超次次元ゲイムネプテューヌ Re;夢のヒーローを目指して 作:ホタチ丸
今回でようやく本当の意味で第2章が終わります。
夢人君がいなくなった後、超次元で何が起こったのか。
それでは、 候補生便り(ラム編) はじまります
うげっ、何でアンタがこんなところにいるのよ!?
……はあ? 監督?
誰よ!? こんな変態を監督にした奴は!?
……って、そこで体をくねらせないでよ!?
この変態っ!? って、あああああ!? 鼻息を荒くして近づかないでよ!?
――ぐすっ、もうやだ。
せっかく久しぶりだから頑張ろうって思っていたのに、どうして変態なんかの指示に従わなくちゃいけないのよぉ……
ううぅ、ロムちゃん……お姉ちゃん……夢人……助けてよぉ……
……へ? 別に監督の指示に従わなくてもいい?
でも、さっき変態が――そう、そう言うことだったのね。
ふ、ふふふ、よくもわたしに変なことさせようとしたわね。
――後でお姉ちゃんとミナちゃんに言いつけてやるんだから!
わたしが直接お仕置きしても意味がなさそうだし、その方がいいよね?
……そんな風に謝ったってもう許してあげないんだから!
アッカンベー、だ!
と言うことで、気を取り直して自己紹介から始めるわよ。
はーい! 第2回候補生便りは、ルウィーの双子の女神候補生ロムちゃんラムちゃんのわたし、ラムちゃんでお送りしまーす!
今回はラステイションのリビートリゾートで夢人が消えちゃった後のお話。
ネプギア達に呼ばれてわたし達――ロムちゃんやお姉ちゃん、それに日本一やがすと達犯罪組織と一緒に戦った皆も集まってギョウカイ墓場にいるマジェコンヌさんの所に集まったんだ。
そんな感じで、ちょっと前振りが長くなっちゃったけど始めていくわね。
それじゃ、候補生便り ラム編 はっじまりー!
* * *
「――あの男は問題しか起こせんのか、まったく」
ギョウカイ墓場にそびえる黒い塔、エヴァが管制人格を務めているそこにネプギア達から“夢人が消えてしまった”と聞いたわたし達は集められた。
そして、ユニちゃんやナナハちゃんに補足してもらいながら、ネプギアが全ての事情をわたし達に話してくれた。
すると、1番最初にマジェコンヌさんが額を押さえながら呆れを滲ませる声でつぶやく。
「フィーナに誘拐された時も思ったが、奴はもっと危機感を持つべきだろう。しかも、今回は突然現れた穴に吸い込まれて消えてしまっただと? まったく、本当に面倒なことばかり起こす奴だ」
〔まあまあ、そこまでにしておきましょう。とにかく、ネプギアさん達の話をまとめると――ネプギアさんに振られたと勘違いした夢人さんが女装したまま何処かへと消えてしまった、と言うわけですね〕
「……そう言われると、夢人が女装していたことの方が問題のような気がするのは私だけかしら?」
状況を簡潔にまとめたエヴァの言葉に、ノワールさんが微妙に納得のいかなそうな顔でツッコミを入れた。
だけど、わたし達はそれに対して何も言えない。
多分、皆も同じことを思ってるから。
……大体ネプギアに振られたからって、どうして女装するって発想になるのよ!?
そもそもの原因は勘違いさせたネプギアのせいなのかもしれないけど、夢人も頭がおかしいんじゃないの!?
2人は両思いのくせに、どうしてそうやってお互いの気持ちに気付かないで擦れ違ってばかりいるのよ!?
「ま、まあ、そのことは置いておきまして――実際、夢人さんの行方は分かりませんの?」
「……は、はい。夢人さんを吸い込んだ穴もすぐに消えちゃって、本当にどこに行ったのか――」
「――それなら心当たりがある」
ノワールさんの一言によって悪くなってしまった空気を変えようと、ベールさんが困ったように頬に手を添えながらも真剣な目でネプギアへと尋ねた。
しかし、結果は俯いていたネプギアの顔をさらに沈ませるだけ……って思った時、いきなりレイヴィスが口を開いて割り込んだ。
「夢人はおそらく“神次元”と呼ばれる、この世界とは違うゲイムギョウ界に行ってしまったんだと思う」
「“神次元”って、アンタがこの前夢人に話していた話よね?」
「ああ。この世界のオリジナルと言える『超次元ゲイムネプテューヌmk2』の続編になる『神次元ゲイムネプテューヌV』の舞台、それこそが“神次元”だ」
眉をひそめながらアイエフさんが確認するように尋ねると、レイヴィスは頷いてわたし達にも簡単にわかるように説明してくれた。
え、えっと……確かレイヴィスは前世の記憶がある『転生者』で、元の世界でゲームとしてわたし達のことを知っていたのよね?
