超次次元ゲイムネプテューヌ Re;夢のヒーローを目指して 作:ホタチ丸
昨日投稿できると思っていたんですけど、実際力尽きて寝落ちしてしまいました。
楽しみにしていた皆様、本当に申し訳ございませんでした。
それでは、 魔女の襲来 はじまります
「ゆっくん、そこに正座」
「……はい」
蹴られて痛む腹を擦りながら、夢人はネプテューヌに言われた通り正座をするのであった。
アイエフも入れた4人は当然まだ魔窟の中におり、舗装されていない地面のごつごつした感触が地味に夢人の脛を刺激する。
「いい、ゆっくん。ゆっくんはもっとデリカシーって奴を学ぶべきだと思うんだよ。今、あいちゃん泣いてたよね? 泣いている女の子に優しい言葉の1つもかけられないようじゃ、いつまで経ってもヘタレのままだよ? それでもいいの?」
「……よく、ありません」
「うん、そうだよね。それじゃ、さっきはなんて言えばよかったのかわかるよね?」
「……はい、俺もアイエフのようにか、かっこいい2つ名が、ほ、ほほ欲しい、ですっ!」
体を小刻みに震わせながら項垂れる夢人に、ネプテューヌはできの悪い子を諭すように言葉を続ける。
夢人は大人しく反省しているように見えて、実はネプテューヌに対する怒りを堪えていた。
(元はと言えば、お前がアイエフを煽ったからだろうが!? くっ、だけど、実際俺も悪いところはあったし……)
そもそもアイエフが泣きだす事態に発展したきっかけを作ったのは、ネプテューヌであり夢人ではない。
それにもかかわらず、ネプテューヌが何事もなかったように説教をしてくる姿に夢人は沸々と怒りを募らせていた。
しかし、自分もアイエフが泣いてしまう流れを作ってしまったことも理解しているため、反論することなく奥歯を噛みしめていたのだ。
ネプテューヌに促されて発言した言葉も本音とアイエフに対する罪悪感による葛藤で夢人は自棄を起こし、語尾を強く叫んでしまう。
夢人の言葉を聞き終えたネプテューヌは、満足そうに腕を組んで何度も頷きながら口を開く。
「うんうん、時には優しい嘘って奴も使わないと駄目ってよくわかったでしょ? いくらあいちゃんのような中二病臭い2つ名が嫌だからって、それを直接言っちゃうとせっかく練りに練った設定を馬鹿にされたと思われて、あいちゃんみたいに泣きだしちゃう場合もあるんだからね。これに懲りたら、わたしとコンパのように空気読みスキルのレベル上げを忘れないようにしなよ。それから……もがっ!?」
「ね、ねぷねぷ!? シー、シーですぅ!?」
段々と漏れ出していく危ない発言に気付いたコンパは、慌ててネプテューヌの口を塞いだ。
小声で必死に黙るように説得するコンパであったが、残念ながらネプテューヌの言葉は全てアイエフに聞かれていた。
だが、アイエフは怒りも泣きもせず、ただ頭痛を押さえるように額に手を当てていた。
「はあ、まともにアンタらと付き合ってたら、こっちの身が持たないわ。いいからさっさとここを出るわよ……後、今度設定って言ったら冗談じゃなく冥府の炎で燃やし尽くしてやるから、覚悟しなさい」
『は、はい』
最後にぎろりとネプテューヌを睨みつけると、アイエフはダンジョンの出口へと歩き始める。
念を押されて顔を青ざめるネプテューヌも、ホッと一息を吐いて安心するコンパも、足の痺れで真っ直ぐに歩けずふらふらする夢人も、アイエフの気迫に押されて静かについていくことにした。
* * *
――その頃、同じく魔窟の違う地点では、1つ目の蝙蝠のような生物が1人の女性の元に飛んできた。
つばの広い黒いとんがり帽子に大胆に肩とスタイルのよい胸元を露出させた服、腰の辺りにひらひらと揺れ動いている装飾がスカートのように見える。
健康的とは言えない青白い肌をしており、目元を強調するように黒い化粧が施されている。
紫色をした短い髪から覗かせる耳は先端が尖っており、他の特徴と相まって女性の人間離れした容姿に拍車をかけていた。
女性を敢えて形容するなら、魔性の女――魔女であろう。
