超次次元ゲイムネプテューヌ Re;夢のヒーローを目指して   作:ホタチ丸

60 / 129
はい、皆さんこんばんわ!
今回はコンパ視点での後日談、加えてラステイションに行く前の話が少しです。
それでは、 看護実習記録帳(ラステイション編) はじまります


看護実習記録帳(ラステイション編)

 ……えっ!? もうカメラ回しちゃっているんですか!?

 まだ心の準備ができてないです!?

 ちょ、ちょっと待ってくださいですぅ!?

 

 うぅぅ、やっぱり、わたしなんかじゃ無理ですよぉ。

 こう言うのはあいちゃんやミモちゃんの方が絶対に適任だと思うんです。

 それなのに、どうしてわたしなんですかぁ?

 

 ……2人には断られちゃったんですか?

 そう言えば、あいちゃん最近何だか1人でどこかに行くことが多いですよね。

 ボーっとしていたり、思いつめた顔をしていたりと、見てて心配ですぅ。

 ミモちゃんの方は――あっ、ごめんなさいです。

 ゆっくんさんの頼み事は聞いてくれそうにないですよね。

 何があったのか知らないですけど、プラネテューヌに帰って来てからのミモちゃんのゆっくんさんに対する態度は刺々しさを増したような気がするですぅ。

 

 そうなると、やっぱり、わたしが頑張るしかないんですよね?

 ……うぅぅ、緊張してきたですぅ。

 でも、いつも頑張っているみんなの分も、わたしが頑張ってあの騒ぎの後に何があったのかをお話しするです!

 

 それでは、 看護実習記録帳 ラステイション編 始まるですよ。

 

 

*     *     *

 

 

「初めまして、私はネプギアって言います」

 

 昨日の夜、ゆっくんさんにキスをした女の子――ギアちゃんはにこやかに笑いながら挨拶をしてきました。

 調子もよさそうでよかったです。

 

「ふーん、ネプギアね。私はアイエフよ。それで早速なんだけど、あなたはいったい何者なの? あの時、急にあなたが現れてから、ずっと気になっていたのよ」

 

「……すみません。分からないんです」

 

「分からないってどう言うことよ? まさか、記憶喪失なんですってベタな言い訳をするんじゃないわよね?」

 

 申し訳なさそうに顔を俯かせるギアちゃんに、あいちゃんは眉間にしわを寄せてしまったです。

 疑わしげなあいちゃんの視線に晒されていたギアちゃんを助けたのは、その隣に座っていたゆっくんさんでした。

 

「いや、実は本当に記憶喪失みたいなんだ」

 

「はあ? 何わけのわからないことを言っているのよ? ネプギアは昨日、ちゃんとアンタの事を覚えていたじゃない」

 

「……え、えっと、その、俺のことは覚えているらしいんだ」

 

「ふざけてるの、アンタ」

 

 恐る恐る手を上げて会話に参加したゆっくんさんに、あいちゃんはさらに不機嫌になってしまったです。

 ぎろりとゆっくんさんを睨むあいちゃんは怖かったですぅ。

 気まずそうに頬を掻くゆっくんさんは、きっとわたし以上に怖かったと思います。

 

「まあまあ、あいちゃんも落ち着きなって。記憶喪失なんて、きょう日珍しいステータスってわけじゃないでしょ?」

 

「別にそう言うことを言っているわけじゃないわよ。特定の個人だけを覚えているなんて、おかしな記憶喪失があって堪るかってことよ」

 

「信じてもらえないかもしれないですけど、本当のことなんです! 信じてください!」

 

「ほら、ネプギアもこんなに言っているんだよ! 信じてあげなよ!」

 

「俺からも頼むよ、アイエフ! きっとネプギアも何が起こったのかが分からなくて混乱しているんだ! だから、全部思い出すまで待っててくれ!」

 

「あいちゃん、わたしからもお願いするです!」

 

 徐々に怒りを募らせていくあいちゃんを、ねぷねぷは宥めながら自分のことを指さしました。

 

 そう言えば、ねぷねぷも記憶喪失なんですよね。

 きっとねぷねぷはギアちゃんの気持ちが痛いほどよく分かるんだと思うんです。

 うぅぅ、わたしも2人のことを思うと、何だか涙が溢れてきちゃうですぅ。

 

「……はあ、もういいわよ。私1人疑って、馬鹿みたいじゃないの」

 

「それじゃ!」

 

「夢人のことだけを覚えている記憶喪失だってことで納得してあげるわよ。まったく、もう考えるのも面倒くさくなっちゃったわ」

 