それで、いろいろとわたし達の知らない起こるかもしれない未来のことを知ってる。
だけど、その未来はあくまでオリジナルに沿った未来であって、夢人やアカリ、レイヴィスにナナハちゃんとフェルがいるわたし達の世界でそのまま起こるわけじゃないのよね。
実際、そのせいでレイヴィスは苦しんで、わたし達のゲイムギョウ界を破壊しようとしたり、夢人に自分のことを殺してもらおうとした時もあった。
でも、今はそんなことを思ってないみたい。
ゲイムギョウ界中をあちこち旅してまわってるみたいなことを聞いたし、何かやりたいことでも見つけたんじゃないかな?
っとと、そうじゃなかった。
レイヴィスの話だと、夢人はその“神次元”って所に跳ばされちゃったみたい。
だけど、ここでレイヴィスがそう断言しないのは、きっとわたし達の世界が知識として知っているオリジナルと違う未来になってるからだと思う。
「でも、それっておかしくないかしら? アンタの話だと、確かその『神次元ゲイムネプテューヌV』が始まるのはプラネテューヌで反女神運動とか何とかが起こった後、って話じゃない。あれから諜報部で調べてみたけど、そういう活動をしている人物はいなかったわよ?」
「……そこなんだ。全部が全部、俺の知っている通りに動くわけじゃないってことは分かっていたんだが、誰がどうやって夢人を“神次元”に送ったのかが分からないんだ。俺の知っている知識通りなら、反女神活動をしている人物が“神次元”側の自分から力を貰ってネプテューヌをこの次元から消してしまう――と言う始まり方なんだが……」
「ねぷっ!? わたしが関係しているの!?」
アイエフさんとレイヴィスが2人にしか分からないことを言っていると、急に揃ってネプテューヌさんへと顔を向けた。
自分のことが話題にあげられたネプテューヌさんは、軽く目を見開いて自分の顔を指さした。
話の流れ的に、多分“神次元”にはネプテューヌさんも跳ばされるはずだったんじゃないかな?
でも、実際は夢人しか行ってなくて――しかも、どうやって“神次元”に行ったのかもわからない。
レイヴィスの知っているネプテューヌさんを“神次元”に跳ばす人の仕業じゃないってことは、夢人が消えた時にその場にいたネプギアが証明している。
だから、誰が何の目的で夢人を“神次元”に跳ばしたのかが分からなくて――――って、あーもう!! わかんないことが多すぎて、わたしの方がわけわかんなくなっちゃうよ!!
誰が何の目的とか、そんなのどうでもいいじゃん!!
わたし達が気になってるのは……
「とにかく、夢人は無事なの!? “神次元”ってところは、今の夢人が行っても平気な所なの!?」
そう、1番大事なのは夢人が無事なのかどうかでしょ。
正直、“神次元”だとか誰かの陰謀だとかもわたしは興味ない。
夢人が消えたって聞いたから、慌ててギョウカイ墓場まで来たんだ。
それなのに、いつまでも答えの出ないことを話しあってることに意味なんてないわよ!!
「そうね。今の彼は戦う手段を持たない普通の人間……ネプテューヌが跳ばされるくらいだし、“神次元”ってところも危険がありそうな気がするわ」
「ちょっとブラン? 何でわたしを引き合いに出したの? わたしが跳ばされるから危険ってイコールじゃ結ばれない気がするんだけど?」
「率先して問題の中心になりそうな奴がなに言ってんのよ」
「同感ですわ。ネプテューヌの場合、敢えて自分から地雷を踏み抜いていくタイプですもの。“神次元”も相当に厄介なことがありそうな気がしますわね」
「皆から見たわたしのイメージ酷くない!?」
何だかまたいつも通りのお姉ちゃん達の漫才で話題がそれちゃいそうだったけど、レイヴィスは気にした様子もなく眉間にしわを寄せたまま重々しい声を発する。
「無事、とは言えないだろうな。“神次元”にもこの世界同様にモンスターが溢れている。運よく俺の知っている知識通りにあちらのプラネテューヌの女神に会えているとも限らないし……」
「そんな!? 夢人さんは今でもスライヌに勝てないんですよ!? 1人でいる時にスライヌに襲われたら……」
“神次元”の話を聞いたコンパさんの悲痛な声にわたしは最悪な事態を想像してしまった。
……女装した夢人がスライヌの体液塗れで倒れている姿を。
ってか、すごく気持ち悪いわよ!?
