超次次元ゲイムネプテューヌ Re;夢のヒーローを目指して   作:ホタチ丸

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はい、皆さんこんばんわ!
そう言えば、章管理を忘れていたことに遅れて気付きました。
この話を投稿したら、章でまとめようと思います。
それでは、 けじめ はじまります


けじめ

「ううむ、確かこの辺りだと思ったのだが」

 

 大通りから外れた商店街の一角、1人の女性が立ち止まり、とあるチラシを片手に辺りを見回していた。

 女性の容姿は前髪を斜めにカットした腰まで届く青いロングヘアであり、先端の尖ったつばの広い黒い帽子を被っている。

 さらに、黒いゴスロリ風のドレスと白いコートを纏っている。

 全体的に落ち着いた女性と言った感じの雰囲気を放っており、どこか引き寄せられるミステリアスな魅力を秘めているように思える。

 だが、そんな雰囲気を持っている女性であるが、今は眉間にしわを寄せてチラシに描かれている地図と辺りを忙しなく見比べていた。

 女性の雰囲気とは一致しないが、明らかに迷子であると体全体で表現していたのである。

 

「やはり、アイツに道案内を頼むべきだったか? ……いやいや、こんなことでアイツの手を煩わせるわけにはいかんな。もう少し奥に行ってみるか」

 

 下唇に人差し指の第2関節を添わせて女性は何かを考えていたのだが、すぐに首を横に振って思い浮かべたことを否定する。

 チラシに描かれている地図を睨むように見つめ、女性はさらに奥へと商店街を進んでいく。

 

「うん? アレは……おおっ! ようやく見つけたぞ!」

 

 曲がり角を曲がると、女性はついに目的地の看板を発見することができ、顔を綻ばせた。

 先程よりも軽やかな足取りで店の前までやってくると、女性は感慨深そうに店の全体を見ながらつぶやく。

 

「ここになら、私の望むものがあるかもしれない!」

 

 興奮しているのか、はしゃぐ子どものようにキラキラと目を輝かせて女性は店の入口へと手をかける。

 入った瞬間、店の中に充満していた空気が女性の鼻孔を刺激した。

 決して異臭などの不快感を与えるようなものではない。

 むしろ、女性にとっては馴染みの深いものであり、この店に来た目的でもある物を敏感に嗅ぎ取っていたのである。

 

(この匂い……ふふ、本格的に期待できそうだな)

 

 女性の頬は自然と緩み、店の中に陳列されている商品を眺める瞳はさらに輝きを増していく。

 女性にとって、この店はまるで宝箱のようであった。

 この店の雰囲気に触れただけでも、女性は苦労してまでここに来た甲斐があったと感じていた。

 

「いらっしゃいですの。ようこそ、“がすとショップ”へですの」

 

 実際に手に取ったりしてみながら女性が商品を物色していると、カウンターの奥から小柄な少女が現れた。

 短めに整えられた髪の毛に白くて長い兎の耳のような帽子を被った姿は、少女の外見をより幼く見せている。

 

 何を隠そう、この語尾が特徴的な彼女こそがこの店、“がすとショップ”のオーナーであるがすと本人なのだ。

 かつては、夢人やネプギア達と共にゲイムギョウ界を救うために尽力した凄腕の錬金術師である。

 彼女の開発したB.H.C.により、夢人は色々な意味で活躍をすることができた。

 また錬金術だけでなく、魔法にも精通していることから、夢人の魔法の特訓にも力を貸している。

 今現在、平和になったゲイムギョウ界で自分の発明したマジックアイテムを広くゲイムギョウ界に広めるため、“がすとショップ”を開いて店主として忙しい日々を送っている。

 

「お客様は初めての来店ですが、本日はどんな商品をお求めですの?」

 

「ああ、実はこのチラシを見て来たのだ」

 

 丁寧にがすとが接客をすると、女性は困ったように笑いながら手に持っていたチラシを見せてきた。

 チラシには、“これであなたの魔法もパワーアップ!? がすと印のマジックアイテムが買えるのは“がすとショップ”だけ!”と見出しが付けられており、商品の写真やカラフルなイラストがふんだんに載せられていた。

 

「正直、名前も聞いたことのない店のチラシだったせいで、あまり期待していなかったのだが、実際にこの素晴らしい商品達を見て感動してしまったよ。1つ1つに製作者の並々ならぬマジックアイテムに対する情熱を感じて、できることなら全部買い占めてしまいたいと思ってしまうほどさ」

 

「ありがとうですの。でしたら、本日はがすとのいち押しを紹介するですの」

 

「おおっ! それはいったいどんな物なんだ?」

 

 女性の熱のこもった褒め言葉にがすとの表情は綻ぶ。

 過剰な褒め言葉であるが、嬉しいことは事実だったからである。

 気分がよくなったがすとは女性へと自分のお薦めの商品を紹介するため、先ほど作ったばかりのマジックアイテムをカウンターの奥から持ってくる。

 それは小型の瓶にぎっしりと詰められている黒い粒であった。

 がすとはそれを女性に誇らしそうに見せながら、詳細を説明するべく口を開く。

 

