超次次元ゲイムネプテューヌ Re;夢のヒーローを目指して 作:ホタチ丸
連続投稿は叶いませんでしたが、めげずに次話を投稿しますよ。
それでは、 逆戻りのニート はじまります
「……本当にこの道で合っているのか?」
「ええ、もちろんよ」
1人の男性が青いバイクを押しながら、隣を歩く女性に尋ねる。
女性に先導される形で明らかに手入れが行き届いていない道に沿ってここまで来たのだが、男性は正直この先に目的の人物が住んでいる建物があるとは思えなかった。
戸惑いを隠せない男性とは違い、女性は涼しげな顔で携帯を弄りながら口を開く。
「まあ、教会で整備するまで人が住めるような環境じゃなかったことは事実よ。でも、この辺は道を外れなければモンスターに遭遇する確率も低いし、何の問題もないわ」
「……低いわけで、絶対じゃないんだな」
「当たり前じゃない。だからこそ、アイツが住むには打って付けの物件だったってことよ」
女性の言葉に男性は頬を引きつらせてしまう。
さすがに男性もそんな風に言われている物件に住むことを余儀なくされた人物のことを憐れに思ったのだが、次に女性が口にした内容を聞いて考えを改める。
2人ともこれから会う人物がどれだけ危ない状況にいるのかを理解していた。
本当ならば、教会で利用していた部屋をそのまま使ってもらったり、プラネテューヌの郊外にあるマンションの一室を新居として新生活を送ってもらいたいと思っていた。
しかし、その人物を取り巻く問題がそれを許してはくれない。
その結果、最終的にプラネテューヌの街から離れた場所で放置されたオンボロアパートに住まわせる他なかったのである。
「そう言えば、例の調査はどうだったの?」
「まったくと言っていいほど進展はないな。俺が調査に向かった時にはすでにもぬけの殻だったよ。ウラヌスはおろか、あのふざけた初代勇者までいなかった」
「……そう」
話題を変えるべく、女性が以前から依頼していたことの結果を尋ねたが、男性は眉間にしわを寄せながら首を横に振って答える。
犯罪組織が壊滅した後、男性は1人ギャザリング城の地下にいた2人の人物とコンタクトを取ろうとしていた。
しかし、2人がいた場所でいくら男性が呼びかけても何の反応も返ってこなかったのである。
呼びかけに応えて出てきてもらわなければ、生身の体があるわけではない2人を捕まえることができないため、男性は調査を断念せざるを得なかったのだ。
その報告を聞いていた女性は半ば確信していたのだろうか、開いていた携帯を閉じて小さく頷く。
だが、納得はしていないようで携帯を掴む指の爪が白くなっていた。
(アイツらが駄目なら、ゲイムキャラ達に……いや、駄目ね。暴走していたナナハを止めた後から、ゲイムキャラ達の目撃情報は皆無。それに、勇者の真実を黙っていたゲイムキャラ達が素直に答えてくれるかも怪しいわ)
頭の中で情報を整理していく中で、女性は自分達が今現在最も欲しい物を持っているであろう人物達の厄介さにほぞを噛む。
だが、女性達は諦めるわけにいかない理由がある。
これから会う人物とギョウカイ墓場でネプギアと一緒にエヴァの授業を受けているアカリのために。
〔うむ、どうやらあそこらしいな〕
「っと、わざわざ協力してもらっちゃって悪かったわね、レイヴィス」
「いや、アイツらに関係することなら俺も他人事ではないからな」
男性、レイヴィスが押している青いバイクのビークルモードになっているワンダーの声を聞いて女性は思考を中断し、目的の人物が住んでいるオンボロアパートを視認する。
女性、アイエフは自分のお礼に軽く笑みを浮かべながら答えたレイヴィスに苦笑してしまう。
プラネテューヌの諜報部に所属しているエージェントであるアイエフ。
青いコートに黒いインナーを合わせたパンツスタイルである彼女は、トレードマークと言っても過言ではない緑色のリボンで長い茶色の髪を縛っている年若い少女である。
ゲイムギョウ界中の技術を結集させて女神達を支援するために作られたマシンワンダー。
元々は犯罪組織が開発したハードブレイカーのAIが人間の心を学んだことにより、女神達の味方となって戦う戦士に生まれ変わった姿である。
通常時はバイクのビークルモードであるが、左右のハンドルに備え付けてあるボタンを押すことで様々な形態に変形することができる。
ゲイムギョウ界を破滅に導く運命を背負わされた『転生者』の1人であるレイヴィス。
