」

 

 アイエフは理解できないことを口にした夢人の股間を問答無用で蹴り上げた。

 顔を青くしてのたうちまわる夢人をぎろりと睨みながら、アイエフは握った拳をふるふると震わせてしまう。

 

「どいつもこいつも私のことを馬鹿にして……っ!!」

 

「まーまー、そっちだってわたし達のこと馬鹿にしたんだし、これでお相子でいいでしょ?」

 

「うるさいっ!! ……ぐすっ……一緒にしないでよぉ……ばかぁ……」

 

「えっ、えっ、えええええ!? どうしてそこで泣き始めちゃうの!?」

 

「ど、どうしたんですか!?」

 

 怒りに震えていると思ったネプテューヌが肩を叩きながら明るい調子で宥めようとすると、アイエフは急に弱々しく泣きだしてしまった。

 いきなりの変化にネプテューヌだけでなく、アイエフに怯えていたコンパも心配になって駆け寄る。

 しかし、アイエフの目からは涙が止まることなく溢れだし、鼻をすすりだしてしまう。

 

「いいじゃないのぉ……ぐすっ……かっこいいじゃないのよぉ……ぐすっ……2つ名を名乗って何が悪いのよぉ……」

 

「あわわわわわ!? ガチで泣き始めてるよ!? ご、ごめんって!? 謝るから泣き止んでよ!?」

 

「わ、わたしもごめんなさいですぅ!? ちゃんと理解できるようになりますから、元気を出してくださいですぅ!?」

 

「……ぐすっ……本当?」

 

 必死に慰める2人の様子を見て、アイエフは不安そうに瞳を揺らしながら上目遣いで尋ねた。

 2人は示し合わせたように顔を見合わせると、すぐに頷き合い、柔らかく笑みを浮かべながらアイエフに言う。

 

「うんうん、よく考えてみれば2つ名ってかっこいいよね。わたしもあいちゃんみたいなかっこいい2つ名が欲しいなあ」

 

「わたしもです。でも、あいちゃんよりかっこいい2つ名なんて思いつかないです」

 

「あ、あいちゃんって……ま、まあ、アンタ達がそう呼びたいんなら別にそう呼んでもらっても構わないわ」

 

 わざとらしく“かっこいい”と繰り返される褒め言葉に、アイエフは気を持ちなおす。

 強引に目尻に溜まった涙をコートの袖で拭うと、アイエフは頬を赤く染めてチラチラと2人を見始める。

 

(あ、案外チョロイかも。それじゃ、最後はゆっくんに任せるよ!)

 

(お願いするです、ゆっくんさん!)

 

 内心で機嫌をよくしたアイエフに苦笑しながら、ネプテューヌとコンパは未だに股間を押さえてのたうちまわっている夢人へと視線を送る。

 2人からの強い視線を送られた夢人は動きを止め、嫌そうな顔をしながら口を開く。

 

「いや、俺はこれ以上黒歴史を増やしたくな……」

 

「馬鹿ー!?」

 

「おぐっ!?」

 

 空気を読まずに本音を漏らしてしまった夢人は、最後まで言い切ることができずにネプテューヌに腹を蹴飛ばされてしまうのであった。




と言う訳で、今回はここまで!
……まさかアイエフとの出会いで1話分を使いきるとは思わなかったです。
番外編の方も2話目がほぼ完成しているので、明日は本編と一緒に投稿できればと思います。
それでは、 次回 「魔女の襲来」 をお楽しみに!
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