超次次元ゲイムネプテューヌ Re;夢のヒーローを目指して   作:ホタチ丸

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はい、皆さんこんばんわ!
そろそろネプリバ3の追加キャラダウンロードが始まりますね。
楽しみなんですけど、キャラチャレのことを思うとプレイ時間的な意味で少しだけ怖いです。
それでは、 人質×襲撃×相棒 はじまります


人質×襲撃×相棒

 ――アヴニール社の第三重機倉庫。

 元々は工場施設として建造されたのだが、アヴニール社の勢力拡大に伴い、倉庫へと転用になった大型施設である。

 備え付けられていた機材は既に使われなくなって久しく、埃を被ったまま放置されている。

 建物の老朽化の影響で、倉庫としての役割もほとんど果たせられないと判断した本社の意向により、近日取り壊しが決定されてもいる。

 

 だが、そんな倉庫の中に踏みいる7人の姿があった。

 ノワールを先頭にしてやって来た夢人達である。

 

「ここにあいちゃんが……おーい! あいちゃーん! 居たら返事してー!」

 

「あいちゃーん! アタシもいるよー! どこにいるのー!」

 

「やかましいわよ、あなた達!! 静かにしなさい!!」

 

 倉庫に足を踏み入れた途端、ネプテューヌとREDは大声でアイエフのことを呼んだ。

 しかし、その声は薄暗い倉庫の中を反響するだけで、アイエフからの返事は返ってこない。

 大声を出す2人に、ノワールは怒鳴って注意する。

 誘拐されたらしいアイエフを助けに来たのに、ノワールは自分から来たことをばらす2人に苛立ちを感じたのだ。

 だが、残念なことにノワールの怒鳴り声の方が2人よりも大きく反響してしまう。

 すぐにそのことに気付いたノワールはバツが悪そうな顔を見られないようにするため、スタスタと奥へと進もうとする。

 

「ほら、まずは制御室に行ってセキュリティーシステムをダウンさせるわよ。ついてきなさい」

 

「……今、誤魔化したよね?」

 

「……うん、自分が1番うるさかったから誤魔化そうとしているよね?」

 

「あなた達ねぇ……っ!」

 

「お、抑えて!? 抑えてくださいですぅ!? 今は喧嘩している場合じゃないんですから!?」

 

 先に行こうとするノワールに聞こえるよう、わざとらしくネプテューヌとREDは小声で話し出した。

 すると、聞こえてきた会話にノワールはピクッと耳を動かして立ち止まってしまう。

 だが、すぐにわなわなと体を震わせ、ノワールは自然と握り拳を胸元まで上げる。

 そんな怒りが爆発寸前の低い声を出すノワールを、コンパは慌てて宥めようとする。

 アイエフがいなくなったことだけでパニックに陥っていたコンパにとって、ここで3人が喧嘩をしてしまうなんて堪えられないのだ。

 

「今は一刻も早くあいちゃんを助けなきゃいけないんです!? だから、絶対に喧嘩しないでください!?」

 

「こ、コンパさんも落ち着いて!? 声が大きいですよ!?」

 

 もう泣き出してしまいそうなくらい目元に涙を浮かべたコンパはネプテューヌ達の間に立って、必死な様子で訴えた。

 だが、その声も非常に大きく、シンは慌ててしまう。

 

「ご、ごめんね、コンパ!? 別に喧嘩をしようなんて思ってないんだよ!? ただこの重くなりそうな空気を軽くしようと思っただけで!?」

 

「だから、泣き止んで!? 今のは新しくヨメになったノワールとのコミュニケーションだから!? アタシの信条はヨメとイチャイチャすることで、絶対に喧嘩だけはしないからさ!?」

 

「……ぐすっ、本当ですか?」

 

『本当本当!?』

 

 泣き出しそうになるコンパに慌てたのは、ネプテューヌとREDも同じであった。

 あたふたと手を振りながら、2人は必死にコンパを安心させようとする。

 それを聞いて落ち着きを取り戻したコンパは鼻をすすりながら2人に確認を取る。

 2人が声を合わせて何度も頷く姿を見て、コンパはとりあえず安心する。

 すると、そのまま視線をノワールの方へと向ける。

 気まずそうにコンパを中心とした輪を眺めていただけに、ノワールは向けられたビクッと体を震わせて反応してしまう。

 コンパが何を言いたいのかを分かっているからこそ、ノワールは余計に気まずいのだ。

 

「わ、悪かったわよ。私も喧嘩なんかしないから、その……」

 

「はいです。約束ですよ?」

 

(コンパといい、プルルートといい、どうしてこうやりにくいのかしら?)