ただでさえ夢人が女装しているだけでも嫌なのに、どうしてそこにスライヌまで追加されなきゃいけないの!?
コンパさんもそんなことを想像させないでよ!?
夢人のことを知っているから、余計リアルに想像出来ちゃったじゃない!?
「と、とにかく、夢人がいろいろな意味で危険なのはわかったわ。それで、結局私達にできることはあるのかしら?」
「皆で夢人君を探しに行くとか、こっちに連れ戻すことってできないの?」
頬を引きつらせながらも話の軌道修正をしようと、ケイブさんと5pb.ちゃんがレイヴィスにわたし達に何ができるのかを聞いた。
……うん、そうだよね。
いつまでも変なことを考えてないで、わたし達ができることを考えた方がいいもんね!
コンパさんが言った地獄絵図を現実のものにしないためにも!!
「すまない。偉そうに言ってるが、俺にもどうすればいいのかわからないんだ」
「そうなの? 夢人が“神次元”に跳ばされたんだったら、アタシ達も同じように行く方法があるんじゃないの?」
「行く方法がないわけじゃないんだが、今の“神次元”がどこにあるのかもわからない状態じゃ無理だな。せめて、夢人が“神次元”側のプラネテューヌに保護されていることを祈るしかできない。そうすれば、こっちに連絡が来るはずだし、俺達もどうにかすることができるはずなんだが」
「うーん、それじゃ今のあたし達じゃ何もできないってことだね」
申し訳なさそうに話すレイヴィスに日本一が食い下がったけど、答えは変わらなかった。
場所が分からないんじゃ、ワンダーも使えないのよね。
フィーナに連れ去られた時はギョウカイ墓場だったからすぐに場所が分かって助けに行けたけど、今の“神次元”の場所が分からない状態だとワープするみたいに次元を移動できない。
確か、出口が分からないとワンダーの移動法が使えないって言ってたから、わたしの考えは間違ってないと思う。
でも、それじゃファルコムの言う通り、わたし達は夢人から連絡があるまで何もできないって言うの?
夢人がいる場所が分かっているのに助けられないなんて……
「――奴を呼び戻すだけなら簡単にできるぞ」
『……へっ?』
「っ、ほ、本当ですか!?」
途方に暮れていると、マジェコンヌさんが頬づえをついて呆れながらわたし達が1番欲しい答えを口にした。
どうすることもできないと思っていたわたし達は一瞬何を言われたのかわからずに呆けてしまう。
ただ、夢人のことを1番に気にかけていたネプギアだけはすぐにマジェコンヌさんへと問い返すことができた。
すると、マジェコンヌさんはため息をつきながらわたし達にもわかるように説明してくれる。
「はあ、本当だ。奴をこの次元に連れ戻すだけならアカリが呼び戻せばすぐに済む。そもそもあのブレスレットがなくならない限り、アカリは奴がどんな場所に居ても探し出すことも呼び出すことも可能だ」
「ブレスレットって、夢人の右手首に巻かれていた紫色の水晶がついていた奴ですよね?」
「ああ、その通りだ。あの水晶の1つ1つにはシェアエナジーが大量に内包されている。だからこそ、今の奴はアカリが体内にいなくても『歪み』になることなくゲイムギョウ界に居続けることができているんだ」
「つまり、ブレスレットの水晶に入ってるシェアエナジーの波長をアカリが感知することで、夢人の居場所を特定することができるってことですの?」
「そうだ。その“神次元”だとか、何だかよくわからないところにいたとしても、ブレスレットに内包されているシェアエナジーがなくならない限り、アカリと奴は繋がっている。現に貴様らは1度奴が元いた世界に戻ってから帰って来たことを知っているだろう」
へぇー、あのブレスレットってそんなことができるんだ。
わたしも犯罪組織との戦いが終わった後、夢人が1度元いた世界に戻って消えちゃった時にその場にいたからよく覚えてる。
確かにユニちゃんの言う通り、夢人の右手首に数は忘れたけど紫色の水晶が連なってるブレスレットがあった。
あの中にシェアエナジーがあって、それがなくならない限り夢人はわたし達の所に戻って来れる――うん、がすととマジェコンヌさんのやり取りを簡単にまとめるとこんな感じだよね。
てことは、アカリが夢人を呼べばすぐに解決するんだ。
……本当によかった。
夢人にちゃんとまた会えるんだ。
わたし達が安堵の息をついていると、マジェコンヌさんは疲れたように肩を落とす。
すると、うんざりしているようで前髪を掻き上げて目を閉じたまま口を開く。
「やれやれ、たかがこれだけのことで大騒ぎしおってからに」
〔はいはい、ぼやくのは後にしましょう――では、早速アカリさんには夢人さんを呼び戻してもらいましょう〕
「そうだな。正直その“神次元”側のことも気になるが、今の夢人を放置しておく方が危ない。とりあえず、諸々の疑問や問題は夢人を無事にこちらに呼び戻してからだな」
エヴァがマジェコンヌさんを宥めつつ、すぐに夢人のことを呼び戻そうと提案した。
これには誰も反対意見を出すことなく、ブレイブの言葉に皆が頷いてアカリの方へと視線を向けた。
……あ、でも、レイヴィスだけはちょっと難しい顔している。
そんなに“神次元”って所のことが気になるのかな?
