超次次元ゲイムネプテューヌ Re;夢のヒーローを目指して 作:ホタチ丸
ネプリバ3の追加キャラクターの多さにめまいが。
全員分のキャラチャレを終えるまでいったい何時間かかるんでしょうか。
それでは、 new女神通信(ノワール編) はじまります
ねえ、どうして私はここにいるのかしら?
ほら、最後結構シリアスに終わったじゃない?
それなのに、どうして私はあなたと2人でこんなことをしなくちゃいけないの?
……はあ? 仕様?
まあ、深くツッコムと色々と危ないことに触れちゃいそうだからやめとくわ。
ただでさえ、私にはこれからやらなくちゃいけないことがあるんだから。
――っと、自己紹介がまだだったわね。
私はラステイションの女神、ブラックハートよ。
今日は私がアヴニールのロボットを倒す所から……って、何よ? 間違ってないでしょう?
……なんでそっちの名前も名乗らなくちゃいけないのよ。
そもそも私は女神ブラックハートとして信仰の対象になっているんだから、別に言う必要なんてないでしょう。
何度も言うけど、女神と人間を同じように考えるのはやめなさい。
女神と人間は信仰と守護と言う関係で結ばれてはいるけど、絶対に親しくなんてなれないわ。
だから、私はブラックハートで充分なのよ。
――話がずれたわね。
とにかく、話しに移らせてもらうわ。
それでは、 new女神通信 ノワール編 始めるわよ。
……あっ、名乗っちゃってる。
* * *
彼――御波にバイクに乗せてもらって急行したラステイションの街を見て、私はもういても立ってもいられなかった。
破壊された町並み。
放置された5つのコンテナ。
悲鳴を上げて逃げる人々。
……そのどれもが、私のアヴニールに対する怒りを倍増させる。
「ごめんなさい、もうここでいいわ」
「何を言って……」
「後は私が全部片付けるって言っているのよ!! ――アクセス!!」
運転をする御波に断りを入れ、私は即座に女神化をしてバイクから飛び上がった。
ここまで来たら、もうバイクに乗っている必要はない。
自分で飛んだ方が断然速いのだから。
「お、おい!? 俺も一緒に……」
「あなたは逃げる人の避難誘導をお願い!! コンテナの中身は私が何とかするから!!」
私が飛び上がったことで、バイクは少しバランスを崩したようで御波の慌てた声が聞こえた。
しかし、私の頭の中には街を破壊したアヴニールのことしかなく、御波に避難している人達のことを頼んで先行する。
後ろから私のことを呼ぶ御波の声が聞こえてきたけど、私は振り向かずに加速した。
御波には悪いけど、足手まといはいらないわ。
元々、これはラステイションの問題だもの。
他国の――それもネプテューヌと繋がっている御波に手伝ってもらうわけにはいかない。
私が皆を守らなくちゃいけないんだから!!
「――っ、見つけた!!」
最大速度で飛んでいたおかげもあり、私はすぐに街を破壊している妙な機械を見つけることができた。
そいつは、人の上半身と蛇がくっついたような姿で斧を振り回している。
「はああああああっ!!」
〔ギピッ!?〕
ロボットが私に気付かないうちに不意打ちを食らわせようと、大剣を横に構えて突撃する。
勢いの乗った一撃は、思いの外あっさりとロボットの胴体を両断してしまった。
あまりの手応えの無さに、私の方が驚いてしまったくらいだ。
「っと、そんなことを考えている暇はないわよね――ほら、早く安全な場所まで避難しなさい!! ここは危ないわよ!!」
ますますアヴニールの目的は分からなくなったが、今は街の人達の安全を確保する方が大事だ。
いつの間にか避難していた人達が足を止めて私を見ているのに気付き、大きな声を出して早く逃げるように促す。
「ブラックハート様だ……」
「助けてくれた……俺達は見捨てられていなかったんだ!!」
「そうだ!! ブラックハート様は俺達の女神様なんだ!!」
1人が私の名前を呟くと、それは熱を持って他の人達に伝播していく。
すると、あっという間に私の事を称えるような熱狂が沸き上がってくる。
正直、危ないから早く逃げて欲しいのだけれども、嬉しくもあるのよね。
この人達はまだ私のことを女神だと信じて――信仰してくれているのだから。
でも、嬉しさと同時に私はこんなことになるまでアヴニールに対して何もできなかったことが悔しくてたまらない。
私がもっと早く……いえ、あの時ネプテューヌに負けさえしなければ、と思ってしまう。
【女神は勝手な理想を押し付けられるだけの象徴じゃないだろ!! 心のない便利な道具扱いをされるために生まれたんじゃないだろ!!】
――っ、どうして今、御波の言葉なんて思いだすのよ。
御波の方が異常で、この人達の方が正しい。
そう理解しているはずなのに、どうして私は御波とこの人達を比べようとしてしまうの?
