超次次元ゲイムネプテューヌ Re;夢のヒーローを目指して 作:ホタチ丸
皆さんのところでも皆既日食は見れたでしょうか?
私のところでは晴れていたこともあり、結構月が赤くなっているのがはっきり見えました。
……まあ、こんなどうでもいいことは置いといて本編に入りましょう。
それでは、 氷×けん玉×剣士 はじまります
「……えっと、どちら様?」
ネプテューヌにそう言われた瞬間、頭の中が真っ白に染まってしまった。
その言葉の意味が理解できず、間抜けにもポカンと口を開けたままネプテューヌを見つめ続けてしまった。
でも、すぐにハッとして、醜態を晒してしまったことに対する羞恥に顔が熱くなってくる。
同時に沸々と湧き上がってくるネプテューヌへの怒りに、大剣を持つ手が震えだす。
……落ち着け、落ち着きなさいよ、私。
ここで怒りに我を忘れたまま突撃したら、ネプテューヌの思うつぼだわ。
アイツが私のことを馬鹿にするなんて、いつものことじゃない。
女神化する前のアイツはいつだって人を小馬鹿にした態度ばかりとるじゃないの。
今回も同じ――私が冷静さを失っているうちに決着をつける気でいるのよ。
おそらくネプテューヌは守護女神戦争で下界に落とされたせいで弱体化しているはず。
それで少しでも勝率を上げるために私を挑発しているにすぎないのよ。
挑発とわかっていても抑えきれない怒りが込み上げてくるが、私は我慢して口を開く。
「相変わらず、口先だけは1人前のようね。でも、お生憎さま。そんな安い挑発に乗るほど、私は……」
「ストップストーップ!! 勝手に1人で話を進めないでよ!! そっちはわたしのことを知っているのかもしれないけど、わたしはあなたのことなんて全くこれっぽっちも知らないんだよ?」
引きつりそうになる頬を誤魔化すために口角を無理やり上げ、私はネプテューヌに挑発し返してやろうとした。
だが、それは慌てて声を張り上げたネプテューヌに遮られてしまった。
ネプテューヌは眉をひそめながら人差し指を頬に添えて、本当にわからないと言う風にわたしへと再び問いを投げかける。
なるほど、あくまで白を切り通すつもりなのね。
まあ、無理もないかもしれないわね。
私が挑発に乗ってこないのはネプテューヌにとって計算外であったはず。
きっとさっきモンスターを蹴散らした私の実力に、ネプテューヌは怖気づいているのよ。
そう考えると、見苦しく私を怒らせようとするネプテューヌの姿がおかしくて笑えてくるわ。
ふふふ、いくらあんな連中に好き勝手されてシェアが下がったとはいえ、ラステイションの女神である私の強さは揺るがないってことね。
弱い者虐めをするみたいで気が進まないけど、私もラステイションを守るためになりふり構っていられない。
いつまでも間抜けな演技を続けているなら、私がプラネテューヌのシェアを根こそぎ奪って……
「っ、お前何言ってんだよ!? あの人はな……」
「ほえっ? あの痴女っぽい服の人のことを知ってるの?」
「なあっ!?」
「ぶっ!?」
「ブラ――って、へっ? 痴女?」
ネプテューヌの後ろで私のことを呆然と見つめていた少年が急に慌てた様子で叫び出した。
おそらく少年は私の正体を知っていたのだろう。
いつまでもとぼけているネプテューヌに私のことを教えようとしたに違いないわ。
――でも、ふざけたことにネプテューヌはさらなる爆弾を投下した。
何食わぬ顔で私のことを侮辱する言葉を吐いたのである。
そのせいで少年は目を丸くし、ネプテューヌの仲間の男も噴き出してしまう。
私だって思わず驚きの声を上げてしまい、カアッと顔が熱くなってくるのを感じる。
「だって、いくら人が来なそうな洞窟だからって、あんなに肌を露出してるんだよ? 確か、ハイレグって言うんだっけ? あんなきわどい水着みたいな服を平然と公共の場で着るなんて、普通痴女以外に考えられないよ。しかも、剣なんかも持っちゃったりしているし――っ、まさか、あの子の正体はヤンデレ系痴女ストーカー!?」
「なんでそうなるのよ!?」
変な所に着地したネプテューヌの戯言に、私は我慢できずに声を荒げて否定した。
しかも、ネプテューヌは両肩を抱き寄せながら身を縮めている。
若干引いた目で私のことを見ているのが妙に癪に障る。
「誰がヤンデレで痴女でストーカーなのよ!? いい加減なこと言わないで!?」
「ど、どどどどうしようゆっくん!? あの子、自覚症状がないほど重症だよ!? が、ガチのヤンデレに追われた時の対処法を教えて!?」
「俺に聞くな!? ってか、服装云々はお前が言えたことじゃないぞ!?」
黙っていられず、少しだけ前傾姿勢になって私が叫ぶと、ネプテューヌは隣にいた男の後ろへと隠れてしまった。
怯えた表情でネプテューヌが上目遣いで必死に訴えかけると、男は慌てて様子で私のことを擁護してくれる。
よし、よく言ってくれたわ!!
