超次次元ゲイムネプテューヌ Re;夢のヒーローを目指して   作:ホタチ丸

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はい、皆さんこんばんわ!
……まあ、サブタイで分かっていると思いますが、今回も文量が多くなったせいで分割です。
それでは、 重なるピンチ はじまります


重なるピンチ

 ――サンドウォーム。

 姿はまるでミミズのように細長い胴体だけの環形動物であるが、2つのヒレのような部位が存在している。

 這いずることしかできない体の構造上、ヒレによる地面の掻き分けは移動速度を格段に上げる要因となっている。

 泳法の1つ、クロールをするように交互にヒレで地面を強く叩きながら迫りくる姿は、サンドウォームの元々持っている巨体と合わさり、必要以上に恐怖を掻き立ててしまう。

 

 そして、今。

 そんなサンドウォームに狙いを付けられた女性が夢人達に向かって必死に走って来ていたのだ。

 当然、その後ろにサンドウォームを引き付けながら……

 

「ちょっ、何かどこかで見覚えのあるモンスターがこっちに来てるよ!?」

 

「なっ、アレってサンドウォームじゃない!? 早く逃げるわよ!?」

 

「やっぱり、アイツのことだったのかよ!? おい、コンパも逃げるぞ!?」

 

「っ、は、はいですぅ!?」

 

 元々サンドウォームのことを知っていたアイエフ、最初に落ちた時に姿を見ていた夢人とネプテューヌと違い、コンパは迫りくる巨大なモンスターの姿に恐怖のあまり呆然と立ち尽くしてしまっていた。

 気付いた夢人は強引にコンパの手を引っ張ることで正気に戻すと、4人は一目散にサンドウォームから逃げるために走り出す。

 

「ふええええええ!? なんですか、なんなんですか!? どうしてわたし達を追いかけてくるんですか!?」

 

「もしかして追いつかれたら食べられちゃうの!? わたしは美味しくないよ!? 食べるんだったら、ゆっくんだけにして!?」

 

「おい、そこ!? 何勝手に人のことを犠牲にしようとしてんだよ!? 俺だって食われたくないっての!?」

 

「うるさいっ!? 無駄口叩いてないで、さっさと走りなさい!?」

 

 追いかけてくるサンドウォームの恐怖を誤魔化すようにコンパが泣き叫ぶと、ネプテューヌと夢人は漫才のようなやり取りをしてしまう。

 だが、4人に余裕があるわけではない。

 今も逃げる夢人達とサンドウォームの距離は少しずつ縮まっていく。

 聞こえてくる地響きが大きくなってくることに焦りを感じたアイエフは、振り向かずに夢人達を叱責するとさらに速度を上げようとする。

 先頭を走るのが自分だからこそ、アイエフは自分が逃げるスピードを上げれば夢人達ももっとサンドウォームから距離を取られると考えたのだ。

 

 ……しかし、そんなアイエフの考えを邪魔するように、この場にはもう1人の人物がいるのであった。

 

「ええい、退け貴様ら!? 邪魔だ!?」

 

「えっ……きゃあっ!?」

 

「コン……うおっ!?」

 

 最初にサンドウォームに追われていた魔女のような服装の女性である。

 女性は夢人に手を引かれながら走るコンパの肩をグイッと引っ張った。。

 すると、サンドウォームから逃げることで頭がいっぱいであったコンパは、最初に女性の悲鳴が聞こえていたことも忘れていたため、何が起こったのかもわからずに夢人を巻き込んで地面へと転がってしまう。

 

「っ、コンパ!? ゆっくん!?」

 

 2人の悲鳴が聞こえた瞬間、ネプテューヌは慌てて足を止めて振り返った。

 そこには、地面に横向きの体勢で倒れている2人の姿があった。

 急いで助け起こそうと考え、ネプテューヌは横を通り過ぎる女性も気にせず2人に駆け寄ろうとした。

 

 ――しかし、逃げることをやめたと言うことは、即ちサンドウォームに追いつかれることに繋がってしまい……

 

「ゴオオオオオオオオオオオッ!!」

 

「ダメええええええええええ!?」

 

