超次次元ゲイムネプテューヌ Re;夢のヒーローを目指して   作:ホタチ丸

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はい、皆さんこんばんわ!
今回はちょっと区切りが良かったんで、ちょっと予定を変更させていただきました。
そのせいでまたサブタイが……
後、今回あとがきにちょっとした報告を載せておきました。
それでは、 連行×犯人×敵 はじまります


連行×犯人×敵

「いやはや、モンスター退治ご苦労様でした。こちらがその報酬となります」

 

「……はあ?」

 

 にこやかに笑いながら報酬を差し出してくるガナッシュに、アイエフは戸惑ってしまう。

 

 アヴニールについての情報を集めると言う名目でネプテューヌ達から解放されたアイエフは、ギルドに足を運んだのであった。

 昨日シアンから話を聞いた上で、アイエフは敢えてガナッシュとの面会を求めたのである。

 元々依頼が失敗したと言う報告をするため会わなければいけなかったので、ついでにアヴニール側の思惑を探ろうと考えていた。

 シアン側の話――言わば、被害者側の話だけを鵜呑みにしているわけではないが、アヴニールがラステイションの支配をもくろんでいるとなると冒険者であるアイエフも他人事ではない。

 特にアイエフのような冒険者にとって、各国にあるギルドは大切な役割を持っているからである。

 

 職員に話を通してもらい、ガナッシュを呼んでもらったまではよかった。

 しかし、肝心のモンスターを退治できなかったのに報酬を渡そうとしてくるガナッシュに、アイエフは慌てて尋ねる。

 

「ちょ、ちょっと待って。私達は昨日あなたから依頼されたモンスターを退治できなかったのよ? 今日は失敗したって報告をしたくてあなたを呼んでもらったのに……」

 

「おや、そうなのですか? ですが、今朝方確認したところによりますと、例のモンスターは既にいなくなっておりましたので、てっきりアイエフさん達が無事に依頼を達成されたのだと思ったのですが」

 

「……へ?」

 

 報酬――依頼で提示された金額が入った袋をやんわりとガナッシュへと押し返しながら、アイエフは今日ギルドに来た目的を話した。

 その返答が予想外だったようでガナッシュは眉をひそめながら眼鏡のブリッジを上げる。

 だが、それはアイエフも同じで思わず間の抜けた声を上げてしまう。

 

 ……実際、件のモンスターはネプテューヌを待ち伏せしようとして先回りしたブラックハートの八つ当たりによって倒されている。

 しかし、当然ながらそのことを知る者はいない。

 交易路に巣くっていた鳥のモンスター、フレースヴェルグの行方が迷宮入りしてしまった瞬間である。

 

「まあ、いいでしょう。どちらにせよ、我が社はこれで安全に資材の運搬ができるようになりました。こちらはせめてもの感謝の印としてお受け取りください」

 

「モンスターを退治できなかった私達が受け取れるはずがないでしょ」

 

「いえいえ、わざわざ険しい山道を歩いてもらったのですから、せめてものお礼ですよ。どうしてもお受け取りできないと言うのでしたら、そうですね――お近づきの印、と言うのはどうでしょうか?」

 

「……っ!?」

 

 モンスターの行方に疑問は残るが、ガナッシュは運搬ルートの安全確保ができたおかげで上機嫌であった。

 依頼を失敗した以上、報酬を受け取れないとアイエフが断わってもガナッシュは渡そうとしてくる。

 ――瞬間、眼鏡の奥にある目を細めて、ガナッシュは低い声でアイエフにささやく。

 先程までのにこやかな社交辞令の作られた笑みではなく、アイエフにはガナッシュの表情が人を嘲笑うかのようなあくどい顔になったように見えた。

 その変貌に驚いたアイエフは体を震わせて無意識にガナッシュから距離を取ろうとしてしまう。

 しかし、改めてアイエフが確認してもガナッシュの表情は一貫してほほ笑んでいるだけであった。

 