私のこの服――プロセッサユニットは水着じゃないのよ!!
これは女神としての言わば正装よ!!
公共の場で身に纏っていても恥ずかしくない格好なんだから!!
ダンジョンが公共の場の定義に入るかどうかわからないけど、私は悪くない!!
……と言うより、ネプテューヌの奴も女神化したら同じような格好になるじゃない!!
確かに、私よりも露出は少ないけど……り、リーンボックスの奴よりはマシよ!?
アイツの方が痴女じゃない!?
あんな風におへそとか色々出しちゃって、本当露出狂の変態なんじゃないの!?
そうよ!? 私はまだまともな部類なのよ!?
「わかってない――わかってないよ、ゆっくんは!? あの子がわたしに何て言ったのか忘れたの!? 会ったこともないのに、いきなり因縁つけられてるんだよ!? これだけでもう十分ストーカーじゃん!? きっとあの子は妄想と現実の区別がつけられなくなって、わたしへの倒錯的な思いを爆発させてヤンデレにジョブチェンジしちゃったに違いないよ!? だから、自分があんな恥ずかしい格好や危ない剣なんか持っているなんて自覚症状がないまま、わたしのことを亡き者にしようと……」
「いいから落ち着け!? お前の方が現実と妄想の区別がつけられてないからな!? 大体、彼女は……」
「――そうか、そうだったのかっ!」
いつの間にか思考が横道にそれてしまっていた私を置いてけぼりにして、ネプテューヌはガクガクと震えながら男にしがみついていた。
ネプテューヌの勘違いを訂正しようとする男であったが、それはゆらりと立ちあがった少年に遮られてしまう。
少年はキッと私のことを睨みながら指をさす。
「やい、お前!! 変態痴女ストーカーのくせして、ブラックハート様のコスプレなんかしてんじゃねえ!! ブラックハート様に失礼だろ!!」
「なあっ!? こ、これはコスプレなんかじゃないわよ!? 正真正銘、私がラステイションの女神ブラックハートよ!!」
「嘘つけ!! ラステイションが大変だってのに、ブラックハート様がこんなちんちくりんの間抜けっぽい奴を追って、こんなとこまで来るわけないだろ!!」
「っ!?」
「ちょっと!? 今ナチュラルにわたしのことを馬鹿にしたでしょ!?」
失礼なことなことに、少年はネプテューヌの言葉を真に受けて私のことを偽物だと認識してしまった。
慌てて胸に手を当てながら私が本物だと宣言するが、少年は疑って信じてくれない。
それどころか、少年の言葉が私の胸を抉ってくる。
ネプテューヌが少年に喰ってかかっていることも気にならず、私は息をのんでしまう。
……わかってる。
ラステイションが大変なことくらい、言われなくてもわかってるのよ。
他でもない、私自身が1番わかってるのよ……っ!