 倒れている2人に狙いを定めたらしいサンドウォームは両のヒレで強く地面を叩くと、1番近い標的であるコンパへと跳びかかった。

 その様子を目撃し、ネプテューヌは必死になって2人へと手を伸ばす。

 

「っ、魔か……っ、でもっ!?」

 

 ネプテューヌの悲痛な叫びを聞き、ようやく事態を把握したアイエフは強引に体を反転させて状況を確認した。

 アイエフは手が届かないのならと思い、得意の魔法を唱えようとするのだが、2人とサンドウォームの距離が近いこと――そして何より、自分が1番遠い位置にいることに気付き、瞬時に間に合わないと思ってしまう。

 それでも2人を助けようと、何も考えずに走り出していた。

 

(わたし、食べられちゃうんですか……?)

 

 段々と大きくなってくる地響き、自分に向かって悲痛な顔で手を伸ばすネプテューヌ、その奥には悔しそうに顔を歪めてこっちに戻ってこようとするアイエフの姿を見ても、コンパはどこか他人事のように感じていた。

 音も次第に聞こえなくなっていき、近づいてくる2人の動きもゆっくりに見えてくる。

 

(これが走馬灯、なんでしょうか? でも、そうだとしたら、わたし最後までダメダメだったですぅ……)

 

 ぼやけてゆく視界の理由が涙のせいだと気付かぬまま、コンパは今までのことを思い出していた。

 最初に魔窟に落ちた時、夢人とネプテューヌに助けられたこと。

 3人で仲良く話をしたこと。

 自分の作ったプリンを美味しそうに目をキラキラさせて食べるネプテューヌと、それを呆れた様子で眺めていた夢人の隣でニコニコと見守っていた自分の姿。

 会って間もない夢人とネプテューヌとの楽しい思い出が、コンパの頭に溢れていたのだ。

 さらに記憶は遡って行き、コンパは看護師になるために上京して必死に勉強を繰り返していた日々を思い出す。

 

(……皆に迷惑ばかりかけて……看護師にもなれなくて……っ! でも、わたしは……っ!)

 

 悲しさで胸が締め付けられるような痛みを覚えたコンパは、無意識に手を伸ばしてくるネプテューヌへと自分も手を伸ばした。

 皆に迷惑をかけたままでいたくない、看護師になる夢を諦めたくないと言う強い思いがコンパを突き動かす。

 しかし、ネプテューヌがコンパの手を取るには遠すぎた。

 ネプテューヌとアイエフが助けに入るよりも、大きな口をさらに広げてコンパを飲み込もうとするサンドウォームの方が先に目的を達成してしまう。

 それでも諦めず、ネプテューヌは必死に前傾の姿勢で倒れそうになりながらもコンパへと手を伸ばす。

 だが、奇跡は起こらず、サンドウォームがコンパを飲み込もうとした瞬間……

 

「悪いな、コンパ」

 

 ――気付いた時、コンパの視界は上下逆さまになっていた。

 すぐにはどんな状態なのかわからなかったが、コンパは自分の体が前転するように地面を転がっていることに気付くと、頭の中が真っ白になってしまう。

 確かにサンドウォームに食べられたくないと、必死に生きたいと願っていたコンパであったが、自分から逃げようと行動を起こしてはいない。

 誰よりもコンパがそれを理解していたため、混乱してしまったのだ。

 

「ねぷっ!?」

 

「きゃあっ!? イタタタ………………えっ?」

 

 ゴロゴロとコンパの見る景色が回転していたが、ネプテューヌにぶつかることで、ようやく止まることができた。

 ぶつかったネプテューヌを巻き込んで、仰向けに倒れたコンパは遅れてやってきた痛みと体が回っていたことの気持ち悪さに眩暈を覚える。

 チカチカと光が明滅する視界が正常に戻ると、何が起こったのかを確認するために薄く目を開ける。

 

 ――だが、その瞳はすぐに見開かれてしまう。

 そして、気付いてしまった。

 倒れていても繋がっていたはずの手の温もりがなくなっていたことを。

 さらに、見てしまったのだ。

 サンドウォームの影に覆われて薄暗くて見えづらいが、安心したように笑みを浮かべる夢人の顔が、体が……

 

