超次次元ゲイムネプテューヌ Re;夢のヒーローを目指して 作:ホタチ丸
ラステイション編のラストバトル、今回はその中盤です。
それでは、 鋼鉄×決意×鉄拳 はじまります
シアン達の工場の方角から立ち昇る黒煙を見て駆け出したリュータに最初に反応したのは、ピーシェだった。
「まって!! ぴいもいく!!」
「ぴいちゃん!?」
「ぴーしぇちゃん!?」
爆発音の正体について考えを巡らせていたミモザ達は、リュータが駆け出した姿を見て衝動的に追いかけてしまったピーシェの反応に遅れてしまったのだ。
気が付けば、リュータもピーシェもミモザ達から遠ざかってしまっている。
ロムとプルルートがピーシェへと呼びかけるが、断続的に発生する爆発音にかき消されて届かない。
そうこうしているうちに、2人は曲がり角を曲がってしまい、後ろ姿も見えなくなってしまった。
「勝手に飛び出しちゃダメだよ~!? 待ってぇ~!?」
「――って、言ってる傍からあなたまで行こうとしないの!?」
「あうっ!?」
今まで眠たそうにしていたのが嘘のようにプルルートは慌ててリュータとピーシェを追いかけようとした。
だが、これ以上勝手な行動をされてはぐれたら大変なことになると思い至ったミモザに止められてしまう。
プルルートが2人に比べて足が遅かったこともあり、ミモザは横を通り過ぎる際に腕を掴むことに成功したのである。
駆け出そうとして急に腕を引っ張られたプルルートは驚いて前のめりに転びそうになってしまう。
引きずられて転びそうになったミモザだが、何とか踏ん張ってプルルートに言う。
「心配なのは分かるけど、勝手に1人になろうとするんじゃないわよ!?」
「でも~、早くしないとぴーしぇちゃん達が~……」
「誰も追いかけないなんて言ってないでしょうが――2人もいいわよね?」
2人に続いて勝手に行動しようとしたプルルートをミモザは叱りつけた。
しかし、ピーシェ達のことが心配なプルルートはそわそわしていて今にもミモザの腕を振り払いかねない。
そんな風に不安を表に出しているプルルートを安心させようと、ミモザはフッと軽く笑みを浮かべる。
そして、後ろで黙っていたロムとファルコムへと確認を取る。
「……あたしとしては、3人には安全な所に避難しておいてもらいたいんだけど――無理だよね」
「当然じゃない。安全なところで結果だけを聞くのはごめんだわ」
「わたしも行く(ぐっ)。2人を追いかけたい(お願い)」
「ミモちゃん、ロムちゃんも……」
最初はミモザに尋ねられて、ファルコムは困ったように眉間にしわを寄せていた。
しかし、ミモザ達の顔を見て、すぐに苦笑に変わってしまう。
射抜くような目で見つめてくるミモザと、両手でグッと握り拳を作ってやる気を見せているロムに、ファルコムは説得を諦めたのだ。
本当なら、安全な所に逃げろと説得をすべきなのだろうと分かっていても、ファルコムはそれに時間を使うなら早くリュータ達を追いかけた方がよいと判断したのである。
そんなミモザとロムの様子に、プルルートは目を輝かせて頬を緩める。
「うん、それなら皆で早くリュータ君達を追いかけよう! はぐれないように注意してね!」
「ファルコムちゃんも~……えへへへ~、ありがとう~!」
最終的な決断として、ファルコムは全員でリュータ達を追いかけることを決めた。
すると、プルルートは嬉しそうに笑顔を浮かべてお礼を言いだす。
ミモザ達が自分と同じ気持ちでいたことが嬉しいのである。
そんなプルルートを見ていると、ミモザ達も自然と口元が緩んでしまう。
「もう、そんなことを言っている暇はないでしょ。さあ、早く行くわよ! 今から追いかければ何とか追いつけ――っ!?」
緩んでしまった空気を引き締めようと、ミモザはプルルート達を促して早くリュータ達を追いかけようとした。