だから、こうして私は力を取り戻すためにネプテューヌを追ってきた。
ネプテューヌに勝って――プラネテューヌのシェアを奪うことさえできれば、またあの頃の強い私に戻れる。
そうすれば、もうラステイションをあんな連中の好き勝手にさせない!!
ネプテューヌの挑発によって血が上っていた頭が急激に冷静になってくる。
当初の目的を思い出し、私は顔を引き締めて大剣を握り直す。
――私はネプテューヌを倒すためにここまで来たのよ。
全ては一刻も早くラステイションを守るための力を手に入れるため。
こんなところでふざけた茶番に付き合っていられる時間はないのよ!!
「お前も大人しくしてろって!? まだモンスターだって残って……」
「待ってよお~!!」
「今度は誰だよ!?」
私が改めて決意を固めていると、ネプテューヌにしがみ付かれたままの男は前に出そうになっていた少年の首根っこを掴んで押さえていた。
ネプテューヌの仲間である男はともかく、私のことを信仰している様子が見てとれる少年を戦いに巻き込むことは避けたい。
私の左右にいるモンスター達もそろそろ動き出しそうだし、少年に下がっているように忠告を飛ばそうとした。
しかし、私が口を開く前に後ろからさっきまで一緒にいた女の子の間延びした声が聞こえてくる。
振り返ると、そこには予想通りの女の子が膝に両手をついて息を切らせていた。
「はあ、はあ……置いてくなんて酷いよぉ~」
「何でついてきたのよ。危ないから下がってなさい」
「ほえっ? 危ないって――わわあっ、何か見たことないモンスターがいっぱいいる~!?」
辛そうにしながらも非難するように眉を吊り上げながら見つめてくる女の子の言い分を、私は冷たく切り捨てた。
すると、女の子は周りのモンスター達を見渡して慌てだす。
その反応の鈍さに、少しだけ苛立ちを感じてしまう。
言葉だけじゃなく、反応まで鈍臭い子ね。
ネプテューヌとは違う意味で私を苛立たせてくれるわ。
「わかったのなら、さっさと安全な所まで逃げなさい。はぐれた子達を探すのは後で手伝って……」
「――あたしも一緒に戦うよ」
「……はあっ?」
まさかの女の子の発言に、私は驚いてしまった。
しかも、無駄にキリッとした顔ではっきりと言うのだから、私はその変化にも戸惑ってしまう。
だが、女の子のその真面目な顔もすぐにふわっと緩い笑顔へと変わる。
「友達を置いて1人で逃げるなんてできないよお~。だから~、あたしも一緒に……」
「ふざけないで!!」
「ひゃっ!?」
にへらと笑いながら力コブを作る女の子に、私は我慢できずに怒りのまま叫んだ。
出会ってから妙に馴れ馴れしいと思っていたけど、もう限界よ!!
誰かと私を勘違いしているみたいだけど、そんな理由でここに残られちゃ迷惑なのよ!!
「戦うって簡単に言うけど、どうやってモンスターと戦うつもりなのよ!! まさかそのぬいぐるみでモンスターを殴るなんてふざけたこと言うんじゃないわよね!!」
「えっ、えっ、えっ? そ、そうだけど……」
「だったら、今すぐここからいなくなってちょうだい!! 戦いは、あなたのお飯事に付き合ってできるほど簡単じゃないのよ!!」
怒鳴られて委縮してしまっている女の子に、私は厳しいことを突き付け続ける。
ぬいぐるみでボコスカ殴るだけでモンスターを倒せるのなら、今頃女神なんて必要なくなってるわ。
私のために――正確には、私に似た友達のために一緒に戦おうとする女の子の気持ちは尊いものよ。
でも、それで戦えない女の子を危険なことに巻きこめるわけないじゃない!!
だから、私は心を鬼にして女の子をこの場から追い出さなくちゃいけないのよ!!