答えなんて分かりきっているじゃない。
それなのにどうして私はこんなにも御波の言葉に……
「ブラックハート様、お願いがあるんです!!」
「っ、手短にね」
「はい、実はこの先にわたしの知り合いがいるかもしれないんです!! ですから、お願いします!! どうか助けてください!!」
苛立ちにも似た感情を私が持て余していると、頭にゴーグルをつけた青い短髪の女性が声をかけてきた。
でも、女性の言葉は不確かで要領を得ないものだった。
私は自然と眉間に力がこもってしまう。
「ちょっと待ちなさい。助けに行くのはいいけど、いるかもしれないってどう言う意味なの? 避難をしている時にはぐれた人がいるってことでしょ?」
「あっ、いえ、違うんです。実はわたしの工場に呼んだ人達がいるんですけど、もしかしたらって思って……工場の方はわたしが最後に避難したので、後はその人達のことだけが心配で……」
「つまり、逃げ遅れた人はいないってことなの?」
少しだけ威圧的に尋ねると、女性は慌てて詳しい事情を説明し始めた。
それは私にとって喜ばしい知らせであると同時に、大きな疑問を抱かせた。
――避難があまりにも早すぎる。
私と御波が倉庫を出てから、まだそんなに時間は経っていない。
コンテナを運びだすと言うアラートの後、私達はすぐに倉庫を飛び出したはず。
てっきり、私は突然の事態に街の人達が混乱して逃げ惑っていると思っていた。
いくら緊急時の対策がしっかりしてあったとしても、急に街を破壊するロボットが現れたら誰でも慌てるだろう。
だからこそ、彼女達が比較的冷静に避難していることが不思議でならない。
まさか前もって襲われることを知っていたわけじゃあるまいし……
「はい、実は……」
不自然なほどの街の人達の避難に疑問を感じていると、女性は困惑した顔で私にその答えを教えてくれた。
予想外の事実に私は目を丸くしてしまうのであった。
* * *
それから女性達に早く逃げるように指示を出し、私は教えてもらった工場のある方へと飛んだ。
途中、もう1体のロボットが破壊活動をしているのを見つけたので、工場に着くのに時間がかかってしまった。
ようやくたどり着いた工場の跡地には、何故か御波の姿があった。
おそらく2体目に手古摺っている間に、御波が私の言葉を無視してここまで来てしまったのだろう。
近くには女性の言っていた、いるかもしれない少年の姿もあった。
「さあ、早く答えなさいよ。あなたに何ができるのかを」
早々に3体目も倒し終えた私は、御波に問いかけ続けた。
でも、御波は何も答えてくれない。
それどころか、辛そうに顔を歪めるだけで少しも身動ぎしない。
――やっぱり、口先だけの男だったってわけね。
まあ、この状況じゃ仕方なかったと思うけど。
いえ、むしろ少年を助けようとした勇気は褒められるものよ。
でも、御波には女神と人間の間にある溝を埋めることなんてできない。
元々不可能であったことだし、これで御波も変な考えを改めてくれるでしょ。
そうでなきゃ、私がわざわざ女神の力を見せつけた意味がないもの。
「それが答えってわけね。分かったわ。あなたは早くその子を連れてここから……」
「――あらぁ~、もう終わっちゃってたかしらぁ?」
「誰っ!?」
何も答えない御波に背を向けて残りの2体を探そうとした時、不意にこの場にいない第3者の声が聞こえてきた。