まあ、何も言ってこないってことは夢人を呼び戻すことを優先してもいいと思っているからだろうけど。
「うにゅ? パパをよべばいいの?」
「うん、お願いアカリちゃん。夢人さんを“神次元”からここに呼び戻して!」
「わかった! ――うにゅにゅにゅにゅにゅっ!」
注目を浴びて不思議そうに首を傾げていたアカリだったけど、ネプギアが両手を組んで頼み込むと、ポンと胸を叩いて集中し始めた。
ギュッと瞳を閉じたまま両腕をグッと引き寄せて体を振るわせ始める。
体全体で、力を溜めてますってポーズをとってるみたい。
やがて、アカリの髪先に淡い光が灯り始める。
淡い紫色の髪が、『変身』したネプギアみたいに明るいピンク色へと変化していく。
それに合わせて、アカリの体全体が光の膜みたいなものに覆われる。
「うにゅにゅにゅにゅにゅ――」
「ふぅ、一時はどうなるかと思ったけど、これでゆっくんも無事に……」
「――うにゅ? あれ、パパよべない?」
「……へっ?」
次第に光が集まって行く光景に、ネプテューヌさんがわたし達の気持ちを代弁するかのように笑みを浮かべていたのだが、ふいにアカリが漏らした声に表情を凍らせてしまった。
それはわたし達も同じで、アカリが言ったことが信じられなかった。
だけど、集まっていた光は霧散してしまい、呼び戻せるはずだった夢人の姿はどこにもなかった。
「ちょっ、ネプテューヌ!? あなた、なにアカリの集中を乱しているのよ!?」
「え、えええ!? わたしのせいなの!?」
「他に考えられないじゃない!? 皆静かにしてたのに、あなただけ勝手に喋りだして……」
「そこまで。2人で勝手に言い合っていても何も解決しないわ」
「そうですわね。アカリちゃん、夢人さんを呼べないと言うのはどう言うことなんですの?」
また勃発しそうになるネプテューヌさんとノワールさんの漫才をブランさんが仲裁した。
その間にベールさんがアカリに視線を合わせて、どうして急に力を使うのをやめたのかを尋ねた。
すると、アカリは眉をひそめながら首を傾げてしまう。
「えっと、パパがいるのはわかるのに、こっちによべないの。いるのによべなくて……うにゅう?」
「……とりあえず、夢人がいる場所はわかったのに、こっちに呼び戻せなかったってことでいいのかな?」
「うにゅっ!」
アカリ自身もよくわかっていなかったみたいだったけど、ナナハちゃんが何を言っているのかをまとめて確認すると、はっきりと頷いて見せた。
え、えっと、つまり、夢人がいる“神次元”って場所はわかったけど、何故かこっちに呼び戻せなかったってことよね?
と言っても、それだけじゃわたし達にも何があったのかわからない。
居場所がわかったってことは、ブレスレットのシェアエナジーがなくなっていないってことはわかる。
でも、それなのに夢人を呼び戻せないのはどうしてなのよ?
夢人がどこにいたってアカリなら呼び戻せるんじゃなかったの?
「そんな……いったいどうしたら……」
わからないことばかりで頭の中がこんがらがりそうになっていると、ネプギアが悲しそうに目を伏せてつぶやいた。
縮こまるように合わせた両手を胸に抱きしめる姿を見ていると、わたしの胸にも悲しみが込み上げてくる。
わからないことを考えることで誤魔化してた事実――夢人に会えないかもしれないってことを自覚してしまったんだ。
アカリが呼べないってことは、夢人からの連絡を待つしかないってことでしょ?
