超次次元ゲイムネプテューヌ Re;夢のヒーローを目指して   作:ホタチ丸

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はい、皆さんこんばんわ!
遅くなったうえに、また話数が伸びてしまいました。
それでは、 バイク×コンテナ×爆発 はじまります


バイク×コンテナ×爆発

 突如として姿を現した青いバイク――ワンダーに夢人は驚きを隠せない。

 視界が一瞬真っ白に染まったと思ったら、次の瞬間には目の前にいたのだ。

 それは気絶しているネプギア以外も同じである。

 この場にいる全員、呆然とワンダーを見てしまうのも無理はなかった。

 

〔さて、再会を喜ぶ前にやることがあるな――ネプテューヌっ!!〕

 

「へっ!? わたし!? って、眩しい!?」

 

 急に名前を呼ばれて、ネプテューヌは大いに慌ててしまった。

 だからと言って、縫い付けられているかのような感覚がなくなるわけはなく、ただ顔を上げてワンダーの方を向くことしかできない。

 しかし、大きく見開かれていたネプテューヌの目に飛び込んできたのは、焼けるような閃光だった。

 名前を呼ぶと同時に、ワンダーはネプテューヌの方へとライトを向けていたのである。

 

 ――すると、そこには6本の円錐のような物で床に縫い付けられているネプテューヌの姿が照らし出される。

 

「っ、今なら!!」

 

 はっきりと目に映るネプテューヌの動きを阻害している物体を見た瞬間、シンはすぐさまショートソードを構えて駆け出した。

 ネプテューヌに近づくと、シンは躊躇うことなくショートソードを横に薙ぐ。

 すると、ネプテューヌの体を床に縫い付けていた円錐のような物体は弾かれるように吹き飛んでいく。

 

「目がぁ!? 目がー!?」

 

「……あ、あの、もう大丈夫ですよ?」

 

「え――あっ、本当だ!」

 

 動きを阻害していた物体がなくなると同時に、ネプテューヌは両手で目を覆いながら地面をゴロゴロと転がり出した。

 そんなネプテューヌに、シンは申し訳なさそうに声をかける。

 少し間が空いたが、シンに言われてようやくネプテューヌも自由に動けるようになったことを自覚する。

 ネプテューヌはすぐに体を起こして、パンパンと軽く服の埃を払う。

 

「ありがとうね、シン! おかげで助かっちゃったよ!」

 

「気にしないでください。僕達は仲間なんですから」

 

 立ち上がったネプテューヌがお礼を言うと、シンは少しだけ頬を緩ませた。

 照れた様子も見せずに仲間だと言い切るシンに、ネプテューヌも嬉しくなってしまう。

 

「よーしっ! それなら、わたしも頑張らなくっちゃ!」

 

 気合いを入れ直すと同時に、ネプテューヌの体は女神化の光に包まれた。

 発生した光の柱は一瞬のうちに霧散し、ネプテューヌは今度こそ女神化に成功したのである。

 

「今度こそ頼むぞ、ネプテューヌ!」

 

「ええ、任せて!」

 

 期待する夢人の声を受け、ネプテューヌは勢いよく飛び上がった。

 そのままプロセッサユニットのウイングを使って、真っ直ぐに加速していく。

 

「はああああああ!! ――せいっ!!」

 

 天井にぶつかることすら恐れず、ネプテューヌの体は上昇していった。

 そして、ぶつかりそうになった瞬間、ネプテューヌは刀剣で天井を切り裂いたのである。

 勢いでそのまま外に飛び出してしまったネプテューヌであったが、天井に開いた穴から差し込む日の光は確かに夢人達を照らしだす。

 それはネプテューヌ1人分という小さい穴であったが、夢人達が周りの状況を把握するには充分でもあった。

 

 ――光が差し込んだ部屋の中には、夢人達以外に3体のロボットの姿があった。

 1体はアンテナのような物がついている球状のロボット――ビットカスタム。

 2体目は螺子のような本体の後ろに6本の円錐を浮遊させているロボット――R-4。

 最後に4本の足で駆動する2つの砲台がついた戦車のようなロボット――R4i-SDHC。

 

「こんな奴らがいつの間に……」

 

「そんなの後あと! 姿さえ見えれば、こっちのもんだもんね!」

 

 いつの間にか現れていた3体のロボットに夢人が疑問を覚えるが、REDは考えるよりも先にビットカスタムへと駆け出した。

 飛びかかるようにつま先で跳躍すると、REDは袖から愛用のけん玉を取り出す。

 

「そーれっ!!」

 

〔ジガッ!?〕

 