誰も異議を唱えることなく、全員がリュータ達を追いかけるための1歩目を踏み出そうとしたその時――再び、爆発音が聞こえてくる。
しかも、今度は今まで聞こえてきた音よりも大きい。
何故なら、それはミモザ達のすぐ近くで起こったのだから。
爆発と共に発生した熱風に、ミモザ達は吹き飛ばされそうになってしまう。
〔ジ……ジジジジ……〕
「えっ!?」
爆風に煽られながら、ロムは爆心地にいたものの姿を見て大きく目を見開いて驚いてしまう。
立ち昇る黒煙で未だに全貌は見えないが、そのシルエットには心当たりがあったのだ。
やがて、“それ”はその手に握っている斧で黒煙を吹き飛ばし、ミモザ達の前に姿を現す。
宙に浮いている“それ”には足がなく、代わりに蛇の尻尾のように先が鋭く尖ってうねうねと動いている。
巨大な2つの腕にはそれぞれ凶悪そうに無数の棘のような突起物がある鉄球が取り付けられたこん棒と、鋭利な刃を赤く塗装した斧を持っている。
胴体は動力部を隠すためなのか、まるで亀の甲羅を背負っているように見える。
排熱管と思われる両肩から伸びている管の束は、全体の印象を受けて悪魔の翼に見えてしまう。
そして、さながら獰猛な鳥のくちばしを思わせる頭部には怪しい赤い光を灯すカメラアイ。
そう、“それ”はロムもよく知っている機械……
「キラーマシン!?」
元いたゲイムギョウ界で破壊の限りを尽くした悪夢の兵器――キラーマシンであった。
装甲の色が若干白く見えるが、間違いなくキラーマシンであるとロムは確信する。
何故なら、キラーマシンはロムにとって忘れられない出来事があったブロックダンジョンに封印されていた機械なのだから。
「ロムちゃんはアレが何だか分かるの!?」
「うん。でも、なんでここに……」
〔障害ヲ排除セヨ!! 障害ヲ排除セヨ!!〕
「そんなこと言っている場合じゃ――きゃあああっ!?」
「わあああああ!?」
ゆらりと揺れている爆煙を背に近づいてくるキラーマシンを見て、ファルコムはロムへと尋ねた。
それに頷きつつも、ロムはどうしてここにキラーマシンがいるのかを疑問に思う。
ロム達がいたゲイムギョウ界では、キラーマシンは犯罪神が対女神用の決戦兵器として作られたものである。
それが何故ラステイションの街を破壊しているのかが分からない。
だが、そんなことを考えていられる時間もキラーマシンは与えてくれない。
不意にカメラアイの光が強くなったかと思うと、ミモザ達に向かって棘付きの鉄球を叩きつけようとする。
狙いをつけられないのか分からないが、キラーマシンは直接ミモザ達を狙わずに手前の地面に鉄球を振り下ろした。
しかし、それでも凄まじい衝撃が風となって、ミモザ達に襲いかかってくる。
特に、直前までロム達に注意を促そうとしていたミモザは踏ん張ることすらできずに吹き飛ばされ、地面を転がってしまう。
当然、ミモザに腕を掴まれたままになっていたプルルートも同様である。
「くっ!? ミモザ、プルルート、平気!?」
「……な、なんとか~」
「……ぐっ、平気よ」
咄嗟に体勢を低くすることで突風に耐えきったファルコムは、慌てて悲鳴が聞こえてきたミモザとプルルートの安否を心配した。
球体が叩きつけられたことで巻き上がった砂埃のせいで周りはよく見えないが、2人から返事が返ってきたことにファルコムは少しの安心を覚える。
だが、ファルコムはすぐに細めた目で自分達を見下ろすキラーマシンを睨みつける。
(どうする? あたしがコイツを押さえている間に3人に安全な所まで逃げてもらう? でも、それじゃリュータ君達が……)
ファルコムは葛藤してしまう。
キラーマシンを相手にしながら、ミモザ達を守り切る自信がないのだ。
相手は見るからに機械であり、ファルコムは剣士である。
自分の剣で簡単に斬り裂けるような相手ではないことは明白だった。