慌てて顔を上げると、そこには私の知らない女神がいた。
「せっかくコレをゆっちゃんに届けに来たのに、もう終わってるなんてねぇ。はい、コレ」
「お、おう……って、コレはブレイブソード!? え、なんで!?」
知らない女神の登場に頭の中が真っ白になっていると、そいつは御波に持っていた竹刀袋を手渡した。
まるで金縛りが解けたかのように動き始めた御波は最初は戸惑っていたが、中身を確かめると驚いて女神の方へと顔を向ける。
「とっても親切な人が拾ってくれていたみたいよ~。でも、安心してちょうだい。あたしがゆっちゃんの代わりに、たぁ~っぷりお礼をしておいてあげたから」
「そ、そうなのか? でも、ありがとうな」
「うふふ~、どういたしまして~」
「――って、のんきに会話しているんじゃないわよ!? 誰よ、あなたは!?」
得体の知れない女神と御波がのんきに会話をしているのを見て、私は慌ててツッコミを入れた。
その光景に何故か嫌なデジャヴを感じてしまったからだ。
このままだと、延々と妙な会話が続けられそうな予感がしたのである。
「誰って、ノワールちゃんはあたしがわからないの~? 悲しくなっちゃうわぁ」
「初対面のくせして、気安く呼んでんじゃないわよ!! だいたい、あなたは何者なのよ!! そんなコスプレなんかしちゃって……」
「コスプレなんかじゃないわよ。あたしは正真正銘の女神様。プラネテューヌの女神、アイリスハートよ」
クスクスと人を小馬鹿にしたように笑う女神は、とことん私の神経を逆なでする。
言うに事を欠いて、自分のことをプラネテューヌの女神だと言ったのだ。
私は今にもそのふざけた口を閉じさせてやろうと、大剣を強く握って飛びかかろうとしてしまう。
あなたがプラネテューヌの女神ですって? ――ふざけるんじゃないわよ!!
プラネテューヌの女神はパープルハート……ネプテューヌよ!!
私が守護女神戦争で倒さなきゃいけない敵の1人なのよ!!
つまり、目の前のコイツは今、ネプテューヌの名を汚すのと同時に、私達女神のことを侮辱したのよ!!
堂々と女神を批判した事と同じ、絶対に許さないわ!!
「すっげえ!! オレ、初めて女神様に会った!! ど、どどどどうすればいいんだ!?」
「――って、待ちなさい!! どうして納得しているのよ!!」
「え、だって、この人が自分で女神様って言ったからだろ?」
私が女神を騙る女性に腸が煮えくりかえりそうな怒りを感じていると、少年が急に興奮し出した。
女性の言葉を真に受けて信じてしまっているようだ。
私が問いかけても、きょとんとした顔で不思議そうに首を傾げるだけだった。
「おかしいじゃない!! どうしてそっちのことは偽物とか痴女とか言わないのよ!! どう見ても、そっちの方が変態じゃないの!!」
「何となく? こう、こっちの方が女神様っぽく見えるからかな?」
「だったら、私はどうなのよ!! 私はラステイションの女神、ブラックハートなのよ!!」
「えー、信じられるわけねえだろ? だって、アンタって痴女でストーカーでヤンデレってやつなんだろ? そんな奴がブラックハート様なわけないじゃん」
「なあっ!?」
少年のあまりにも酷い私への評価に、思わず言葉を失くしてしまう。
露出度はどう考えても偽物の方が多いのに、どうして私だけ痴女なのよ!?
しかも、ストーカーとかヤンデレとかネプテューヌが言った嘘をまだ信じているし!?