そのために女の子にとっては残酷だろうけど、真実を教えてあげなくちゃ。
「それに勘違いしているけど、私はあなたの友達なんかじゃないわ!! 人違いよ!!」
「えっ、でも、ノワ……」
「いい加減に理解してよ!! あなたと私はついさっき会ったばかりの初対面なのよ!! 勝手に私のことを友達なんて言わないで!!」
「……ふえっ」
はっきりと勘違いを指摘しても食い下がろうとする女の子に、私はかなり酷いことを言ってしまった。
女の子の目にジワリと涙が浮かび出す。
見ていられないほど胸が苦しくなり、女の子に背中を向けてネプテューヌ達の方へと視線を向けた。
……これでいいのよ。
はっきりと言ってあげた方が女の子のためにも、私似の友達のためにもきっといいはずだもの。
友達に似ているからって、女の子を危険なことに巻きこむなんて私にはできない。
こんな言い方しかできない自分のことが嫌いになりそうだけど、私は間違ってなんか……
「うわあ、何だか知らないけど、友達じゃないって言っちゃうのは空気読まな過ぎだよ。しかも、女の子の方は泣いちゃってるし――変態なことを抜きにしても、人としてどうかと思うなあ」
「ああ、さすがに酷いな。いくら女の子を危ないことに巻き込みたくないからって、もうちょっと言い方ってものがあると思うぞ」
「オレだって、今のはないってことくらいわかるぞ。女を泣かせる奴はサイテーだってと父ちゃんや母ちゃんも言ってたしな」
「うっ!?」
向き直った先に待ちうけていた3人の非難の目と言葉に、私は顔をひきつらせて声を漏らしてしまった。
言い方が悪かったことも女の子を泣かせたことも悪かったのは、私も十分理解しているのよ!?
だけど、仕方ないじゃない!?
こう言う時にどうすればいいのかなんて全く知らないんだから、少しくらい大目に見てよ!?
これじゃ、私だけが悪者――って、実際に女の子を泣かせている時点で悪者だけど、私は間違ったことなんて1つも言ってないの!?
このままずるずると勘違いを引きずられるよりも、スパッと教えてあげる方が絶対にいいはずだったのよ!?
せっかくシリアスに戻れたと思ったら、また変に微妙な空気になりつつある!?
だから、私はこんなことに悩んでいる暇さえないのよ!?
――それもこれも、全部ネプテューヌのせいなのよ!?
「う、うるさいわよ!? いいからさっさと決着を……」
「グルラアアアアアアア!!」
「っ、チッ!?」
「はわっ!?」
最優先項目であるネプテューヌを倒すことができれば、後は何とかなると結論に至った私は焦りながら目の前の3人を黙らせるために鋭く睨みつけた。
そして、ネプテューヌに向かって飛びかかろうとして――横から聞こえてきた唸り声に思いとどまる。
素早く後ろの女の子を抱きかかえながらその場を離れると、私達がいた場所目掛けて斧が振り下ろされる。
いつまでも黙って見ているわけがないとわかっていたけど、遂にモンスター達も動き出したわね。
巨大な斧を持ったモンスター――牛のような頭をしている2足歩行のモンスターが避けた私達を睨んでいる。
……それにしても、女の子の言葉じゃないけどこんなモンスターがラステイションにいたなんて私も知らなかったわ。
他のコカトリスとなき草は見かけたことがあるけど、牛のようなモンスターは初めて見るタイプだ。
こんなモンスターまで現れるなんて――これも私の力が弱まったせいだって言うの?