 REDは振りかぶったけん玉をビットカスタムへと思いっきりぶつけた。

 勢いのついた球はビットカスタムに付いているアンテナのような物をへし折ることに成功する。

 すると、ビットカスタムは力を失ったかのように地面へと落下してしまう。

 衝撃でカメラアイが点滅し出したが、やがてその光は完全に消えてしまう。

 

「狙いどーり! アタシのヨメを傷つける奴は、誰だって許さないよ!」

 

〔ピガ〕

 

「へっ? ――って、うわああああああああ!?」

 

 ビットカスタムが完全に機能停止になったことで、得意になってビシッと指を指してポージングしていたREDの耳に妙な機械音が聞こえてきた。

 振り返るREDの目に、R-4の本体がアップで映し出される。

 まるでぎろりと睨みつけられているかのようにカメラアイが赤く光るのを見て、REDは恐怖のあまり悲鳴を上げてR-4から距離を取ろうとする。

 だが、R-4はREDを逃がすまいと、背面に浮遊させている6本の円錐を動かす。

 後光のように違う方向を向いていた円錐の先が一斉に逃げるREDの方を向いたかと思うと、そのまま真っ直ぐに射出される。

 R-4に完全に背中を向けて逃げているREDは自分に向かってくる6本の円錐に対処できない。

 体ごと振り返り、けん玉で迎撃しようにも6本全てを撃ち落とすことは不可能であった。

 

「たああああああっ!!」

 

 しかし、円錐の攻撃からREDを救う人物がいた――シンである。

 シンは逃げるREDと円錐の間に割って入り、ショートソードで円錐全てを打ち払ったのである。

 1度ショートソードで弾かれた円錐は、制御を失ったようで即座にR-4の背後に戻ろうとする。

 

「そこだっ!!」

 

 唯一の攻撃手段だと思われる円錐が制御を失っているように見えた隙を逃さず、シンはR-4へと肉薄する。

 R-4は円錐が完全に戻るまで動けないのか、シンが迫ってきていると言うのに逃げる素振りを見せない。

 

「はあっ!!」

 

〔ガピッ!?〕

 

「ふんっ!!」

 

 動かないR-4のカメラアイに向かって、シンはショートソードを突き刺した。

 外観的に、1番脆そうな部分だと判断したからである。

 シンの予想は的中し、ショートソードの刃はR-4の鋼鉄のボディに弾かれずにカメラアイの部分を貫いたのである。

 不快な音を出すR-4に構わず、シンはそのまま内部を抉るようにショートソードの刃を回転させる。

 すると、6本の円錐全てが力を失って地に落ちてしまう。

 それを確認したシンがショートソードを引き抜くと、R-4は機能を停止させて地面へと派手な音を立てて落下する。

 

「ふぅ、大丈夫でしたか?」

 

「うんうん、平気平気! さすが、シン!」

 

「あはははは、これくらいは別に……って、もう1体の方は――っ!?」

 

 安堵の息を漏らしながら、シンはREDを心配して声をかけた。

 対して、REDは満面の笑みを浮かべながらシンへと近づいてバシバシと背中を叩き始める。

 REDは褒め称えているつもりだが、叩かれているシンは苦笑しか浮かべられない。

 乾いた声で笑ってREDに答えながら、最後のR4i-SDHCに注意しようとしたシンであったが、目に入って来た光景に唖然としてしまう。

 

 ――何故なら、無人のバイクがR4i-SDHCの周りをグルグルと走っていたのだから。

 

〔ビッ、ビビビッ、ビビビビビビ〕

 

 無人のバイク――自動操縦で動くワンダーがR4i-SDHCの周りをグルグルと走行していたことには理由がある。

 現在、気絶しているネプギアと不調のノワールを抱えて身動きが取れない夢人の3人を守るためである。

 敢えて挑発するようにR4i-SDHCの周りを走行し、ワンダーは自分に狙いを向けさせようとしていたのだ。

 幸い、R4i-SDHCのプログラムはワンダーほど優秀ではなかったらしく、動けない夢人達はすぐにターゲットから外された。

 そして、R4i-SDHCは自分の周りをうろちょろと走り回るワンダーへと狙いを定めようとするのだが、なかなか捕捉できない。

 必死にワンダーに狙いを定めようとして、R4i-SDHCは忙しなく4本の足で回転を繰り返す。

 どうやらターゲットを捕捉するまで砲撃を撃てないようである。

 インプットされたプログラム通りに動くロボットらしい一面を利用したワンダーの翻弄はR4i-SDHCに効果てき面であった。

 

〔そこだっ!!〕

 

〔ギガッ!?〕

 