くすんだ銀髪を短くそろえ、目を引く黒い眼帯が彼の見た目を強く印象付ける要因となっている。
かつては知識として知っていたゲイムギョウ界と現実の相違に苦しんだ末、犯罪組織に身を落とした経歴を持っている。
「だが、本当に人が住んでいるのかも怪しい雰囲気だな。よくアイツもここに住むことを了承してくれたものだ」
「え? ああ、それに関しては問題なしよ。むしろ、アイツがいくつかあった候補の中から選んだのがここだったのよ」
「……は? このオンボロアパートを選んだのか?」
アパートの外観が予想以上に酷い状態であることを初めて知ったレイヴィスはここに住むことを了承した人物の姿を思い浮かべて、呆れたように眉根を下げる。
一瞬何を言われたのかわからなかったアイエフであったが、すぐに手のひらを打ち合わせて苦笑しながら説明した。
すると、今度はレイヴィスの方が信じられないと言った風に目をパチクリと瞬かせ、アパートとアイエフを交互に見比べる。
「そう。色々と物件を探してきてあげたんだけど、アイツが1番安いここを選んだのよ。就職決めてお金を貯めたら、教会にここを買い取った分を払うからって理由でね」
「それは……まあ、気持ちはわからないでもないな」
同じ男としてレイヴィスもアイエフが語った人物がオンボロアパートを選んだ理由は理解できるのだが、その眉間には深いしわが寄せられている。
レイヴィスが何を言いたいのかわかっているアイエフは疲れたように片目を閉じて手で額を押さえる。
「肝心のお金が何時貯まるのかって話よね。まったく、無駄にかっこつけるんだから」
〔そう言っている割には嬉しそうだな〕
「うっさい。無駄話してないで、さっさと行くわよ」
「了解」
体全体でうんざりしてますとアピールしているようなアイエフの態度であったが、その口元がわずかに緩んでいることをワンダーは見逃さなかった。
指摘すると、アイエフは不快そうにワンダーとレイヴィスをぎろりと睨んで、先にアパートの中に入って行ってしまう。
その後ろ姿を困ったように笑いながら見送ったレイヴィスはオンボロアパートのすぐ傍にワンダーを駐車し、入り口で待っていたアイエフと共にとある部屋の前に移動する。
その部屋のドアだけが新品同様とまではいかないけど、他のドアに比べると綺麗になっていた。
呼び鈴やインターホンなんて便利な物がオンボロアパートに設置されているわけがなく、レイヴィスは目的の人物が部屋にいるかどうかを確認するため数回ドアをノックする。
しかし、部屋の中からは何の反応も返ってこない。
出かけているのかと思い、首を傾げながらレイヴィスがドアノブに手を伸ばすと、部屋の鍵はかかっていなかったらしく、簡単にドアを開くことができた。
部屋の主の不用心さに眉をひそめながら、勝手に入室する2人。
だが、飛び込んできた光景に驚いて目を見開かせてしまう。
……うつ伏せの状態で倒れる部屋の主の姿を目撃して。
「ちょっ、どうしたのよ!? いったい何があったの!?」
「うっ、うぅぅ……」
先に我に返ったアイエフが抱き起こして体を揺するが、部屋の主はくぐもったような低い声で呻くだけで何もしゃべらない。
その顔が微妙に青くなっているように見え、アイエフをさらに焦らせる。
「しっかりしなさいよ!? 今、病院に……って、え?」
慌てて携帯を取り出して連絡をしようとしたアイエフの耳にとある音が聞こえてくる。
ぐーっと言う間延びした音が部屋の主の腹から聞こえてきたのだ。
「は、腹減っ……」
「ふんっ!!」
「ぐぼぉっ!?」
部屋の主である御波夢人は最後まで言い切ることができずに、アイエフから拳を腹へ振り下ろされるのであった。
苦しそうな声を漏らす夢人を見て、レイヴィスは1人肩をすくめてため息をついてしまう。
「やれやれだ」
* * *
ったく、本当にコイツは馬鹿なんだから。
目の前で私の持ってきた市販の弁当をがっつく夢人に呆れてしまう。
ここ最近まともに食べていなかったらしく、私が弁当を手渡すと夢人は泣いて喜んだ。
昨日の夜に最後の食料である4分の1に切り分けた食パンを最後に私達が来るまで何も食べていなかったらしい。
私としてはその食事もどうかと思うんだけど。
まったく、働き口がなくて無職なのは知ってたけど、食費を削るのはやめなさいよね。
空腹で倒れる前に私達を頼りなさいよ。
ネプギアを頼りにくいのは知ってるけど、それで体を壊したら元も子もないじゃない。