(見間違い――じゃないわね。やっぱり、コイツは何かを企んで……)

 

「そうです、この後お時間をいただけますでしょうか? 是非アイエフさんにお願いしたいことがあるんですよ」

 

「……私に?」

 

 シアンの話を抜きにしても、アイエフはガナッシュがただの善良な一市民ではないことを直感した。

 何を考えているのかわからずに警戒していると、突然ガナッシュが話を持ちかける。

 わざわざ指名されたことに声を強張らせるアイエフとは対照的にガナッシュは明るく言葉を続ける。

 

「はい。ここでは少し話しづらい内容ですので、詳しいことは本社で――アイエフさんも色々と聞きたいことがあるのでしょう?」

 

「っ、そう言うことね」

 

 含みを持たせた言葉にアイエフはガナッシュの真意を察した。

 

 頼みごとと言いながらも、実質アイエフはガナッシュの提案に乗るしかないのである。

 ここでもし話を聞かずに帰ってしまえば、2度とアヴニール側の話を聞く機会は失われてしまう。

 それだけにとどまらず、よくて逮捕、最悪強制的にラステイションを退去させられる可能性もあるのだ。

 教会と言う権力を手中に収めているアヴニールにはそれだけの力がある。

 そこまで考えが至ると、アイエフにはガナッシュがしつこく手渡そうとしてきた報酬が手切れ金のように思えてしまう。

 物理的な受け取る受け取らないの報酬の行方に関係なく、精神的にアイエフの選択肢を狭めていたのだ。

 ガナッシュ側としてはここでアイエフが断わっても何のデメリットもない。

 2度と自分達と関われないように教会に働きかければいいだけで、ラステイションとアイエフ達との縁は完全に切れる。

 そうなると、鍵の欠片を探すと言う旅の目的すらできなくなってしまうのだ。

 言わば、現状アイエフは自己の安全と旅の目的を両天秤にかけられているのも同然な状況である。

 

(ついていくしかないってことね。本当、厄介な奴ね)

 

 ――つまり、ガナッシュの提案通りにアヴニール本社に行くことがアイエフの取れる最善の行動なのだ。

 断わって手に入るメリットを考えれば、アイエフの答えは1つしかない。

 まだ数日だが、ネプテューヌ達によって与えられた苦痛をこんなことで無に返したくないのである。

 ディスクから現れるモンスターの謎や鍵の欠片を集めるように頼んだ人物を知るまで、アイエフは旅をやめるわけにはいかない。

 ただでアヴニールの情報が手に入れられるとはアイエフも思っていなかったが、ガナッシュのことを甘く見過ぎた結果まんまと手のひらの上で踊ることしか選べなくなってしまった。

 しかも、アイエフがアヴニールのことを探ろうとしているのも知っているかのようにガナッシュは一方的な交渉を持ちかけている。

 つくづくガナッシュのことを油断ならない人物だと認定し、アイエフは悔しさに表情を歪める。

 何とか打開策――もしくは、少しでも自分に有利な条件をつけられないかと思索するが、ガナッシュがそんな時間をアイエフに与えるわけはなかった。

 

「どうでしょうか? きっとアイエフさんにとっても損な話にはならないことをお約束しますよ?」

 

「……わかったわ。案内してちょうだい」

 

「ありがとうございます。では、表に止めてある車の方へ移動しましょう」

 

 最後通知とも受け取れる言葉をガナッシュから投げかけられ、遂にアイエフが観念するように了承する。

 唇を噛んで顔を伏せるアイエフとは対照的に、ガナッシュはさも嬉しそうに口元を緩めた。

 ギルドの表に止めてある黒塗りの車に先導するガナッシュの後ろについていきながら、アイエフは苦々しい表情を浮かべることしかできない。

 

(迂闊だったわ。まさかこんなことになるなんて……これもアイツらと関わった呪いかしらね)

 

