超次次元ゲイムネプテューヌ Re;夢のヒーローを目指して   作:ホタチ丸

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はい、皆さんこんばんわ!
寒くなったせいで布団に引きこもりがちになっていたらまた日にちが経っていました。
そろそろ本格的に寒さ対策しないと足先が……
それでは、 勘違い×方針×決闘 はじまります



勘違い×方針×決闘

「チャーハン大盛り1つ!」

 

「こっちはラーメン!」

 

「はーい(あせあせ)」

 

 新しく入って来たお客さんにお水を用意するため、わたしの足はちょっと小走りになる。

 ちょうどお昼時なこともあって、お客さんが次から次へとやってくる。

 

「お水です(どうぞ)」

 

「ありがとう」

 

「ちっちゃいのに偉いね」

 

「えへへ(てれてれ)」

 

 テーブルをお水を持っていくと、お客さんにお礼を言われた。

 嬉しくなって、自然と頬が緩んでしまう。

 

 ……夢人お兄ちゃんと再会した翌日、わたしはシアンさんのお母さんの食堂を手伝っています。

 どうしてわたしが“神次元”ってところに来たのかはよくわからないけど、夢人お兄ちゃんと再会できてよかった。

 昨日はあまりお話しできなかったけど、今日は夢人お兄ちゃんの特訓が終わってからお話しようって約束をしている。

 だから、夢人お兄ちゃんが帰ってくるまでお手伝いをしながら待っています。

 お客さんにお水を持っていったり、注文を取ったりと初めてのことばかりでちょっとドキドキしています。

 ……でも、ちょっと楽しいかも。

 

「チャーハンとラーメン、おまちどおさまですぅ。ごゆっくりどうぞです」

 

 厨房の方からコンパちゃんがさっき注文したお客さんのテーブルにラーメンとチャーハンを持っていく。

 ニコニコ笑いながら配ぜんするコンパちゃんに、お客さんは楽しそうに笑みを浮かべながら尋ねる。

 

「おっ、君可愛いね。さっきの子も初めて見るけど、新しい従業員さんかい?」

 

「はいです。しばらくここで働かせてもらうつもりなので、よろしくお願いしますです」

 

「こっちこそよろしく。こりゃ、料理以外でも楽しみが増えちまったよ」

 

 お客さんに褒められて、コンパちゃんは照れ臭そうに頬を染める。

 わたしもいつまでもボーっとしているわけにはいかないので、何かできることがないかと探す。

 

 今一緒にお仕事をしているコンパちゃんは、わたしの知っているコンパさんと違う人です。

 本当にそっくりなんだけど、コンパちゃんはまだコンパさんのような看護師じゃないみたい。

 似ているけど別人――だからと言うわけじゃないけど、わたしはこの人のことをコンパちゃんって呼ぶことにした。

 コンパちゃんもそう呼んでいいって言ってくれた。

 だから、コンパちゃんはコンパちゃんなの。

 

「いらっしゃいま……」

 

「――ロムちゃん」

 

「ネプギアちゃん? どうかしたの?」

 

 きょろきょろとお手伝いできることがないかと探していると、入口が開かれた。

 また新しいお客さんが来たんだと思って挨拶をしようとすると、入って来たのはネプギアちゃんだった。

 でも、何だか難しそうな顔をしている。

 呼ばれたこともあって、わたしはネプギアちゃんに近づいて何があったのかを尋ねる。

 すると、ネプギアちゃんはNギアを取り出してわたしに見せてくる。

 

「この写真の子が誰かわかる?」

 

「この子って――アカリちゃんのこと?」

 

 画面に映し出されている写真には夢人お兄ちゃんとネプギアちゃん、それにアカリちゃんの姿が映っていた。

 3人とも嬉しそうにはにかんでいて、幸せそうに見える。

 

「アカリ、ちゃん? この子はアカリちゃんって言うの?」

 

「う、うん(おどおど)」

 

「――そう、そうなんだ」

 