 回転する度に上下に動く砲台に狙いを定め、ワンダーはウィリー走行からのジャンプを試みた。

 すると、R4i-SDHCはワンダーを捕捉しようとして砲台を上向きに上げる。

 そこにジャンプしてきたワンダーの後輪がぶつかり、片方の砲台は半ばほどからへし折れてしまう。

 砲台をへし折られた衝撃で根元の可動範囲も越えてしまい、R4i-SDHCの動きは一時的に停止してしまった。

 

「チャーンス! いくよ、コンパ!」

 

「え、えええ!? わたしですか!?」

 

 機能不全の影響で小刻みに動くだけになってしまっているR4i-SDHCを見て、REDはにやりと笑ってコンパへと呼びかけた。

 まさか呼ばれるだなんて思わなかったコンパは、突然のことに慌ててしまう。

 しかし、そんなコンパに構わず、REDは地面に落下したまま動かないビットカスタムへと駆け寄り……

 

「へい、パース!!」

 

 あろうことか、コンパに向かってビットカスタムを蹴り飛ばしたのであった。

 言葉通り、渡すことが目的のようでビットカスタムの軌道は山なりで速度も緩やかである。

 しかし、どう反応していいのか分からないコンパは飛んでくるビットカスタムに本能的な恐怖を覚えてしまい……

 

「こ、来ないでくださいー!?」

 

 ――自前の巨大な注射器でビットカスタムを打ち返してしまうのであった。

 ガンッと鈍い音とともにビットカスタムは宙を舞う。

 

「あっ!? 駄目だよ!? ちゃんとアイツにぶつけないと!?」

 

「そ、そんなこと言われても……」

 

「――大丈夫、最後はわたしが決めるわ」

 

 REDはコンパが打ち返したビットカスタムをR4i-SDHCにぶつけるつもりだったらしい。

 自分の手の届かない所まで飛んでしまったビットカスタムを見て、REDは焦りながらコンパに文句を言う。

 当然、前もって言われていたわけじゃないコンパにしてみれば、理不尽極まりない叱責である。

 しかし、コンパはその場の雰囲気に流されて申し訳なさそうに謝ろうとしてしまう。

 そんな時、コンパの声を遮る凛とした声が響く。

 

「アタァァァック!!」

 

 ――天井を突き破って外へと飛び出してしまっていたネプテューヌである。

 出戻って来たネプテューヌは真っ直ぐに宙に漂っていたビットカスタムへと飛翔する。

 そして、R4i-SDHCにぶつかるようにビットカスタムを刀剣の腹で叩き落とす。

 ワンダーに砲台をへし折られた衝撃から立ち直れていなかったR4i-SDHCは当然落ちてくるビットカスタムを避けられるはずもなく……

 

〔ギギギッ!?〕

 

 2体のロボットは激突してしまった。

 激しい音を立てて激突した2体だが、破損度には差異が生じていた。

 ビットカスタムは球体の形状が激突した際に平らに押し潰されたようになってしまったが、R4i-SDHCの方は少し凹んだ痕ができただけである。

 硬度の違いが明らかな結果で現れているが、R4i-SDHCもただでは済まなかった。

 元々エラーを起こしていた上での衝撃である。

 内部のコンピューターがショートを起こしてしまったらしく、ガクガクと4本の足が震えだしたのだ。

 さらに、残っていたもう1本の砲台からも白い煙が噴き出してしまう。

 

「でえええい!!」

 

〔ッ!?〕

 

 そんな挙動の怪しくなったR4i-SDHCに向かって、ネプテューヌはさらなる追撃を加えた。

 ビットカスタムを叩き落とした勢いを殺すことなく、ネプテューヌは空中で縦に回転すると、R4i-SDHCに刀剣の切っ先を垂直にして急降下したのである。

 加速のついた刀剣の刃はぶつかった衝撃で跳ね上がったビットカスタムごと、R4i-SDHCを刺し貫く。

 貫かれたR4i-SDHCは1度ビクンと震えたかと思うと、そのまま動きを止めてしまう。

 

「ふっ……終わったわね」

 

 刀剣を引き抜くと同時に、ネプテューヌは後ろへと大きく跳躍してR4i-SDHCから距離を取った。

 すると、R4i-SDHCの足はガクンと崩れ落ちる。

 残っている砲台も力なく地面に激突し、完全に機能を停止させた。

 3体のロボット全てを倒し終わったことが分かると、ネプテューヌは安心したように軽く笑みを浮かべる。

 

「ナイスアタック! アタシとヨメ達とのコンビネーションが生んだ幻の必殺フォーメーション、トライアングルアタックの劇的勝利だね!」

 

「これもコンパの絶妙なトスのおかげよ。よくやってくれたわ」

 