 内心で出会ってからいいことが1つもない疫病神――ネプテューヌ達のことを思い浮かべながら、アイエフは気持ちを切り替えようとする。

 ――これから始まる話し合いが一筋縄で終わらないとわかるからこそ、アイエフは急下降を続ける自分の運を呪うしかないのであった。

 

 

*     *     *

 

 

 思えば簡単なことだった。

 そもそもな話、誰がアヴニールと共謀しているかなんて謎でも何でもなかった。

 最初から2択に絞られていた選択肢を1つに断定するだけの情報を私は持っていたんだ。

 

 ――ネプテューヌ以外にありえない。

 3国の内、確実に1人だけは絶対にこんなことをしないと断言できる。

 何考えてるのかわからない奴だけど、行動だけは一貫しているもの。

 アイツの国と自分を信仰してくれる人達への思いの強さは、認めたくないけど私達よりも上かもしれない。

 ……でも、あのやり方だけは絶対に真似したくないけど。

 とにかく、そうなると残りは2人になる。

 しかも、その内の1人がどうどうと私の前に姿を現しているんだもの――挑発以外の何物でもないわね。

 ネプテューヌは最初から私が自分に勝てないと思っているからこそ、我が物顔でラステイションを闊歩していたわけだ。

 そうでなきゃ、敵地でのほほんとしていられるわけないものね。

 

 アヴニールの社長秘書から渡された地図にある工場に向かっていた途中にいたと言うのも私の確信を後押ししてくれる。

 おそらくさっきの気持ち悪い笑い方をした男がアヴニールと取引しているプラネテューヌの高官なんだろう。

 あの狂気を感じる笑い方は間違いないわ。

 手に持っている剣の感触を確かめて満足していたと言ったところね。

 ……そうなると、アヴニールは武器の量産をしているってことなのかしら?

 でも、社長秘書は“兵器”だって言っていたはず。

 何か特殊な仕掛けのある剣なのかもしれないわね。

 

「昨日のヤンデレ系痴女ストーカー!? どうしてこんなところにいるの!?」

 

 社長秘書の思惑がわからずに考えを巡らせていると、ネプテューヌが昨日と同じように私のことを知らない振りをして大袈裟に振舞った。

 

 ……あくまで白々しい態度を貫き通すつもりらしいネプテューヌに、私はさらに怒りが込み上げてくる。

 強く奥歯を噛みしめて我慢し、何とか冷静になろうと心掛ける。

 怒りで我を忘れて襲いかかるなんて失態は冒せない。

 私はラステイションの女神ブラックハート。

 例え、相手が卑怯な手段を使って私の力を奪っているネプテューヌ――いえ、プラネテューヌの女神パープルハートだからこそ、女神として負けるわけにはいかない。

 女神としての品位を貶すような真似をするネプテューヌだけには負けられないのよ!!

 

「さあ、早く女神化しなさい。それまでは待っていてあげるわ」

 

 大剣の切っ先をネプテューヌに向け、私は静かに女神化するのを待つ。

 

 今のボケボケしているネプテューヌを倒したところで意味はない。

 女神化した憎たらしい方を倒したい気持ちもあるが、ネプテューヌにはっきりと私の力を示すと言う目的のためだ。

 ネプテューヌにいくらアヴニールと共謀してラステイションのシェアを掠め取っていても、私の方が強いと言うことを証明して認めさせる。

 ……長い間延々と続いた因縁をここで断ち切ってみせる!!

 

「ちょ、ちょっと待って!? 昨日も思ってたんだけど、なんでそんなにわたしを目の敵にしてくるの!? 誰かと間違えてない!?」

 

「あなたみたいなふざけた女神が2人も3人もいるわけないでしょ。そんな世界は地獄と一緒よ――2度目よ。早く女神化しなさい、プラネテューヌの女神パープルハート」

 

 慌てているように見せかけながら、ネプテューヌは私との戦いを避けようとする。

 でも、私は改めてネプテューヌに女神化するように告げるだけで取り合わない。

 ――いや、そもそも取り合う必要がない。

 だって、私達は敵同士なんだから。

 