「クックック、アーッハッハハ!! いい!! 本当にいい子ねぇ!! もう、最高だわぁ!!」
「え、えええ!? なんでオレ、頭を撫でられてんの!?」
「うふふ~、気にしなくてもいいのよ~。いえ、むしろそのままでいてちょうだい」
少年の評価を聞き終えると、偽物は急に腹を抱えて笑いだした。
妙に悪役っぽい笑い声を上げながら、偽物は少年の頭を撫で始める。
「あたしが女神様でぇ~、ノワールちゃんは痴女なのねぇ。しかも、それを無自覚で言っているんだから、本当に将来有望よねぇ」
「……あなた、喧嘩売っているのかしら」
「う~ん、少しだけノワールちゃんと遊んであげてもいいんだけどぉ、あたしも眠いのよねぇ。実はもう限界で――ふわぁ」
「この……!」
明らかに私を馬鹿にする言い方をする偽物に、もう我慢の限界を迎えてしまいそうだった。
極めつけに、あくびなんてする余裕なんて見せつけられたら、私も黙っていられない。
偽物を睨み、もう2度と女神を騙ろうなどと思わないようにお仕置きをしてやろうと思った。
「待て待て待て!? 落ち着け、ノワール!?」
「退きなさい!! 私はそこの偽物にお灸をすえてあげないといけないのよ!!」
「だから、落ち着けっての!?」
でも、今までボーっと突っ立っていた御波に間に入られ、私は偽物に近づけなかった。
偽物に近寄ろうとしても御波に両肩を押さえられ、私は怒鳴ることしかできない。
睨んでも怒鳴っても退こうとしない御波に、私は鼻を鳴らして偽物への制裁を一時保留にすることにした。
今はそれよりも、残っている2体を探さなくてはいけない。
「ふん、ちょっとそこの痛々しいコスプレ女! 今度会ったら、ただじゃおかな……」
「ところでぇ、あたしゆっちゃんに聞きたいことがあるのよねぇ~」
「――って、人のことを無視してんじゃないわよ!!」
残りの2体を探しに行く前に、私は偽物に優しく女神を軽々しく名乗るなと忠告しようとした。
しかし、偽物は私のことなど、まるで眼中にないと言わんばかりに御波の顔を覗き込んでいる。
私が怒鳴っても、偽物はまったく話を聞く様子も見せず、御波の顎をクイッと持ち上げながら問いかける。
「ねぇ、ゆっちゃんはあの時ねぷちゃんに何をしたのかしら?」
「え、あの時? ネプテューヌに、俺が? いや、その意味が分からないんですけど……」
「そう緊張しなくてもいいのよぉ? あたしは、ただあの時――2人で仲良くお空の上から落ちていた時に、ゆっちゃんがねぷちゃんにしていたことを聞きたいだけだから~」
「……いや、特に何もしてないけど」
「ふ~ん」
困惑する御波の答えに満足したのか、偽物はスッと目を細めて口元に笑みを浮かべる。
「まあ、ゆっちゃんとねぷちゃんに何の問題もないのなら、あたしも別に気にしなくてもいいわよねぇ~。それじゃぁ、次にノワールちゃんだけどさぁ……」
「何よ? 人のことを散々無視していたくせに、私が答えるとでも……」
「――さっきから“何に”対して怒っているのかしら~?」
納得したように頷いていた偽物は、次に私へと質問を投げかけてきた。
それも意味の分からないものだ。
「私が怒っている? そんなの当たり前じゃない。街をこんな風にしたアヴニールやあなたみたいに女神を勝手に名乗るコスプレ女に会ったのだから……」
「そうじゃなくて~、ノワールちゃんは――ふわぁ、もうダメねぇ。眠くて頭が働かなくなってきたわぁ」
「最後まで言いなさいよ!! 気になるじゃないの!!」
私の答えを否定して何かを言いかけた偽物だったけど、途中であくびをして言うのをしまう。
しかも、気になるようなところで中断されてしまったのだ。
私が怒鳴っても、偽物は眠そうに瞼をこするだけで答えようとしない。
「くっ、もういいわよ!! ――御波!!」
「へっ、あ、おう?」
「何変な声出しているのよ? 私はこのまま残りを片づけに行くから、その子を連れて早く避難しなさい。それと……」
偽物とまともな問答を期待することが不可能だと悟った私は、手早くこれからの事を御波に伝えようとした。