 

 そっぽを向きながらぼそりと謝罪を口にするノワールを見て、コンパはようやく泣き止むことができた。

 目尻に溜まっていた涙を指で拭い、コンパは笑顔でノワールに話しかける。

 コクリと頷きつつも、ノワールはコンパにプルルートと似た何かを感じてペースを乱されていることを自覚する。

 

「もう、ノワールってば素直じゃないんだから」

 

「もっとアタシ達にもデレを見せてくれてもいいじゃん」

 

「っ、なんでくっついて来ているのよ!? 離れなさいよ!?」

 

 空気がほんわかしたのを感じ、ネプテューヌとREDはノワールへと擦り寄って行った。

 両腕に絡みついてくる2人を、ノワールは迷惑そうな顔で振り払おうとする。

 だが、その態度が余計に2人のツボを押してしまい、まったく離れようとしない。

 救いを求めるようにノワールが視線を向けるコンパはニコニコとしているだけで、2人を諌めようとはしない。

 コンパの目にはノワール達が仲良くじゃれ合っているようにしか見えないのだ。

 泣きそうになった反動なのか、仲良くしているように見える3人の姿にコンパはほっこりしてしまっている。

 次にシンへと視線を移すが、こちらも困ったように笑っているだけである。

 その顔が自分ではネプテューヌ達を止められないことを雄弁と物語っていた。

 仕方なく最後の望みを託して、ノワールは残りの2人の方を向くが……

 

「あ、あの、ネプギアさん? そろそろ手を離してはもらえないで……」

 

「駄目です。こうしてないと夢人さん、すぐにアイエフさんを探しに1人で走って行こうとしますよね?」

 

「そ、それはな……」

 

 そこには、不機嫌な様子のネプギアに強く手を握られたままの夢人がいた。

 ――ここが1番駄目だと、ノワールはすぐに悟る。

 夢人はネプギアの手を振り払おうと思えば、すぐにでもできるはずである。

 その証拠に夢人の頬は少しだけ朱色に染まっており、鼻の下が伸びているようにノワールは見える。

 

「夢人さんは絶対に私から離れちゃ駄目ですよ。ただでさえ、今は剣がなくて戦う手段がないんですから」

 

「……はい、分かりました」

 

 図星を指されて言い淀む夢人に、ネプギアは念を押して言う。

 

 ネプギアの言う通り、今夢人の手元にブレイブソードはない。

 ホテルに戻って探しても、シンが言っていたようにブレイブソードを入れていた竹刀袋ごとなくなっていたのである。

 昨晩は素振りの練習をしないと決めていたため、夢人は河原にブレイブソードを持っていっていない。

 だから、本当ならホテルにあるはずだったのだ。

 しかし、ブレイブソードはベッドの下を探しても見つからなかったのである。

 誘拐されたアイエフの安否も心配であったため、仕方なく夢人は丸腰でもネプテューヌ達と一緒にこの倉庫にやって来たのだ。

 当然、夢人のことを心配するネプギアには同行することを止められた。

 だが、ただ黙って待っているだけなんてできないと、夢人はネプギアの制止を振り切ってアイエフの救出に来たのである。

 最終的にネプギアも夢人に【絶対に危ないことをしない】という約束を交換条件を出して了承したのだが、今までのことを思うとあまり信用はしていない。

 でも、夢人が止まらないことも理解しているため、ネプギアも強引に止めようとは思っていないだけだ。

 その分、自分が夢人を守るとネプギアは握った手を離さないで周りを警戒していたのである。

 

 ――だが、それは傍から見ると、ただ男女がいちゃついているようにしか見えない。

 場所の雰囲気も相まって、恋人同士でお化け屋敷にでも入ったようにも見えてしまう。

 何時仕掛けが飛び出すのかを警戒する彼女と、鼻の下を伸ばして怖がる彼女を抱きしめる準備をしている彼氏。

 これから誘拐されたアイエフを助けに行こうなんて緊張感は微塵も感じられない。

 

(……こんな状態で、本当に大丈夫なの?)

