超次次元ゲイムネプテューヌ Re;夢のヒーローを目指して   作:ホタチ丸

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はい、皆さんこんばんわ!
気づけば、また一週間も経ってました。
遅くなってしまい、申し訳ありません。
それでは、 挑発×激突×思い出 はじまります


挑発×激突×思い出

「おはようございます、ブラックハート様」

 

 ラステイションの教会にてアヴニールからの来訪客が待つ談話室に職員に案内されたブラックハートを出迎えた人物は紅色の髪の女性であった。

 不自然に顔の右側だけを隠すように前髪を垂らした青白い肌の女性は、ブラックハートに向けて柔和な笑顔を浮かべながら挨拶を続ける。

 

「我らが女神ブラックハート様の貴重なお時間をいただき、誠にありがとうございます。私はアヴニールにて社長秘書を任されております、マーマレードと申します」

 

「……そう。別に構わないわよ。どこかの誰かさん達のせいで私の時間は大安売りしているんだから」

 

「め、女神様、そのような言い方は……」

 

「ふふふ、それは羨ましい限りですわ」

 

 礼儀正しそうにお辞儀をしたように見えるマーマレードに、ブラックハートは顔をしかめながら皮肉を織り交ぜて言い返した。

 わざわざ“誰か”の部分を強調するブラックハートに慌てたのは、談話室まで案内してきた職員である。

 ブラックハートを宥めようとする職員の言葉を遮ったのは、微笑を浮かべるマーマレードであった。

 その白々しく思えるマーマレードの態度にブラックハートの目は険しくなり、傍にいた職員の胃がキリキリと痛み出す。

 

「羨ましいなら代わってあげてもいいわよ? 三食昼寝付きで、とても快適な毎日が送れると思うわ」

 

「御冗談を。私なんて寝る間も惜しんで働くことで、初めてあなた様やラステイションのために尽くすことができる身。せっかくの厚意を無下にしてしまうことを申し訳なく思いますが、謹んでお断りさせていただきます」

 

「――っ、へえ、随分と立派な心掛けね。あなたのように私の代わりとなって働いてくれる人がいて、本当に助かってるわ」

 

「もったいなきお言葉、誠に感謝いたします」

 

 2人の会話を聞いていて、職員は談話室の気温が数度下がったように錯覚してしまう。

 無理に笑おうとしてこめかみをピクピクと動かしているブラックハートの傍にいるだけで、職員は噴き出してくる汗を止めることができない。

 まるで石のように体を硬直させ、顔色だけを次第に悪くしていく。

 表立って敵意をぶつけていないものの、ブラックハートが口にする言葉の数々は職員にも心当たりがあり、非常に居心地が悪いのだ。

 同じように正しく理解しているはずだと思っているマーマレードが涼しげに受け流しているから余計である。

 まるで自分1人だけが責められているような気分になった職員は、一刻も早くこの場から離れたいと願ってしまう。

 

「……まあいいわ。それで、そんな殊勝な社長秘書様がわざわざこんな私に会いに来るなんて、とても大事な話なんでしょうね?」

 

「ええ、それはもちろんです。それと、できれば職員の方には席を外してもらいたいのですが……」

 

「っ、は、はい!! そ、それでは私は業務に戻らせていただきます!! 失礼します!!」

 

 貼り付けたような笑みを崩さないマーマレードに強い不快感を感じたブラックハートは、話を進めようと面会を求めてきた目的を聞きだそうと話題を振った。

 挑発的な物言いに反応することなく、マーマレードはブラックハートの後ろにいた職員へと申し訳なさそうに退室を促す。

 すると、職員はこの場の雰囲気から解放されると言う喜びに破顔し、すぐさま談話室を後にする。

 残されたブラックハートが呆れたように足音を立てて離れていく職員の背中を見送っていると、マーマレードはクスリと笑いだす。

 

「ふふ、彼は随分と仕事熱心なのですね。これもあなた様への信仰あってこそ、と言ったところでしょうか?」

 