だったら、“神次元”に行った夢人が危ないことに巻き込まれてたら……
「……ラムちゃん(ぎゅっ)」
「ロムちゃん……うん、ありがとう」
嫌なことを考えてジワリと涙が浮かんだわたしの手を、隣にいたロムちゃんが握ってくれた。
繋いだ手から少しだけ元気をもらった気がして、わたしは繋いでいない方の手で涙を拭うと自然にお礼を言っていた。
……本当にロムちゃんには頭が上がらない。
ロムちゃんはわたしが弱気になった時、いつもすぐ傍にいて支えてくれる。
本当はロムちゃんも夢人のことが心配なのに、わたしのことを助けてくれたんだ。
ありがとうね、ロムちゃん。
「居場所はわかっても呼べない、か――うん? それなら夢人のいる場所にわたし達を跳ばすことはできないかしら? 場所がわかるなら、ワンダーのように道を作ることもできると思うんだけど」
「う、うにゅう……たぶん」
〔理論上は可能だと思いますね。では、ブランさんの案を試してみましょう――ネプギアさんはアカリさんの力を安定させてあげてください。細かい力の流れは、私がアカリさんに流すシェアエナジーを上手く調整してみますから〕
「は、はい!! よろしくお願いします!! やるよ、アカリちゃん!!」
「うにゅっ!!」
思いついたようにお姉ちゃんが発案した方法を試すため、エヴァの言う通りにネプギアはアカリを抱きしめて力を安定させようとする。
アカリも力強く頷いて、抱きしめているネプギアと同じように再びギュッと目を閉じて集中し始める。
すると、風も吹いていないのにネプギアの髪がふわりと舞い上がる。
2人の足元が明るく光り始め、次第に輝きを増していく。
やがて、さっきみたいに光の膜に覆われたアカリが両手を伸ばす。
――その先に大きな渦のような穴が出来上がった。
〔成功ですね。その先が夢人さんのいる次元に繋がっています。今なら、確実に跳ぶことができます〕
「だったら、私がっ!!」
「待て。この穴がいつ閉じるのかわからんのに、貴様が先に行くわけにはいかんだろう」
「うっ、でも……」
〔なら、まずは私が先に行こう〕
夢人のいる“神次元”まで繋がる道ができると、ネプギアはすぐさま跳び込もうとしたが、後ろからマジックに肩を掴まれて諭されてしまった。
それでも食い下がろうとするネプギアを遮り、ワンダーが穴へとゆっくりと近づく。
〔私が“神次元”の座標を記録すれば、すぐにでも夢人と共にこちらに帰ってくることも可能だ。それに、私のアーマーモードは魔法を使えなくなった夢人の戦う助けになれるはずだ〕
「だったら、俺も行こう。この中で俺はただ1人“神次元”側の事情を知っている人間だ……夢人がいなくなった時点で役に立たなくなったかもしれないが、それでもないよりましだろう」
ワンダーに続いて、レイヴィスも心配そうに眉根を寄せるネプギアを安心させるように笑みを浮かべながら穴の前に出た。
説得されながらも自分が先に行けないことが悔しいと思っているのか、ネプギアは辛そうな顔をしたままだった。
すると、ネプギアの肩に手を置いていたマジックが口元を柔らかく緩める。
「そう心配そうな顔をして、アカリを不安にさせるな――マジェコンヌ様、申し訳ございませんが……」
「いい、好きに動け。ただし、今の貴様は……」
「わかっています。ですが、それでも行って参ります」
マジックは腕を組みながら鋭くアカリの作った穴を見つめていたマジェコンヌさんへと確認を取ると、ネプギアの肩から手を離して横目でチラリとリンダとワレチューへと視線を送る。
「リンダ、ワレチュー、後のことは任せるぞ」
「ですが……いえ、何でもありません! 任せてください、マジック様!」
「だから、ニートと一緒に無事に帰って来てくださいっちゅ!」
「ふっ、当然だ」
2人が敬礼すると、マジックは口角を上げて嬉しそうに鼻を鳴らしながらワンダーとレイヴィスのようにアカリの作った穴の前へと移動する。
でも、何でリンダは一瞬心配そうに顔を歪めたんだろう?