 

 ガックリと項垂れる夢人を見て、ノワールは自分の方がため息をつきたいと思ってしまう。

 ――能天気なネプテューヌとRED。

 ――いちゃついているようにしか見えない夢人とネプギア。

 ――ぽわぽわした雰囲気でニコニコしているコンパ。

 ――ただ笑って傍観に徹しようとしているシン。

 助けに行く自分達がこんな状況では、囚われているアイエフも浮かばれないだろう。

 ノワールはこれから助けに行くはずのアイエフに同情してしまうのであった。

 

 

*     *     *

 

 

(まったく!! どうして私がこんなことをしなくちゃいけないのよ!!)

 

 その頃、ミモザは1人激怒していた。

 同じホテルに泊っているので、当然ミモザもアイエフが誘拐されたことは知っている。

 だが、夢人のように無理やりにでもついていけるほど、ミモザの身体能力はずば抜けて優れているわけではない。

 むしろ、平均を大きく下回る体力なのだ。

 アイエフを助けるために駆け出して行った夢人達に付いて行くことなど、ミモザには不可能なのである。

 

「ぴいもたすけにいく!! ぴいもいくの!!」

 

「ダメだよ!? ぴいちゃん、落ち着いて(ぎゅっ)!?」

 

「やだー!!」

 

 この場にいるのはミモザだけじゃない。

 暴れてホテルから飛び出そうとしているピーシェを羽交い絞めにして押さえるロムも一緒だ。

 

「すぅ、すぅ……えへへ~」

 

 その近くのベッドにはプルルートが枕を抱きしめて眠っていた。

 ピーシェが大声を出したり、バタバタと騒がしい音を立てても起きる気配がない。

 夢人達と河原で遅くまで話をしていたせいで、プルルートの眠りは深いようであった。

 

「わるいやつは、ぴいがやっつけるもん!! そして、あいえふをたすけるの!!」

 

「無理だよ!? アイエフさんのことは夢人お兄ちゃん達に任せて大人しく待っていよう、ね(お願い)?」

 

「やーなーのー!! あいえふはぴいがたすける!! “めーと”よりも、ぴいのほうがつよいもん!!」

 

 じたばたと拘束を振り解こうとするピーシェに、ロムは必死に宥めようと声をかけた。

 だが、ピーシェは止まらない。

 “めーと”――夢人よりも強いと言って、ピーシェはロムの話を聞こうとしないのである。

 

「あ、あははは、それは夢人さんが手を抜いているからじゃ……」

 

「確かにそうかもしれないけど、この子も子どもだから遠慮ってものがないのよ」

 

「……ああ、なるほど」

 

 この場にいる最後の1人、ファルコムが乾いた声で笑いながら夢人をフォローしようとするが、ミモザに遮られてしまう。

 そして、ミモザの言葉にファルコムは納得して、困ったように眉根を下げる。

 何故なら、その一言でだいたいの事情を察することができたのだ。

 子ども故に加減を知らないピーシェの全力を受け止めきれずに倒れる夢人の図が、ファルコムにも容易に想像できる。

 

「ふん。まったく、無理やり起こされたと思ったら、こんな面倒なことを押し付けて行って……あのブ男は」

 

「まあまあ、何があるか分からないんだから仕方ないでしょ?」

 

「それは分かってるけど……」

 

 ファルコムが納得すると、ミモザは興味を失くしたかのように鼻を鳴らして愚痴をこぼし始めた。

 恨む対象は理不尽かもしれないが、夢人である。

 ミモザは自分と同じで戦う手段がなくなってしまった夢人が無理やりついて行ったことが気にくわないのだ。

 しかも、ブレイブソードがないことをネプギアに指摘されて止められたにも関わらず、アイエフを助けると言って飛び出した夢人の姿には苛立ちすら覚えた。

 おまけに、ネプギアといちゃついているように見えて怒りはさらに増した。

 そんな不機嫌な態度で顔をしかめているミモザを宥めようと、ファルコムは困ったように笑いながら声をかける。

 ファルコムも言いたいことは分かるが、ミモザもそう簡単に納得できるほど、アイエフが誘拐されて心穏やかでなかったのだ。

 