「……御託はもういいわ。さっさと用件を話しなさい」

 

 いちいち自分の神経を逆撫でするように話すマーマレードに、ブラックハートは強い口調で命令する。

 きつく睨むような目で問いかけてくるブラックハートが椅子に座ったことを確認してから、マーマレードは向き合うように椅子に座る。

 その顔は先ほどまで浮かべていた貼り付けた笑みと違い、引き締められた真剣な表情であった。

 金色の瞳でブラックハートを真っ直ぐに見つめ返しながら、マーマレードは口を開く。

 

「ブラックハート様にお伝えしたいことは他でもありません――アヴニールのことです」

 

「アヴニールの?」

 

「はい。単刀直入に申し上げますと、アヴニールの上層部は他国と繋がっています」

 

「なあっ!?」

 

 マーマレードから告げられた一言に、ブラックハートは思わず椅子から跳び上がるように立ち上がって驚いてしまう。

 椅子と共に設置されていた机を強く叩いて、ブラックハートは身を乗り出してマーマレードに詰め寄る。

 しかし、マーマレードはまったく動揺した様子を見せずに言葉を続けながらホチキスで留められている紙の束を机の上に置く。

 

「驚かれるのも無理はありませんが、残念なことに事実なのです。アヴニールの上層部は、定期的に他国に製造した兵器を大量に輸出しています。こちらがその証拠です」

 

「見せなさいっ!! ――っ」

 

 机の上に置かれた紙の束を奪い取るように手に取ったブラックハートは書かれている内容を確認し始める。

 すると、次第に握っている紙の皺は酷くなり、表情も険しさを増す。

 

 マーマレードが出した紙の束には、アヴニールが製造している製品の輸出記録が記載されていた。

 これがもし、ただの1企業が記録として残している物であったのならば、ブラックハートも珍しいとは思わない。

 国同士で交流が完全にないわけではないからだ。

 互いに刺激を受けあうことで切磋琢磨している技術も少なからずある。

 しかし、向上する技術もあれば、他国の信仰が広がる恐れも存在している。

 だからこそ、他国への渡航許可や輸出入の審査や検閲を教会が取り締まっているのだ。

 当然、それらすべては詳細に記録されてしかるべきものである。

 ――だが、マーマレードが取り出したアヴニールの輸出記録は“どこへ”送ったのかが黒く塗りつぶされていたのである。

 

「残念ながら、私もどこへ製品を輸出しているのかはわかりません。しかし、明らかに上層部はアヴニールの製品を他国に横流ししています」

 

「……確かに、これを見る限りではそうね」

 

 自社の犯罪を告白するマーマレードの姿に、ブラックハートの沸騰しかけていた思考は次第に冷静さを取り戻していく。

 輸出記録と真剣な表情で自分を見つめてくるマーマレードを見比べながら、ブラックハートは頭の中で情報を整理する。

 

 アヴニールが他国と繋がっているかもしれないと言う疑いは無視できないものである。

 今までは例え教会にまで影響を及ぼすほどの大企業と言えども、ラステイションの発展のために尽くしているものだとブラックハートは思っていた。

 それならば、ブラックハートは悔しくても守護女神戦争で長い間ラステイションを留守にしていた自分の落ち度を認められる。

 しかし、アヴニールが他国に関係しているとなると、話は違ってくる。

 気付かないうちに侵略行為を受け、国が乗っ取られそうになっていたのだ。

 ブラックハートは取引をしていた“どこか”がラステイションを手に入れるために教会だけでなく、女神である自分の動きも押さえていたのだと理解する。

 このままアヴニールの支配が続けば、必然的にブラックハートへの信仰は減少し続ける。

 しかし、対して取引をしていた“どこか”の女神のシェアは増え続けていく。

 そうなってしまえば、ラステイションという国は“どこか”へと取り込まれてしまう。

 例えラステイションが取り込まれなくても、弱り続けるブラックハートが守護女神戦争で勝ち残ることは不可能だ。

 ――つまり、このままアヴニールを放置してしまえば、遅かれ早かれラステイションという国はゲイムギョウ界からなくなってしまうのである。

 

 だが、ブラックハートはあまり焦りを感じていなかった。

 むしろ、この情報をもたらした相手がアヴニールの社長秘書だと言うことに困惑を隠せない。

 

(これが嘘だと言う可能性もある……でも、それならなんでコイツはわざわざ私にアヴニールの行動を知らせたの? コイツ――いえ、アヴニールは私に何をさせようって言うの?)