「ゴオオオオオオオオオオオッ!!」

 

 ――サンドウォームの口に飲み込まれていくのを。

 

 

*     *     *

 

 

「ゆっくんさあああああああああん!?」

 

 ゆっくんの名前を叫ぶコンパの悲鳴を聞き、わたしはガバッと体を起こす。

 だけど、見えたのはわたし達を追いかけてきたサンドウォームが砂塵を巻き上げながら地面へと潜っていく姿とそれに向かって涙を流しながら手を伸ばすコンパだけ。

 ゆっくんの姿はどこにもない。

 

「えっぐっ……ゆっくん、さん……」

 

 傍で泣きじゃくるコンパの姿に、わたしは呆然としてしまう。

 

 ……どうして泣いてるの?

 ……だって、コンパ助かってるじゃん。

 ……だから、後は多分そこら辺に転がっているゆっくんを助けて、皆でコンパの部屋に戻ろうよ。

 今回のクエストで貰う報酬をちょっとだけ使って、あいちゃんも一緒にプリンを食べようって……

 

「しっかりしなさい!!」

 

「っ、あい、ちゃん……?」

 

 両肩を思いっきり掴まれて強引に振り返させられると、そこには目尻に涙を浮かべているあいちゃんがわたしを睨むように見つめていた。

 何であいちゃんがそんなことをしたのかも、泣いているのかもわからないわたしは目をパチクリとさせて軽く驚いてしまう。

 

「いつまでも呆けてるんじゃないわよ!! 早くアイツを助けるためにサンドウォームを倒すわよ!!」

 

 ……アイツ? もしかして、ゆっくんのこと?

 助けるってことは、やっぱりゆっくんは……

 

 突き放すようにあいちゃんに押されたわたしは踏ん張りきれず尻餅をついてしまう。

 そんなわたしのことをあいちゃんは歯を食いしばって悔しそうに見つめると、すぐに砂塵が巻き起こっている場所に向かって駆け出す。

 すると、サイズの合ってない青いコートから出しているあいちゃんの手のひらに赤やオレンジ色の何かが集まっていく。

 

「魔界粧・轟炎!!」

 

 ――瞬間、薄暗かった洞窟が明るく照らされる。

 あいちゃんが砂塵の巻き起こっていた場所目掛けて横薙ぎに腕を振るうと、その地点から火柱が発生したのだ。

 

「ゴオオオオオオオオオオオッ!? ……ゴオ……オ……」

 

 わたしとコンパが急に立ち上った火柱に驚いていると、サンドウォームの低いうめき声が聞こえてきた。

 地響きと共に炎の中にサンドウォームの影が浮かび上がってきた。

 やがって、炎が消えて洞窟が元の薄暗さを取り戻すと、体中に火傷を負ったサンドウォームが力なくわたし達の目の前に横たわる。

 それを確認したあいちゃんは額を拭うと、安心したように息を吐く。

 

「ふぅ、なんとか間に合ったわね。さすがに地面の中に逃げられたら手遅れになるところだったわ。ほら、アンタ達もボーっとしてないで、さっさとサンドウォームにトドメを刺すわよ」

 

「え、え、どう言うことなんですか?」

 

 ジト目でわたし達を見ているあいちゃんが投げかけた言葉の意味がわからず、コンパは困惑しているみたい。

 それは、わたしも同じ。

 どうしてそんなことをするのかがわからない。

 意味がわかっていないわたし達の様子に、あいちゃんはため息をついてしまう。

 

「はあ、アンタ達も倒したモンスターがどうなるのかくらいわかるでしょ?」

 

「え、えっと、ぽわーって光になって消えちゃうよね?」

 

「そう。理由はわからないけど、モンスターは倒すと体が光になって消えてしまうわ。だけど、消えるのはあくまでモンスターの体だけで、その体内にあるものは残るのよ」

 

「っ、だったら、ゆっくんさんも!?」

 

「ええ、丸のみだったのは本当に運がよかったわ。多少怪我はしているでしょうけど、間違いなく無事よ」

 

 柔らかく笑みを浮かべるあいちゃんの言葉に、コンパの表情がパッと明るくなる。

 