「これはB.H.C.と言って、1粒飲むだけで魔法のイメージ力をアップさせることができるんですの。実際に今まで魔法を失敗させていたばかりの人物が、これを使った途端にもの凄く強力な魔法を使えるようになったですの」

 

「ほう、参考までにどんな魔法を使ったのかを教えてもらえないだろうか?」

 

「岩で意思のある蛇のような存在を作り出したり、女神の様の全力の攻撃で傷1つ付かなかったモンスターを一撃で倒すだけの炎を生みだしたんですの」

 

「なん……だと……っ!?」

 

 得意げに語るがすとの話に驚愕を隠しきれない女性はわずかに腰を引かせていた。

 女性も魔法を使うことができるが、がすとの話す人物が使ったような魔法を使うことはできないだろうと瞬時に理解していた。

 土の魔法で岩を操作することは可能であろうが、意思のある蛇のように動かすことはできない。

 女神が傷を付けることもできない相手に自分の魔法で倒すことができるかと問われれば、女性は迷いなく首を横に振る。

 魔法が仕様者のイメージによって多様に変化するとはいえ、がすとが話す魔法は女性の常識と理解を越えていた。

 つまり、女性では絶対に真似できない魔法なのである。

 

 ……不幸なことはがすとが話すB.H.C.の被験者は夢人であり、事例が特殊であることを指摘する第3者がいなかったことであろう。

 そもそも夢人は魔法に関する知識を持ち合わせていないため、B.H.C.によって発動したとはいえ女性の定義する魔法とは大分かけ離れている。

 仮に夢人の魔法を理解したとしても、それは女性にとって非効率的であり、絶対に真似をしないであろうことをがすとは敢えて言わない。

 せっかく来てくれた客を逃がすほど、がすとの商魂はか弱くない。

 むしろ、買わせる気満々でB.H.C.を女性にアピールしていく。

 

「普段ならこのお値段なのですが、今ならサービスして……これくらいでどうですの?」

 

「なっ、元の値段の半分以下ではないか!? そんなに安くして本当に大丈夫なのか!?」

 

「もちろんですの。お金よりも、作った商品で多くの人が幸せになってくれるのなら、がすとも本望ですの」

 

 ポケットから電卓を取り出して、がすとは具体的なB.H.C.の値段を女性へと提示する。

 因みに、夢人に売った時はその2倍以上の値段だった。

 あまりの安値に驚く女性に対して、がすとは胸に手を当てて穏やかにほほ笑む。

 しかし、口では立派なことを言っているがすとも、心の内は違っていた。

 

(まずは常連を作るですの。そして、買わせるごとに少しずつ気付かれない程度に値上げをしていけば、今回は赤字でも時機に黒字に戻るですの)

 

「ふっ、そこまでの心遣いを見せられたら、私も買うしかないじゃないか。では、1瓶買わせてもらおう」

 

「毎度ありですの。後、今ならお得なポイントカードの手続きもあるのですが……」

 

「もちろん、登録させてもらうよ」

 

 すっかりがすとの言葉を信じ切ってしまった女性はB.H.C.を購入することを決め、さらにポイントカードまで作成してしまう。

 専用の用紙に必要事項を記入し終えた女性は、デフォルメされたがすとが指を指している絵と自分の名前が入っているカードと購入したB.H.C.を大事そうにコートの裏ポケットにしまいこみ、ホクホク顔で店を後にしようとする。

 

「それでは、また来させてもらうよ。今日はいい物を紹介してくれて、本当にありがとう」

 

「いえいえ、またのご来店をお待ちしておりますですの」

 

 謙虚にほほ笑むがすとを見て、女性は今後とも“がすとショップ”を贔屓にしようと決めて、店から出ていった。

 ……カウンターでその後ろ姿を見つめるがすとの口元がにやりと上がったことに気付かずに。

 

「さて、ご新規さんの登録ですの。絶対に逃がさないですの。ええっと、これって何って読むんですの?」

 

 顔と名前を覚えるためを一致させるため、がすとは女性が記入していった用紙を見るのだが、その名前の読み方がわからずに首を傾げてしまう。

 

「まじぇす? それとも、めいじすと読むんですの? 今度来た時に聞かなきゃいけないですの」

 

 客商売はコミュニケーションも大切だと、がすとは書類の名前の所に付箋を張り付けてしまいこむ。

 付箋の横、名前の欄には“MAGES.”と書かれていたのであった。

 

 

*     *     *

 

 

「……以上が、俺の覚えている限りの『神次元ゲイムネプテューヌV』の情報だ」

 

「ああ、うん。大体わかったけどさ、レイヴィスは結局何で俺にそれを教えようと思ったんだ?」

 

 オンボロアパートの一室でレイヴィスによって語られた話の内容ではなく、どうしてそれを自分に伝えようとしたのかを疑問に思った夢人が首を傾げながら尋ねる。

 すぐ隣にいるアイエフの目つきも若干レイヴィスを刺すように見つめており、無言のまま夢人の疑問に対する答えを催促していた。

 