それにマジェコンヌさんも何か言いかけてたし……
〔では、行ってくるぞ。夢人と一緒に必ず無事に帰ってこよう〕
「そうだな。例え“神次元”で何が起ころうとも、俺達は平気だ」
「そう言うことだ――先に行って待ってるぞ」
「っ、はいっ!!」
3人の決意を聞くと、ネプギアはようやく不安そうだった表情を綻ばせることができた。
それに満足したのか、ワンダーはわかんないけど、レイヴィスとマジックは柔らかくほほ笑みながら穴の中へと跳び込んだ行く。
3人は穴の中に入った瞬間、姿が見えなくなってしまった。
「よーっし、マジック達に後れを取るわけにはいかないね。ここはドーンと“神次元”に行って、今度はわたしがゆっくんを助ける番だよ。だから、ネプギアも大船に乗った気で安心……」
〔あ、駄目ですよ。ネプテューヌさん達女神は行っちゃ駄目です〕
「ズコーッ!? どうしてなの!?」
3人に続いて、ネプテューヌさんがにこにこと笑いながら胸を張って穴の中に入ろうとした瞬間、エヴァに止められてしまった。
行く気満々だった所を止められたせいで、ネプテューヌさんは思わずずっこけそうになってしまう。
〔さすがに国を守護する女神が、いつ戻れるかもわからない場所に行くことは許可できません。それに、留守にしている間にこちらの次元で問題が発生しないとも限りませんからね〕
「えー、でも、レイヴィスの話だとわたしは“神次元”に行くみたいだし、今行っても問題ないと思うんだけど?」
「……ネプ子、そう言いながら仕事をサボれるからラッキーとか思ってるんじゃないわよね?」
「ギクッ!? な、何のことかなあ?」
エヴァに駄目だしされたのにも関わらず、それでも“神次元”に行こうとするネプテューヌさんだったけど、アイエフさんがジト目で言い放った言葉に体を大きく震わせた。
そのわざとらしく誤魔化す姿に、わたし達は揃ってため息をついてしまう。
もー、ネプテューヌさんはこんな時に仕事をサボることを考えるなんて……
「ち、違うからね!? わ、わたしもゆっくんのことが心配だし、ついでに“神次元”って未知の世界に行ってみたいとか、溜めちゃった仕事をしなくて済むとか思ってないから!?」
「語るに落ちてるわよ、まったく」
漂う空気を察したネプテューヌさんが慌てて弁明しようとも、ジト目になったノワールさんが両断してしまう。
まあ、ネプテューヌさんも夢人のことを心配しているのはわかるけど、それでもその動機はどうかと思う。
だけども、ネプテューヌさんのおかげで少しだけ気負ってた気持ちが楽になった。
それまで張りつめていた空気が弛緩したと言えばいいのかな?
よくわからないけど、見た限りネプギアも肩から余計な力が抜けて、仕方ないなあって感じでネプテューヌさんを見つめながら柔らかく笑ってる。
……うん、何だか今なら何でも出来そうな気がしてきた。
夢人に会えないかも、って気持ちが吹き飛んでしまったみたい。
よーし、だったら行動あるのみね!
「だったら、わたし達で夢人を助けに行こう、ロムちゃん!」
「うん(ぐっ)」
「ちょっ、ラム!? ロムも何を言い出すの!?」
繋いでいる手をさらにきつく握って笑いかけると、ロムちゃんももう片方の手で握りこぶしを作りながら頷いてくれた。
お姉ちゃんは驚いているみたいだけど、もうわたし達は止まらないもん!!
絶対に夢人を助けに行くんだから!!