大きく目を見開いて変な声を出す御波に呆れながら、私は女神として命令する。
そして、御波達に背中を向けて付け足すように私は忠告する。
「諦めなければ何でもできるだなんて思ってんじゃないわよ。もっと現実をよく見て考えなさい――それだけよ」
そう言い残すと、私は御波の返事も聞かずに飛び上がった。
どうせ、このまま2度と会うこともないだろう。
アヴニールとプラネテューヌが繋がっていないことが明らかになった以上、私が御波達の所にいる必要性はない。
……怪我の治療をしてくれたコンパと友達と言ってくれたプルルートに別れの挨拶を言えないことだけは心残りだけど、これも彼女のためだ。
そんな少しの後悔を振り切るために、私は全速力でこの場を後にするのであった。
* * *
「あら、随分とお早いご到着ですね」
「あなたの方も、あんなことがあったのに随分と暇そうね――アヴニールの社長秘書さん?」
私が皮肉をこめて言うと、アヴニールの社長秘書は苦笑した。
今、私達がいる場所は約束の第三重機倉庫前。
それも早朝と言ってもいい時間帯である。
「時間指定されてなかったから、てっきりずっと待ちぼうけを喰らうと思っていたわ。特に昨日あんなことを起こした会社の社長秘書様なら、私のことよりももっと優先することがあるだろうし」
「そのことも含めて、私も早くブラックハート様がお会いできてよかったです。実は、社長がブラックハート様に謝罪をしたいと申しております」
「つまり、今回のことは全部あなた達に非があると認めるってことね?」
「はい。社長は今回の事を重く受け止め、ブラックハート様と共にラステイションの復興に力を入れたいと考えておられます」
「……随分あっさりと認めるのね。しかも、自分達の不始末を私に手伝わせるだなんて、厚かましいと思わないわけ?」
「それにつきましては面目次第もございません」
どうにもこの社長秘書との腹の探り合いは難しいと再確認させられてしまった。
今回の事件に対するアヴニールの謝罪は大きな意味を持つ。
単純な話、今まで勢いを伸ばしていたアヴニールの力が弱まることに繋がるからだ。
だからこそ、目の前で頭を下げる社長秘書に、私の出鼻は挫かれてしまう。
いっその事、謝罪もなくもみ消そうとしてくれれば、もっと簡単に私が優位に立つことができたのにと悔しく思ってしまう。
そう、私達の力関係は未だに頭を下げるアヴニール側に主導権があるのだ。
「今回のことで責任を取ると言うのなら、私からは何も言うつもりはないわ。具体的なことはどうなっているの?」
「はい、具体的には今回の騒動を引き起こしたこの倉庫の管理を任されていたガナッシュを謹慎処分とし、街や工場の修繕費を全て我が社で負担します。加えて、我が社で独占しておりました商品の売買権を今回の被害に遭われた工場主の皆様に譲渡。最後に、教会と癒着をしていた我が社の社員を降格させ減俸処分とし……」
「ちょ、ちょっと待って!? 何なのよ、それ!?」
アヴニールの方針については文句を付けられることはなかった。
それどころか、身内に対して厳しすぎる処分だと思えてしまう。
何故なら、社長秘書が言っていることは実質アヴニールの支配が終わることを意味している。
本当なら嬉しい知らせのはずなのに、それを伝えてくるのが目の前の社長秘書だとどうにも裏があるのではないかと勘繰ってしまう。
「何よ、と申されましても、私は社長の意思をお伝えしているだけです。詳しくは直接お聞きになってください」
「……分かったわ。でも、その前に1つだけ聞かせてちょうだい」
「私に答えられることならば、なんなりと」
「あなたは誰の味方なの?」
表情も変えずに事務的な返事をする社長秘書に、私は敢えて直球の質問をぶつけてみることにした。
すると、社長秘書は困ったように眉根を下げてしまう。
「申し訳ありませんが、ブラックハート様のお尋ねしていることの意味が理解できないのですけど?」
「とぼけなくてもいいわ。あなた、本当は分かっているんでしょ? 私がどうしてこんなことを聞いているのか」