 悲しそうに写真を見つめたまま聞き返してくるネプギアちゃんに、わたしはびくびくしてしまう。

 すると、ネプギアちゃんは悔しそうに唇を噛む。

 その顔は泣くのを堪えているように見える。

 

 夢人お兄ちゃんと少しだけお話をした時にネプギアちゃんが記憶喪失になってしまったと聞いていたけど、本当だったんだ。

 きっと今のネプギアちゃんはアカリちゃんのことを思い出せなくて辛いんだと思う。

 わたしもラムちゃんのことを忘れちゃった時、本当に辛かった。

 誰よりも傍にいて、ずっと励ましてくれたラムちゃん。

 それなのに、思い出せないのがすごく辛かったことを覚えてる。

 あの時わたしが感じた気持ちを、今ネプギアちゃんも感じているんだ。

 だって、ネプギアちゃんもアカリちゃんのこと大好きだったんだもん。

 ――わたしもネプギアちゃんが皆のことを思い出すために何かできることはあるかな?

 

「大丈夫?」

 

「……あっ、うん。平気だよ。ちょっと気になっただけだから」

 

「無理しないでね。何かあれば、わたしもネプギアちゃんを助けるから(ぎゅっ)」

 

 今にも泣きそうな顔でいるネプギアちゃんはわたしが声をかけると、何でもないと笑って誤魔化そうとした。

 ネプギアちゃんが1人で辛いことを我慢しないようにと思って、わたしは頼ってもらおうと手をギュッと握ってあげる。

 

 大切な友達が辛い思いをしているのをそのままにしておけない。

 ラムちゃんに嘘をつかれて落ち込んだ時、ネプギアちゃんはわたしを勇気づけようとしてくれた。

 だから、今度はわたしの番。

 皆のことを忘れちゃったせいで悲しんでいるネプギアちゃんを、わたしが助けるんだ。

 

「ありがとう、ロムちゃん。ふふ、頼りにさせてもらうね」

 

「任せて(にこっ)」

 

 わたしの気持ちが通じたのか、ネプギアちゃんはふわっと柔らかい笑みを浮かべる。

 ネプギアちゃんが元気になったと分かり、わたしも嬉しくて口元がほころんでしまう。

 

「そ、それでその……早速なんだけど、もう1つだけ教えて欲しいことがあるんだ」

 

 ほんわかした気持ちでいると、ネプギアちゃんは遠慮がちに尋ねてくる。

 首を傾げながら待つわたしに、ネプギアちゃんはもじもじしながら口を開く。

 

「――私と夢人さんってこ、こここ恋人同士だったんだよね?」

 

「………………えっ?」

 

 頬を赤らめながら尋ねてくるネプギアちゃんの言葉を、わたしは一瞬理解できなかった。

 特に“恋人”と言う単語に恥ずかしさを感じてるみたいで、声が上ずっている。

 固まったまま思わず声を漏らしてしまったわたしに構わず、ネプギアちゃんは言葉を続ける。

 

「そ、そのさ、ロムちゃんは知らないかもしれないけど、私と夢人さんは両思いだったわけで……何だか夢人さんに避けられているみたいで確信が持てなかったけど、こんな風に親子で写真を撮ってるんだから、やっぱりこ、こここここ恋人同士なんだよね!? それとももう結婚してたのかな!?」

 

「えっ、あの、その、ネプギアちゃん今……」

 

「――きゃあああああ!?」

 

『っ!?』

 

 顔を真っ赤にして目をグルグル回すネプギアちゃんの口から出た言葉に戸惑いながらも、わたしはその中で気になる単語を聞きとった。

 

 ……親子、ネプギアちゃんは3人で撮った写真を見てそう言ったんだ。

 もしかして、アカリちゃんのことを思い出したのかな?