ここでの最善の行動はキラーマシンを無視して安全な所に退避することだと言うのは、ファルコムも理解している。
しかし、それをしてしまえば、シアン達の所に向かってしまったリュータ達を追うことができなくなってしまう。
ミモザ達の安全か、リュータ達を追うことを優先すべきかを、ファルコムは迷ってしまったのだ。
……その致命的な硬直が、キラーマシンに次の行動を許してしまう。
〔排除セヨ!! 排除セヨ!!〕
「っ、ミモザ!? プルルート!?」
キラーマシンの顔が急に向きを変えたのだ。
しかも、不吉な機械音と共に砂埃の切れ間からキラーマシンが斧を振り上げているのが見える。
瞬時に、キラーマシンの狙いがミモザ達であることを悟ったファルコムは慌てて声を上げる。
体当たりしてでもキラーマシンの狙いを自分に変えようとも考えて足に力を入れるが、間に合いそうにない。
既にキラーマシンは振り上げた斧を振り下ろす動作に移っていた。
(間に合わな……)
「――アイスコフィン!!」
〔ギガジッ!?〕
「……え」
既にキラーマシンの攻撃を止められないことを悟り、ファルコムが絶望しかけていると、ロムの力強い声が聞こえてきた。
――同時に、巨大な氷の塊が砂埃を切り裂いてキラーマシンへと激突したのである。
氷塊が腕にぶつかったことで、キラーマシンは斧を振り下ろすことができなくなってしまった。
さらに、ファルコムは先程よりもキラーマシンが高く浮いていたことに気付く。
つまり、キラーマシンを吹き飛ばせるほどの衝撃があったのだ。
「ロム、ちゃん?」
「大丈夫、ここはわたしに任せて」
氷塊の正体がロムの魔法だと分かっていても、ファルコムはそのことを上手く飲み込むことができなかった。
ポカンとしているファルコムに、ロムは力強い笑みを浮かべる。
そして、任せてくれと言わんばかりに愛用の杖ホワイトをキラーマシンへと向ける。
「キラーマシンは、わたしが倒す(びしっ)。だから、ファルコムさん達はぴいちゃん達をよろしく(お願い)」
「そんなことできるわけ――っ!?」
ロムの宣言は、ファルコムには無謀としか思えなかった。
確かに、ロムの魔法はキラーマシンに通じた。
しかし、それは先ほどの攻撃が不意打ちだったからであり、真正面からでも通じる保証はどこにもない。
そもそもロム1人を残して行くことなんてできない。
だから、ファルコムはいくら頼まれようともロムのお願いを聞くつもりはなかった。
――次の瞬間、ロムを中心として光の柱が発生した。
急な閃光にファルコムは思わず息をのんでしまう。
光の柱はすぐに弾けて霧散し、1人の少女の姿が現れる。
顔の右側部分を伸ばしてアクセントをつけている水色のショートカット。
白とピンク色の水着を思わせるようなタイトな服。
ピンク色で縁取りされた白い4枚の翼のような機械。
ピンク色の瞳に浮かべられている特徴的な模様。
どことなくロムと重なる面影を持つ少女は、凛とした態度で口を開く。
「1人でも頑張れる。夢人お兄ちゃん達と一緒に、ラムちゃんやお姉ちゃん達の所に帰るまで――わたしも、女神様なんだから」
少女――女神化したロムは自分に言い聞かせるように決意を言葉にした。
その目に迷いはなかった。
ファルコムはそんなロムを見て、綺麗とすら思ってしまう。
勝手に戦えないと決めつけていたことが失礼だとも感じた。
ロムは強い、それを理解させられたファルコムの口元は自然と緩む。
「分かったよ。でも、ロムちゃんは1人じゃないよ。あたしも一緒に戦うから……ミモザ!! プルルート!!」
ファルコムはほほ笑みながらロングソードを構える。
この場に残ってロムと一緒にキラーマシンを相手にするという意思表示だ。
そして、離れているミモザとプルルートに聞こえるように声を張り上げる。
既に砂煙はなく、お互いの顔はしっかりと見えている。
呼ばれてこちらを向いたミモザに、ファルコムは軽く頷いて見せた。