 ……うん、ようやく状況が理解できた。

 きっとコンパを助けるために、ゆっくんはサンドウォームに食べられちゃったんだ。

 そのせいでコンパは泣きじゃくっていて、あいちゃんも焦っていたんだね。

 そんでもって、あいちゃんがサンドウォームを逃がさないように魔法、でいいのかな? ……とにかく、サンドウォームを燃やして気絶させることに成功。

 でも、まだ光になって消えないから、飲み込まれたゆっくんを助けるためにサンドウォームにトドメを今から刺す。

 まとめてみると、こんな感じなんだと思う。

 

「ねぷねぷ! ゆっくんさんが無事で……ねぷねぷ?」

 

「……あっ、ごめん。ちょっと考え事してた」

 

 喜びを分かち合おうとしたんだと思うコンパの笑顔が、わたしを見るとすぐにきょとんとした表情に変わってしまった。

 ちょっと目を離した隙に押し寄せた急展開を処理できずにいた。

 実際、わたしが最後に見たのは何故か転がってくるコンパ。

 ぶつかるって思って目を閉じて、コンパの悲鳴が聞こえるまでずっとそのままだったんだよね。

 そしたら、いつの間にかゆっくんがサンドウォームに食べられてて、コンパが泣いてたり、あいちゃんが涙目で焦って……

 

「ほーら、2人していつまでのんびりしてんのよ。いくら無事だって言っても、サンドウォームの体液で溶かされちゃうかもしれないのよ?」

 

「っ、それは大変です!? 早く助けるです!? ほら、ねぷねぷも立ってくださいです!?」

 

「う、うん……っ、よしっ!」

 

 あいちゃんに急かされて、コンパは慌てて立ち上がるとわたしに手を差し出してくれた。

 まだ混乱していたわたしだけど、コンパの手を握って立ち上がると、気合を入れ直すために思いっきり両の頬を叩いた。

 

「それじゃ、ゆっくんが美味しい養分にされちゃう前にサンドウォームを倒しちゃおう!」

 

「はいです!」

 

 にこっと笑って言うと、コンパも元気よく返してくれる。

 いつまでもフリーズしているなんて、わたしらしくないもんね。

 考えるな、感じろ! って感じで行動しなくっちゃ。

 そんなわけで、わたしはサンドウォームにトドメを刺すために木刀を握りしめて駆けだそうと……

 

「待て!!」

 

「ねぷっ!?」

 

 ――して、後ろから聞こえてきた待ったの声に驚き、前のめりに倒れそうになってしまう。

 おっとっとと片足でジャンプしながらバランスを取ることで倒れることは防げたけど、本当に危なかったなあ。

 わたしは呼び止めた相手に文句を言ってやろうと振りかえる。

 

「ハア……ハア……まさか……ハア……生きているとは……ハア……思わなかったぞ……ハア……」

 

「……えっと、大丈夫?」

 

 そこにいたのは、思わず心配になってしまうくらいに疲労困憊の状態で立っている女の人だった。

 苦しそうに肩で息をしながらわたしのことを睨んでくるんだけど、正直全然怖くない。

 

 ってか、この人誰?

 いつからいたの?

 それによく見てみると、何だか魔女のコスプレっぽい格好しているし、濃すぎる化粧がフェイスペイントに思えてくるよ。

 

「だが……ハア……残念……ハア……だったな……ハア……せっかく……ハア……生きながらえた……ハア……命も……ハア……今日が……」

 

「あのさ、無理しない方がいいと思うよ。化粧が濃すぎてよくわからないけど、見た感じわたし達みたいに若くないんだからさ。そうだ、コンパはあの人を介抱してあげててよ」

 

「任せてくださいです。まずは1度ゆっくり大きく息を吐いてから……」

 

「待って、2人とも」

 

 関わりたくない気もするけど、見過ごすわけにもいかないので、わたしはコンパに女の人の介抱を頼んでゆっくんを助けようとした。

 コンパも快く了承してくれたわけだし、これで後はサンドウォームを倒すだけ……ってところで、何故かあいちゃんがコンパと女の人の間に割り込んできた。

 と言うより、あいちゃんは何でそんなに女の人を睨んでいるのかな?