 

 確かめようと思ったけど、急に悲鳴が聞こえてきたせいでできなかった。

 驚いて体をビクッとさせたわたしとネプギアちゃんは、すぐに悲鳴が聞こえてきた方へと顔を向ける。

 悲鳴が聞こえてきたのは厨房からだった。

 

「火が!? 誰か火を止めて!?」

 

「あわわわ~!? お水はどこ~!?」

 

「油に水をかけちゃだめですよ!? 消火器を使うですぅ!?」

 

「ぴいにおまかせ!! それー!!」

 

『っ、きゃあああああ!?』

 

 ――厨房では消火器の粉がいっぱい舞っていた。

 ミモザさんがお料理していた鍋の火の勢いが強くなりすぎたせいでパニックになったのが原因みたい。

 慌てて水道から水を汲んで火を消そうとしたプルルートちゃんをコンパちゃんが止めると、ぴいちゃんが消火器の線を抜いてしまった。

 そのまま勢いよく飛び出した消火器の白い粉が火だけじゃなくて、3人にもかかってしまっている。

 ……すごく大変なことになってる。

 周りのお客さん達も食べる手を止めて唖然としている。

 

「まっしろー! ぷるると、まっしろしろー!」

 

「……ぴーしぇちゃん~」

 

「……ケホッ、ゴホッ、口の中に粉が……気持ち悪い……」

 

「……とりあえず、早くお片付けしちゃいましょうです――お騒がせしてごめんなさいです」

 

 お腹を抱えて笑うぴいちゃんに、プルルートちゃんは眉をひそめながら怒ってるような声を出す。

 1番消火器の粉を被ってしまったらしいミモザちゃんは苦しそうに青い顔で俯いている。

 コンパちゃんは近くにあった布巾で顔を拭くと、お客さんに頭を下げて謝る。

 

「あ、あははは……このままだとお客さん達にも迷惑がかかるし、私達も片付けを手伝いに行こう」

 

「うん」

 

 乾いた声で笑うネプギアちゃんの提案に乗り、わたし達はコンパちゃん達のお片付けを手伝うために厨房へと向かう。

 

 ……あうぅ、ネプギアちゃんがアカリちゃんのことを思い出したのかを確認できなかった。

 でも、3人で撮った写真を見て親子とか夢人お兄ちゃんと両思いだってことを思い出したなら――って、あれ? 恋人同士?

 アカリちゃんのことを思い出したのかと思ってそっちばかり気にしていたけど、夢人お兄ちゃんとネプギアちゃんって恋人同士じゃないはずなのに……

 もしかして夢人お兄ちゃんの告白から逃げちゃったってことを忘れてるの?

 でも、ネプギアちゃんの言う通り、2人は両思いなんだし、このままの方がいいのかな?

 ――後で、夢人お兄ちゃんに確認しておこう。

 

 

*     *     *

 

 

 ザラット神殿の開けた場所、モンスター達の縄張りに重ならない素振りを続ける夢人。

 そんな夢人を見続けることに飽きたらしいリュータは最初はうろうろと辺りの様子を見渡したりしていたが、やがて疲れたように手ごろな岩に腰をかける。

 すると、顔を支えるように両手で頬づえをつきながらファルコムに声をかける。

 

「なあ、ファルコム姉ちゃん。あんな風に素振りをするだけで、あのかっこいい剣を使いこなせるようになるの?」

 

「当然、無理に決まってるよ」

 

「――だあああっ!?」

 

 リュータの何気ない質問に、ファルコムは笑顔で即答した。

 当人であり、現在進行形で素振りをしていた夢人は思わず前のめりに倒れそうになってしまう。

 何とかアルマッスを杖のようにすることで倒れることはなかったが、集中が途切れてしまった。

 額からドッと汗が噴き出し、腕や足も小刻みに震えだす。

 だが、そんなことなど二の次だと言わんばかりに夢人は切羽詰まった表情でファルコムを見上げて尋ねる。

 

「ふぁ、ファルコム? それっていったいどういう意味……」

 

「うん、ちょうどいいからこれからのことを説明するよ。夢人さんも辛いだろうけど、急に休まないで軽くストレッチしながら聞いてくれるかな?」

 

「お、おう――すぅ、ふぅ」

 