 

 ブラックハートからしてみれば、自社が不利になることを報告しに来たマーマレードの真意がわからないからこそ疑心暗鬼に陥ってしまう。

 そんなブラックハートの心情を察したのか、マーマレードは話だす。

 

「アヴニールの社長秘書である私の言葉が信じられないのも無理はありません。しかし、あまり悠長にことを構えておられますと、取り返しのつかないことになってしまいます」

 

「……私を脅しているつもり?」

 

「いいえ、滅相もございません。どう判断するのかはあなた様次第です――それと、これをお渡ししておきます」

 

 動くことを強要しているように思えるマーマレードの言葉に、ブラックハートは眉間に力がこもってしまう。

 射抜くようなブラックハートの視線を受けながらも、マーマレードは冷静に1枚のディスクと地図、ICチップが埋め込まれているカードを机の上に置く。

 

「このカードを使えば、地図に記載されていますアヴニールの工場に入ることができます。同時に中のセキュリティーシステムもダウンしますので、ブラックハート様自身でアヴニールがなにを開発しているのかをご覧になってください。それと、このディスクについてなのですが……」

 

「ちょっ、ちょっと待ちなさいよ!?」

 

 机に並べた物を順に説明していくマーマレードの言葉を遮り、ブラックハートは強く机を叩いて立ち上がった。

 

「1人で勝手に話を進めるんじゃないわよ!! 今までのことやさっきの話を聞いて、私があなたを信用するとでも思ってるの!!」

 

「……信用してもらえなくても構いません。私の話が真実かどうかはブラックハート様の判断に任せます」

 

 鋭い目で睨んでくるブラックハートから目をそらすことなくマーマレードは言いきると、椅子から立ち上がって軽く頭を下げる。

 

「今日から7日、ブラックハート様にはアヴニール本社からの依頼により、社長秘書の私と共に各地の工場を視察してもらう予定となっております――ですので、最終日にこの第三重機倉庫にいらしてください」

 

「……へえ、社長秘書様直々に案内してもらえるなんて嬉しいわ。もてなしてくれるのはあなただけなのかしら?」

 

「はい。アヴニールは人件費にお金を出すくらいならば、新しい商品開発に力を注いでおりますので」

 

 ブラックハートは自分が行動するようにお膳立てがされていたことをマーマレードの言葉から察することができた。

 ――言外に6日間の自由を得たのである。

 最終日にマーマレードと合流するまでは、ブラックハートが何をしても自由だと言われたようなものだ。

 手のひらで踊らされているような屈辱を感じるとともに、ブラックハートはこの期間をラステイションの実情を知るためのチャンスだとも捉える。

 

「それでは職員の方々には話を通しておきますので、6日後にアヴニールの第三重機倉庫前でお会いしましょう。失礼します」

 

 伝えたいことは伝えたとばかりに、マーマレードは扉の前でブラックハートに一礼するとともに談話室を後にした。

 残されたブラックハートはマーマレードが置いていった地図へと目を向けながら決意を固める。

 ――何故なら、ブラックハートに動かないと言う選択肢は最初から存在していなかったのだから。

 

(例え罠だとしても、今の私にとってチャンスであることに違いはない――私を自由にしたこと、後悔させてやるわ!)