「え、あの、その、わたしまだよく分かってないんですけど……と、とりあえず、ねぷねぷもREDちゃんもお疲れ様ですぅ」

 

 刀剣に突き刺さったままになっているビットカスタムを外そうとしているネプテューヌに、REDは笑顔で駆け寄った。

 ウインクをしながらサムズアップをするREDに、ネプテューヌも満更でもない様子で返事をする。

 一方で、いつの間にかネプテューヌのアシストをしていたらしいコンパは上手く状況が飲み込めず混乱していた。

 そのためコンパは2人に労いの言葉をかけて、曖昧に笑うことしかできなかった。

 

「とりあえず、無事に済んだみたいだな」

 

「……そうね」

 

 いつもの調子で話す3人を見て、夢人は苦笑してしまう。

 反面、夢人の呟きに反応したノワールの顔は暗い。

 

(結局、私は何もできなかった。しかも、ネプテューヌに助けられるなんて……)

 

 ノワールは自分の無力さを嘆いて唇を強く噛んだ。

 悔しさがこぼれてしまわないように必死に口を閉ざそうとしたのである。

 

〔さて、一先ずの危機は去ったらしいな。これでようやく再会を喜べる〕

 

「ああ、そうだな。しかし、急に出てくるなんて、本当に驚いたぞ」

 

〔私にも事情というものがあったのだ。さすがに誰も乗せていないバイクが勝手に動きだすわけにもいかないからな〕

 

「まあ、そうだろうけどさ。けど、いったいどこから現れたんだ?」

 

〔うむ、それは……〕

 

「――やっぱり、バイクがしゃべってる!?」

 

 夢人とワンダーがお互いに再会を喜んで話していると、突然REDが大きな声を出して割りこんできた。

 驚いた様子でジロジロとワンダーを眺めながら、REDは夢人へと問いかける。

 

「ねえねえ、このバイクどうなってるの!? どうしてしゃべってるの!?」

 

「そう言えば、普通に動いていたり会話出来てましたけど……ま、まさか、幽霊さんがとりついているんじゃないですか!?」

 

「そうなの!? わたしはてっきり、ゆっくんが腹話術でしゃべっているのかと……」

 

「――ああもう!? 一気に話しかけるな!? というより、それはどう言う意味だネプテューヌ!?」

 

〔やれやれ〕

 

(こんな連中に助けられるなんて……っ!)

 

 問いかけるREDに便乗する形で、コンパもネプテューヌも好き勝手に話し始めた。

 そんなに一気に話しかけられても対処できず、夢人はまともにワンダーの紹介もできない。

 特に聞き捨てならなかったネプテューヌに文句を言いながら、夢人は怒鳴る。

 そんな4人の様子を、ワンダーは呆れもしたが、どこか懐かしそうに優しく見守るのであった。

 ……しかし、そんな中でノワールは1人で俯いてわなわなと体を震わせていた。

 戦いが終わったとはいえ、能天気に騒ぎ始める夢人達を間近で見て、ノワールはさっきと違う理由で頭が痛くなってしまう。

 悔しさよりも、夢人達への怒りが沸々と湧き上がって来たのである。

 

「よいしょっと、大丈夫でしたか、アイエフさん?」

 

「……ええ、ありがとう」

 

 夢人達が騒いでいる一方で、シンは1人で縄で縛られていたアイエフの救出を行っていた。

 ショートソードで縄を斬ると、アイエフは力なくシンへともたれかかってしまう。

 まだ体の痺れが取れていないのだ。

 しっかりと受け止めつつ、シンはアイエフに調子を尋ねる。

 返って来た内容が強がりだと分かるが、シンはちゃんと答えられるアイエフの様子に安堵する。

 

「よかった。朝起きたらいなくなっていて、みんな心配していたんですよ」

 

「悪かったわよ。でも……」

 

 安心して笑みを浮かべるシンとは対照的に、アイエフは苦い表情だった。

 何故なら、アイエフは自分からガナッシュの罠にはまって囚われてしまったのだ。

 加えて、特に夢人に対して後ろめたい気持ちがあるため、アイエフは素直に助けに来てくれたことを喜べない。

 ――しかも、アイエフは夢人達と違って、ガナッシュの企みがこれで終わりではないことを察している。

 

「今は、急いでシアン達の所に……」

 

「シアンさんの所? それってどう言う――っ!?」

 

〔緊急事態!! 緊急事態!!〕

 

 喉が枯れているせいでしゃべることも辛いアイエフであったが、何とかシンにガナッシュの企みが終わっていないことを伝えようとした。

 アイエフが何を言おうとしているのかの意図をくみ取り、シンが詳しく話を聞こうとした瞬間、再び部屋中にサイレンと警告音が響く。

 