 このまま仰向けになって地面に転がってしまいたいと言う気持ちを抑え、夢人はファルコムの指示通りゆっくりと息を整えながら背筋を伸ばす。

 他にも肩や首をぐるりと回したりしながらも、ファルコムの言葉を聞き逃さないように耳を傾ける。

 

「まず、今夢人君にしてもらっている素振りは最低限剣を扱う上で必要になってくることであって、あの剣――ブレイブソードを扱えるようにするためじゃない。ここまではいい?」

 

「まあ、確かに手首の癖を直すだけで強くなれるわけないよね」

 

「それじゃあ、やっぱり必殺技の特訓とかするの? どこかの一子相伝の技や流派の修行法でゆっくんを魔改造しちゃうってこと?」

 

「そんなことはしないよ」

 

 興味を引かれてわくわくしているネプテューヌとREDに問いかけるようにファルコムは説明しようとした。

 すぐさま質問してくる2人に苦笑しながら、ファルコムはこの場にいる全員に見えるように指を3本立てる。

 

「ブレイブソードを夢人さんが使えるようにするために必要なことは3つだと思うんだ」

 

「3つ? そんなに少ないの?」

 

「ううん、むしろ多すぎるくらいだよ。本当なら1つのことに集中しなくちゃいけないのに、夢人さんの場合は同時に3つもやらなくちゃいけないんだから」

 

「うっ」

 

 屈伸をする夢人に意味あり気な視線を送りながら、ファルコムはリュータの質問に答えた。

 ブレイブソードを扱うことができるよう指導して欲しいと言う難題をファルコムに押し付けてしまったことを改めて自覚し、夢人は気まずくなり横を向いてしまう。

 そんな夢人の様子に、ファルコムは苦笑しながら語りかける。

 

「別に夢人さんにブレイブソードを諦めて欲しいなんて言うつもりはないよ。できるかどうかは夢人さんのやる気次第なんだから」

 

「……いや、俺も簡単なことじゃないってことはわかってた。でも、ファルコムの負担も考えないで無茶なことを頼んじゃってさ」

 

「気にしなくていいよ。頼られることは嫌いじゃないし――そもそもやってもらうことも難しくないからね」

 

 夢人の感じている罪悪感を少しでも軽くしようと、ファルコムはお茶目にウインクしてみせた。

 

「あたしが考えてるメニューは、まず朝昼晩の走り込み。ペース配分を考えながら走る長距離走と全力でダッシュを繰り返す短距離走を毎日やってもらいたいんだ」

 

「それって体力をつけるため?」

 

「確かに持久力をつけてもらうってこともあるけど、1番は足腰を鍛えることだよ」

 

 ファルコムの説明に疑問を感じたネプテューヌが首を傾げながら尋ねた。

 すると、ファルコムは自分の太ももからふくらはぎにかけてを擦りながら口を開く。

 

「勘違いしやすいんだけど、剣の上達には上半身よりも下半身での体捌きを覚えた方が効率的なんだよ。人間は腕の力よりも足の力の方が強いからね。それにいくら完璧な剣の扱い方ができても、それを支える土台となる下半身がぐらついちゃったら台無しになっちゃうからさ」

 

「そっかー! つまり、走り込みをするのは夢人のバランス感覚がダメダメだからなんだね!」

 

「そ、そこまでは言ってないけど……でも、昨日見た限りでは夢人さんがブレイブソードを振った後、ちょっと前のめりに倒れがちになってるかなって思うんだ」

 

 納得したように手を合わせるREDに物申そうとした夢人であったが、苦笑気味に続けられたファルコムの言葉を聞いて何も言えなくなってしまった。

 何故なら、夢人にはファルコムが指摘している部分に心当たりがあるからである。

 

(……そりゃ、確かに今までブレイブソードをアイス・エッジ・ソードと同じ感覚で使ってたしなあ)

 

 昨日までのブレイブソードを使っていた自分の姿を思い浮かべ、夢人は遠い目をしてしまう。

 