女性は飛んできた蝙蝠を手のひらに乗せると、にやりと口元を歪めた。
「ふふふ、どうやら獲物が自分の方から戻って来たようだな。ガーディアンの修復も終わったことだ。コイツを使ってネプテューヌを……クックックッ、アーッハッハッハッハッ!!」
独り言をぶつぶつとつぶやいていると、女性は急に高笑いを始めた。
まるで往年の悪役染みた声が魔窟に響き渡る。
……しかし、女性の笑みはすぐに崩れることになった。
「ハーッハッハッハッ……っと? 何だ? もしかして地震か?」
声を張り上げて笑い続けていた女性であったが、ふいに足元が揺れていることに気付いて眉をひそめる。
天井からも微量の砂が落ちていることを確認し、女性は自分の平衡感覚がおかしくなったのではないと理解した。
だが、次第に足元から感じる揺れが大きくなり、女性は思わずよろめいてしまう。
「お、おい!? 一体どうなっているんだ!? 何故揺れが酷くなって……」
パニックに陥った女性は、誰もいないことを理解していても疑問を口に出さずにいられなかった。
もしや魔窟が崩れてしまうのでは、と最悪な想像が思い浮かび、女性が焦りを感じていると――遂に、揺れの正体が姿を現した。
「ゴオオオオオオオオオオオオッ!!」
女性の立っているすぐ近くの地面が盛り上がったと思えば、砂塵を巻き上げて巨大な生物が咆哮を上げながら現れた。
その正体は、体中に傷を負った巨大なミミズのようなモンスターである。
体中に傷があることから、夢人達が戦った剣を持つ虫のモンスターと戦って逃げた個体である可能性は高く、女性の前に完全に姿を現すとその場でのた打ち回るように暴れ出す。
「な、何なんだコイツは!? 私はこんなモンスターなど知ら……」
「ッ、ゴオオオオオオオオオオオッ!!」
「って、ちょっと待て!? 何故私の方を向く!? よせ!? 来るな!? やめろおおおおおおおお!?」
「ゴオオオオオオオオオオオッ!!」
姿を現したミミズ型のモンスターに驚愕しているのもつかの間、女性の姿を確認したモンスターは口元のひだを蠢かせる。
その仕草は、まるで獲物を見つけて垂らしたよだれを拭っているように見えた。
本能的に恐怖を感じた女性は元から悪かった顔色をさらに悪くさせると、なりふり構わずミミズ型のモンスターから逃走を図る。
自分に背中を向けて走り出す女性を見て、ミミズ型モンスターは逃がすまいと叫び声を上げながら猛スピードで後を追っていく。
魔窟内に、女性の悲鳴とモンスターの這う地響きが木霊していくのであった。
* * *
「ところで、あいちゃん。さっき言ってたけど、サンドウォームって何? ここを調査に来た人達がやられたってことは、結構強いモンスターなの?」
「……結構どころじゃないわよ。普通の冒険者じゃ、相手をすること自体無謀なモンスターよ」
あいちゃんの後ろをただ黙って歩いていくことに耐えられなくなったわたしは、思いきって話題を振ってみた。
すると、あいちゃんは何故か嫌そうに顔を歪めながら、足を止めずに時折振り返ることでわたし達全員に聞こえるように説明してくれる。
「姿は蛇って言うか……そう、ミミズを大きくしたような奴で強そうに見えないけど、その大きさが問題なのよ。ひと1人簡単に飲み込める口や固い表皮、鈍重そうに思えて機敏な動きで飛びかかってくる厄介なモンスターよ」
「そんなモンスターさんにやられた冒険者さん達は大丈夫なんですか?」
「幸運にも皆軽傷で済んでいるわ。さすがに未知のダンジョンに挑む冒険者達は引き際を心得ているわよ……まあ、そのせいでダンジョンの調査が終わってないのが問題なのよね」
コンパがわたし達以外にダンジョンに来た人達の安否を尋ねると、あいちゃんは表情を曇らせてしまう。
あれ? でも、何かおかしいよね?
皆大きな怪我をしていないのなら、いいことのはずなのにどうしてあいちゃんは難しい顔をしているんだろう?
それに、どうしてダンジョンの調査が終わらないこととここに来た人達の怪我が関係しているみたいに言うのかな?