「だって、お姉ちゃん達が行けないなら、わたし達で行くしかないでしょ? 心配しないでもダイジョーブ! わたしとロムちゃんの2人が揃ったら、できないことなんて何もないんだから!」
「それに、わたし達も夢人お兄ちゃんのこと助けたい(きりっ)。だから、行ってきます(ぺこり)」
「お姉ちゃんはお土産を期待しててね」
「だから、そうじゃなくて……」
「はいはい、そこまでにしときなさい」
しどろもどろになっているお姉ちゃんをロムちゃんと一緒に説得していると、急にユニちゃんが間に割り込んできた。
ユニちゃんは1度目にかかりそうだった前髪を払うと、腕を組みながらわたし達に言う。
「まったく、あんまりブランさんに迷惑かけるんじゃないわよ。アンタ達は大人しくこっちで待ってなさいって」
「えー……」
「でも……」
「いいから。アンタ達はまだ小さいんだから無理するんじゃないわよ。だから、ここはアタシに……」
「それじゃ、私も行ってくるね」
「そうそう、行って――はあ?」
お説教みたいなことを言いだしたユニちゃんに、ロムちゃん共々不満げに頬を膨らませてしまった。
それでもユニちゃんは意見を変えようとしないで、瞳を閉じて頬を緩めたまま、少しだけ上半身を反らして張った胸に手を添えて何かを言おうとした。
――しかし、それは既にアカリの作った穴の目の前にいたナナハちゃんに遮られてしまう。
ユニちゃんが呆けた声を上げて振りかえると、そこにはにこやかに手を振りながらわたし達を見ているナナハちゃんがいた。
「じゃあ、ネプギア。先に行って待ってるから、必ず追いかけてきなよ。夢人もきっとネプギアが来るのを待ってるからさ」
「うん、ナナハちゃんも先に行って待っててね」
「ふふ、今度は逃げたりしちゃ駄目だからね。それじゃ、行ってきます」
にこやかにネプギアと挨拶を交わし終えると、ナナハちゃんは振り返ることなく穴の中に跳び込んだ。
って、ナナハちゃんに先越されちゃったじゃない!?
もー、ユニちゃんのせいだからね!?
「ちょっ、待ちな……」
「ナナハあああああああ!!」
「って、うわあ!? べ、ベールさん!?」
慌てて呼び止めようとしたユニちゃんの隣から、それよりも大きな声でベールさんがナナハちゃんのことを呼んだ。
でも、ナナハちゃんの姿はもう穴の中に消えちゃっていて、ベールさんの声は届かなかったみたい。
すると、ベールさんはその場で崩れるように倒れてしまい、両手で顔を隠してしまう。
「う、うううぅぅぅ、ナナハぁ……わたくしに一言もなく行くだなんて……お姉ちゃんを置いていかないでぇ……」
「ちょっとベール、そんなこと言っても行っちゃったものは仕方ないでしょ」
「っ、ノワールにはわかりませんの!? 可愛い妹に置いていかれるわたくしの気持ちが!? ただでさえ今のナナハは……」
「あーはいはい、ナナハのことを心配する気持ちはわかるけど、少しは信じてあげなさいよね」
泣き崩れているように見えたベールさんに、ノワールさんが軽く目を見開かせて驚きながらも声をかけた。
そうしたら、ベールさんはガバッと起き上がってノワールさんへと勢いよく詰め寄った。
詰め寄ろうとするベールさんを押さえつつも、ノワールさんは苦笑しながら優しく宥め始める。
……よしよし、今皆はベールさんとノワールさんにばかり注意がいってるわね。
この隙にわたしとロムちゃんもナナハちゃんのように穴に跳びこんじゃえばいいのよ。
しばらくお姉ちゃんやミナちゃんと会えないのは辛いけど、夢人を助けるために我慢してみせる。
さーて、それじゃロムちゃんにこっそりと話しかけて……
「ゲイムギョウ界を守るヒーローとして、助けを求める声は無視できないね。それが大切な仲間のためなら尚更だよ! ネプギア! 夢人のことはアタシに任せといて! ……それに新しい冒険の舞台がアタシを待ってるに違いない! ってなわけで、行ってくるね!」
「まあ、何だかんだで夢人も色々な事件に巻き込まれても無事だったですの。今回も根拠はないですけど、きっと大丈夫ですの……それに、“神次元”にあるお金になる未知なる素材達ががすとを待ってるですの! これは行くしかないですの! お先にですの!」
わたしがロムちゃんに話しかける前に、いつの間にか日本一とがすとが欲望丸出しなことをネプギアに言いながら、穴の中に跳び込んでいった。
って、あああああああ!? また先越されちゃった!?
も、もうこうしちゃいられないわ!?
早くわたし達も夢人の所に行かないと!?
「ならば吾輩も“神次元”とやらに乗り込もうではないか……アククククク、まだ見ぬ幼女達よ、待っておれよ!」
「う、ううむ、貴様を行かせると大変なことになりそうだな。かと言って、小さくなった俺が行ったところで何の役にも立てそうにないな。ジャッジ、貴様はどうする?」
「ふん、くだらんことに付き合う気はない」
変態の発言に、思わず背中に冷たい感触が走った。
絶対に変態を“神次元”に送ったら大変なことになるって思ってしまった。
ブレイブもそう思うんだったら、ちゃんと止めなさいよ!?
