超次次元ゲイムネプテューヌ Re;夢のヒーローを目指して 作:ホタチ丸
書いてて思ったことは1つだけです。
……さすがにノワールがボッチ過ぎた、と。
それでは、 諦め×涙×散歩 はじまります
「……退屈、ね」
私はベッドの上に横になったまま、窓から見える青空を眺めながら呟く。
ついこの間もこんな気持ちを味わった覚えがある。
教会に軟禁され、何もさせてもらえなかった時だ。
あの時と違い、私はこの部屋から抜け出すことさえできない。
理由は2つ。
――まず、私の怪我が完治していないこと。
いつもならとっくに治っているはずの怪我が今回は長引いている。
一応、毎日私の怪我を診てくれてているコンパによれば、あと数日で完治するそうだ。
でも、それは人間の物差しで測ったものであり、女神である私はもっと早く完治できてなければおかしいはずだった。
……怪我の治りが遅い理由には心当たりがある。
私に対する信仰心――ひいてはラステイション全体のシェアが低下しているからだろう。
女神はシェアがなければ、生きてはいけない。
傷の治りが遅いのは、それだけ私の中に入ってくるシェアが少なくなっている証拠。
シェアの低下は、私が国民の信頼を裏切ったせいで招いてしまった自業自得の結果だ。
アヴニールの横行やプラネテューヌの侵略行為なんて言い訳にならない。
全部私の責任だ。
私が守護女神戦争で勝てなかったから……
私が弱かったから……
私が皆を守れなかったから……
皆は何も悪くない――最初に裏切ったのは私なんだ。
だから、私はもう偉そうにラステイションの女神を名乗れない。
今の私にできることは、皆のためにこの体をネプテューヌに差し出すことだけ。
それが女神としての意義を失った私の生かされている理由だから。
――そう、2つ目の理由は私がネプテューヌに負けた敗者だからだ。
自分から戦いを挑んでおいて、私は手も足も出せずにネプテューヌに敗北してしまった。
しかも、トドメも刺されずに生かされてしまった。
ネプテューヌも守護女神戦争の重要性はしっかり理解しているのにも関わらずだ。
正直、私はあの時ネプテューヌに殺されていればよかったと思っている。
私の命1つでラステイションの皆が救われる……少なくともプラネテューヌに統合されてしまえば、今のようにアヴニールによる横行はなくなっていたはずだ。
なにせ、大々的にラステイションを支配できるのだから。
そのことで多少混乱が起こったとしても、今のように無為に皆を苦しませずにすんだはずだった。
……でも、そんなことさえ私には許されていない。
敗者である私はネプテューヌに意見することも逆らうこともできない。
これ以上、表立ってラステイションの皆を苦しめないでいてくれていること自体が奇跡だ。
ラステイション全体が人質に取られていることさえも理解できなかった私の愚かで迂闊な行動が、どんな結果を生んでしまう可能性があったのかを考えるだけで体の震えが止まらない。
私は皆のためと言いながらも、その守るべきものを蔑ろにしていたのだ。
どんなに足掻いたところで、結局私にはネプテューヌへの隷属以外の選択肢がなかった。
それが最後に私がラステイションの女神として出来ること。
ネプテューヌにいいように使い潰され、ボロ雑巾のように捨てられる未来しか私には残されていないのだから。
「そろそろ来るかしら」
そんな私だけど、1つだけ楽しみなことができた。
こんな感情を抱いていいはずがないのに、自然と心が安らいでしまう時間。
――コンコンと扉がノックされる音がした。
考え事をしているうちに、彼女が来てしまったらしい。
「どうぞ」
部屋に招き入れるように呼びかけると、1人の女の子が入ってくる。
「えへへ~、遊びに来たよ~」
締まりのない顔で笑いながら入って来た女の子――プルルートに、私は苦笑してしまう。
……さて、今日この自称私の友達は何を話してくれるんだろうか。
* * *
――ネプテューヌに負けた日から毎日、プルルートは私のいる部屋に来て楽しそうにおしゃべりをしていく。
基本的に私から話を振ることはない。
私は楽しそうにしゃべるプルルートの話に相槌を打ったり聞き返すだけ。
それでもプルルートは飽きもせずに毎日違った話を私に聞かせてくれる。
「それでね~、ミモちゃんとお客さんが喧嘩しそうだったんだけど~、何だか楽しそうだったの~」
「喧嘩しそうだったのに?」
「うん。あたしもよくわからないけど~、楽しそうに笑ってたよ~」