「今度は何なの!?」

 

「ふええええ!? もう嫌ですぅ!?」

 

〔警備ロボット大破!! 警備ロボット大破!! 至急、コンテナノ移送ヲ開始スル!! コンテナノ移送ヲ開始スル!!〕

 

 慌てるREDとコンパの声をかき消して、警告音が大きく木霊した。

 どう言う意味なのか分からない夢人達と違って、アイエフの顔は青く染まってしまう。

 すると、アイエフはシンにできうる限りの大声でアナウンスの意味を伝える。

 

「早くコンテナを止めて!? でないと、シアン達が危ないのよ!?」

 

「お、落ち着いてください!? 意味がよく分からな……」

 

「ガナッシュはコンテナの中身を使って、シアン達を襲うつもりなのよ!? 私を囮にして、アンタ達を誘き出した隙を狙って……」

 

「――っ、分かりました!? このままじゃ、シアンさん達が危ないってことですね!?」

 

 焦りのせいか、アイエフの説明はしどろもどろで要領を得ないものであった。

 だが、シンは伝わって来た要点を汲み取って、アイエフに確認を取る。

 コクリと頷いて応えるアイエフに、シンも事態を把握して焦りだす。

 

「皆さん!! 急いでシアンさん達の所に行きましょう!! シアンさん達がピンチです!!」

 

「それって、どう言うこと――っ!?」

 

 警告音に負けないくらい声を張り上げてシンが夢人達へと呼びかけた。

 しかし、シンとアイエフの会話が聞こえていなかった夢人達にはそれが何を意味しているのか分からない。

 夢人が問い返そうとした時、部屋の中に眩しい閃光が走る。

 堪らず夢人達が目をつぶった一瞬のうちに、部屋の中に新たな影が現れる。

 

「ぬらー」

 

「ふひゅー」

 

「びー」

 

 紫色の体色をしたスライヌに何本も触手が生えたモンスター――ヒーリングスライヌ。

 大きなキノコのようなモンスター――マタンゴ。

 シカベーダーとは少しだけ黄色い角の部分が異なる平面のモンスター――マルベーダー。

 その3種類のモンスターが夢人達の周りを囲むように出現したのである。

 

「ウソー!? どこから現れたの!?」

 

「あわわわわ!? 囲まれちゃったですよ!?」

 

 急に現れたとしか思えないモンスターの大群に、REDとコンパは驚愕を隠せなかった。

 夢人達は慌てて気絶しているネプギアを守るようにモンスター達に警戒する。

 

「これって、まさかまたあのオバサンが持っていたディスクがあるんじゃ……」

 

「多分、部屋の奥の方にあるわよ」

 

「あいちゃん!? 平気なんですか!?」

 

 同じような現象を目にしたことがあるネプテューヌが眉間にしわを寄せながら考えを巡らせていると、シンに肩を借りて近づいてきたアイエフがその考えを肯定した。

 上手く立てない様子のアイエフを支えようと、コンパは急いで近づく。

 近づいてきたコンパにアイエフを任せると、シンはショートソードを構えてモンスター達へと集中する。

 

「それよりも、早くシアン達の所に行かないと……ンンッ! シアン達が危ないのよ!!」

 

「っ、それは本当なの!?」

 

 喉が限界を迎えようとしているせいで、アイエフは声を出すのも辛い様子であった。

 しかし、シアン達の危機を伝えるために無理をして声を絞り出す。

 1番に反応したのは、ノワールであった。

 その表情は驚愕から、次第に怒りへと染まっていく。

 

「アヴニールの奴ら……っ! まさか実力行使に出るだなんてっ!」

 

「だから、早くコンテナだけでも止めないと!!」

 

 アイエフから伝えられたアヴニールの暴挙に、ノワールは怒りを抑えられそうになかった。

 今まで裏でこそこそとしていたアヴニールがいきなりそんな行動に出ることがおかしいとも頭の片隅で思うが、必死にシアン達の危機を伝えようとしているアイエフの態度に嘘はないとノワールは感じた。

 どの道、ノワールも感情を抑制しておくが限界であったのである。

 鬱屈していた感情が爆発寸前にまで膨れ上がり、ノワールはすぐさま街へと駆け出してしまいたいとすら思う。

 

「でも、このモンスター達をどうにかしないことには……」

 

「――なら、俺達が先にシアン達の所に向かう!! 行くぞ、ワンダー!!」

 

〔おう!!〕

 