誤魔化そうとする社長秘書を逃がさないように、私は再び問い詰める。
「最初に会った時は私を陥れようとしていたのだと思ったわ。でも、あなたは今日まで私に何もしなかった。仕掛ける機会なんて、いくらでもあったはずよ。それなのに監視すらせず、私を自由にして何が目的だったの?」
「ですから、私はブラックハート様のことを思って行動をしたわけでして……」
「そんな見えすいた嘘はいらないわ。だいたい、あなたは私のことを信仰なんてしていないでしょ? それくらい分かるわよ」
疑問に感じていたことを並べながら、私は社長秘書に尋ねる。
それでも社長秘書は本心を語ろうとしない。
仕方なく、私は社長秘書の嘘を指摘して逃げ道を塞ぐことにした。
偶然だけど、ここ数日の間に会った2種類の考え方をしている人達に会って、社長秘書が私を信仰していないことに確信を持つことができたからこそ言えることだ。
「それに、街の人達に避難するように指示したのはあなたじゃない。避難している途中で助けた人から聞いたわ。【我が社の倉庫でトラブルが発生した。早く避難して欲しい】って内容の電話がアヴニールの社長秘書からかかってきたってね」
青髪の女性から聞いた話を私はわざと聞かせて、社長秘書の出方を伺う。
最初は半信半疑だったらしいけど、爆発音が聞こえてすぐに避難できたのは社長秘書からの電話のおかげだって言ってたわ。
そう、ここまでで社長秘書の行動は矛盾しているのよ。
「あなたがここに来るまでに倉庫の方を調べさせてもらったわ。あなた達はその気になれば、事故の原因を私やネプテューヌに擦り付けることだって出来たはずよ。なにせ、監視カメラにははっきりと私達の姿が映し出されていたのだから。あなた達の方で異常を感知できたのなら、それぐらい把握していたはずよね。例えできなかったとしても、避難するように街の人達に伝えたあなたが社長に私達のせいだと言えば、アヴニールはそんなに不利益を被ることはなかったはずよ。あなたの行動は矛盾しているわ。アヴニールの社長秘書でありながら私の味方をしたり、わざわざ私を陥れるチャンスを不意にしたりと――本当に、あなたは何が目的なの?」
長々と疑問をぶつけたが、私の社長秘書に対する思いは最後の言葉に集約されている。
私には社長秘書の目的が分からないのだ。
「――ふぅ、そうだな。そこまで分かっているのなら、私も隠すのはやめよう。私は貴様の味方でもアヴニールの味方でもない。とある目的があって、今の立場になり、貴様と接触したに過ぎない」
「目的って言うのは、あのディスク……いえ、御波のことかしら?」
「そうだ。私は奴を見つけるために貴様を利用させてもらったんだ」
しばらくすると、社長秘書はがらりと口調や態度を豹変させて私の質問に答えた。
そこには私への信仰もアヴニールに対する思い入れも感じない。
言葉通り、彼女は御波を見つけるためだけに私やアヴニールを利用していたのだろう。
でも、それならもっと効率のいい方法があったはずだ。
「でも、あなたの立場を利用すれば、私なんて利用しなくても御波1人を見つけることなんて簡単に出来たはずでしょ? そっちの方があなたにとってもよかったんじゃないの?」
「私もそちらの方がよかったと思っている……だが、奴の場合、それで終わりには出来なかっただろうからな」
私の言葉を肯定しながら、社長秘書は苦笑する。
「奴はトラブルメーカーのくせに自分から厄介事に首を突っ込むのでな。この国の事情を知れば、黙っていられんと踏んだのだ。加えて、妙に面倒くさい事情を抱えた女神どもとの接触も多くてな。貴様にディスクを渡しておけば、勝手に届けてくれるだろうと思ったまでの話だ」
「……色々と言いたいことはあるけど、あなたが何を言おうとしているのかは分かるから言わないわ」
頭の痛くなることに、私は社長秘書の話す御波の人物像に心当たりがある。
決して自分のことを面倒くさい女神だと認めるわけではないが、実際に私は御波と接触してディスクを渡すことに成功している。