「確かにわたしはネプテューヌだし、女神パープルハートでもあるらしいけど、この世界じゃなくてゆっくんの世界の女神なわけで、ええっと……ゆっくん、パス!?」

 

「俺に説明しろってのか!?」

 

 ネプテューヌはぶつぶつと呟きだしたかと思ったら、急に男へと声をかけた。

 すると、男は驚きつつも、私の方へと1歩近づいて口を開く。

 

「あーその、ブラックハート、様でいいんですよね? どうしてネプテューヌを襲うのかを説明して欲しいんですけど……」

 

「なに言ってんだよ、夢人兄ちゃん!! そいつは昨日も会ったブラックハート様のコスプレをしているだけの変態だろ!! そんな奴とブラックハート様を一緒にすんな!!」

 

「違うからな!? それはネプテューヌとお前の勘違いだって!? 彼女は正真正銘本物の……」

 

「嘘つけ!! だって、アイツはこの馬鹿のネプテューヌを女神だなんて言っているんだぞ!! 明らかに頭がおかしい奴じゃないか!!」

 

「それって、わたしのことを馬鹿にしているだけだよね!? と言うより、なんでわたしだけ呼び捨てなの!?」

 

「馬鹿だからに決まってんだろ!!」

 

「酷い!?」

 

 下手に出ながら尋ねてくる男の言葉を遮り、昨日も見た少年が私を指さしながら睨んできた。

 しかし、昨日と違って私は少年の罵倒を受けても心を落ち着かせている。

 ――そんな些細なことなど、今はどうでもいいんだから。

 

「じゃあ、なんでゆっくんとREDちゃんは呼び捨てじゃないの!? ゆっくんだってメイド服を着ちゃうくらいの変態で馬鹿だし、REDちゃんだってわたしと似たような感じでアホっぽいでしょ!? 納得いかないよ!?」

 

「ちょっとネプテューヌ!? 確かにアタシはあんまり頭良くないけど、アホでも馬鹿でもないよ!!」

 

「じゃあ、どうしてなの!?」

 

「それはネプテューヌに姉力が足りないからだよ!!」

 

「っ、姉力!? わたしがREDちゃんよりもおっぱいが小さいからなの!? 今は色々と小さいけど、『変身』したらナイスバディになる――って、何を言わせるの!? もうタツタのエッチ!?」

 

「……いや、馬鹿だし言い辛いからなんだけど。ってか、そっちもオレの名前を間違えんなよ!?」

 

 ギャーギャーと喚くネプテューヌ達の茶番劇を見せつけられても、私は冷静だった。

 そう、冷静なのよ――だから……

 

「おい、お前ら!! そんなことで言い合ってる場合じゃ……」

 

「っ、危ない!?」

 

「へっ――――――っ!?」

 

 青筋を立てながらネプテューヌ達の方へと振り返っている男に、朱色の髪の少女が切羽詰まった声を上げた。

 何を言われているのかわからなそうな顔をした男が再び私の方を振り向いた瞬間、その表情は驚愕に染まる。

 

 まあ、当然よね。

 ――だって、私が振った大剣が男に迫っているんだから。

 

 私は一瞬で男との距離を詰めて大剣を振るったのだ。

 その当てる気もなく首筋で止めようとした大剣を、男は手に持っていた剣で防ごうとする。

 しかし、強度不足だったのだろう。

 男の剣は私の大剣を受け止められずに砕けてしまう。

 衝撃で尻餅をついた男を見下ろし、私は一言告げる。

 

「邪魔よ」

 

 自分でもぞっとするような低い声が出たことに少しだけ驚きを覚える。

 いつもならこの新しい発見に声だけでの役作りの幅が広がると心を躍らせていたかもしれないが、今の私には何の感動も湧いてこない。

 大きく目を見開かせたまま私を見上げてくる男へ言い終えると、私は静まり返ったネプテューヌ達の方へと再び視線を向ける。

 ――ただ真っ直ぐにネプテューヌだけを見つめる。

 