すると、ミモザは悔しそうに表情を歪めると、プルルートの手をとって駆け出そうとする。
「……ぼやぼやしてないで、さっさとあの子達を追いかけるわよ」
「え、でも、ロムちゃん達が~……」
「いいから走りなさい!!」
ミモザにギュッと固く手を握られたプルルートは、この場に2人だけを残して行くことに難色を示した。
だが、ミモザはプルルートを引っ張る腕の力を緩めようとしない。
むしろ、さらに強く握りしめる。
不安そうに後ろを振り返ろうとするプルルートに怒鳴り、ミモザは真っ直ぐにリュータ達の向かった方へと走って行く。
〔逃ガサナイ!! 逃ガサナイ!!〕
「――おっと、君の相手は……」
「わたし達!!」
〔ピーガガガッ!?〕
当然、キラーマシンはこの場を離れようとするミモザ達を見逃そうとはしなかった。
鉄球つきの棍棒を振り上げて、ミモザ達を叩き潰そうとする。
しかし、そんなキラーマシンの行動を遮ろうと、ファルコムとロムが飛び出す。
すると、まずキラーマシンの真下から氷の渦が発生する。
渦を巻く冷気により、キラーマシンの体に白い霜ができ始める。
ロムの魔法、アイスサンクチュアリである。
凍りついたせいで腕の自由を奪われてしまったキラーマシンは機能不全に陥って硬直してしまう。
その隙を逃さず、ファルコムは大きく跳躍し、振り上げたロングソードでキラーマシンに斬りかかる。
ロングソードの刃はキラーマシンの左腕の肘に傷をつけることに成功する。
しかし、鋼鉄製であるキラーマシンに斬りかかった代償として、ファルコムはロングソードを握る手に痺れるような衝撃を受けてしまう。
手のひらの痺れに顔をしかめるも、ファルコムは見事に着地を成功させてキラーマシンの前に躍り出た。
そして、走り去っていくミモザ達を背に、ファルコムはロングソードを握り直してキラーマシンを睨む。
「ロムちゃん、あたしが隙を作るからコイツにバンバン魔法をぶつけちゃってよ!!」
「分かった(了解)!!」
「――そして、さっさと倒してリュータ君達を助けに行くよ」
「うん!!」
斬りかかってみて、やはり剣での攻撃は不利だと理解したファルコムは瞬時にロムへと指示を出した。
プロセッサユニット、ディーエ・スィルのウイングでキラーマシンの後ろに浮遊していたロムも、ホワイトの先端に魔力を集中させつつファルコムの指示に異議を唱えることなく従う。
すると、ファルコムは敢えて表情を和らげる。
倒すべき相手を前にして不謹慎だとも思われるが、それだけでロムの心は軽くなった。
ロムは満面の笑みを浮かべて頷き、同じ気持ちであるファルコムと共にキラーマシンを倒すための魔法を放つのであった。
* * *
「あれれ? タツタ、どこにいったの?」
ロム達がキラーマシンを相手にしている頃、リュータを追って駆け出したピーシェは迷子になってしまっていた。
単純に距離があっただけでなく、ピーシェとリュータでは歩幅が違ったことも理由の1つである。
リュータの走るスピードについていけなくなり、ピーシェはその後ろ姿を見失ってしまったのだ。
そうでなくても、周りは何かによって破壊されていて、見晴らしも悪くなっている。
元々ラステイションに住んでいたリュータとは違い、プルルートと共に来たピーシェではここからどう行けばシアン達の所に行けるのかすら分からない。
「おーい!! タツタ、どこー!! タツター!!」
追いかけていたリュータを見失ってしまったピーシェはしばらく立ち止まってきょろきょろと周りを見ていた。
やがて、誰も見つからないことが分かると、リュータのことを呼びながらゆっくりと歩き始める。
「どこいったんだろう? タツター!! タツター!!」
〔ピーガジゴ〕
「――あり? タツタ?」
大声を出しても返事が返ってこないことに、ピーシェは段々と不安を募らせていく。