 ――ミモザ達が留守番をしているのには理由がある。

 まずは、眠っているプルルートだ。

 眠っているプルルートを1人でホテルに残して行くわけにはいかなかったのである。

 1人にしたプルルートにまたアヴニールが襲い掛かってくる可能性もある。

 夢人達の認識では、現にアヴニールはホテルからアイエフを誰にも気付かれることなく誘拐しているのだから。

 2つ目に、ピーシェとロムの存在である。

 これから間違いなくアヴニールとぶつかるであろう場所に、子どもであるピーシェ達を連れていくわけにはいかない。

 女神候補生であるロムならともかく、ただ普通の子どもよりも腕白なだけのピーシェには危険が多い。

 だから、全員で固まって1つの部屋にいるのである。

 もしも危険が迫っても、ファルコムという護衛がいる。

 並大抵の相手ではファルコムに太刀打ちできないので、ピーシェ達の安全が保証されると言うわけだ。

 加えて、危なくなればロムの女神化という手段もある。

 この2人がいれば、戦えないミモザ達を逃がしつつホテルから離脱することもできるはずだと判断したのである。

 

「そろそろあの子を押さえておくのも限界だと思うのよ」

 

「うん、そうだね。それじゃ、あたしも止めに入ってくるよ」

 

「だっ!!」

 

「あっ!?」

 

 呆れたようにピーシェとロムの方を見つめながら、ミモザは見たままの感想を口にした。

 さらに暴れ出したピーシェをロム1人で押さえておくのが無理そうに見えたのである。

 ミモザに同意しつつ、ファルコムはロムの手助けをするために立ちあがろうとする。

 だが、ファルコムが腰を上げた瞬間、遂にピーシェはロムの拘束を振り切ってしまったのだ。

 ピーシェはそのまま一直線に部屋から飛び出そうとして……

 

「オーッス! 夢人兄ちゃんかファルコム姉ちゃんは――ほぐわぁっ!?」

 

「みぎゃっ!?」

 

 ――ちょうど部屋に入ってこようとしたリュータに激突してしまったのだ。

 鳩尾に綺麗にピーシェの頭がぶつかったせいで、リュータは痛みに悶えてゴロゴロと床を転がり始める。

 対して、ピーシェの方は尻餅をついてぶつかった額を両手で擦っている程度だ。

 

「ぴいちゃん!? タツタ君も大丈夫(おろおろ)!?」

 

「大丈夫なわけあるか!! 何やってんだよ、このバカ!!」

 

「ぴいはわるくないもん!! たつたがわるい!!」

 

「何度も行ってるが、オレはタツタじゃねー!! オレの名前はリュータだ!!」

 

 激突する2人に、ロムは慌てて駆け寄って心配そうに声をかけた。

 すると、リュータはバッと体を起こしてピーシェを指さす。

 だが、ピーシェも負けじと額の痛みの影響で少し潤んだ目でリュータを睨みつける。

 お互いに怒鳴り合う2人と間に立っておろおろしているロムの姿に、ミモザとファルコムは揃ってため息をついてしまう。

 そして、プルルートはと言うと……

 

「みんな、なかよし~」

 

 本当は起きているのではないかと疑ってしまう程の的確な寝言を漏らすのであった。

 

 

*     *     *

 

 

「……うぅ、うぅん……ここは……?」

 

 妙に重い体に違和感を覚えつつ、アイエフはゆっくりと瞼を開いた。

 まだ意識が完全に覚醒しているわけではないため、周りの景色すら頭の中に入ってこない。

 喉が渇き切っているのか、声もかすれている。

 唯一分かることは、今自分がいる場所が薄暗いことだけ。

 アイエフは窓から差し込んでいるであろう光が目に痛いと思ってしまう。

 

(私、寝てた? こんな所で? どうし――っ!?)

 

 次第に頭が働き始めたアイエフは冷静に何があったのかを思い出そうとした。

 だが、すぐにハッとして大きく目を見開いてしまう。

 自分がガナッシュによって囚われてしまったことを思い出したからである。

 

「っ、何よ、これ!?」

 

 寝起きの倦怠感などお構いなしに立ちあがろうとしたアイエフであったが、すぐに自分の体が縛られていることに気付いた。

 アイエフの体は縄で柱に縛り付けられていたのである。

 縄の存在を意識すると、思い出したかのように縛られて圧迫している部分が痛みだす。

 ジタバタと暴れて縄を抜けようとするが、腕にも足にも上手く力が入ってくれない。

 まるで痺れているみたいだと思い至り、アイエフは意識を失う直前の出来事を思い出す。

 

(まだあの痺れが!? 早くシアンに知らせなきゃいけないって言うのに!?)