両手を合わせて楽しそうに笑うプルルートの話を聞き、私はどんな様子だったのかを想像した。
多分、喧嘩するほど仲がよいみたいな間柄なのだろう。
他にも色々なことを話してくれるプルルートは、私に今のラステイションの状況を教えてくれる。
――最近、皆に元気が出てきた、とか。
――“ねぷちゃん”と“REDちゃん”と“ぴーしぇちゃん”の3人でプリンの取り合いをした、とか。
――“ゆっちゃん”が変な踊りを踊ってる、とか。
――“あいちゃん”が辛そうにしていた、とか。
――“ミモちゃん”が仕事をさぼってどこかに行ってしまった、とか。
――“しーちゃん”と“コンパちゃん”の作る料理が美味しい、とか。
――“ゆっちゃん”が“ぴーしぇちゃん”に土下座をしていた、とか。
――“ロムちゃん”と“ゆっちゃん”が“ギアちゃん”のことを心配している、とか。
……正直、私にはまったく理解できない話ばかりだった。
かろうじて人の名前だけはわかるけど、どんな関係なのかはまったく予想ができない。
何人かは直接見たこととプルルートが呼んだ愛称で顔と名前が一致するけど、それでも分からない人が1人だけいる。
――1番多く話に挙がっている“ゆっちゃん”だ。
多分、“ゆっちゃん”って言うのはあの“ゆっくんさん”のことなんだろう。
でも、変な踊りを踊っているとか、“ぴーしぇちゃん”って小さい子に土下座をする人物が本当にプラネテューヌの高官なのかと疑問に思ってしまう。
もしかして別人なのかもしれないけど、私には他に思い当たる人もいない。
そもそも私を助けてくれたのは“ゆっちゃん”だったらしい。
わざわざ馬鹿げた作り話をでっち上げ、私が女神ブラックハートであることを隠してまで助けてくれた理由が彼にあったのだろうか。
政治的な要因? それとも私を陥れるため? ――まさか、何も考えずに助けたの?
「……馬鹿らしい」
「ほえ? 何か言った~?」
「ううん、何でもないわ。それで、他には今日何があったの?」
「うんとね~、えっと~……」
思わず口から出てしまった言葉に、プルルートは気付いて尋ねてきた。
首を横に振りながら誤魔化し、私はプルルートに話の続きを促す。
気にした様子もなく楽しそうに話を続けようとするプルルートを見て、私はホッと胸をなでおろす。
……まあ、“ゆっちゃん”のことを考えても仕方ないか。
どんな人物だったとしても、私は逆らうことができないんだから。
それよりも、私はラステイションの皆に元気が出てきたという報告が聞けたことが嬉しい。
“ねぷちゃん”――じゃなかった、ネプテューヌは順調にラステイションを支配できているみたいね。
認めたくない卑怯なやり方だったとしても、女神として最低限の役割は果たしていることが分かり、安心もしている。
「ノワールちゃん、大丈夫~?」
「……何が? 私は別にどこもおかしくないわよ」
「でも~、泣きそうな顔をしているよ~」
「っ、気のせいよ」
ラステイションの皆が元の生活を取り戻しつつあることに私が安堵していると、プルルートが心配そうな顔で尋ねてきた。
一瞬、何を言われたのかを理解することが遅れた私の顔をプルルートが覗き込んでくる。
真っ直ぐに見つめてくるプルルートの目に堪えられず、私は唇を噛んで顔を逸らしてしまう。
――本当は、嬉しくも安心したりもしていない。
無理やり自分に言い聞かせて納得しようとしているだけ。
皆が幸せに暮らせるなら、私やラステイションがなくなっても構わないって思い込もうとしている。
……嫌。
私は今のラステイションが嫌なのよ。
プラネテューヌの支配を受け入れることしかできないのが嫌。
私がネプテューヌに劣っている様をまざまざと見せつけられるのが嫌。
現状を認めなきゃいけないのに、悔しいと感じてしまう私が嫌。
そして何より――何もできない自分が1番嫌なのよ。
「でも、ノワールちゃん……」
「触らないで!!」
「アイタッ!?」
「あっ……」
思わず私の頬に触れようとしたプルルートの手を叩き落としてしまった。
痛がる声を聞き、私はハッとしてプルルートの方を向く。
そこには痛そうに手の甲を擦るプルルートがいた。
……何やってるのよ、私は。
心配してくれているプルルートにまた八つ当たりして傷つけて、何がしたいって言うの。
駄目、また涙が……
「あたしは平気だよ~」
ジワリと堪えていた涙が溢れそうになるが、私の頬は濡れなかった。
プルルートが優しく指で私の涙をすくってくれたからだ。
でも、1度泣きそうになった私の顔は熱くなってしまう。