……夢人がどうしてこんな生活を送ることになったのかは、一言でいえば自業自得である。
全部が全部、夢人の責任ってわけじゃないけど、大体はコイツが自分で蒔いた種が原因だ。
御波夢人。
3年前にギョウカイ墓場で犯罪組織に囚われてしまったネプ子を始めとした女神達を救出するために、プラネテューヌの教祖であるイストワ―ル様より手渡された切り札となる予定だった特別なシェアクリスタル、正式名称女神の卵によって異世界から勇者として召喚された青年。
召喚された当初は裸だったり、魔法がまったく使えなかったり、スライヌから逃げ出そうとするなりと本当に勇者なのかと疑っていた。
ゲイムキャラ達から力を授かっても、火の魔法では自分の体を燃やして火傷するし、土の魔法では自分を強打する位置にしか石柱を作り上げることができず、氷の魔法では自分の体を凍りつかせて鼻水を垂れ流して、風の魔法に至っては自分の体を浮き上がらせるといつも頭から地面へと落下していく。
しかも、B.H.C.なんて物を購入した後は尊大な態度で魔法を使い始めたり、可愛いだなんて言いながらキスをされそうになって辱められたり、時代遅れの微妙に熱血成分が含まれている口上を叫んだり、女性の胸がどうとか熱弁する変態になったり、いきなりエアギアーをしだして邪魔されたらキレたりと、製作者のがすと曰く、数々の黒歴史を披露して色々な問題を引き起こした。
さらに、厄介なことにこんな奴に惚れちゃった子達が決闘したり、家出しちゃったり、姉妹の縁を切ろうとまでしそうになってしまった。
癖なのか、時折気色の悪い笑みを浮かべながら笑う顔を見ると無性にムカついてくるので、思いっきり殴り飛ばしたくなる衝動にかられてしまう。
挙げればきりがないほどの問題を引き起こしたトラブルメーカーであり、伝説に残されていた通り女神と共にゲイムギョウ界を救う勇者なんて存在じゃなかったわ。
……でも、本当にそれだけの奴だったら、私達は夢人を見捨てていたかもしれない。
期待外れの勇者だったって、夢人を勝手に評価していただろう。
自分達がどんなものを夢人に背負わせていたのかも考えずに。
勇者としてゲイムギョウ界に召喚された日の翌朝、夢人は私に戦い方を教えて欲しいと頼み込んできた。
何があったのか知らないが、初日でスライヌ如きに大敗を喫したにも関わらず、やる気を見せる夢人の姿に私は深く考えずに了承して、武器の使い方や魔法の特訓に付き合うことにした。
……そこで目の当たりにしたのは、あまりにも酷い夢人の才能の無さである。
木刀を振らせてもお遊戯会かと思わせるようなへっぴり腰で、魔法は発動する気配すら見せない。
あの時は私も少なからず勇者と言う存在に期待していたせいで、実際に召喚された夢人のあんまりな姿に失望していた。
ネプ子達を助けられなかったせいで、私自身焦っていたのだろう。
こんな芽のない奴の特訓に付き合う時間がもったいないとすら思っていた。
だから、私は半ば放置するようにプラネテューヌのギルドマスターであるイワに夢人を預けて、簡単なクエストを課題としてやらせていた。
……あんな奴がいなくたって、私が必ずネプ子達を助けてみせる、なんて柄にもなく熱くなっていた。
その考えが変わったのが、バーチャフォレストの奥で下っ端に立ち向かう夢人の姿を見た時だった。
ボロボロの状態で何度倒れても立ち上がる姿を見て、私は夢人のことを“少しは根性のある奴”と評価を改めた。
夢人が粘ったおかげで、トラウマから立ち直ったネプギアが下っ端を倒してプラネテューヌのゲイムキャラを救うことができたんだから。
その後も、夢人は私の予想を裏切ってゲイムギョウ界のために……ううん、ネプギアを含めた私達のために戦ってくれた。
ラステイションでは、姉とネプギアに対する劣等感で潰れそうになっていた女神候補生であるユニと、家族を女神信仰者によって殺された魔物使いの一族であり『転生者』でもあるフェルとその家族であるフェンリルのリルの心を救うために。
ルウィーでは、相手のことを思うあまり嘘をつき続けて仲違いをしてしまった女神候補生ラムと、同じく候補生であるロムの仲を元に戻すために。
リーンボックスでは、後発的に女神の力が発現して周りから特別視され、自分の殻の中に閉じこもってしまった女神候補生でありながら『転生者』であるナナハを外の世界に連れ出すために。