「これで最後よ――早く女神化しなさい」

 

 仏の顔も3度までとは言うけど、私の我慢の限界も3回までらしい。

 別に私が短気なわけではないと思う。

 人の神経を逆なですることしかしないネプテューヌが悪いんだ。

 

 ごちゃごちゃ話をこんがらがらせて煙に巻こうとするネプテューヌに、私は最後の宣告をした。

 ここでふざけたことをしようものなら、もうネプテューヌが女神化してなかろうが関係ない。

 私はせめて女神パープルハートとしてのネプテューヌと対峙したかった。

 でも、そっちがその気なら私も容赦はしない。

 ――他国からラステイションを支配しに来た薄汚い卑怯者として、女神ブラックハートの名の元に断罪する!!

 もう2度とネプテューヌに女神を名乗らせない!!

 

「あわわわわわ!? かなりガチで怒ってる!? 夜中に見たらトラウマになっちゃうシリーズの1つ、暗い中でもやけにはっきり見える能面みたいな顔になってるよ!?」

 

「そんなこと言ってる場合じゃないって!? ほら、ネプテューヌは早く謝りなよ!?」

 

「わたしが悪いの!? 確かにちょっと冷静に考えると、勝手なことを言ったり無視したりしてやらかしちゃったような気もするけど……」

 

「有罪確定じゃん!? あんな可愛い女の子を受け止められないなんて、ネプテューヌはそれでもアタシのヨメなの!? 確かにちょっと露出が多くて際どい服だなとか妄想たくましいなとも思うけど……」

 

「――それが答えね」

 

『あっ』

 

 ここに来てさらに白を切ろうとする態度は逆に清々しいとさえ思ってしまう。

 結局、ネプテューヌは最後まで私との女神同士による対決を望まないってことよね。

 ――だったら、もういいわ。

 今目の前にいるのは私の敵、プラネテューヌの女神パープルハートじゃない。

 この瞬間からラステイションの平和を脅かす敵、女神の名を騙る犯罪者ネプテューヌとして扱わせてもらう!!

 

「はああああああっ!!」

 

「っ、くっ!?」

 

 今更しまったと言わんばかりに間抜けな顔で口を開けたままにしているネプテューヌに斬りかかろうとすると、朱色の髪の少女に割って入られて防がれてしまった。

 苦しそうな表情で大剣を押し返そうとする少女に、私は忠告する。

 

「退きなさい。あなたに用はないわ」

 

「……そうはいかないよ。いきなり何の説明もなく知り合いが襲われそうになってるんだ。黙って見ていることなんてできないよ」

 

「――そう、だったらっ!!」

 

「っ、しまっ――んぐっ!?」

 

 あくまで邪魔をするつもりの朱色の髪の少女に、私は強硬手段を取る。

 敢えて自分から大剣を引いて、少女を前のめりにさせてバランスを崩す。

 その決定的な隙を逃すことなく、私は回し蹴りをがら空きの脇腹めがけて放つ。

 途中、私の思惑に気付いた少女が体を回転させたせいで蹴りは狙いを外してしまう。

 だが、いくら少女が腕で私の蹴りを防ごうとも、体勢を崩していたせいで肩から地面へと倒れてしまった。

 ゴロゴロと地面を転がる少女を一瞥し、私は今度こそネプテューヌへと向かおうとする。

 

「待ってって!?」

 

「っ、離しなさい!!」

 

「だったら、少しはこっちの話も聞いてくれ!? 俺達は別に君の敵じゃ――っ!?」

 

 一直線にネプテューヌへと向かおうとした私を止めたのは、先程尻餅をついた男だった。

 まさか立ち上がって再び邪魔してくるとは思わなかったせいで反応が遅れてしまった。

 しかし、肩を掴んで必死な表情で訴えてくる男の言葉は逆に私の怒りに油を注ぐ。

 

 敵じゃないですって?