 

 疑問は尽きないが、ブラックハートは迷いなくマーマレードの言葉が真実かどうかを確かめるために、地図に記載されているアヴニールの工場へと行くことを決断する。

 6日間しかないと言う制限を1分1秒でも無駄にしないように、ブラックハートはすぐさま教会から1番近い工場へと向かおうとする。

 

 ――そんな風に談話室を出て早足で廊下を歩くブラックハートの姿を先に退室したはずのマーマレードは隠れて見つめていた。

 

「……まったく、世話の焼ける奴だ」

 

 言葉とは裏腹に、マーマレードの口元は軽く笑んでいたのであった。

 

 

*     *     *

 

 

 ザラット神殿。

 その名が表す通り、過去にはラステイションの教会があったのではないかと推測される場所である。

 しかし、今では見る影もなく、建造物があった名残は皆無である。

 理由はモンスターに壊されたのではないか、微動ながら動き続ける大陸の影響ではないかなどの諸説あるが、どれも確証があるわけではない。

 短い区間で高低差の激しい土地でもあり、モンスター達の縄張りが明確になっているのも特徴だ。

 そのためダンジョンでありながらも、人為的に舗装された道を外れなければモンスターに遭遇しにくい。

 

 だからこそ、ファルコムは夢人の剣の指導には打って付けの場所だと思ったのである。

 シアンに剣の指導のためにいい場所はないかと尋ねて、このダンジョンを紹介されたのだ。

 さすがに街中で剣を振り回すわけにはいかないので、できる限り危険の少ないダンジョンが近くにあったことにファルコムは安堵する。

 

「よし、それじゃ早速始めようか」

 

「はい! よろしくお願いします、ファルコム先生!」

 

「だから、先生はやめてってば」

 

 剣を振り回すのに手ごろな開けた場所に到着すると、ファルコムは周りの様子を確認してから夢人へと声をかけた。

 元気よく頭を下げる夢人に、ファルコムは照れたように笑いながら口を開く。

 

「まずは確認のために1度剣を上段から振り下ろしてくれないかな?」

 

「はい!」

 

 返事をすると、夢人はシアンから渡された“アルマッス”と言う刀を中段に構えた。

 

 ブレイブソードを1日貸し出す代わりに、夢人が受け取ったシアンの工場で開発途中の武器である。

 試作型のため、性能を確かめるモニターとしての役目も夢人は引き受けているのだ。

 

 中段に構えたアルマッスを頭の上まで振り上げると、夢人はそのまま勢いよく振り下ろす。

 

「ストップ!!」

 

「っ!?」

 

 ――振り下ろした途端、ファルコムからいきなり止められてしまう。

 突然の呼びかけに驚いて思わず肩を揺らす夢人に構わず、ファルコムはアルマッスを握っている両手をしげしげと見つめる。

 

「……やっぱり、見間違いじゃなかったんだ」

 

「え、えっと、何かおかしいところがあるのか?」

 

「うん、おかしいところと言うよりも治さなきゃいけないところがあるんだよ――そのまま剣を握っている両手首を見てみて」

 

「手首?」

 

 納得したように頷くファルコムの意図がわからず、夢人は遠慮がちに尋ねた。

 すると、ファルコムは夢人に手首を見るように指示を出す。

 不思議そうに自分の手首を見つめる夢人に、ファルコムは説明を始める。

 

「夢人さんは今、剣を振り下ろした状態で親指から腕が一直線になってるでしょ? それって剣を振り下ろした時に腕と一緒に手首を動かしているってことなんだよ」

 

「そう言われると、確かにそうだよな」

 

 ファルコムの説明に、夢人は納得したように頷いて答える。

 中段に構えた時には親指ではなく、小指から腕にかけてを一直線にしていた。

 意識的に手首を動かしていたわけではなかったため、夢人もファルコムに指摘されて初めて気付かされたのである。

 

「今夢人さんがしたように手首を動かしちゃうと、腕で振り下ろした勢いが殺されちゃうだけでなく、怪我の元にもなるんだ」

 

「あっ、だから、両手が使えなくなるかも知れないって言ったのか」

 