否応なく無力さを突き付けられているように思えて、私は悔しさに唇を噛んでしまう。
女の子を安全な場所へと置くため――不本意だけど、ネプテューヌ達の傍へと着地して私は口を開く。
「ほら、あなたもそこの子と一緒に下がってなさい」
「あ、ありがとう~。えへへ~」
「なに変な顔して笑ってるのよ?」
降ろして少年の方へと下がらせようとすると、女の子はまたふやけた顔で笑いだした。
その意味がわからず眉をひそめながら尋ねると、女の子は嬉しそうに頬を緩めたまま話だす。
「だってえ~、何だかんだ言ってやっぱり優しいなあって思ってえ~」
「……まったく、馬鹿なこと言ってないで、とっとと下がってなさいよ――ネプテューヌ」
「うん? 何々?」
「協力してあげるから、アイツらをさっさと片付けるわよ」
散々酷いことを言ったのにも関わらず、女の子が私に笑顔を向ける理由に呆れると同時に少しだけ胸が軽くなった。
でも、そんな風に照れている場合じゃないから、私は努めて平静を装ってモンスター達へと向き直り、ネプテューヌへと共闘を申し込む。
こんな雑魚モンスターどもなんか私1人だけでも楽勝だけど、女の子と少年を守らなくちゃいけないから仕方なくネプテューヌと手を組むことにしたのよ。
あくまで一時的な共闘であり、ネプテューヌが私の敵であることに変わりはない。
だから、決着をつけるよりもまずはモンスター達を蹴散らす方が先だと考えただけのことよ。
モンスター達さえいなくなれば、すぐにでもネプテューヌとの決着をつけてやるわ。
「あいあいさー! ゆっくんも問題ないよね?」
「ああ、よろしく頼む」
「誰に言ってるのよ」
意外なほどあっさりと了承したネプテューヌに、私は拍子抜けしてしまう。
敬礼みたいにビシッと手を額の近くまで持ち上げると、ネプテューヌは男の方へも尋ね出す。
男も軽く口元に笑みを浮かべながら、私にほほ笑みかけてきた。
正直、ネプテューヌ達はもっと私と一緒に戦うのを渋ると思っていた。
変な誤解はあったけど、私がネプテューヌ達を襲おうとしたことは事実だし、それをすぐに信頼するなんて馬鹿らしいとも思う。
……だけど、少しだけそんな2人の反応が好ましいと感じる自分がいる。
倒さなきゃいけない敵であるネプテューヌと一緒に並んで戦うって言うのに、何故だか私の胸には不思議な気持ちが湧きあがってくる。
――この感覚、理解はできないけど嫌いじゃないわ。
意図せず、私はにやりと口角を吊り上げてしまう。
「それじゃ、さっきはお預けくらっちゃったけど、今度こそ『変身』しちゃうよ! せーのっ、刮目せ……」
「アイスコフィン!!」
ネプテューヌが『変身』――おそらく女神化をしようと集中しようとした時、急に幼い声が聞こえてきた。
すると、どこからともなく氷の塊がモンスター達へと飛来してくる。
氷の塊はモンスターに直撃するだけでなく、周りのモンスター達も凍りつかせていく。
氷の魔法ですって!?
これほどの威力の魔法……まさかルウィーの奴も来てるって言うの!?
でも、聞こえてきた声はアイツと違っていたし、いったい誰が!?
慌てて氷の塊が飛んできた方向を向くと、そこには3人の少女と如何にも怪しい黒いローブを被った気まずそうな雰囲気を出している人物がいた。
その内の1人――短い茶髪の幼い女の子が水色の杖を持っていることから、多分魔法を放ったのは彼女だろう。
「ロム!? それに、そっちはもしかしてファルコムか!?」
「ぴーしぇちゃんとロムちゃんだあ~!! 無事だったんだねえ~!!」
私が呆然と彼女達を見つめていると、隣にいた男が驚いた様子で声をかけ始める。
同時に、女の子も彼女達へと手を振りながら笑いかける。
――一方で、女神化を中断させられたネプテューヌはジャンプしようとしていたのだろう曲げた足と腕をそのままにしながらつぶやく。
「あの~、刮目してくれると嬉しいなって思っちゃったりするんだけど……」
「知らないわよ」
「ガーン!?」
どうでもいいことを言っていたので、相手にしないことにした。