「えっと、どう言うことなんです?」
「うん、簡単に言っちゃうと、ここに来た冒険者達がギルドにダンジョンの調査記録を渡すことを渋ってるのよ」
「どうしてそんなことをするんだよ?」
わたしと同じように疑問に思っていたコンパが質問すると、あいちゃんはまるで苦虫を噛み潰したかのように悔しそうな顔で答えた。
その返事にゆっくんも黙っていられなかったみたいで、いつもよりも少しだけ低い声であいちゃんに続きを促す。
実際、わたしもその人達の考えが意味わからない。
ギルドからこのダンジョンを調査するクエストを受けてきたのに、どうしてそれを渡さないんだろう?
そんなことしたら、いつまで経ってもダンジョンのことはわからないし、調べようとしている他の皆にも迷惑をかけることになるのに。
「クエストの報酬を奪われたくないからよ。だから、自分の調べた情報を開示しようとせず、むしろ同業者やアンタ達みたいな何も知らない素人がいなくなればいいって思ってるんじゃないかしらね」
「ど、どうしてそんな酷いことを……」
「アンタは酷いって感じるかもしれないけど、彼らだって必死なのよ。未知のダンジョンに潜る危険を冒してまで報酬が欲しいのは、自分の生活がかかっているから。こう言う調査系のクエストは少ない情報でも提出すれば報酬が貰えるけど、それでもやっぱり多いことに越したことはないのよ……これがもし、サンドウォームにやられて大怪我をしたって言うなら話は別だけど、彼らは皆上手く逃げ切ってるの。つまり、サンドウォームにさえ気をつければ、安全に調査できるってわかってしまったってわけ。そのせいで、お互いに足を引っ張り合ってるのが今の現状。あわよくばライバルが勝手に脱落してくれることを願って、ギルドの方に調査記録を提出しないでいるのよ」
「……調査しても報告できなければ、報酬は手に入らない。だから、わざと危険であることを伝えないでいるってわけかよ」
「ええ、その通りよ。彼らは自分の手を汚さずにライバルが勝手に自滅するのを待ってるのよ」
あいちゃんの話す冒険者達の話に、コンパは泣きそうになり、ゆっくんは悔しそうに顔を歪めて拳を握りしめている。
多分、わたしの顔も2人と同じようになってると思う。
……正直、そう言うことを考える人達がいることにショックを隠せない。
確かに、クエストの報酬は大切だよ。
わたしだって、貰った報酬でプリンを買いたいなぁって思ってたもん。
でも、だからって誰かを傷つけてまでプリンが欲しいなんて思わない。
そんなことをして貰った報酬で買ったプリンを食べても絶対に美味しくない。
話のレベルは違っても、わたしのこの考えは間違ってないと思う。
わたしには冒険者達の生活がどんなに苦しいのかわからないけど、皆で協力し合った方が断然良いに決まってる。
だから、そんな風に自分のことしか考えられない人達がいることに何だか悲しさを感じる。
胸の中が冷たくなっていくような気がするよ。
「だったら、アイエフ。お前はどうなんだ?」
不安を感じていたせいで、自然と俯きながら胸に手を当てていたわたしはゆっくんの固い声を聞いてすぐに顔を上げた。
そうだ。
あいちゃんも冒険者なんだよね。
だったら、あいちゃんも……
しかし、わたしの予想とは裏腹に、体ごと振り返ったあいちゃんはきつくゆっくんのことを睨みだす。
「はあ? 何で私がそんな卑怯なことしなくちゃいけないのよ」
「え、だって、あいちゃんも冒険者さんなんじゃ……」
「あのね、私が話したのはあくまで1部の悪質な冒険者紛いの奴らのことよ。冒険者全員がそんな真似をしているわけじゃないわ」
本当に嫌そうに話すあいちゃんに、コンパは目を丸くしてしまう。
すると、あいちゃんは腕を組んで困ったように笑いながら言葉を続ける。
「大体私がここにいる時点で少しは察しなさいよね、まったく」
「……つまり、アイエフは調査記録を隠そうとしているわけじゃないんだな?」
「当たり前じゃない。そんなことわざわざ言わなくてもわかるでしょうよ。本当、どれだけ鈍いのよ」
念を押すように確認するゆっくんをジト目で見るあいちゃんの様子に嘘はないように思える。
わたし達は顔を見合わせると、先ほどまでの不安が嘘のように顔を綻ばせあう。
「あいちゃんって、中二病だけどすごくいい冒険者だったんだね」
「はいです。それに、何だかんだ言いながらもわたし達のことを出口まで安全にエスコートしてくれていますし、あいちゃんはすごく優しい冒険者さんだったんですよ」
「ああ、やっぱりこっちの世界のアイエフも優しい女の子だったってわけだ。本当によかった」
「ちょっ、ちょっとちょっとアンタ達!? 何勝手なこと言ってんのよ!? ってか、中二病言うな!?」
わたし達が安心して心をほっこりとさせていると、あいちゃんが慌てて口を挟んできた。
「何でそう簡単に私の話を信じちゃうのよ!? 普通はもっと疑うでしょ!? さっきまでの話を忘れたの!?」
「いやぁー、そんなこと言われても、あいちゃんがそれを言っちゃってたら認めてるようなものでしょ?」
「うっ、でも、それでも普通すぐに信じる話じゃ……」
「信じるさ」
わざわざ自分から疑われようとしているあいちゃんに、わたしの頬は緩んでしまう。
だって、あいちゃんが必死過ぎておかしいんだもん。
わたし達はもう、あいちゃんが本当に優しいってことがわかってるのに否定しようとするなんて……これがツンデレって奴なのかな?