 夢人はアイス・エッジ・ソードを使う時、いつも足にも氷の魔法で作ったスケート靴のような物――アイス・ローラーを利用していたのだ。

 当てて避ける――つまり、ヒットアンドウェイのような戦い方をしていたため、多少バランスを崩しても無理やり魔法の力を強めて強引に戦っていたのである。

 アカリが体内にいた頃の重くないブレイブソードを使っていた時も同様であり、夢人は戦い方を変える必要もなかった。

 しかし、魔法も使えず重くなったブレイブソードを扱うためには足腰の強化が必要不可欠になってくる。

 ブレイブソードを振る度にバランスが崩れて倒れそうになっていたので、夢人は余計にファルコムの言うことが正しいのだとわかってしまう。

 

「次に、体幹を意識しての横薙ぎの素振り。特に、前後の体重移動を注意してやってもらいたいんだ」

 

「さっきまでやってた縦振りとどう違うの?」

 

「振り下ろすだけの素振りはあくまで夢人さんの手首の癖を矯正するためのもので、横薙ぎはブレイブソードを扱う上で1番楽な振り方だよ」

 

 リュータが先ほどまで夢人がしていた振り下ろすだけの素振りの真似をしながら尋ねると、ファルコムは自分の剣を手に持って説明を始める。

 

「剣の構えで基本になるのは、どの位置に剣を構えておくかなんだ。大きく分けて、頭の上に構える上段におへその延長線上辺りに剣を握っている手が来るように構える中段――そして、腰よりも下に構える下段の3つかな。この中で1番疲れない持ち方ってわかる?」

 

「そんなの腕をダラーって下げてる下段じゃないの?」

 

「そう。常に剣を持ち上げていなければならない上段や腕を曲げたままで固定する中段よりも、特別力む必要のない下段は腕に必要以上に負担がかからないんだ」

 

 上段、中段、下段と剣を構えて見せながらファルコムが全員に問いかけた。

 言うと同時に肩を脱力させてふやけた表情でネプテューヌが答えると、ファルコムは剣を下段に構える。

 

「夢人さんに意識してもらいたいのは、この構えてる状態での体幹――つまり、頭からお尻までを真っ直ぐにしたまま、腰の回転と前後の体重移動だけでの横薙ぎだね。自分じゃわからないかもしれないけど、目線の位置がぶれないようにするとわかりやすいかも」

 

「ああ、うん。何となくわかる……こう、頭の位置を変えないで前足に全体重を移動するってことだろ?」

 

「そうそう……振り切った時、前足で強く踏ん張るだけじゃなくて、後ろ足の踵を上げてつま先だけで踏ん張るとやりやすいよ」

 

「了解!」

 

 ファルコムの説明を聞きながら、夢人は言われた通りに体を動かしてみる。

 腰を回すと同時に前足の膝を曲げ、後ろ足のふくらはぎを伸ばす。

 

「下段にどっしり構えた状態から一閃――これがあたしの考える1番理想的なブレイブソードの使い方だと思うんだ」

 

「居合みたいな感じってことか?」

 

「うん、それに近いかもね。鞘があるわけじゃないけど、両手で握ったブレイブソードを斜め下から斬り上げるからね」

 

 ファルコムの語る理想的なブレイブソードの扱い方を思い浮かべながら、夢人は自分の知識にある言葉に当て嵌めてみた。

 頷きながらファルコムは夢人に見本を見せる。

 ゆっくりとした動きであったが、先ほど注意した点が夢人にわかるようにファルコムは動く。

 

「一撃必殺――元々の切れ味に加えてブレイブソードのデメリットだった重さの勢いが付けば、何気ない一撃も必殺の一刀に変わる。だから、夢人さんにはブレイブソードの重さに振り回されない下半身を作ってもらうことが大事なんだ」

 

「やることは全部繋がってるってこと?」

 

「そう言うこと。走り込みで鍛えた足腰の土台を活かしてブレイブソードの使い方をマスターしてもらおうってことだね」

 

 先程説明した走り込みと横薙ぎの特訓が繋がっていることをファルコムは夢人に伝えた。

 闇雲に努力するよりも、目標地点を意識して集中してもらおうとした配慮である。

 