そんな時、ピーシェの耳に奇妙な音が聞こえてくる。
音が聞こえてきた方へと視線を向けると、ピーシェは目を丸くしてしまう。
すぐさまごしごしと両目を擦り出し、もう1度音の出所へと目を向ける。
だが、見えてきた光景は先ほどと変わらないものであり、ピーシェは不思議そうに首を傾げてしまう。
「タツタ、いつのまにロボットになったの?」
ピーシェは別に意味の分からないことを言っているつもりはない。
リュータのことを呼んでいて、最初に反応したのが目の前のロボットだったから、そう思ってしまっただけなのだ。
当然、目の前のロボット――キラーマシンはリュータではない。
だが、ピーシェの中では両者がイコールで結ばれようとしてしまったのである。
「なんか、へん。あんまりかっこよくない」
だからこそ、ピーシェは静かに近づいてくるキラーマシンから逃げようとしなかった。
キラーマシンのデザインを駄目だしできるほど落ち着いてしまっていたのである。
〔排除セヨ!! 排除セヨ!!〕
「うるさい!! タツタのくせにうるさい!!」
やかましい機械音を出しながら斧を振り上げるキラーマシンを見ても、ピーシェは恐怖を感じていなかった。
それどころか、両手で耳を押さえながら文句を言う始末である。
しかし、傍から見れば、とても危険な状態であった。
今にもキラーマシンはその凶器をピーシェに振り下ろしかねない様子である。
「ぴーしぇちゃん!?」
「ピーシェ!!」
「おろ? ぷるると? それに“みーも”?」
ピーシェに追いついたプルルートとミモザが目撃したのは、まさにそのような状況だった。
2人は慌てて呼びかけるも、当の本人であるピーシェはきょとんとしているだけである。
自分が何故プルルートと“みーも”――ミモザに呼ばれたのかすら分かっていない。
……しかし、その動きがいけなかった。
プルルート達の方へと顔だけ振り返ったピーシェを確認したキラーマシンは、より凶悪にカメラアイを赤く光らせる。
ピーシェの動きに反応してしまったのだ。
持ち上げていた腕を振り下ろそうとして、斧の刃がピーシェへと迫る。
「っ、うわああああああ!?」
無慈悲にも振るわれた斧は、幸いにもピーシェに直撃することはなかった。
元々そうプログラムされているのか分からないが、キラーマシンはわざとらしく地面に斧を叩きつけたのである。
しかし、巨大な斧が叩きつけられた衝撃は消えることなく、ピーシェに襲いかかってくる。
派手な音と共に発生した突風に煽られ、体重の軽いピーシェは軽く宙を舞ってしまう。
「っ――ぐっ!?」
ピーシェにとって幸運だったことは、落下地点がごつごつとした建物の破片が散らばる地面ではなかったことであろう。
咄嗟に腕を伸ばしたまま跳躍したミモザがピーシェを腕で抱きとめたのである。
ピーシェの頭を守るように胸に抱きしめながら、ミモザはゴロゴロと地面を転がる。
当然、ミモザの体には破片による無数の傷ができてしまう。
だが、ミモザは決してピーシェを離そうとしなかった。
やがて、勢いが完全に止まったことを確認し、ミモザはゆっくりと胸に抱きしめたピーシェへと視線を向ける。
「大丈夫? どこか痛いところとかは……」
「ねえねえ!! いまのみたみた!! ぴい、いまとんだよね? こう、びゅーって!!」
「――無事みたいでよかったわ」
心配そうに尋ねるも、目を輝かせて興奮するピーシェにミモザは肩の力が抜けてしまう。
はしゃいでいる様子からは怖がって泣き出すみたいなことは起こりそうにない。
目立つような怪我もしていないようで、ミモザは安心して苦笑をしてしまう。
「もういっかい!! もういっかい、びゅーってとびたい!!」
「はいはい、それはまた今度にしな……」
「――2人とも、早く逃げて~!?」
「っ!?」
自分がどれだけ危ない状況にいたのかも理解せずに笑っているピーシェに、ミモザは気を抜きすぎてしまった。