 

 焦るアイエフの思いとは裏腹に、腕も足もまったく動いてくれなかった。

 指すら動かせない現状では、携帯を使って助けを呼ぶこともできない。

 大声を出そうにも、ひりひりと痛む喉では不可能であった。

 八方塞の状況に置かれたアイエフは悔しさに顔を歪ませる。

 それでも何とかしようと、アイエフは周りに何か役に立つ物がないかを探しだす。

 しかし、目を凝らして探しても、特に何も見つけられない。

 周りには何もなく、窓から差し込んだ光と遠くで光を反射している“何か”しかアイエフは発見することができなかったのだ。

 ――だが、その“何か”にアイエフはとてつもない不安を感じた。

 

(アレって……)

 

 アイエフはその“何か”に心当たりがあった。

 光を反射する物という条件だけなら他にもたくさん候補があるのに、アイエフにはどうしても“何か”がアレに思えて仕方ない。

 だが、同時にどうしてこんな場所にアレがあるのかと疑問に思ってしまう。

 

「あっ、いたいた!! 皆、こっちだよ!!」

 

 頭の中で結論を導き出す前に、アイエフの耳に聞き覚えのある能天気な声が聞こえてきた。

 すると、遠くからネプテューヌを先頭にしてぞろぞろと夢人達がアイエフの縛られている部屋の前までやってくる。

 

「だから、声が大きいのよ!! もっと慎重に……」

 

「本当だ!! 待ってて、あいちゃん!! 今アタシ達が助けてあげるから!!」

 

「わたし達も行くですよ、ねぷねぷ!!」

 

「当然!! あいちゃーん!!」

 

「――って、少しは話を聞きなさいよ!! もう!!」

 

 注意するノワールの横を、REDとコンパ、それにネプテューヌが駆け抜けてアイエフへと一直線に向かって行く。

 そんな向こう見ずな3人の行動に頭を痛めつつ、ノワールも慌てて追いかける。

 

「俺達も行くぞ、ネプギア!!」

 

「はい!!」

 

「僕も!!」

 

 4人に続くように夢人とネプギアも部屋の中に入り、最後にシンが入った瞬間……

 

〔警告!! 警告!! 侵入者アリ!! 侵入者アリ!!〕

 

『っ!?』

 

 ――突如として、ヴィーヴィーと激しいサイレン音と共に警告音が鳴りだした。

 備え付けの赤色ランプが怪しく光り出す。

 その音に驚いた夢人達は全員立ち止まってしまう。

 

「もしかして、あいちゃんを助けに来たことがばれたの!?」

 

「えええ!? 大変ですぅ!?」

 

「いったい誰が気付かれるようなドジを踏んだの!? っ、まさか、ゆっくんなの!? それとも、ノワール!?」

 

「――あなた達でしょ!! あなた達のせいに決まってるでしょ!!」

 

 鳴り止まないサイレン音にパニックに陥ってしまうネプテューヌ達。

 だが、気付かれるようなことを散々しておいての物言いのため、その姿は間抜けに映ってしまう。

 しかも、それを3人は本気で言っている。

 妙な言いがかりまでかけられて黙っていられるほど、ノワールも我慢しきれずに怒鳴り声を上げてしまうのだった。

 

「まず制御室に行くって言ったわよね!! 私、気付かれないようにセキュリティーシステムをダウンさせようって言ったわよね!! それなのに、あなた達が勝手にどんどん進んで行くから……」

 

「お、落ち着いてください、ノワールさん!? 今更そんなこと言っても遅いですって!?」

 

「うるさい!! そもそも、あなた達もちゃんとネプテューヌ達のことを止めなかったからいけないのよ!!」

 

「ぼ、僕達のせいなんですか!?」

 