わたしの指摘に言い淀んでも、まだ認め切れていないあいちゃんは反論しようとするのだが、その言葉もゆっくんに遮られてしまう。
ゆっくんはあいちゃんに優しくほほ笑みかけながら口を開く。
「例えお前が嘘をついていたとしても、俺は信じるさ。俺達のことを心配して出口まで案内してくれていることやまったく知らなかった冒険者達の裏事情を話して忠告してくれたこと。どっちもわざわざしなくてもいいことなのに、お前は両方ともしてくれてる。お前のことを信じるのに、これ以上理由は必要ないだろ?」
「っ……馬鹿、私がそうやって油断させといてアンタ達を罠に嵌めようとしているとは思わないわけ?」
「思わないさ。だって、態度で丸わかりだもんな。なあ、コンパ?」
「そうですね。わたしもあいちゃんが嘘を言っているようには全然見えないです。だから、わたしもゆっくんさんと同じように、あいちゃんのことを信じるです」
ゆっくんの言葉を聞いていると、あいちゃんはだぼだぼになっているコートの袖で顔を隠そうとする。
でも、あいちゃんも耳まで真っ赤にして言う台詞じゃないよね。
それは当然ゆっくんもわかっているわけで、にかっと笑みを浮かべてコンパに話を振った。
すると、コンパにまで信じてるって言われたあいちゃんは、わたし達に背を向けるとやや上ずった声で話しだす。
「ま、まったくもう! こんな無駄話してないで、さっさと街に帰るわよ!」
「……あっ、逃げた」
大きめの声で宣言すると、あいちゃんはスタスタと先に行ってしまう。
わたしが思わずつぶやいた一言も聞こえていたはずなのに、あいちゃんは何の反応も返してくれない。
その後ろ姿を見て、わたし達は再び顔を見合わせる。
「あいちゃんって、ツンデレの素質充分だよね。ゆっくんの言葉で顔を真っ赤にして恥ずかしがっちゃってさ……うんうん、今回はゆっくんも上出来だったよ」
「上出来も何も、俺がアイエフを信じるって言ったのは本心だからな。お前らだってそうだろ?」
「当然です。だって、あいちゃんはあんなに優しいじゃないですか。今だって、わたし達がついて来てないことに気付いてそわそわして……」
「コラー!! いつまでものんびりとしてないで、さっさとついてきなさいよ!!」
コンパの言う通り、先に歩いて行ったあいちゃんだったけど、わたし達のことをちゃんと待っててくれていた。
わたし達を呼ぶ怒鳴り声も、あいちゃんの優しさだってわかると嬉しくなってくる。
3人でクスリと笑いあうと、待たせているあいちゃんの所に行こうと足を……
「貴様らあああああああ!? どけえええええええ!?」
「ゴオオオオオオオオオオオッ!!」
……踏み出そうとした瞬間、何だかとてつもなく不安を感じる地響きと共に悲鳴にも似た叫びが聞こえてきた。
あーもー、これはアレだよね?
考えてみれば、最初にあいちゃんに会った時とかにはピコンって音が鳴ってたと思うな。
――こう、嫌なフラグの立つ音がね。
と言う訳で、今回はここまで!
今回はいつもより短かったですね。
ここまで来たら、この章の本編を後2話で収めたいと思っています。
それでは、 次回 「勇気をこの手に」 をお楽しみに!