 シアン達に危機が迫っていることは分かったが、モンスターの大群をどうにかしなければ向かうことすらできない。

 そのため、ネプテューヌはモンスター達を睨みながら悔しそうに表情を歪ませる。

 だが、そんなネプテューヌの言葉を遮り、夢人は先に向かおうとワンダーに呼びかけた。

 ワンダーもそう言われると分かっていたらしく、夢人の言葉に力強く応える。

 

「コンパ、ネプギアのことを頼むな!!」

 

「で、でも、ゆっくんさんだけじゃ……」

 

「それなら、私も連れて行きなさい!!」

 

「ノワールさん!?」

 

 コンパに気絶しているネプギアを託すと、夢人はワンダーに常備されているヘルメットを取り出して発進準備を進める。

 しかし、夢人が1人で先行することにコンパは難色を示す。

 スライヌにすら負けるのに、今の夢人には武器であるブレイブソードもないのだ。

 言葉にはしなくても、ネプテューヌ達も同じ不安を抱いていた。

 そんなコンパ達に夢人が大丈夫だと伝える前に、ノワールは強引にワンダーに跨ってしまう。

 驚くシンの言葉を無視して、ノワールはワンダーのハンドルを握っている夢人を急かす。

 

「何をもたもたしているのよ!! 早く発進しなさいよ!!」

 

「お、おう。でも、ヘルメットを……」

 

「いいから早く!!」

 

「わ、分かった!?」

 

 急に夢人の後ろに跨ったかと思うと、ノワールは周りのネプテューヌ達のことなど気にもかけずにシアン達の所に早く向かうように要求した。

 その剣幕に押されながらも、夢人が安全面を考慮してノワールにヘルメットを被るように控えめに提案する。

 だが、そんな夢人の忠告をノワールは一蹴してしまう。

 ぎろりと睨まれた夢人は聞く耳を持たないノワールの迫力に押され、素直に従ってしまうのであった。

 

「そう言うわけだから、シアン達の方は任せておいてくれ!! ――いくぞ、ノワール!! しっかりつかまっておいてくれ!!」

 

「ちょっと待って!? 扉のシャッターがまだ!?」

 

 のんびりしていられる状況でないこともあり、夢人は最後にネプテューヌ達へと声をかけると、すぐさまワンダーを発進させた。

 しかし、警報装置が作動したことにより、唯一の入り口である扉はシャッターで固く閉じられている。

 3体のロボットが機能を停止しても、シャッターは固く閉ざされたままだったのである。

 そのことに気付いたネプテューヌが止まるように呼びかけても、夢人達を乗せたワンダーは止まらず加速を続けていた。

 

「いけるよな?」

 

〔もちろんだ。2人とも、衝撃に備えろ!!〕

 

「えっ? まさか……」

 

 ハンドルを強く握りながら夢人が尋ねると、ワンダーは考える素振りも見せず肯定した。

 すると、すぐにワンダーは夢人達に警告を飛ばす。

 ここに来て、アヴニールへの怒りに燃えていたノワールの頭に嫌な予感がよぎる。

 どう考えても、ノワールにはワンダーがネプテューヌの開けた穴から外へと飛び出せるようには思えない。

 壁を垂直に上って行く姿も、急に翼が現れて空を飛ぶようにも思えないのだ。

 そうなると、外へと出るための方法は1つしかなかった。

 

「ぬらー!?」

 

「びびー!?」

 

 扉の前に群がっていたモンスター達を蹴散らし、ワンダーは前輪を上げたままシャッターへと突っ込んでいく。

 

 ――ガシャンッ、と大きな音と共にシャッターはワンダーの前輪に吹き飛ばされてしまう。

 ワンダーを利用した唯一の脱出方法、体当たりでの強行突破に成功したのだった。

 

「っ!?」

 

 シャッターとワンダーの激突の衝撃は凄まじく、ノワールは思わず夢人の背中にギュッとしがみ付いてしまった。

 息をのんで悲鳴さえ上げられなかったのである。

 そんな若干顔色を悪くしているノワールに構わず、ワンダーはスピードを落とすことなく走り続ける。

 真っ直ぐに倉庫の出口へと向かって……

 

 

*     *     *

 

 

「ったく、ぷる姉ちゃんが全然起きねえから遅くなっちまったじゃねえかよ」

 

 前を睨みながら、オレ達はラステイションの街を歩いていた。

 

 正直言うと、オレは今かなり機嫌が悪い。

 オレはただ、シアン姉ちゃんに頼まれた通り夢人兄ちゃんかファルコム姉ちゃんを呼びに来ただけだってのに、どうしてこんなにイライラしなきゃいけないんだよ。

 

「ごめんね~。でも、あたし眠く、て……」

 