社長秘書の御波に対する評価についても、あの私の考えを頑として受け入れようとしない態度や危険と分かっていながら少年を助けようとした行動からも理解できる。
でも、それは全て結果論だ。
全部偶然が重なりあっただけで、私は御波と会うこともなかったかもしれないと言うのに、どうして社長秘書は自信を持って断言できたのだろうか。
「それで、これからあなたはどうするの? 御波を探すって目的が達成できたのなら、アヴニールの社長秘書をしている理由もなくなったわけでしょ?」
「本来ならな。だが、私や奴もやらねばならないことがあるのでな。しばらくはアヴニールで社長秘書を続けながら、貴様と行動を共にさせてもらうぞ」
「はあ!? 何勝手に決めてるのよ!?」
社長秘書の勝手な言い分に、私は苛立ちを感じた。
御波の関係者なら、必然的にネプテューヌの味方でもあると言うことだ。
人間である社長秘書に落ち度はないかもしれないけど、獅子身中の虫を傍に置いておけるわけがない。
「貴様に拒否権などない。第一、今の貴様が優先することは街の復興であろう?」
「くっ、私を脅すつもりなの?」
「ああ。貴様がこの話を断われば、街はアヴニールのみで復興させる。つまり、この街をアヴニールにとって都合のいい形に変えることもできるのだぞ。それでもいいのか?」
「いいわけないでしょ!! ――分かったわよ。あなたの話を受け入れるわ」
社長秘書は最初から私の意見を聞く気などなかったらしい。
自分を私の傍に置くことで、アヴニールを監視しろと言っているようなものだ。
言わば、社長秘書は自分が自由に行動できるようにするために、私とアヴニールの両方の動きを阻害しようとしているのだろう。
私が監視すればアヴニールが動けず、アヴニールが動けば私が対処する。
どちらの味方でもない社長秘書からすれば、これほど都合のいい条件は他にない。
「難しく考える必要はない。私は貴様にもアヴニールにも――ましてや、この国がどうなろうとも興味がない。私が貴様を利用するように、貴様も勝手に私を利用しろ」
「……ええ、精々こき使ってやるわ。私を利用しようとしたことを後悔させるくらいにね」
「ふっ、それは私の台詞だ。自分の国を乗っ取られそうになった愚かな女神の分際で、私を顎で仕えると思うなよ」
「な、なんですって……っ!」
私が睨み続けていると、社長秘書は皮肉気に口の端を吊り上げながら挑発してきた。
堂々と言い放つ社長秘書の潔さは、味方のいない私にとって好ましく思える。
でも、それはあくまでお互いに利用価値がある間だけの話だ。
そもそも御波の関係者と言う話を抜きにしても、私と社長秘書は相容れないだろう。
社長秘書からは信仰どころか、女神に対する敬意すら欠如しているように見える。
御波とは違った意味で、厄介な人間だ。
「さて、話もまとまったところで、さっさと行くぞ。ついて来い」
「あなたが命令するんじゃないわよ!! だいたい、話をややこしくしているのはあなたの方じゃないの!!」
「知らんな。こちらは貴様の尻拭いもしなければいけないのだ。貴様と長々と無駄話を続けるつもりはない」
「この……っ! もういいわよ! でも、最後に1つだけ答えてもらうわ!」
勝手に話を切り上げて、私に命令してくる社長秘書に怒りがわいてくる。
何の目的か知らないけど、私の国で好き勝手に動いておいて、その態度は気に入らない。
しかも、私のことも完全に見下している。
今は従うしかないけど、いつかその癪に障る顔の裏で何を考えているのかを暴くために、私はあることを尋ねる。
「あなたが私を利用するメリットは何なの? 御波みたいにくだらない妄想で私を助けようなんて思ってないんでしょ?」
「ふっ、奴の妄想がくだらないか。確かに、その通りだな。今の奴の考えていることなど、馬鹿馬鹿しくて理解できん」
「……そうね。アイツの考えていることなんて、ただの現実を見ていない綺麗事――って、違うわよ! 今はアイツの話はどうでもいいのよ! さっさと質問に答えなさい!」
目的の見えない社長秘書の正体を探るため、私はこの関係を作り上げた必要性を問いかけた。