「最後にブレイブソードを途中で手放さないように握力をつけてもらいたんだ。これはお風呂に入っている時でいいから、手のひらを閉じたり開いたりと繰り返すだけ。道具を使わなくても、水の抵抗で握力が鍛えることができるんだ。だから、リラックスしながらブレイブソードを握る柄をイメージしてみて」

 

「……肩とか腕とかの余計な力を抜いて、水の中でブレイブソードを握るイメージをすればいいんだな?」

 

「うん、下段に構える時の力の抜き加減も覚えられるからね」

 

 夢人が確認するために質問すると、ファルコムはほほ笑みながら頷く。

 その笑顔を見て、夢人はますますファルコムに頭が上がらないと感じた。

 自分のためにちゃんとした特訓の内容を考えてくれたことに感謝を抱くと共に、絶対にブレイブソードを扱えるようになると改めて決意する。

 

「なんか本当に地味なことばっかりなんだね。もっとこう、一気にタタタタッタター!! 的なレベルアップするような方法ってないの?」

 

「剣の修行の基本は体作りだからね。地道にコツコツと訓練を重ねていくことが大事なんだ」

 

「なるほど。序盤で雑魚敵相手に経験値狩りをするくらいの忍耐力を持っていないと駄目なんだね」

 

「う、うーん、その例えはちょっとアレだけど……楽して強くなれるほど、剣の道は簡単じゃないってことだよ」

 

 修行内容が地味であったことにネプテューヌは期待していた分だけ落胆してしまう。

 それでも諦めきれず、ネプテューヌは派手な修行をしないのかを尋ねた。

 諭すようにファルコムが答えると、ネプテューヌは自己流の解釈をして納得を示す。

 ネプテューヌの納得の仕方が間違っているようで間違ってない気もするファルコムは苦笑しながら何とか話をまとめようとする。

 

「でもさー、そのやり方って1対1の戦いでしか使えないんじゃないの? 相手がいっぱいで、1度に襲ってきたらどうやって対処すればいいの?」

 

「……それが問題なんだよね」

 

 ふと疑問を覚えたREDが尋ねると、ファルコムは困ったように眉根を寄せた。

 

「あたしじゃ、多対1で上手くブレイブソードを使う立ち回りが思いつかないんだ。しかも、今教えているやり方も完全に待ちの状態――所謂、カウンターを狙うやり方で自分から攻められないって欠点もあるし……」

 

「――いや、そこまで気にしなくてもいいさ」

 

 無念そうに教えているブレイブソードの扱い方の欠点を並べていくファルコムの声を遮り、夢人は力強く笑みを浮かべる。

 

「1から10まで全部ファルコムに頼っても、俺が強くなるわけじゃないからさ。1歩ずつ確実に進んで俺自身が問題を解決していく――剣の道は楽じゃないんだろ?」

 

 真剣にファルコムが自分のために修行法を考えてくれることは嬉しいが、夢人もただ甘んじて受け入れるだけにはいかなかった。

 

 ――夢人は魔法の練習をしていた時のことを思い出す。

 何度試しても自分の体を傷つけながら出しか発動できない失敗魔法を成功させようとした日々と、これからブレイブソードを扱えるようにするために修行することが同じだと気付いたのである。

 かつてリゾートアイラン島での5pb.と会話で気付いた大切なこと――自分らしく思いっきりやるしかないと言うことを思い出したのだ。

 1週間と言う短いネプギアとの約束の期限もあるが、夢人が欲しい強さは証明するだけの強さではない。

 ネプギアを守っていける確かな強さを身につけるために夢人は強くなろうとしているのだ。

 だから、夢人は今できることに全力を尽くすと言う意思を言葉でファルコム達に示したのである。

 

 そんな夢人の決意が伝わったファルコムは柔らかく頬を緩める。

 