「って、言ってる傍から危ないよ!?」

 

「だって~、眠いんだもん~」

 

 オレが不機嫌なことを察したらしく、ぷる姉ちゃんが申し訳なさそうに謝ってきた。

 しかし、その後すぐにファルコム姉ちゃんの慌てた声が聞こえてくる。

 気になって振り返ってみると、ぷる姉ちゃんがファルコム姉ちゃんに支えられていた。

 眠気が取れず、ぷる姉ちゃんはふらついたみたいだ。

 

「だったら、無理に付いて来ないでホテルで寝てればよかったじゃん」

 

「あ、あははは、ちょっと理由があってね」

 

「……ふーん」

 

 ちょっと言い方は悪いかもしれないけど、オレは素直に思ったことを口にした。

 だけど、ファルコム姉ちゃんは誤魔化すように笑うだけ。

 何かオレだけ仲間外れにされたような気がして、自然と目を細めてしまった。

 

 気に入らねえなあ。

 こっちはぷる姉ちゃんが起きるのを待っていたせいで、シアン姉ちゃんの所にファルコム姉ちゃんを連れていくのが遅くなったって言うのに。

 夢人兄ちゃんやネプテューヌ達がいない理由も教えてくれねえし、本当ムカついてくる。

 それに、1番ムカつくのは……

 

「ぷるるとをわるくいうな!! あやまれ!!」

 

「ピーピーうるせえな!! 本当のことを言っただけだろ!! お前はひよこか、このぴいぴい馬鹿!!」

 

「ぴいはひよこでもばかでもないもん!! ばかはタツタのほうだもん!!」

 

「お前の方こそ、何度も間違うんじゃねえよ!! オレはリュータだって言ってんだろうが!!」

 

「だったら、ぴいはぴいだもん!!」

 

 ――そう、オレが1番不機嫌な理由は今言い合いをしている黄色いちびすけが一緒にいることだ。

 

 今朝なんていきなり人の腹に頭突きをしてきたかと思うと、勝手にオレが悪いだなんて文句を言いだした。

 ふざけんなって、声を大にして言いたい。

 しかも、なんでコイツまで連れていかなきゃいけないんだよ。

 本当、ホテルに縛り付けてでもコイツだけは一緒にいたくなかった。

 

「ふ、2人とも、喧嘩はダメだよ(おろおろ)」

 

「オレは悪くない!! コイツが悪い!!」

 

「ちがう!! タツタのほうがわるい!!」

 

「――いい加減にしなさい!!」

 

 ロムがオレとぴいぴい馬鹿の言い合いを止めようとしてきた。

 

 でも、オレは謝るつもりはない。

 確かに、オレの方が年上で大人気ないのかもしれないけど、今日に限ってはコイツの方が悪いに決まってる。

 まだ頭突きされた腹が少し痛いんだぞ。

 だから、オレはコイツが謝るまで機嫌を直すつもりなんてないからな。

 

 ――と思っていた時、今まで黙っていたミモザ姉ちゃんが声を張り上げた。

 すると、オレの顔をガシッと両手で挟みこみ、鬼のような形相で睨みつけてくる。

 

「男のくせに、いつまでもぐじぐじと文句を言っているんじゃないわよ。ブ男といい、あなたといい、そう言うつまらないことばかり気にしてうじうじしないの。あなたは男の子でしょ? ちゃんと女の子に優しくしなきゃ駄目じゃない」

 

「で、でも、オレは悪くなんて……」

 

「言い訳して逃げるんじゃないわよ。そんなことを言っているうちは、あなた――いつまで経っても、かっこいい大人になんてなれないわよ、っと」

 

「アタっ!?」

 

 ミモザ姉ちゃんは表情こそ怖かったが、不思議と言葉は優しく聞こえた。

 まるで父ちゃんと母ちゃんに叱られた時みたいな……

 でも、そんなことあるわけないと、オレは即座に浮かび上がった考えを否定した。

 だって、父ちゃん母ちゃんとミモザ姉ちゃんはまったく似てないのだから、同じなわけないとすぐに自分で納得する。

 しかし、気まずさだけは残ってしまい、オレは顔を動かせない代わりに視線だけを俯かせる。

 すると、ミモザ姉ちゃんは呆れたようにオレの額を小突いてくる。

 

「子ども扱いをされたくなかったら、いつまでも不貞腐れているんじゃないわよ。いいわね?」

 

「……分かったよ」

 

「よし、それでいいのよ」

 

 小突かれた箇所を擦りながら顔を上げると、そこには呆れたように笑っているミモザ姉ちゃんがオレを見ていた。

 しかも、オレの心が読めているんじゃないかって疑ってしまうくらい痛いところをついてくる。

 そんなことを言われてしまったら、オレは言い返すこともできない。

 仕方なく、プイッとミモザ姉ちゃんから顔を逸らして頷くことしかできなかったのだ。

 本当は納得していない形だけの態度だったけど、ミモザ姉ちゃんはそれで満足だったらしい。

 何故だか、優しく頭を撫でられてしまう。

 

 ちくしょう、何だかすごい負けた気分になってきた。

 子ども扱いをされたくないって分かってるくせに、頭を撫でるとか何を考えているんだよ?