「そう、特にブレイブソードみたいな重たい剣を使うのなら尚更ね」

 

 指導をお願いした時に言われた言葉を思い出し、夢人はファルコムが注意していることを理解する。

 

 今の夢人の剣の振り方は手首だけで小さく動かしているだけなのである。

 どれだけ勢いをつけようとも、手首を動かしてしまうことで全て台無しにしてしまっていたのだ。

 当然、その負荷は全て手首に集中する。

 そんなことを続けていれば、どのような剣の達人でも手首を故障してしまうだろう。

 特にブレイブソードと言う通常よりも重たい剣を使い続けようとする夢人であれば、遠くないうちに間違いなく手首は限界を迎えてしまう。

 

「まずはその癖を治すために、手首を意識して素振りを続けることから始めてみよう。コツとしては最後まで振り抜かないで、元の構えに戻すように少しだけ腕で引き上げることだよ」

 

「わかった!」

 

「後、剣の先が下がり過ぎないように注意して。速さは気にしないでいいから、1回1回集中してね」

 

 怪我を防止するだけでなく、夢人に無理のない剣の振り方を身につけてもらおうとファルコムは指示を出す。

 

 元々、昨日の試練の洞窟で夢人の剣の振り方を見ていたため、ファルコムは半ばこうなるとは予測がついていた。

 だからこそ、シアンにブレイブソードを貸し出すことを許可したのである。

 アルマッスの重さはファルコムからしてみれば、標準的な剣の基準で言うと軽い部類に入る。

 初心者の夢人が剣の振り方を身につけるためにはピッタリであった。

 加えて、シアンに協力すると言う目的も果たせるのである。

 

 ――ブン、ブンと夢人がアルマッスで素振りを続ける音が辺りに響く。

 単純な反復動作とはいえ、数をこなしていけばいくほど疲労は溜まっていく。

 しばらくすると、素振りを続ける夢人の額からは止めどなく汗が流れ始める。

 

(結構、きついな……っ!)

 

 次第に呼吸が乱れていくのを自覚しながらも、夢人はファルコムに指摘された手首を意識し続ける。

 1回1回集中しながら素振りをすることは、夢人の想像以上に厳しいものであった。

 

 そもそもゲイムギョウ界に来てからブレイブソードを“再現”するまで、夢人には真剣を使った経験なんてものはなかったのである。

 使うことをアイエフに禁止されていたこともあったが、夢人自身魔法に頼りきりだったこともあり、当然真剣の扱いには慣れているわけがない。

 そのせいで余計に集中力を使ってしまっているのだ。

 さらに、今まで意識したことがなかった手首と言う部分も厄介であった。

 上段からの振り下ろしなら、夢人も木刀や氷の魔法で手を覆う――アイス・エッジ・ソードで経験済みである。

 しかし、夢人はどちらでも手首を意識したことはなかった。

 木刀の時は軽かったこともあって手首を意識していなかったこともあるが、どちらかと言うと投げつけたりしたことの方が多かったのだ。

 アイス・エッジ・ソードに至っては、そもそも氷で腕ごと覆ってしまうために手首を動かすことすらできなかったのである。

 だから、夢人にとって手首を意識した素振りは肉体的にも精神的にも疲れる動作なのだ。

 加えて……

 

「だから、あいちゃんはわたし達と一緒に旅をするパーティーの仲間なの!! RPGで言うところの、旅慣れしていて随所随所で説明口調になるちょっと鬱陶しいかもしれないけど頼りになるお助けキャラみたいなポジションにいるのがあいちゃんなんだから、ぜーったいに渡さないよ!!」

 

「そんなの関係ないよ!! あいちゃんはアタシの嫁の1人で、そんなお助けキャラみたいなチョイ役で終わるポジションじゃないって!! 恋愛ゲームで言うところの、パッケージの真ん中にいるメインヒロインの右隣辺りにいるツンデレ枠なんだから!! しかも、こてこての定番イベント盛りだくさんでメインヒロインよりも人気が出るタイプだよ!! だから、ぜーったいにアタシのヨメにしてみせるよ!!」

 

(後ろがうるせえええ!?)