 必死にネプテューヌ達を怒鳴りつけるノワールの目には涙が滲んでいた。

 ノワールはここまで来るのに、自分の誘導に従わず好き勝手にアイエフを探そうとするネプテューヌ達に振り回され続けていたのである。

 いくら制御室へと向かおうとしても、あっちだこっちだと適当にネプテューヌ達は進路を変更していたのだ。

 それが偶然アイエフが縛られていた部屋に辿りついたのが、ここに至るまでの経緯なのである。

 さすがに泣きそうになりながら訴えるノワールを見ていられなくなり、ネプギアは慌てて宥めようとする。

 しかし、それは興奮しているノワールの怒りを拡散させてしまう結果に終わってしまう。

 何もしていないのにも関わらず、ノワールに責められたシンはあたふたと自分の顔を指さして驚いてしまう。

 

「……なあ、どうしてそこで俺の名前が出てきたのかを教えてくれないか?」

 

「えっ? だって、ゆっくんだし――イダダダダダッ!? ごめんなさい!? 許して!?」

 

 謂れのない理由でネプギアとシンがノワールから責められている一方で、夢人はネプテューヌの両肩をガシッと強く掴みながら質問をしていた。

 きょとんとした顔で平然と答えるネプテューヌに、夢人は苛立ち制裁を加える。

 ネプテューヌのこめかみを握った拳でぐりぐりと圧迫し始めたのだ。

 あまりの痛みに謝りだすネプテューヌを見ても、夢人は手を緩めない。

 

(……私はいつまで放って置かれるのかしら)

 

 そんな騒がしい夢人達を見て、アイエフの心は逆に落ち着いてくる。

 ヴィーヴィーとうるさい音が鳴り響く中で、アイエフは夢人達がよく言い合いをできるほど余裕があるなと感心してしまう。

 呆れはするが、そこに嫌悪は感じない。

 むしろ、夢人達はそう言う連中であると半ば諦めているのだ。

 

「あわわわわわ!? ゆっくんさんもノワールさんもそんなことをしている場合じゃないですよ!? は、早くこの音を止めないと!?」

 

「そうだよ!? 今からでも制御室に行って……」

 

〔隔壁ヲロックシマス!! 隔壁ヲロックシマス!!〕

 

「――って、閉まっちゃダメー!?」

 

 パニックになりながらもコンパは、現実逃避をしているようにしか見えない夢人とノワールに正気に戻ってもらおうと声をかけた。

 コンパの意見に賛同したREDが具体的な方策を提案しようとした途端、夢人達がいる部屋の扉が鋼鉄の板で塞がれてしまう。

 緊急用のシャッターである。

 懇願するREDの声もむなしく、ガシャンッと音を立てて扉はシャッターにより固く閉ざされてしまったのである。

 窓もシャッターで閉ざされてしまったので、途端に部屋が真っ暗に早変わりしてしまう。

 唯一の光は赤色ランプの灯りだけ。

 その赤い光もランプの中にある反射ミラーで拡散してしまっているので、ほとんど当てにならない。

 むしろ、不規則に揺らめく赤い光のせいで、閉じ込められている夢人達は不安を増大させてしまう。

 

「っ、全員下手に動くんじゃないわよ!? 絶対に1人にならないように注意しなさい!?」

 

 暗くなった室内にノワールの指示が響いた。

 これから何が起こるか分からないので、ノワールは夢人達に周囲への注意を促したのである。

 夢人達は逆らうことなく、ノワールの指示に従って近くにいる相手と固まって周りを警戒する。

 夢人はネプテューヌと。

 コンパはREDと。

 ノワールはネプギアと。

 そんな中、ノワールとネプギアは先程まで近くにいたはずのシンがいないことに気付く。

 もしかして勝手に動いてしまったのかと、頼りない赤色の光を探そうとすると……

 

「うわああああああ!?」

 

「シン!? どうした!?」

 

 ――シンの悲鳴と“何か”がぶつかるような音が聞こえてきた。

 慌てて夢人が声を上げる。

 

「み、皆、気をつけて……今、何か丸い物が僕を襲って来たんだ……」

 

「丸い物? それっていったい……」

 

「っ、ゆっくん、危ない!?」

 

「うおっ!?」

 

 辛そうな声でシンは夢人達全員に注意を促した。

 その言葉に疑問を感じるよりも早く、ネプテューヌは夢人を押し倒す。

 赤い光に照らされた何かを見つけたからである。

 すると、直後にちょうど夢人のいた場所にガギッと“何か”が突き刺さる音がする。

 