 ……あーもう、ぴいぴい馬鹿にムカついていたオレが馬鹿みたいじゃん。

 何でオレがぴいぴい馬鹿に怒っているせいで子ども扱いされなくちゃいけないだよ?

 子ども扱いされるくらいなら、もうぴいぴい馬鹿と喧嘩なんてしない方が絶対にいいに決まってる。

 ……くそっ、そう納得しようと思うのにどうして悔しいとも思っちまうんだよ?

 

「タツタ、おこられてやんの! やっぱり、タツタがわるもんだったんだ!」

 

「ぴいちゃんも、めっだよ(ぷんぷん)」

 

「そうよ。あなたもあまりうるさく騒がないの。そもそも、あなたがリュータに謝ろうとしないのが原因でしょ?」

 

「むー、でも……」

 

「謝らないと、おやつ抜きよ」

 

「あ、あわわわわわ!? ――ご、ごめんなさい!?」

 

 最初こそ、オレのことを馬鹿にしていたぴいぴい馬鹿だったけど、ロムやミモザ姉ちゃんに言われて慌てて謝ってきた。

 そんなぴいぴい馬鹿を見ていると、オレもスーッと怒りが収まっていくような気がする。

 

 へへーん、おやつを抜かれることが怖くて謝るなんて、ぴいぴい馬鹿も本当お子ちゃまだよな。

 まあ、オレみたいな“かっこいい大人”がいつまでもお子ちゃまのことを気にしてても仕方ないってミモザ姉ちゃんは伝えようとしてくれたんだろう。

 ふっふーん、今ならぴいぴい馬鹿に名前を間違われようとも笑ってスルーできそうだぜ。

 何たって、オレはおやつ抜きなんてまったく怖くなんてないもんな。

 

「……単純ね」

 

 オレとぴいぴい馬鹿を交互に見ながら、ミモザ姉ちゃんがぼそりと何かを言ったような気がした。

 でも、さっきみたいに怒っているように見えないから気にしなくてもオレが気にする必要なんてないよな。

 イラつきが治まったオレは大分遅くなってしまったが、急いでファルコム姉ちゃん達をシアン姉ちゃん達の所に連れて行こうとして……

 

 

 ――激しい爆発音と目の前に見える黒い煙に頭の中が真っ白になってしまった。

 

「わっ!? いったい何の音!?」

 

「何があったの!?」

 

 ぷる姉ちゃんやファルコム姉ちゃんの慌てた声が聞こえてきたけど、オレの頭の中には上手く入ってこない。

 ただオレは呆然と黒い煙が空へと昇って行くのを見ていることしかできなかった。

 

 ……何だよ、アレ。

 何なんだよ、さっきの音は。

 あっちの方って、シアン姉ちゃん達の工場があるところだろ?

 いったい何があったって言うんだよ。

 もしかして、何か事故でも起きたのか? ――いや、そんなわけない。

 だって、最近はシアン姉ちゃん達だけじゃなく、他の工場のおじさん達も張り切っていたじゃん。

 そもそもシアン姉ちゃん達が作ってるのは剣だ。

 あんな大きな音が鳴るような爆発が起こるわけが……っ!

 

「っ、リュータ!? 待ちなさい!?」

 

 気が付けば、オレはファルコム姉ちゃん達のことを忘れて駆け出していた。

 後ろからミモザ姉ちゃんの呼び止める声が聞こえてきたけど、オレは足を止めない。

 シアン姉ちゃん達が心配で、いても立ってもいられなくなったのだ。

 だから、オレはシアン姉ちゃん達の工場に向かって、急いで走り続ける。

 ――せめて、シアン姉ちゃん達が無事なことだけでも早く確認したいから。




という訳で、今回はここまで!
最後の部分、書いてみたら視点変更が多くて読みづらかったんですよ。
それなら別けて書いちゃえばいいか、ってことで書き直していたら一週間以上経っていました。
まあ、その分次回は早めに更新できると思います。
それでは、 次回 「鋼鉄×恋心×結託」 をお楽しみに!
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