ジャッジはジャッジで何だか興味なさそうだし……っと、そう思っているうちに早く行動に移さないと。
お姉ちゃん達に止められる前に早く穴の中に……
――だけどその時、急にロムちゃんと繋いでいた手を叩き落とされてしまった。
「……えっ」
誰がやったのか知らないけど、急な出来事にわたしは大きく目を見開かせて硬直してしまった。
できたのは、同じように驚いた顔をしたロムちゃんの顔を見ることだけ。
……でも、それもすぐにできなくなってしまう。
――だって、ロムちゃんの体が穴に向かって飛んで行ってしまったんだから。
「っ、ラムちゃ――」
「ロムちゃん!?」
ハッとなったロムちゃんが手を伸ばしたけど、わたしは掴むことができなかった。
そのままロムちゃんは止まることなく、真っ直ぐに穴の中に消えてしまう。
「え、どうしてロムさ――っ、きゃあああああ!?」
「っ、5pb.!?」
皆も突然穴の中に吸い込まれるように消えてしまったロムちゃんに呆然としていると、今度は5pb.ちゃんの悲鳴が聞こえてきた。
そっちの方を慌ててみると、5pb.ちゃんはロムちゃんと同じようにケイブさんの目の前で頭から穴に吸い込まれるように飛んで行く。
立て続けに起こった不思議な現象に誰も動けないでいたため、5pb.ちゃんも穴の中に消えてしまう。
いったいどうなってるの!?
ロムちゃんはどうなったの!?
5pb.ちゃんもどうして急に穴に向かって飛んで行ったのよ!?
「っ、うにゅっ!?」
「アカリちゃん!?」
わからないことだらけで混乱していると、今度はアカリの声とネプギアの悲鳴が響いた。
慌てて顔を向けると、そこにはアカリを抱きしめている見知らぬ女の子の姿があった。
――身長はわたしやロムちゃんと同じくらいの赤い髪をツーサイドアップにしている女の子。
遠目から見ても肌がもの凄く白く見える。
目は若干吊り眼気味に目尻が尖っていて、やる気のなさそうな顔をしながらジト目で腕の中でもがいているアカリを見下ろしていた。
すると、女の子はゆっくりと口を開き、異様に伸びているように見える2本の上に生えている前歯をアカリの首筋へと……
「うにゅっ!?」
――躊躇うことなく突き刺してしまった。
まるで絵本やアニメなんかに出てくる吸血鬼みたいに、アカリの首筋に女の子はかじりついている。
だが、女の子はすぐにアカリの首筋から歯を抜き去ると、口の中から血を穴の中へと捨てるように吐き出す。
すると、穴はアカリの血を飲み込むと同時に消滅してしまう。
しかし、異様な事態はそこで終わりにならなかった。
――アカリの体が噛まれた痕から石になっていったのだ。
2つの丸い傷口から血が噴き出す代わりに、肌がコンクリートで固められるかのように灰色に染まっていく。
淡い紫色をした寝癖のような外はねが目立つ髪も、ぷにぷにしてそうな丸みを帯びた指先も、着ている服でさえも石のように固まってしまう。
あまりに一瞬のことだったので、誰も止めることができなかった。
動くことさえできず、アカリがただ石になっていくのを見ていることしかできなかったわたし達の目の前で、女の子はようやく言葉を発する。
「……これ以上、あなた達をあっちに行かせない――絶対にあの人のゲームを邪魔させない」
石像になったアカリを抱いたまま、女の子は睨むようにわたし達を見つめながら静かな声で力強く宣言した。
* * *
夢人を助けるために集まったわたし達の前に現れた謎の女の子。
穴の中に消えたロムちゃん達が無事に夢人の所に行けたのかも不安だけど、わたし達の邪魔をするようにアカリを石にしてしまった女の子のことも気になる。
と言うより、石になったアカリは大丈夫なの!?
簡単に解決しそうだった夢人の消失から、いったい何が始まろうとしているのよ!?
…………
もー、思い返しただけで頭の中がパンクしちゃいそうよ!?
“あの人”とか“ゲーム”とか意味わかんないわよ!?
急に夢人のことを助けに行こうとしたわたし達のことを邪魔するし、なんなのよあの子は!?
……夢人やロムちゃん達、無事だよね?
お願い、無事でいてよ……
と言う訳で、今回はここまで!
超次元側はちょくちょく小分けにして章の終りと同時に1話ずつ公開していきます。
後、明日は番外編の方を更新予定です。
コラボ話も予定より進みが遅くなってますしね。
それでは、 次回 「娘×恋人?×新大陸へ」 をお楽しみに!