どれも夢人が自ら行動して、彼女達を救おうとした結果だ。
そんなアイツの人となりに触れ、私は夢人のことを勇者とは関係なく、“共にゲイムギョウ界を救うために戦う仲間”だといつの間にか認めていた。
夜中に宿を抜け出して、木刀を振ったり魔法の練習を1人でしている姿を見て絆されたせいかもしれない。
夢人なりにゲイムギョウ界を救うために努力していたんだと知ったからかもしれないわ。
……まあ、その根底にある動機がネプギアへの恋心ってのはどうかと思ったけどね。
そのくせあのへたれはネプギアに思いを告げないし、他の候補生達からは好意を寄せられる始末。
本当にあの馬鹿でへたれで甲斐性なしの碌でなしニートを好きになるあの子達の気持ちがわからないわ。
色々あったけど、私達は全員伝説通りの勇者じゃなくて、夢人がいてくれてよかったと思えていた。
順風満帆とは言わないけど、私も夢人と一緒に冒険する日々は悪くないと思っていた。
夢人と一緒にいるとネプ子と一緒にいる時のことを思い出すことが多くあり、私の心に余裕を取り戻すことができたからだろう。
そして、ついにギョウカイ墓場に乗り込んだ時、私達に悲劇が襲いかかった。
……伝説に残されていた勇者とは、女神の卵から『再誕』の女神を誕生させるための生贄でしかなかったのだ。
女神が生まれると同時に死んでしまう運命を私達は知らずに夢人に強要していたのを、全てが終わった後に聞かされた。
ネプ子達を助け出した喜びは、すぐに消し飛んでしまった。
最大の功労者が消えてしまったのだから。
……ネプ子達を助けても、アンタがいなくなっちゃ意味がないじゃないの!?
行き場のない悲しみに襲われ、私は不覚にも涙を流していた。
最初は邪険に扱っていたけど、今は……
幸い、女神の卵が起動した時にネプギアの状態が万全でなかったため、夢人は魂だけの存在としてゲイムギョウ界に召喚されていたので、記憶を失う代わりに元の世界に、体に戻ることができたらしい。
その後、プラネテューヌの教会に現れた夢人とネプギアの娘を自称する『再誕』の女神アカリのおかげで、今度は肉体ごとゲイムギョウ界に帰って来たのだ。
無駄にかっこつけながら失敗して、ネプギアと抱き合う夢人を見て、私は本当にアイツが帰って来たんだなと理解することができた。
夢人やネプ子達が帰ってきたとはいえ、ゲイムギョウ界の問題が解決したわけではない。
ギョウカイ墓場で砕かれた女神の卵の欠片を集めたり、もう1人の『再誕』の女神を名乗るフィーナの登場、犯罪組織の幹部達との決着など、まさに息つく暇もない日々を過ごした。
その甲斐もあり、私達はようやく勝ち取ったこの平和な日常が堪らなく愛しく思える。
犯罪組織の台等によって、治安が悪くなったゲイムギョウ界が徐々にだが平穏を取り戻していく。
この事実が本当に嬉しい。
私達の旅が結果を結んだのだと誇らしくも思える。
しかし、平和になっていくゲイムギョウ界とは違い、夢人のことを取り巻く事情は悪化の一途を辿っている。
事の発端は、夢人を題材とした映像作品『それゆけ! ゆうしゃくん』が放送されたのが原因だ。
あの時は少しでも女神の信仰を取り戻そうと、ゲイムギョウ界の人達に勇者と言う希望を与えるために放送された作品だった。
だが、この作品が予想以上にゲイムギョウ界中で反響を生んでしまったことが問題となってしまう。
作風自体も勧善懲悪のわかりやすい正義の味方が活躍する内容だったため受け入れやすかったのだろう。
子どもから大人まで、この作品に出てくる勇者の名前を知ってしまったのだ。
つまり、ゲイムギョウ界において“御波夢人”と言う人物は架空の存在であり、実在しない人物と認識されてしまったのである。
それに追い打ちをかけるように、夢人のこれまでやらかした問題の数々が世間で取り上げられ、遂には偽物扱いまでされてしまったのだ。
この問題を解決するために、私達は『勇者への道』と言う夢人の存在を無理やり認知させる企画を立てた。
勇者として相応しい実力を人々に見せつければ、いくらスキャンダルが真実だとしても夢人がネプギア達と一緒にいることを認めるしかなくなる……そう思っていたんだけどね。
非常にタイミングが悪かったとしか言いようがない。
『勇者への道』が突然の雨で中断された後、すぐにフィーナによって女神の卵の欠片が活性化され、各地でモンスターが暴れ出した。