「あ、ありがとう、ネプテューヌ」

 

「ううん、気にしなくていいよ。それよりも、今のは丸いって言うよりも細長かったような……」

 

 押し倒されたことには驚いたが、夢人はネプテューヌに助けてもらったのだと分かってお礼を戸惑いながらも口にした。

 対して、ネプテューヌは安心したように口元を緩めて、手を引っ張り夢人を立ち上がらせる。

 だが、一瞬見えた影がシンの言うような丸い物でなかったことに疑問を覚えてしまう。

 

「全員周囲を警戒しなさい!! 襲われているわよ!!」

 

「そ、そんなことを言われても、真っ暗で何も見えないですよ!?」

 

「不意打ちなんて卑怯だぞ!? 正々堂々と戦えー!?」

 

 2度も襲撃を受けて、ノワールは気休めでも全員に気をつけるように叫んだ。

 しかし、返って来た言葉はコンパとREDの弱音であった。

 それも仕方ないと思いつつも、ノワールは顔をしかめてしまう。

 

(くっ、どうにかしないと、このままじゃ……っ!?)

 

「っ、ノワールさん!?」

 

「分かってるっ!?」

 

 打開策を講じようと考えを巡らせるノワールの視界に、キラリと“何か”が光って見えた。

 ネプギアも同じ物を見たらしく、息をのんでノワールへと呼びかける。

 それに返事をして、ノワールはネプギアと共に暗闇からの襲撃に警戒していると……

 

『っ、きゃあああああああ!?』

 

 ――突然、床が爆発した。

 気が付いたら、ノワールとネプギアは爆風に吹き飛ばされていたのである。

 何が起こったのかを把握することもできず、2人の悲鳴だけが木霊する。

 爆風に煽られて吹き飛ばされた2人は床に強く体を打ち付けてしまう。

 

「ネプギア!? ノワール!?」

 

「ちょっ、ゆっくん!?」

 

 悲鳴が聞こえた途端、夢人はなりふり構わずネプギア達のいる方へと駆け出した。

 そんな夢人のいきなりの行動に、ネプテューヌは慌てて後を追いかける。

 幸い、床が爆発した時に大きな閃光が走ったので、夢人達はすぐにネプギア達を見つけることができた。

 

「ネプギア!? 大丈夫か、ネプギア!? しっかりしてくれ!?」

 

 倒れているネプギアを抱き起こし、夢人は必死に呼びかけた。

 だが、ネプギアは体をぐったりさせたまま返事を返さない。

 最悪の事態を想像して、夢人は顔から血の気を失くしてしまう。

 

「少しは、落ち着きなさい……多分、気絶しているだけよ……ぐっ」

 

「ノワールも無理に起き上がろうとしちゃ駄目だよ!?」

 

「そうも言っていられる状況じゃないでしょう」

 

 焦る夢人に、ノワールは冷静になるように伝えた。

 ネプギアが呼吸を繰り返している音が聞こえたので、ノワールは少なくとも夢人の考える最悪の事態にだけはなっていないことを理解する。

 だが、悠長にことを構えていられるほど余裕があるわけではない。

 これ以上見えない何かに襲われる前に何とかしなければと、ノワールは痛む体を無理やり起こそうとする。

 しかし、痛みを堪え切れずノワールは短く呻いてしまう。

 心配するネプテューヌが肩に手を置いてくるが、ノワールはその手に優しく手を重ねるだけで起き上がることをやめようとしない。

 

「あなたに頼るって言うのは癪だけど、今は手段を選んでいられないわ。ネプテューヌ、今すぐ女神化して天井を壊して来てちょうだい」

 

「うーん、なんかちょっと気になる頼まれ方だけど、そうするしかないよね!」

 

 苦虫を噛み潰したかのようにノワールが顔を歪めて、ネプテューヌにこの状況を打開する一手を打つように頼んだ。

 このまま視界が封じられたままでいたら何もできない。

 そう考えたからこそ、ノワールは天井を壊して部屋を明るくしようと考えたのである。

 本当なら自分がやるべきだとも考えたが、床に倒れた時に頭も強く打ちつけたせいか、ガンガンと頭の奥が響くように痛みが走って女神化しようとしても上手く集中できないのだ。