 わたし達全員がギアちゃんを擁護していると、あいちゃんは疲れたようにため息をついたです。

 すると、そのまま額に手を当てて座っていた椅子の背もたれに体を預けて脱力してしまったです。

 

「よかったな、ネプギア」

 

「はい……でも、アイエフさんが私を疑うのも無理ないですよね。ごめんなさい」

 

「――ああもう、そんな顔で謝らないでよ! 私の方も色々あった八つ当たりみたいなものなんだから!」

 

 あいちゃんの態度に安堵していたゆっくんさんは、柔らかく口元を緩めながらギアちゃんの肩に手を置きました。

 ギアちゃんも最初ははにかんだ様子でゆっくんさんの手に自分の手を重ねたのですけど、すぐに顔を俯かせてしまったです。

 申し訳なさそうにギアちゃんが謝ると、あいちゃんは前髪の部分をガシガシと掻き乱したです。

 

「まあ何はともあれ、これでネプギアも我がパーティーの一員として認められたってことであいちゃんも納得してくれたし、早速“椅子”さんを助けるための旅に出かけるよ! 30秒で支度しな!」

 

「って、待ちなさいよ!? どうして私がアンタ達と一緒にそんなことをしなくちゃ……」

 

「“椅子”さんじゃ可愛くないですよ。ここは可愛らしく、チェアーさんって呼ぶのはどうですか?」

 

「おおっ! いいね、それ! よーしっ、それじゃ改めてチェアーさんを助けるわたし達の冒険が今、始ま……」

 

「勝手に盛り上がるな!!」

 

 さっきまでの疲れていた様子が嘘であったかのように、あいちゃんは目の前のテーブルを強く叩いて声を張り上げたです。

 あいちゃんが何を言おうとも、わたし達はもうパーティーです。

 どこかよそよそしい感じがするですけど、わたしはあいちゃんとももっと仲良くなりたいです。

 だから、ちょっと強引ですけど、ねぷねぷみたいにあいちゃんの気持ちを引き出せたらいいなぁって思うです。

 ……でも、怒られることだけは嫌ですぅ。

 

「だいたいねえ、アンタ達は旅を舐め過ぎているのよ!! 他の国がプラネテューヌみたいに平和ボケしているとは限らな……」

 

「ねえねえ、そう言えばネプギアって、よく見るとわたしとそっくりだよね」

 

「そうですね、“ネプテューヌさん”」

 

「って、私を無視するな!! そう言うところが危機感が足りないって……」

 

 目の前の状況に、わたしはどうすればいいのか分からず、困ってしまいました。

 何故なら、お説教をするあいちゃんを無視して、ねぷねぷはギアちゃんに話しかけているです。

 思わず、同じように蚊帳の外にいるゆっくんさんと目を合わせて苦笑いをしてしまったです。

 

「もー、ネプギアは固いなー。もっとこう、フレンドリーにいこうよ。何なら、わたしのことをお姉ちゃんって呼んでもいいんだよ?」

 

「いえ、急にそんなことを言われても……」

 

「うーん、だったら、わたしが呼んじゃおうか? ほら、どちらかと言うとネプギアの方がお姉ちゃんっぽいし。ギアお姉ちゃーんって」

 

「プッ、確かにネプギアの方が姉っぽいよな」

 

 ねぷねぷの急な提案に、ギアちゃんは困ったように眉をハの字にしてしまったです。

 でも、口元は緩んでいて本当に困っているわけじゃないことがわたしにも分かるです。

 改めて思うと、本当に2人は姉妹みたいにそっくりですね。

 ギアちゃんがお姉ちゃんで、ねぷねぷが妹に見えるです。

 ……でも、どうしてゆっくんさんはねぷねぷとギアちゃんを見比べて可笑しそうに笑っているんでしょう?

 不思議です。

 

「もー、笑うことないじゃん! わたし達が並んだら姉妹と間違われてもおかしくないと思うんだよ。ねえ、ネプギア?」

 

「え、え、あの、その……」

 

「ねぷねぷもあまりギアちゃんを困らせちゃ駄目ですよ――わたしはコンパです。これからよろしくお願いするですよ」

 

「は、はい、よろしくお願いします!」

 

 ギアちゃんの肩に寄りかかって、ねぷねぷはゆっくんさんに文句を言いました。

 しかも、突然ねぷねぷから同意を求められて、ギアちゃんはおろおろとしてしまったです。

 少しふざけ過ぎたねぷねぷを注意して、わたしはギアちゃんに自己紹介をしました。

 緊張しているのか、声を上ずらせて頭を下げるギアちゃんが可愛く見えるです。

 

「あれ? そう言えば、今……」

 

「――だから、私の話を聞けって言ってるでしょうが!!」

 

『っ、きゃあっ!?』

 

「うわっ!?」

 

 ゆっくんさんが何故か首を傾げていたのが気になったですけど、あいちゃんがテーブルを強く叩く音の方が怖くてすぐに忘れてしまったです。

 無視していてごめんなさいですぅ!?