夢人の『勇者への道』での活躍が、ゲイムギョウ界の危機と言う強すぎるインパクトによってかき消されてしまったのだ。
その結果、夢人は未だ御波夢人(仮)と言う認識を返上することができない上に、新しい勇者像が出来上がってしまった。
曰く、勇者御波夢人は何もないところから神々しいまでに輝く剣を取り出すことができる。
曰く、勇者御波夢人は属性を問わず様々な魔法を独自の方法で操ることができる。
曰く、勇者御波夢人は無類の巨乳好きである。
まあ、最初と2番目のは別に問題ないわね。
実際に夢人がレイヴィスとの試合中にブレイブソードを“ペースト”したり、日本一との試合では4種類の魔法を組み合わせたキャトル・クルール・オーダーを披露しているもの。
これらは夢人にとってプラスの印象になるにしても、マイナスになることは絶対にないわ。
……でも、3番目が致命的なのよね。
ケン・オーとの試合でベール様の胸をリアルタッチで描いた上に変態の黒歴史が発動したのがまずかったわ。
アレのせいで、勇者=夢人=巨乳好きと言う図式が出来上がってしまった。
しかも、リーンボックスのギルドマスター候補であるケン・オーがそれを認めてしまったため、その認識を撤回することすら難しい。
問題がこれだけなら、中断した『勇者への道』を再開して夢人のいい印象を世間にアピールすればいいんだけど、今ではそれすらも困難だ。
別に開催すること自体は簡単にできる。
問題があるのは夢人自身だ。
今の夢人では勇者はおろか、御波夢人であることをゲイムギョウ界中に認めさせることができない。
何故なら……
「ふぅ、ごちそうさま……うん? どうかしたのか?」
「……ううん、何でもないわ」
持ってきてあげた弁当を食べ終え、満たされた様子で笑顔を浮かべる夢人であったが、私がジッと見つめていたことに気付いて首を傾げた。
私は思考を一時中断して首を横に振って答える。
あれこれ夢人に愚痴をこぼしてもしょうがないことは分かっている。
一緒に犯罪組織と戦っていた時と同様、夢人なりに現状を打破しようとしているのは私もよく知っているからだ。
イストワ―ル様達教祖や知り合った人達の伝手を使って、少しでも働こうとしている。
でも、できて街のゴミ拾いなどのボランティアやギルドの低ランク依頼だけであり、夢人がゲイムギョウ界に認知される日はまだまだ遠い。
「でさ、レイヴィスは俺に何の用事があるんだ?」
私がそれ以上答えないとわかったのだろう、夢人はレイヴィスへと視線を向けて、ここまで来た目的を尋ねる。
言われてみれば、私もレイヴィスが夢人に何の用があるのかを聞いてないわね。
私は昨日の夜にワンダーを持ってきてくれと頼まれたから、夢人に会いに来たのだ。
まさか空腹で倒れているとは思っていなかったので、弁当を持ってきて正解だったわね。
……因みに、ワンダーは現在プラネテューヌの教会の方で預かってる。
さすがにこのオンボロアパートに最新技術の結晶であるワンダーを専用のカバーを被せるとはいえ、野ざらしの状態で放置しておくことはできない。
そんなことをしてしまえば、確実に夢人がリーンボックスの教祖である箱崎チカに物理的に締められるだろう。
そう言えば、今度ワンダーのデータを利用した新しく女神を支援する機械を作ると聞いたわ。
いったいどんなものなのかしら?
「実は夢人に知っておいてもらいたいことがあるんだ。アイエフも時間があれば聞いてもらえないか?」
「私も? 別に時間なら大丈夫だけど」
「何かあったのか?」
顔を引き締めて告げるレイヴィスに、自然と私と夢人も緊張してくる。
私は眉をひそめて、夢人は多少凛々しく聞こえる声でレイヴィスに続きを促す。
「あったではなく、これから起こるかも知れない話だ」
「どう言う意味なんだ?」
「話すかどうか迷ったが、少なくとも夢人にだけは教えておくべきだと思ったんだ」
私も夢人もレイヴィスが何を言っているのかわからない。
レイヴィスはまるで過去のことじゃなくて、予言のように未来のことでも話すって言うの?
そんな私達の疑問に対する答えを、レイヴィスははっきりと口にする。
「この世界のオリジナルとも言える『超次元ゲイムネプテューヌmk2』の続編にあたる『神次元ゲイムネプテューヌV』の物語を」
という訳で、今回はここまで!
序盤で説明が多いとはいえ、そろそろ動きを見せないと。
次回は前作では登場しなかった子も出てくる予定ですよ。
それでは、 次回 「けじめ」 をお楽しみに!