 

「アンタ、どう言うつもりなの? アイツがサンドウォームに飲み込まれた原因を作ったのはアンタなんでしょ」

 

「なんですと!? 本当なの、コンパ!?」

 

「え、えっと……あの人がわたしの肩を引っ張ったせいで転んじゃったのは事実です」

 

 女の人のことを糾弾するように言うあいちゃんにわたしは驚き、慌ててコンパの方を向いてしまった。

 確認するように尋ねると、コンパは戸惑いながらもあいちゃんの言葉を肯定する。

 もう有罪確定じゃん!?

 ゆっくんがサンドウォームに食べられたのは目の前の女の人……もういいや、オバサンのせいだったの!?

 

「アンタがサンドウォームから逃げる途中で会ったのは、私達の不運で納得してあげる。だけど、1人だけ助かろうとして、この子が逃げるのを邪魔したことについては許すつもりないわ。そのくせ、1人が犠牲になっているって言うのに私達の邪魔をしようだなんて……」

 

「そーだそーだ! モンスターのトレイン行為だけでもマナー違反だって言うのに、妨害までしてただなんて本当何様のつもりなの! もういい年したオバサンなんだから、やっていいことと悪いことの区別くらいちゃんとつけてよ!」

 

「あーもう!! アンタはうるさいわよ!! ちょっと静かにしてなさい!!」

 

「ねぷっ!?」

 

 静かに怒りをオバサンにぶつけながら問い詰めるあいちゃんにわたしも便乗した。

 でも、それがお気に召さなかったようで、あいちゃんはわたしの方を振り向くと思いっきり頭を叩いてきた。

 容赦なく頭頂部に振り下ろされたゲンコツは予想以上に痛かったせいで、思わず涙が浮かび上がってくる。

 

「もー、何でわたしがグーで叩かれなきゃいけないの?」

 

「いいから、アンタは黙ってて!! アンタが口を開くと、まとまる話もまとまらなくなるのよ!!」

 

「酷い!? そんなことないよね、コンパ!?」

 

「ねぷねぷ、今は大人しくしているですよ?」

 

「コンパまで!?」

 

 両手で叩かれた箇所を押さえながら恨むように睨んでいると、あいちゃんはさらに声を荒げてしまう。

 コンパまで、まるでわたしのことをやんちゃな子どもに注意するみたいに言わないでよ!?

 あいちゃんに叩かれた頭だけじゃなく、心まで大ダメージだよ!?

 心身ともにズタボロになっちゃうよ!?

 

「それで、さっさと答えなさいよ。アンタはいったいどう言うつもりで……」

 

「クッ、クックック、アーッハッハッハッハッ!!」

 

「っ、何よ、急に笑い出して?」

 

 傷ついているわたしのことなんてお構いなしに、あいちゃんがまた尋ねると、オバサンはいきなり笑いだした。

 急に笑いだしたオバサンに驚き、あいちゃんは思わず1歩下がってしまう。

 

 と言うより、あいちゃんじゃなくても誰だって驚くよね。

 わたしもオバサンが急に高笑いをしだしたのを見て、頭がおかしくなっちゃったのかと思って怖くなったもん。

 変な薬とかやってないよね?

 もしかして頭にヤのつく職業の人じゃないよね?

 白い粉とか隠し持ってたりしないよね?

 

「アーッハッハッハッハッ――ゲホッ、ゲホッ!? おめでたい奴ら……ゴホッ……だな。全て私の計画通りだったのさ。貴様らはまんまと罠に嵌ったと言うわけだ」

 

「いや、それは嘘でしょ。だって、アンタもサンドウォームから本気で逃げてたじゃない」

 

「後、むせてたけど大丈夫? 年なんだから、あんな喉を痛めそうな笑い声を上げるのはやめた方がいいと思うよ」

 

「ええい、黙れ!! そんな減らず口を叩いていられるのも今のうちだ!!」

 

 無理して声を張り上げたせいでむせたオバサンがドヤ顔で何を言っても信じられないよね。

 あいちゃんも同じ気持ちだったみたいで、垂直に立てた手のひらをパタパタと振りながら否定している。

 わたしもせっかく忠告してあげたのに、何故かオバサンはキレだして1枚のCDみたいなディスクを取り出す。

 

「いけ、ガーディアン!! 奴らを血祭りに上げろ!!」

 

『っ!?』

 

 オバサンが叫びながらCDをわたし達に向けると、急に目を覆ってしまう程の閃光が発生した。

 

 どうなってるの!?