自然とたれそうになる鼻をすすり、私は焦点が合わなくなった目でプルルートを見つめる。
「そうだ~! ノワールちゃん、これからちょっと外行ってみない~?」
楽しそうな声で提案するプルルートに、私は無言で頷く。
その顔がまだ笑っているように見えたことだけが、私にとって唯一の救いだった。
* * *
「お散歩お散歩~楽しいな~、はい」
「……え、もしかして私も歌わないと駄目なの?」
「ぶ~、そ~だよ~。じゃあ、もう1回いくよ~。お散歩お散歩~楽しいな~、はい」
「……お散歩お散歩楽しいな」
隣を歩くプルルートが調子はずれな歌っていると思ったら、急に私の方を向いて声をかけてきた。
もしかしてと思い聞いてみると、案の定私にも同じように歌えとプルルートは不満そうに眉間にしわを寄せる。
そして、また歌いだすプルルートに合わせて、私も同じフレーズを口ずさむ。
しかし、プルルートのテンションについていけず、私の歌は限りなく棒読みに近かったのだが。
今私達はプルルート曰く、夜のお散歩をしている途中だ。
まあ、私はこの状況を上手く飲み込めていないんだけどね。
どうしてそんなことを思いついたのか、なんてことはもう考えていない。
プルルートがこんな風に思いついたことを口にすることは、話を聞いている時も何回かあった。
その度に、私の頭は痛くなる。
だから、深く考えるだけ無駄なのだ。
そうなのか、程度に抑えておくのがプルルートとの正しい付き合い方なんだと、私は何となく理解していた。
――そう、深く考えちゃ駄目なのよ。
「……もっと楽しそうに歌わないと駄目だよ~。もう1回~」
「はいはい、分か――っと」
「うわあっと。大丈夫~?」
「うん、ちょっと躓いただけだから平気よ」
やはり歌の駄目だしをするプルルートを見て、私はため息をついた。
仕方ないので今度はちゃんと歌おうとした瞬間、私は躓いて転びそうになってしまう。
隣にいたプルルートが支えてくれたおかげで、何とか倒れずにすんだ。
体を支えながら心配そうに顔を見上げてくるプルルートに、私は苦笑しながら答える。
実際、久しぶりにベッドから起き上がったので、私の足は大分ふらついていた。
怪我の痛みはないのだが、上手く足が動いてくれない。
いくらなんでも怠けすぎたか、ともつれそうになった足を恨めしそうに見つめていると、何かを思いついたらしいプルルートが私の視界を塞ぐように手を差し出してきた。
「……握ればいいんでしょ、握れば」
「えへへ~」
顔を上げた先に見えたプルルートの何かを期待するような目に、私は折れてその手を握りしめた。
プルルートを頼ることに抵抗がなかったわけではないけど、歩くことさえままならないなら仕方ない。
――そう、仕方ないことなの。
手を握った途端にプルルートは嬉しそうに破顔し、楽しげに腕を揺らし始める。
「まったく、手を握ったくらいでどうしてそんなにはしゃげるのよ?」
「だって~、温かいんだもん~。それに~、ノワールちゃんから手を握ってくれるの初めてだし~」
「手を握ったのも初めてだけどね――って、ちょっと!? あまり振り回さないでよ!?」
素直にお礼も言えず、私はわざと呆れているように見せかけた。
私の捻くれた問いかけもプルルートには通じない。
エヘヘと笑いながら頬を染めるプルルートに、見ている私の方が恥ずかしくなってくる。
でも、それがいけなかったらしく、顔を逸らした瞬間、プルルートは先程よりも大きく私の手を握っている腕を振ってしまう。
思わずバランスを崩してしまいそうになった私が抗議しても、プルルートは楽しそうに鼻唄を歌って腕を振り続ける。
少しは振り幅を抑えてくれたが、プルルートに振り回されながら引っ張られて歩く私。
でも、何だかそれが嫌とも思えなく、私の口元は緩んでしまう。
……本当、プルルートには甘えっぱなしだなあ。
友達に似ているって理由で友達になろうって言う彼女に戸惑っていたはずなのに、今じゃ私の方が頼ってばっかり。
酷いことを言って泣かせちゃったり、傷つけたりしたはずなのに、変わらない態度で私といてくれる。
しかも、プルルートは私がラステイションの女神であることを知った上でなのよね。
プルルート自身、話しぶりから推測すると、自分のことをプラネテューヌの女神だなんて言うくらいだから、ネプテューヌに強い憧れを持っているのだと思う。
でも、実際はラステイションの定食屋でお手伝いをしているただの女の子。
ラステイションに来たのは確か……看護学校に通うための費用を稼ぐ職探しの旅の途中、だったかしら?