 夢人だけでなく、アイエフもレイヴィスが『転生者』であり、この世界の元になったとも言える『超次元ゲイムネプテューヌmk2』に関する知識を持っていたことを知っていた。

 だが、レイヴィスもこの世界では勇者や『転生者』、『再誕』の女神なんて存在もいてオリジナルとはほど遠いものになっていることを理解している。

 それでもレイヴィスには夢人に自分の持っている知識を話すべきだと判断した理由があるのである。

 

「100パーセント物語通りに進むわけないとわかっているが、俺の勘だけど夢人は確実に事件に巻き込まれるような気がしてな。だから、少しでも役に立てばと思って……」

 

「おい、こら待て。そこで何で俺が確実に巻き込まれるだなんて思ったんだよ?」

 

 レイヴィスの話す理由に、夢人の目つきが険しくなる。

 話の通り、事件が起きるのならば夢人としても解決するために協力を惜しむつもりはない。

 だが、巻き込まれると断定されてしまっていては気分が悪いのである。

 

「お前に自覚はないかもしれないが、この世界はお前を中心に……いや、勇者と言う存在を中心に回っているような気がするんだ。だから、もし巻き込まれても大丈夫なように、知識として知っておいてもらいたかったんだよ」

 

「……そうかよ」

 

 自分のことを考えて行動してくれたレイヴィスの気持ちは嬉しいが、夢人の表情が晴れることはない。

 眉をひそめながら視線を落として、夢人は右手首に巻かれているブレスレットを強く意識する。

 

(俺はまだ“勇者”の運命に縛られているのか……本当の自分を始めるのって難しいな、フィーナ)

 

 今はもういない娘のことを思い、夢人は悲しげに眼を細める。

 アカリを消して唯一の『再誕』の女神になろうとしたフィーナ。

 名前すらデルフィナスと言う存在からの借りものだった彼女だったが、最後に“フィーナ”と名付けられ、夢人とネプギアの娘としての存在を確立して満足そうに笑って消えた姿を、右手に巻かれたブレスレットは常に思い出させて来る。

 あの時から夢人も“勇者”としてではなく、“ただの”御波夢人としてゲイムギョウ界で生きていこうと決めていた。

 しかし、実際にその道は険しく、未だ夢人には“勇者”の評価が付きまとう。

 いい噂であれ悪い噂であっても、ゲイムギョウ界で生活する上で夢人には“勇者”と言う肩書が常に重くのしかかる。

 だが、夢人自身もう“勇者”を名乗るつもりはない。

 レイヴィスが言うような特別な意味を持つ人物にもなるつもりはなかった。

 ……何故なら、夢人は今の自分に何ができるのかわからないからである。

 

「まあ、あまり気にし過ぎる必要もない。ただ、知っていれば対処できる事があるかもしれないと思っただけだからな」

 

「そうね。その知識に囚われ過ぎて問題起こした奴や、考えすぎて気持ち悪くなる奴もいるからね」

 

『ぐっ!?』

 

 自分の伝えた知識を重く受け止めて浮かない顔をしているのだと勘違いしたレイヴィスが夢人にフォローを入れると、それを黙って見ていたアイエフが鋭く言葉のナイフを投げ入れる。

 心当たりのある2人はふいに胸を押さえて苦しそうにする。

 

「と、とりあえず、わざわざレイヴィスもありがとうな。言われた通り、参考程度にとどめておくよ」

 

「あ、ああ。是非そうしてくれ」

 

 ぎこちなく頬を引きつらせながら笑みを浮かべる2人を、アイエフはうんうんと腕を組んで頷く。

 その言葉を完全に信用したわけではないが、とりあえず2人に危うい雰囲気は感じられないので納得することにしたのである。

 

「さて、話は終わったな? 悪いんだが、これからリーンボックスに行かなきゃいけないんだ」

 

「リーンボックスに? 何しに行くのよ?」

 

 申し訳なさそうに両手のひらを合わせる夢人を見て、どうしてワンダーを持ってきてくれと言われたのかを理解することができたアイエフだったが、新しい疑問が生まれて尋ねてしまう。

 すると、夢人は一瞬悲しそうに目を伏せ、すぐに口元を緩めて努めて明るく答える。

 

「先送りにしてきた答えを伝えに、な」

 

 それを聞いたアイエフとレイヴィスは何も言わなかった。

 これから夢人が何をしようとしているのかを、2人はその短い言葉で正確に理解したからである。

 だから、2人が夢人に何も言うことはない。

 

 例え、夢人が無理に笑おうとしていることに気付いたとしても……




という訳で、今回は以上!
ちょいと登場した彼女でしたが、本格参戦はもうちょい後です。
……再登場までにもっと彼女の口調を再現できるようにしないと。
それでは、 次回 「バイバイ、マイスター」 をお楽しみに!
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