御波みたいに分かりやすい善意での手助けでないことだけは明らかである。
しかし、私が例えで挙げてしまったのが原因で、いつの間にか御波の話にすり替わってしまう。
馬鹿にしたように御波のことを笑う社長秘書に少しだけ引っかかりを覚えたおかげで、私はなんとか本題へと話を戻すことができた。
だが、社長秘書から返って来たものは私を射抜くような冷たい眼差しである。
「それを貴様が知る必要などない。貴様は黙って私と行動を共にしていればいい」
「――そう。なら、もういいわ。さっさと社長の所に案内しなさいよ」
「ああ。元より、そのつもりだ」
答える気のない社長秘書に、私はすぐに疑問を投げ捨てた。
答えの出ないことを考えていられるほど、私も余裕なんてない。
どうせ、この関係も一時的なものだし、社長秘書が何を考えていようが私には関係のないことだ。
今の私が優先すべきことは、ラステイションの街を復興させること。
――今は、それだけを考えればいいのよ。
* * *
……その後、アヴニールの本社で社長と会って、社長秘書の話が本当だってことを実感したわ。
と言うよりも、思っていた以上に社長さんが低姿勢で驚いたんだけどね。
会って早々、頭を下げられたり、これからどうやってラステイションの街を復興していくのかを話す姿はあまりにも私の思い描いていたアヴニールの社長像とかけ離れていた。
少し話しただけだけど、嘘とか演技とかは得意そうに見えなかったのよね。
隣にいた社長秘書とは比べるまでもなく、真面目って印象が強いわ。
全面的に信頼するわけじゃないけど、ラステイションに対する真摯な思いだけは共有できそうだったわ。
話が終わった後、私は不本意ながら社長秘書と一緒に久しぶりに教会へと戻ることができた。
私が帰ってくるなり、手のひらを返してゴマ擦りをする職員達に辟易としながらも、ラステイションの復興のために指示を出す。
癒着をしていた職員のリストは既に社長秘書から渡されているから、処分はいつでもできる。
でも、今は慣れない新人を雇い直すよりも、彼らに馬車馬の如く働いてもらう方が効率がいい。
そこを見て、これからの処分を決めよう。
当然、ネプテューヌ達のことも後回しだ。
気にならないと言えば嘘になるけど、もう既にラステイションからプラネテューヌに帰ったと言う報告を聞いている。
わざわざ私が出向いてまでネプテューヌにリベンジをする必要はない。
今度、ラステイションの地を踏んだ時に本当の私の実力を見せつけてやればいいだけの話よ。
私にトドメを刺さなかったこと、後悔させてやるわ。
真の女神になるのは、この私よ!
…………
まあ、ざっとこんな感じかしらね。
正直、ネプテューヌに勝ち逃げされたのは悔しいけど、そうも言ってられない状況なのよ。
あの社長秘書は何考えているのか分からないし、アヴニール自体もまだ信用できないのよね。
どこの国と繋がっていたのかは分かっているんだけど、まだ決定的な証拠もないから内通者を懲らしめることも出来ない。
それに悔しいけど、ラステイションを復興するためにはアヴニールの力が必要だわ。
でも、このままじゃ終わらせない――終わらせて堪るもんですか!
そう言うわけだから、私はさっさと帰らせてもらうわよ。
……何よ、まだ何か言いたそうな顔をしているわね。
この際、はっきり言わせてもらうわ。
私は口先だけの中途半端な夢想家の話を聞くつもりはこれっぽっちもないわ。
あなたもいい加減現実を見て、身の丈にあった生き方をしなさい。
それがあなたのためよ。
後、もう2度と会うこともないだろうし、プルルートとコンパにもよろしく伝えておいてちょうだいね。
――さよなら、御波。
という訳で、今回はここまで!
もうすでに昨日のことですが、今夜にでもバレンタインの特別編を投稿したいと思います。
まあ、クリスマスやお正月記念がそんなに甘くない話でしたので、甘い話にできたらなあと思います。
本編の方の次回はコンパ視点での夢人君達側の話です。
それでは、 次回 「看護実習記録帳(ラステイション編)」 をお楽しみに!