それとも、ディスクを生みだすモンスターの謎を求めて椅子の鍵を探しに来たとか――駄目だ、全然思い出せないわ。
自分のことで精一杯で適当に聞き流していた部分もあったから、何かの話と混ざったのかしらね。
とりあえず、椅子の鍵って何よ?
「あ~、ゆっちゃんだ~! やっほ~!」
「っ!?」
頭の中で自分にツッコミを入れていると、プルルートが前方に誰かを見つけたらしく、大きな声で名前を呼んだ。
でも、楽しそうなプルルートとは違い、私の顔は強張ってしまう。
何故なら、プルルートの言う“ゆっちゃん”は“ゆっくんさん”であり、プラネテューヌの高官なのだから。
この状況は不味いわ。
まるでプルルートが無理やり閉じ込めていた私を連れ去っているようにしか見えない。
つまり、脱走する私をプルルートがその手引きをしているように勘違いされてしまう可能性がある。
――実際、無理やりの部分はあっているのだけど。
と、とにかく、このままじゃプルルートが!?
「おう、どうし――って、ノワール!?」
「くっ!?」
どこかに行く途中だったのだろう“ゆっちゃん”はプルルートに呼ばれて振り返って私のことを見つけた瞬間、大きく目を見開かせて驚いた。
しかも、ご丁寧に私の名前まで叫んで。
他人の振りをして言い逃れも出来なくなったことに、私は喉の奥から声を漏らしてしまう。
こうなったらせめてプルルートだけでも助けてもらおうと、私が口を開こうとする前に“ゆっちゃん”は距離を詰めてきた。
「怪我はもう平気なのか? まだ顔色が悪そうだけど、どこか痛むんじゃないのか?」
「……えっ、あ、別に」
「そうか。それならよかった」
恐怖に怯えた私を見て、“ゆっちゃん”は心配そうに顔を覗き込んできた。
怒鳴られる、もしくは無理やり部屋に連れ戻されるのを覚悟していた私は、そんな“ゆっちゃん”の行動に拍子抜けしてしまう。
間抜けな顔で口をポカンと開けたままにしてしまった。
この状況への理解が追いつかずに素っ気なく返事をして俯く私に、“ゆっちゃん”のまるで本当に安心しているかのような息を吐く音が聞こえてくる。
……え、あれ、どうして“ゆっちゃん”は私を心配しているの?
プラネテューヌの高官で私を拘束した張本人なのよ?
そりゃ、プルルートの話から聞くと大分……いえ、偏った情報だけでもかなりの変人だと言うことは私にも分かるけど、この反応はおかしいんじゃないの?
普通この状況を見たら、抜け出した私を捕まえようとするんじゃ……
「ねえねえ~、ゆっちゃんはこれからどこに行くの~?」
「ああ、ちょっとそこの河原までな。そう言うプルルート達は何をしていたんだ?」
「ただのお散歩だよ~。あっ、そうだ!」
頭の中が真っ白になって考えがまとまらず呆然としている私を置き去りにして、プルルートと“ゆっちゃん”はのんきに会話を続けていた。
すると、プルルートが急に大きな声を出す。
いきなり耳に入って来たプルルートの大きな声に驚き、私はハッとして意識を考え事から目の前の現実に戻すことができた。
「あたし達もついて行っていいかな~? 今日も踊りの練習をするんでしょ~?」
「……お、踊りって、アレは別に踊っているわけじゃ――いや、でも、確かにあの動きは踊りに近いのかもしれないけど……」
「ねえねえ~、いいでしょ~? あたし~、あの踊り大好きなの~」
「――はあ、いいよ。別に見られて如何こうするってわけじゃないからな」
「やった~!」
困惑していた“ゆっちゃん”だったけど、最後にはため息をつきながらもプルルートの頼みを了承した。
つまり、私も“ゆっちゃん”と一緒に行動するって言うことで……
「って、ちょっと待って!? 勝手に決めないでよ!? 私は……」
「じゃあ、ゆっちゃんもノワールちゃんの手を握って行こうよ~」
『はあっ!?』
考え直してもらおうとする私の言葉を遮り、プルルートはさらなる爆弾発言を投下した。
私は思わず“ゆっちゃん”と声を揃えて驚いてしまう。
「いやいやいや、手を握る必要はないだろ!? ノワールも嫌がってるし……なあ?」
「えっ、あ、その……」
「ノワールちゃんは嫌なの~?」