完全にキラーマシンのことを忘れてしまっていたのである。
それはプルルートも同じであり、慌てて2人に向かって叫んだ。
キラーマシンは地面に突き刺さっていた斧を抜き去ると、静かにミモザ達へと近づいていたのである。
プルルートの呼びかけにハッとしたミモザはすぐさまピーシェを抱いて立ち上がろうとする。
「あぐっ!?」
「みーも!?」
だが、立ち上がろうとしたミモザはすぐにまた地面へと転倒してしまった。
既に立ち上がる力も残っていないほど、ミモザの体は限界だったのである。
倒れてしまったミモザを心配してピーシェは慌ててしまう。
しかし、ミモザは耳元でやかましく自分の名前を呼ぶピーシェの声すら遠くに感じてしまう。
段々と瞼も重くなっていき、意識が飛びそうになっているのだ。
「みーも!? おきて!? みーも!?」
「ミモちゃん!? こうなったら~……」
抱きしめているピーシェがバタバタと暴れているにもかかわらず、ミモザはまったく反応しない。
しかし、キラーマシンはそんなミモザのことを考慮してくれない。
このままじゃ間に合わないと判断したプルルートはミモザ達へと駆け寄りながら“とある事”をするために意識を集中しようする。
それが形となってプルルートの体の周りを包み込もうとしたその時……
〔はああああああああっ!!〕
〔っ!?〕
――キラーマシンは、横から来た“何か”に弾き飛ばされてしまった。
それを見て、プルルートは思わず足を止めて目を丸くしてしまう。
当然、“とある事”集中は途切れてしまい、光の粒子がプルルートの周りで霧散する。
「なにあれ!! またロボット!! こんどはかっこいい!!」
ミモザの腕の中でもごもごと動きながら体を反転させたピーシェが目撃した“何か”は、キラーマシンとは違うロボットであった。
全体が青いメタリックカラーで塗装された人型。
背中には翼のようになっている部分の先に車のタイヤがある。
それ以外はシンプルな人型をイメージしたらしいデザインでありながらも、見る者にどことなく頼もしさを与えてくる。
〔ふう、どうやら間に合ったらしいな〕
肩からの体当たりでキラーマシンを吹き飛ばしたロボットは振り返ると、安心したようにミモザ達を見つめた。
そして、優しくミモザ達を抱き上げると、ガシンッ、ガシンッと重厚な足音を鳴らしながらプルルートに近づく。
〔この2人を頼む〕
「え、あ、うん、分かり、ました?」
「――そう、緊張するなって。すぐに終わるからさ」
「っ、その声!? もしかして!?」
プルルートは自分の目の前にミモザ達を下ろしたロボットを相手に、どう反応していいのか分からなかった。
挙動不審な態度で、思わず敬語を使ってしまう程である。
しかし、そんなプルルートの緊張を解くように、ロボットとは違うここ数日で聞きなれた声が聞こえてくる。
声の主に気付いたプルルートが顔を上げると、そこには既に自分達をキラーマシンから守るように立っているロボットの背中だけしか見えない。
〔街を破壊し、罪もない人々を苦しめた貴様の蛮行をこれ以上許してはおけん!! ここで成敗してくれる!!〕
どこか芝居がかった台詞でありながらも、その声にはキラーマシンに対する怒りがにじみ出ていた。
構えた拳を強く握りしめ、ロボット――アーマーモードのワンダーは脚部の車輪を唸らせながらキラーマシンへと突撃する。
そして、その怒りの鉄拳をキラーマシンの頭部にお見舞いするのであった。
という訳で、今回は以上!
ようやく次回でこの章をまとめられそうな気がします。
と言っても、随分と予定をオーバーさせてしまったので何とかまとめないと。
まあ、ここまで延びたら“あの方”のご降臨をあっさり流さないで済みそうですけど。
それでは、 次回 「恋心×ドS×結託」 をお楽しみに!