 ――そんなことありえない。

 私とネプテューヌは敵同士。

 どんなことがあろうとも、この関係が覆ることはない。

 そして、ネプテューヌの仲間なら――この男達も私の敵なのよ!!

 

 私は掴まれている肩だけを勢いよく前方へと倒すと同時にその場で頭を下げる。

 すると、男は面白いようにくるりと宙を舞って私の前に背中から落ちる。

 男が肩を強く掴んでいたことを利用した投げ技をお見舞いしたのだ。

 痛みに顔を歪める男を真上から見下ろし、私はさっきの言葉を訂正させる。

 

「敵よ。あなたが私の邪魔を――ネプテューヌを庇うのなら、私達は敵同士よ」

 

「なんで……そうなるんだよ……? 俺達は戦うつもりなんて……」

 

「――うるさいわよ。私達の関係に勝手な口出しをしないでちょうだい」

 

 背中を打ち付けたせいでしゃべることさえままならないのに、男は私に疑問をぶつけてきた。

 だけど、私はそんな疑問を一方的に切って捨てる。

 それ以上答えるつもりのない私が視線をネプテューヌへ戻そうとすると、仰向けの体勢で転がる男に足首を掴まれた。

 

「待ってって……せめて理由を……」

 

「いい加減にしなさい。これ以上、私の邪魔をするって言うんだったら……」

 

「――そこまでにしなさい」

 

 しつこく白々しい態度で私の邪魔をしようとする男の手を振り払おうとした瞬間、待ち望んでいた声が聞こえてきた。

 バッと顔を向けると、そこには女神化したネプテューヌが鋭い目つきで私を睨んでいた。

 

「あなたはわたしに用があるんでしょ? だったら、それ以上ゆっくんとファルコムに手を出すのはやめなさい」

 

「……やっとやる気になったかと思ったら、相変わらずふてぶてしい奴ね――いいわ。邪魔の入らない上で決着をつけましょう」

 

 足首を掴んでいる男の指をそっと解いて、私はネプテューヌに空を指さしながら提案する。

 地上で戦えば、また邪魔が入る可能性がある。

 でも、女神じゃない――正確には空を飛んで戦う手段がない人間の手の届かない場所なら、その心配もなくなる。

 神妙な面持ちでネプテューヌが頷く。

 そして、同時にプロセッサユニットのウイングを稼働させて、大空へと舞い上がる。

 

「昨日の味方が今日の敵になるなんてね」

 

「それ、間違ってるわよ。私達は何があっても敵同士――昨日はたまたまモンスター退治を優先しただけよ」

 

「……本当にそうなの?」

 

 下にいる男達が手出しできない高さまで上がると、急にネプテューヌは感傷に浸りだした。

 すぐさま私が否定すると、ネプテューヌは悲しそうに顔を浮かべる。

 

「わたしはあなたの考えていることがよくわからないけど、今のあなたは昨日と比べて……」

 

「――黙りなさいっ!! さあ、いくわよっ!!」

 

「……わかったわ。そっちがその気なら、わたしも全力で相手をするわ……っ!」

 

 意味のわからないことを口走るネプテューヌの言葉を遮り、私は大声を出して睨みつける。

 すると、ネプテューヌも覚悟を決めたようで刀剣を構えだす。

 

 ――そして、ほぼ同時に私達は動きだし、空中で互いの武器をぶつけ合うのであった。




という訳で、今回はここまで!
さて、前書きに書いた報告とは、今年のクリスマス記念小説についてです。
今回はアンケートを取らず、前回のアンケートにあぶれたメンバーで記念小説を作りたいと思います。
まあ、そもそもアンケートを取ることを忘れた私が原因ですけどね。
そのメンバーは、ネプテューヌ、ノワール、夢人、アカリ、チカの5人です。
どのような形式になるかは完成してからのお楽しみとさせていただきます。
それでは、 次回 「敗北×疑問×自己紹介」 をお楽しみに!
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