 

 ――同行してきたネプテューヌとREDがアイエフの争奪戦をしていたのだ。

 やることがなく暇であったネプテューヌとREDはおもしろそうだと言う理由で、夢人とファルコムについてきたのである。

 しかし、夢人達のやっていることは地味な素振りだけであるため、飽きてしまった2人は共通の話題――アイエフについて話し合い始めてしまったのだ。

 それにより、2人はヒートアップしてしまい、互いに本人の預かり知らぬところでアイエフのキャラ付けを主張し始めたのである。

 

 ……因みに、アイエフは清々しい笑顔でアヴニールについての情報を集めるために単独行動をしている。

 シンも独自の情報網を利用すると1人で行動し、残ったコンパやプルルート達はシアンの母親の切り盛りする食堂の手伝いをしているのであった。

 

「そんなこと絶対にさせないよ!! パーティーのリーダーとして、あいちゃんは誰にも渡さないんだから!!」

 

「アタシだって、せっかく出会えた可愛いヨメを簡単に諦めるわけにはいかないよ!! ――あっ、もちろん、ネプテューヌもアタシのヨメだからね!!」

 

「ねぷっ!? いつの間にかわたしもヨメにされてたの!?」

 

「当然でしょ!! ゲイムギョウ界にいる可愛い女の子達はみーんなアタシのヨメなんだから!!」

 

「……RED姉ちゃんって、本当にぶれないよなあ」

 

 知らぬうちに自分もREDのヨメにされていたことに、ネプテューヌは目を大きく見開かせて驚いてしまった。

 さも当然と言った顔でREDは片手を大きく広げ、もう片方の手を胸に添える。

 ここまで夢人達を案内したリュータのつぶやきが虚しく響く。

 すると、ネプテューヌは恥ずかしそうに頬を染めて口元を隠しながらREDから視線をそらす。

 

「で、でもでも、わたし達会ったばかりだし……そんな急にプロポーズされても……」

 

「これから知り合っていけばいいんだよ!! ヨメになることに時間なんて関係ない!! ――大事なのは第一印象のインスピレーションなんだから」

 

「っ、REDちゃん……っ!」

 

「ネプテューヌ……」

 

「――いい加減、静かにしろ!!」

 

「ねぷっ!?」

 

「みぎゃっ!?」

 

 無駄にいい雰囲気を展開する2人に我慢の限界を迎えた夢人は素振りをやめて怒鳴りだした。

 同時にアルマッスを地面に突き刺し、夢人は鬼のような形相で2人の頭を叩く。

 

「もー、何もぶつことないじゃん! ゆっくんの鬼畜!」

 

「そうだよ! アタシの髪に触っていいのはヨメだけなんだから! 夢人の変態!」

 

「――お前らがうるさいからだろ!! 集中してるんだから、静かにしていてくれよ!!」

 

 頬を膨らませて不満を訴える2人に、夢人は素振りの疲れも忘れて怒鳴り続ける。

 すると、2人は示し合わせたように顔を見合わせて口を開く。

 

「だってさー、ゆっくんがずっと同じことばっかりやってて見ててもつまらなくなってきたんだもんねー」

 

「もっとこう――モンスターと競争したり、滝から落ちてくる木とかを斬るみたいな派手なことをすると思ってたのにさー」

 

「そうそう! やっぱり、修行って言ったらそんな感じだよね!」

 

「うんうん! 必殺技を習得するために特別なことをするって言うのがお約束だからね!」

 

「……悪かったな、地味な素振りしかできない初心者で」

 

 盛り上がる2人の話題に言い返すことができない夢人はふてくされたようにそっぽを向いて素振りを再開しようとした。

 そんな夢人の反応に2人は慌ててフォローをしようとする。

 