 眩しくて何も見えないよ!?

 わたし達は畑を荒らすカラスじゃないのに、どうしてCDなんかで怯んじゃってるの!?

 

 驚いて硬直しているわたし達だけど、閃光は思いのほかすぐに収まり、視界も段々と正常に戻ってくる。

 ――だけど、薄く目を開けた瞬間、わたしの目に飛び込んできたのはオバサンの姿じゃなくて……

 

「キシャアアアアアアアア!!」

 

 蜘蛛のような足をして大きな剣を持ったモンスター……ぶっちゃけ、わたし達が初めてここに来た時にサンドウォームと戦ってたモンスターがいた。

 って、どうしてここにいるの!?

 ピカーって光ったと思ったら出てくるなんて――ハッ、まさかこのモンスターって忍者なんじゃ!?

 

「モンスター!? しかも、今あのディスクから出たって言うの!?」

 

「これから死ぬ貴様らには関係ないことだ。さあ、やれ!!」

 

「キシャアアアアアアアア!!」

 

 驚愕するあいちゃんの叫びに、オバサンは気をよくしたみたいでにやりと笑うとモンスターに指示を出した。

 モンスターもやる気満々ですって言った感じで、わたし達を威嚇するように雄叫びをあげる。

 

 ってか、このモンスターわたしのことをすごく睨んでるんですけど!?

 そりゃ、その胸にある×印をつけたのはわたしだよ!?

 でも、それはコンパのことを襲おうとしたモンスターが悪いわけで、わたしが悪いわけじゃないよね!?

 これが逆恨みって奴なの!?

 それとも、モンスターのお礼参りってこと!?

 どっちにしろ、ノーセンキューでお帰りしてもらいたいんだけど!?

 

「あわわわわ!? ど、どうすれば……って、そうです! ねぷねぷ、『変身』すればいいんですよ!」

 

「おおう、そうだった!」

 

 モンスターに怯えていたコンパだったけど、思い出したように顔を明るくさせてわたしにこの状況の解決策を授けてくれた。

 

 ふっふっふっ、そうだったね。

 1度は倒したモンスター、また『変身』してちゃちゃっと片付けちゃえばいいんだよ。

 そんでもって、速攻でゆっくんも助けてオールオッケーってわけ。

 

「それじゃ、コンパのリクエストにお応えして――刮目せよ!!」

 

 あいちゃんとオバサンには、初めて見せるサービスシーンなんだから特別サービスしちゃうよ! って感じでわたしは大胆に宣言した。

 今からナイスバディなわたしになって、モンスターなんてミジンコみたいに小さくなるまで切り刻んじゃうもんね。

 ほらほら、今からスポットライトで照らされたみたいにわたしの体が……って、あれ? 全然光らないんだけど?

 

「ねぷねぷ?」

 

「アンタ、急になに言ってるの?」

 

「ちょっ、ちょっと待って!? もう1度――って、あれ?」

 

 不思議そうに首を傾げるコンパと、本気で心配そうな目で見てくるあいちゃんの姿に焦りを感じ、わたしはもう1度『変身』するために集中しようとした。

 ――そこで、わたしは重大なことに気付いてしまう。

 

「ねえ、あのさコンパ」

 

「どうしたんですか?」

 

「えっとね、大変申し上げにくいと言いますか、1つお尋ねしてもよろしいでしょうか? ――『変身』ってどうすればいいんだっけ?」

 

 ――『変身』する方法がわからないや。




と言う訳で、今回はここまで!
うーん、どうしてこう予定通りにいかないものか。
とりあえず、この章の本編に1話プラスします。
ちょうど3連休ですし、執筆する時間は取れるはず……アレ、前にもこんなフラグを踏んだことがある気が?
それでは、 次回 「勇気をこの手に」 をお楽しみに!
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