 含みを持たせた言い回しに疑問を覚えながらも、ネプテューヌはすぐにノワールの言う通り女神化をしようとする。

 

「それじゃ、刮目せ――って、ちょっと!?」

 

 お決まりの言葉を口にして女神化しようとするネプテューヌ目掛けて、再び“何か”が襲いかかって来た。

 女神化寸前で体の周りに光が集まっていたからこそ、ネプテューヌは気付くことができたのである。

 だが、襲われたことでネプテューヌは完全に女神化するタイミングを逃してしまった。

 

「へ、変身中の攻撃はご法度――ねぷっ!? むぎゅっ!?」

 

 文句を口にするネプテューヌに、“何か”は続けて襲いかかって来た。

 1度襲撃を上手く避けられたことに安堵していたネプテューヌの背後から、“何か”がぶつかってくる。

 そのまま顎から床に倒れてしまい、ネプテューヌはうつ伏せの体勢で転がってしまう。

 すると、何度もガギンッという音がネプテューヌの近くで響く。

 

「あ、あれ!? どうして起き上がれないの!? ちょっと誰か助けて!?」

 

 まるで床に縫い付けられているかのような圧迫感を感じ、ネプテューヌはうつ伏せの姿勢で起き上がれなくなってしまった。

 どんなにもがいてもネプテューヌは自分の体を起き上がらせることができない。

 何が起こっているのか分からない恐怖に煽られ、ネプテューヌは泣きそうになりながら助けを求める。

 

「何をやってるのよ。仕方ない、ここは私が……あっ」

 

「っ、おい、ノワール!?」

 

 ネプテューヌの不甲斐なさに悪態をつきながら、ノワールは自分がしっかりしなければと思い、女神化をしようとした。

 しかし、立つことはできたものの、急に眩暈がしてしまい、前のめりに倒れそうになってしまう。

 すぐに近くにいた夢人が支えたおかげで、倒れることだけは防ぐことに成功する。

 だが、ノワールはそのまま夢人に体重を預けて膝をついてしまう。

 

「しっかりしろ!? 大丈夫か!?」

 

「へ、平気、よ。今、私が何とか……うぐっ」

 

「おい!?」

 

 自分で思っていた以上に頭の痛みが酷いせいで、ノワールは段々と息遣いが荒くなっていく。

 視界もぶれていて、満足に立ち上がることすらできない。

 心配している夢人の言葉も、どこか遠くに感じていた。

 それでも無理やり立ち上がろうとするが、頭の奥底から響くような痛みに襲われて、逆に夢人へともたれかかってしまう。

 既に片腕でネプギアを抱えていたこともあり、夢人はさらに倒れかかってくるノワールに慌ててしまう。

 だが、2人を冷たい床に転がせるわけにはいかないと、夢人は体全体を使って何とか倒れかかってくるノワールを支えることに成功する。

 

 ――その時、カツンと乾いた音が響く。

 倒れそうになったノワールが持って来ていた“とある物”を落としたのである。

 それは1枚のディスクであった。

 マーマレードにカードキーと地図と一緒に渡された謎のディスク。

 慌てていたノワールは、何の役にも立ちそうにないディスクを地図やカードキーと一緒に間違って持って来ていたのだ。

 

「今の音って――っ!?」

 

『っ!?』

 

 夢人が聞こえてきた音に疑問を覚えるよりも前に、床に落ちたディスクは目を覆いたくなるような眩い光を放った。

 その閃光に誰もが驚いてしまう。

 ディスクから放たれた光は一瞬のうちに部屋全体を真っ白に染め上げる。

 急に飛びこんできた光に、夢人が目を細めていると……

 

〔――ようやく会えたな〕

 

「っ、その声は!?」

 

 ――聞き覚えのある声に、夢人は大きく目を見開いた。

 そこには力強いエンジン音を響かせ、真っ直ぐに前を照らし続けるライトを灯す青いバイクがあった。

 

「ワンダー!!」

 

 共に犯罪組織と戦った相棒であるマシンワンダーがいたのである。




という訳で、今回はここまで!
ようやくワンダーを出せましたよ。
これでマーマレードの方も正体が誰なのか、検討がついたかと思います。
まあ、まずは次回でビシッとこの章を終わりにしましょう。
それでは、 次回 「鋼鉄×恋心×結託」 をお楽しみに!
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