「ごめんごめんって! ちょっとした冗談だってば!」

 

「緊張しているみたいだった夢人にリラックスしてもらおうとしただけだよ!」

 

「……本当に?」

 

 聞こえてきた言葉に耳をピクッと反応させると、夢人は疑わしげに2人の方へと振り向いた。

 事実REDの言う通り、夢人は慣れないことを人前でしているせいで緊張していた。

 2人の言ってることが本当なら、騒いでいたことはむしろ夢人のためであったのである。

 

『まあ、見ててつまらなかったのは本当だけどね』

 

「そんなことだろうと思ったよ!?」

 

 そんな淡い感謝を打ち消すように、2人は声を揃えて本音をぶちまけた。

 泣きたくなる気持ちを抑え、夢人は深く深呼吸をすると再び素振りを始めるために集中し始める。

 ……しかし、その心は幾分か楽になっていた。

 息を吐きだす時にその気持ちを自覚した夢人の頬は自然と緩まる。

 

(まったく――よしっ、やるぞ!!)

 

 内心で気合を入れ直し、夢人は素振りを再開する。

 その動作に先ほどまであった必要以上に意識していたぎこちなさはなくなっていた。

 騒いでいたネプテューヌとREDを怒鳴ったことで、夢人の緊張がほぐれて自然体に近づいた証拠である。

 そんな夢人を見て、2人は安堵の息を漏らした。

 見ていてつまらなかったのは本当であったが、2人が真剣に打ち込み過ぎている夢人を心配していたのも事実である。

 アイエフのことで騒いでいたことも別に狙っていたわけではない――結果的に夢人の緊張が解けてよかったと思っているだけだったのである。

 なんで2人が笑ったのかを理解できずに首を傾げるリュータと違い、嬉しそうにしている理由を察しているファルコムは苦笑してしまう。

 しかし、さすがに2人の内面までは読み切れずに多少美化して捉え、ファルコムは生温かい目で夢人を含めた3人を見つめるのであった。

 

 

*     *     *

 

 

 夢人が強くなろうと素振りを続けている一方で、約束をしたネプギアはシアンの工場にいた。

 1人で机の上に工具を広げ、ネプギアは嬉しそうに口元を緩めながら作業を続ける。

 

「ふんふふーん」

 

 鼻唄を歌いながらネプギアがしていることは、壊れてしまった夢人のNギアの修理である。

 シアンに掛け合ったところ、交換しなければいけない部品が手に入ると知った夢人は修理を願い出たのであった。

 しかし、自分達のことで忙しいシアンにNギアを修理する余裕はなかった。

 そんな時、ネプギアが自分から修理をすると言い出したのである。

 よって、ネプギアはシアンの工場にある個人で作業するスペースを借りてNギアの修理をしていたのだ。

 

「――うん、これで大丈夫!」

 

 元々することがパーツの交換だけであったため、ネプギアはさほど時間をかけずにNギアの修理を完了させた。

 画面に光が走り、正常に起動し始める。

 

「コレって……」

 

 ――しかし、起動して最初に映し出された映像にネプギアは言葉を失ってしまった。

 起動して最初に映し出された映像は、なんてことはないただの写真であった。

 別におかしいことは何もないはずだった。

 だが、ネプギアは映し出された写真を凝視する。

 

 映し出された写真には3人の人物が映っていた。

 夢人とネプギア――そして、2人に抱かれてはにかむアカリである。

 以前にルウィーの温泉に行った時の帰りに3人で撮った写真である。

 

「この子は……誰なの……?」

 

 ネプギアは写真に映っている自分と夢人が抱いているアカリを見つめて、戸惑いながらつぶやくのであった。




という訳で、今回は以上!
いやあ、俺ツイが面白すぎて一気に買って読んでしまいました。
あの世界観がとても大好きです!
ただレッドのキャラソンを買って出てきたカードがリザドさんだったのに吹いてしまいました。
それでは、 次回 「勘違い×決闘×連行」 をお楽しみに!
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