「うっ」
両手を忙しなく振りながら慌てる“ゆっちゃん”は同意を求めようと、私に目配せしてきた。
しかし、今の私の立場で“ゆっちゃん”の問いかけを肯定していいものかと考え、返答に困ってしまう。
いくら私に配慮しているように見せかけていても、結局“ゆっちゃん”はプラネテューヌの高官。
ここでもし私が嫌と答えてしまえば、今のラステイションの平和を壊されてしまうだけでなく、プルルートにまで危険が及んでしまうかもしれない。
即答できずに躊躇した私に、畳み掛けるようにプルルートが潤んだ瞳で尋ねてくる。
呻いて視線を逸らしてしまった私だけど、最初から決められていた答えを口にしようと重い唇を動かす。
「い、嫌じゃ、ない……です」
私の口から出た言葉は自分で思っていたものよりもか細く震えていた。
嫌々従うしかないと思っていることが、自分でも分かってしまう。
瞬間、背筋が凍るような感覚が私を襲い、奥歯がガタガタと震えだす。
しまったと思うが、既に口から出てしまった言葉は消せない。
言い直そうとしても、震えている唇ではパクパクと口を動かすことしかできなかった。
早く……早く言い直さなきゃ駄目なのよ!?
このままじゃプルルートが……
ラステイションがまた私のせいで……
「そ、そうなのか? で、でもなあ……」
「ダメなの~?」
「うっ……分かったよ」
「わ~い!」
しかし、思っていたような展開にはならず、顔を向き直した先には渋る“ゆっちゃん”に私の時と同じように頼み込むプルルートがいた。
何か言いたそうにしながらも疲れたように息を吐く“ゆっちゃん”と喜ぶプルルートが対照的に見え、私は目の前のことが信じられず瞬きを繰り返してしまう。
……あ、あれ?
プルルートってただの女の子なのよね?
ちょっと独特の雰囲気と電波を受信しているんじゃないかって心配になるくらいの異次元の会話を繰り返したり自分のことをプラネテューヌの女神だなんて言ってしまう痛々しい子だとしても、普通の女の子のはずよね?
それがいくら変人だとしてもプラネテューヌの高官である“ゆっちゃん”に自分の意見を通したって言うの?
「そ、それじゃ、その……手、握るぞ?」
「ど、どうぞ?」
信じられない光景を目の当たりにして私が放心していると、“ゆっちゃん”は躊躇いがちに尋ねてきた。
そのせいで、よくわからない緊張感が漂ってしまう。
私も戸惑ってしまい、チラチラと“ゆっちゃん”の顔と手のひらを見比べてしまった。
“ゆっちゃん”も同じだったらしいが、視線が合っても恥ずかしさはまったく感じず、何とも言えない気まずさが私を支配する。
そっと触れるだけの“ゆっちゃん”の手に、少しだけ妙な感触を覚える。
それが何かを理解する前に、プルルートが笑顔で口を開く。
「やっぱり~、1人より2人、2人より3人の方がお散歩も楽しくなるよね~――お散歩お散歩~楽しいな~、はい、ゆっちゃん」
「……えっ、もしかして歌わないと駄目なのか!?」
のんきなことを言ってまた歌いだすプルルートと“ゆっちゃん”が、さっきの私達と同じようなやり取りをしていた。
間に挟まれた私がどうしてこうなったと頭を抱えたいにも関わらずだ。
……ねえ、さすがに説明して欲しいんだけど。
どうしてこの3人組で仲良く手を繋いで【川】の字にならなきゃいけないの?
しかも、どうして私が1番気まずい【川】の字の真ん中になっているの?
そもそも、“ゆっちゃん”はどうしてプルルートの提案を断わり切らなかったの?
まさかプラネテューヌの高官よりもプルルートの方が立場が上だって言うの?
――もう、何が何だか分からないわよ!?
私はただプルルートに誘われて散歩をしていただけなのに、どうしてこんなことになっているのよ!?
誰でもいいから教えてよ!?
という訳で、今回は以上!
ノワールと現状と勘違いで1話できてしまいました。
これもプルルート以外とまともに接していなかったせいか……
ま、まあ、ここから挽回していけばいいんですよね!?
まだボッチが確定したわけじゃありませんよね!?
それでは、 次回 「女装×理由×喪失」 をお楽しみに!