「そうだね。あたしはあたしの、夢人さんには夢人さんの剣の使い方があるものね。アレコレ考えてないで、実際に動いてみようか。その中で夢人さんのやり方を見つけていこう! あたしもできる限りアドバイスするからさ!」

 

「おう! よろしくな!」

 

 改めてファルコムも協力してくれると言ってくれたことが嬉しくなり、夢人はにかっと笑って握手を求めた。

 手を握りあって修行へのやる気を溢れさせる2人に対して、蚊帳の外であったネプテューヌとREDはつまらなそうに顔を見合わせる。

 

「……なんかゆっくんがかっこいいことを言って盛り上がってるけど、結局やることは地道な素振りや走り込みなんでしょ? そこのところどう思います、REDさんや?」

 

「……そうですねー、教えてもらってる立場で偉そうなこと言っても意味ないって感じですよね。しかも、揚げ足を取るみたいにファルコムの言葉を繰り返すところとか、うわあ―って思っちゃいますよね、ネプテューヌさんや?」

 

「……うんうん、わかるわかる。ゆっくん絶対に【あっ、今俺すごくいいこと言ったぜ!】的なことを考えてると思いますよ」

 

「……イタタタ、自分に酔っちゃってるってことですね。アタシ、リアルでそう言う人を見るの初めてかも」

 

「――お前ら、さっきからうるさいぞ!!」

 

 わざとらしく口元に手の甲を寄せながら、チラチラと夢人を見て敬語で話し続ける2人。

 聞きたくなくても耳に入ってくる2人の会話に、いい加減我慢の限界を迎えた夢人は顔を真っ赤にして怒鳴る。

 しかし、2人は驚くことなく、拗ねたように口を尖らせる。

 

「だってー、ゆっくんが修行するって聞いたから面白そうだなーって思ってついてきたのに、わたし達見てるだけで背景になってるんだよ! このままじゃ、ゆっくんのちょっといい話に埋もれて、わたし達の影がどんどん薄くなってきちゃうよ!」

 

「だから、もっとバーって派手なことをしようよ! アタシとネプテューヌで一斉に夢人に襲いかかって、それに対処する修行ってどうかな? これならアタシ達の影も薄くならないし、夢人の修行にもなって一石二鳥じゃん! ――ってか、これしか考えられないね! よーし、早速始めようか!」

 

「オッケー! 手加減抜きの本気で行くから、気を抜くとすぐに終わっちゃうよ!」

 

 自らの不満を告白し、ネプテューヌとREDはそれぞれ戦闘準備に入った。

 じりじりと距離を詰めようとする2人を止めようと、夢人は慌てて叫ぶ。

 

「待て待て!? そんなのお前らにボコられて終わりだろ!? 俺はストレスを発散させるサンドバックじゃないんだよ!?」

 

「ええー? 駄目なの? まったく、夢人の意気地無し!」

 

「ヘタレの女装趣味!」

 

「何とでも言――って、待てネプテューヌ!! それは関係ないだろ!!」

 

 全力で自分達の提案を断る夢人に、2人は悪態をつく。

 聞き流そうとした夢人であったが、REDの発言の後に続けられたネプテューヌの悪口を聞いて黙っていることができなかった。

 睨んでもまるで応えず嬉々として楽しそうな表情を浮かべる2人の様子に、夢人は諦めたように肩を落として素振りを再開しようと瞳を閉じる。

 

(……集中、集中。俺には1分1秒無駄にする余裕なんてないんだ)

 

 夢人は精神統一をして、乱れた心を落ち着かせようとする。

 思い浮かべるのは、修行を終えて強くなった自分の姿。

 そして……

 

 

*     *     *

 

 

 ――月明かりだけが差し込む部屋。

 中央に鎮座しているベッドしか見えない。

 そんなベッドの上で頬を赤らめながら座り込んでいるネプギアは恥ずかしそうに目を伏せながら口を開く。

 

「あ、明かりはつけないでください……恥ずかしいんです」

 

 暗闇の中でも恥ずかしさに顔を赤くしていることがわかるネプギアに、夢人はほほ笑みながらゆっくりと近づいていく。

 やがて、ベッドの横までやって来た夢人は徐にネプギアの顎に指を添わせて顔を上げさせる。

 