* * *
「まったく、ネプ子も夢人もネプギアも勝手に突っ走るんじゃないわよ!?」
同時刻、試練の洞窟の外――西風の吹く渓谷ではアイエフが1人焦りを隠そうともせずに走り回っていた。
少年が目くらましに使った煙玉の煙がなくなった途端、ネプギアが1人で夢人達を追って走り出したからである。
本来であれば自分も一緒になって夢人達を追いかけようとしていたのに、勝手に1人で行かれたことにアイエフは焦りを感じていた。
何故なら、アイエフはネプギアがどの程度強いのか知らないのだ。
記憶喪失らしいと言うことと夢人といちゃついている姿しか見ていないので、余計にネプギアを1人にさせられないとアイエフは勝手に思い込んでいた。
だからこそ、アイエフは煙を吸い込み過ぎてむせているミモザをコンパとシンに任せて、自分からネプギアを追いかけだしたのだ。
ネプギアのことは夢人に任せると言いながらも、アイエフは放っておけなかったのである。
「本当、アイツらはいったいどこに……」
「おーい、そこの人ー!!」
「えっ、私のこと?」
1度立ち止まって息を整えながら辺りを見渡すアイエフに、どこからか呼びかける声が聞こえてきた。
きょろきょろと見回しても誰もいないのに聞こえてくる声に、アイエフは不思議そうに目を丸くしてしまう。
「もー、こっちだってば!! ちょっとそこ動かないでよ!! 今そっちに行くから!!」
「え、行くってどう言う……」
「とうっ!!」
「って、上か!? ――きゃあっ!?」
「ちょっ、だから動いちゃ――わあああっ!?」
反響して聞き取りづらかった声が上から響いてきていることに気付いたアイエフは慌てて上を向いた。
すると、そこには光の反射で誰だかわからないが人が降って来ていることに気付いて避けようとしてしまう。
だが、その避けようとしたことが災いし、アイエフは落ちてきた人物とぶつかってしまった。
「イタタタ……誰よ、こんな非常識なことしでかした奴は」
「あ、あははは、ごめんごめん。ちょっと聞きたいことがあって――うん?」
仰向けに倒れたアイエフは後頭部を擦りながら、馬乗りになっている相手へと鋭い視線を向けた。
落ちてきた人物も乾いた声で申し訳なさそうに謝るのだが、ふいにアイエフの顔を凝視し始める。
落ちてきた人物は、赤い髪に白いメッシュが入った少女であった。
左側の頭頂部で赤い髪を金色の丸い飾りがついた黒いリボンでわっかを作るように結んでいる。
ボタンの役割をしているのか、水色の勾玉のような物がついている黒い胸元の谷間を露出している服装に、赤い着物のような袖や裾を身に纏っている。
特に目立つのは右肩からぐるりと腰へと巻きついている金色の龍の飾りだろう。
そんな少女がアイエフの顔を黙ったまま見つめ続けていたかと思うと、次第に体をぷるぷると震わせ始める。
さすがに心配になったアイエフは、いきなり自分目掛けて飛び下りて来たことに対する怒りを流して尋ねようとすると……
「ヨメとの運命の出会い、キター!!」
瞳を爛々と輝かせながら少女は天高く叫び声をあげた。
言葉の意味はわからないが、アイエフは胃がきりきりと痛みだすのを感じた。
心配していたのが馬鹿らしいと思う様子の少女が、アイエフの中で夢人達の姿と重なる。
(……ああ、コイツもネプ子達の同類か)
割と失礼なことかとも思ったが、アイエフは自分の心労と頭痛のタネになることは間違ないと悟り、少女のことをそう認識せざるを得なかったのであった。
という訳で、今回は以上!
御覧の通り、彼女の登場です。
なぜなら、彼女もれっきとした無印参戦メンバーなんですからね。
せっかくこの舞台なんですから、活躍させませんと。
さて、アンケートの募集期間が残り1週間になりそうですので、再びここで告知しておきます。
現在、1周年記念の特別編のアンケートを実施中です。
詳しくは活動報告の第3回アンケートの方を御覧ください。
お暇な方はお応えしていただけると嬉しいです。
それでは、 次回 「ヨメ×女神×記憶喪失?」 をお楽しみに!