「あっ……やっ……そ、そんな見ないでください」

 

「恥ずかしがることはないさ。今日から夜でもネプギアのことをずっと離さないんだからな」

 

「夢人さん……」

 

 真っ直ぐ見つめられることに照れを感じるネプギアだが、言葉とは裏腹に目線を逸らすだけで夢人の手を振り払おうとしない。

 そんなネプギアに夢人は優しくささやく。

 すると、ネプギアは瞳を潤ませ、何かを期待するように夢人の顔を見上げる。

 

「――さあ、夜はこれからだ」

 

 そう言って、夢人はネプギアへと顔を近づけていく。

 受け入れるように瞳を閉じて待つネプギアに夢人は……

 

 

*     *     *

 

 

「ウェへ、ウェへへ――――――ハッ!?」

 

 ……と言う妄想をしたところで、夢人は周囲から浴びせられている白い目線に気付いて正気に戻る。

 慌てて周りを見ると、ネプテューヌ達はジト目で夢人を見つめていた。

 

「違う!? これは違うんだ!? これはその……えっと……ぎゃ、逆パターンだっただけで、本当はもっとちゃんと手順を踏んでだな……」

 

「――ゆっくん」

 

 しどろもどろになって支離滅裂なことを言い始める夢人を制し、ネプテューヌは静かにつぶやく。

 優しく肩を叩きながら、慈愛に満ちた表情でネプテューヌは夢人に言う。

 

「大丈夫だよ。わたしはゆっくんの言いたいこと、全部わかってるから」

 

「ね、ネプテューヌ……っ!」

 

「ネプギアから時々そう言う発作が出るって聞いてたからさ。どんなにモザイク処理が必要なくらい気持ち悪い笑い方をしていても、わたしはゆっくんのことを見放したりしないから安心してね」

 

「――うわああああああああああ!?」

 

 上げてから落とされたせいで、夢人は膝から崩れ落ちてしまう。

 頭を抱えながら丸くなり、夢人は恥ずかしさと居た堪れなさにその場で叫びながら地面をゴロゴロと転がり始める。

 

「ちょっ、夢人さん!? 落ち着いて!?」

 

「違う、違うんだよ!? 確かにちょっとだけそうなったらいいなあとか思ったりしていたけど……俺は……俺ってやつは……っ!?」

 

「意味わかんないよ!?」

 

 奇行に走る夢人に、さすがに傍観していられなくなったファルコムとREDは落ち着かせようと声をかけた。

 しかし、止まらずにゴロゴロし続ける夢人に2人は戸惑ってしまう。

 対して、ネプテューヌはしきりに頷きながらそんな夢人を生温かい目で見守り続けていた。

 

「……本当に強くなれんのかな?」

 

 一気に混沌としてしまった夢人達の雰囲気を感じ取り、リュータはぼそりとつぶやいた。

 真面目に強くなるための修行が見れると思っていたが、意味なく騒ぐだけでリュータは不安を覚えてしまう。

 

 ――そんなシリアスに戻りきれなかった空気を切り裂くように怒号が響く。

 

「――ネプテューヌッ!!」

 

「……ほえ?」

 

 突然聞こえてきた声に夢人達は一斉に声の聞こえてきた方を向いた。

 そこには、眉を吊り上げて怒りを隠そうともしないブラックハートがネプテューヌを睨みながら立っていた。

 

「あなたにこれ以上ラステイションを好き勝手させないわ!! ――あなたは今、ここで私が倒す!!」

 

 大剣の切っ先をネプテューヌに向けたまま、ブラックハートはそう宣言するのであった。




という訳で、今回はここまで!
ネプリバ3の発売までもうそろそろですね。
システム面は結構変わるみたいですけど、ストーリーに変化があるのか気になるところ。
本当、発売が待ち遠しいです!!
それでは、 次回 「連行×犯人×自己紹介」 をお楽しみに!
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