 

 

*     *     *

 

 

 アヴニールのロボットが暴れた日の翌日、わたし達はシアンさん達と一緒に被害の後片付けをしていました。

 街はメチャクチャで、工場の方ももう使い物にならないくらい壊されちゃっていました。

 見ているだけで胸が張り裂けそうになるくらい悲しくなりましたけど、くよくよなんてしていられません。

 シアンさん達のためにも、早く街が元に戻るようにお手伝いしていたです。

 

 そんな時に、アヴニールのガナッシュさんがシアンさん達を訪ねにやってきました。

 ……何故か、酷く怯えた顔でぷるちゃんがいないことを確認しながらでしたけど。

 

「――以上が、今回の我が社の不手際が招いた騒動に対する皆様への謝罪とせめてものお詫びとなります。何かご質問はありますでしょうか?」

 

「あるに決まってるだろ!! いったい何なんだよ、これは!!」

 

 眼鏡のズレを直しながらガナッシュさんが尋ねると、シアンさんは声を荒げてしまいました。

 よく見てみると、シアンさん以外の工場のおじさん達もガナッシュさんを睨みつけているです。

 

「何をと申されましても、その書類に書いてある通りですよ。今回の我が社の不手際により被害を被ったあなたの会社――『パッセ』を含む町工場の被害額すべてを我が社の方で負担させてもらいます。並びに、工場の修繕が完了するまで、皆様には我が社のプラントを無償でお貸しする予定です。当然、お造りになった商品の流通は我が社が責任をもちまして……」

 

「それだよ!! お前らはわたし達にアヴニールの一員になれって言ってるのか!!」

 

 ガナッシュさんが淡々と書類を読み上げていると、シアンさんは我慢できずに叫んでしまいました。

 

 ……シアンさん達がアヴニールの一員になるですか?

 どう言うことなんでしょうか?

 

「確かに、お前らのロボットが暴れたせいでわたし達は困っている。お前らが工場の修繕や街の復興に力を入れるなら、わたし達も反対しないし協力もするさ――でもな、わたし達にも誇りがある!! お前らのいいなりにはならない!!」

 

「おやおや、随分と嫌われたものですね。私にはどうしてそこまで頑ななのかが理解できませんよ」

 

「わたしもだよ。まさか、お前らがこんな手段を使うだなんて思わなかったさ」

 

 熱くなるシアンさんに対して、ガナッシュさんは肩をすくめるだけです。

 お互いに睨み合っているのは分かるんですけど、わたしにはどうしてこんなことになっているのかが分からないですぅ。

 

「……あいちゃん、シアンさん達はどうして怒っているんですか?」

 

「……あっ、実はわたしも気になってたんだよね。こっそり教えてくれないかな?」

 

「アンタ達ねえ」

 

 話しの展開にこれ以上遅れたらいけないと思い、わたしはあいちゃんの肩をツンツンと突いて小声で尋ねました。

 すると、ねぷねぷもわたしに便乗して事情を聞こうとしてきたです。

 そんなわたし達にあいちゃんは呆れたように半目になってしまったです。

 

「工場や街を直してくれるなら、普通怒らないよね? でも、どうしてシアン達はあんなに怒ってるの?」

 

「うんうん~、あいちゃん教えて~」

 

「しかも、増えてるし……まあ簡単に説明すると、この条件を受け入れるってことはアヴニールの一員になりますよってことと同じことなのよ」

 

 REDちゃんやぷるちゃんもわたし達に続けて尋ねると、あいちゃんは鬱陶しそうに顔を歪めてしまったです。

 それでも、あいちゃんはわたし達に分かるように説明してくれるです。

 

「前にシアンが商品を造っても売れないって言ってたでしょ? でも、今ガナッシュはシアン達がアヴニールのプラントで造った商品を流通させると言ったわ。これがどう言う意味か分かるわよね?」

 

「え、えっと……REDちゃん、パス!?」

 

「よし、キター! ……コンパ、パス!?」

 

「ええええ!? そんな急に言われても……ううぅ、ぷるちゃんにパスですぅ!?」

 

「じゃあ、あたしはねぷちゃんにパス~」

 

「ねぷっ!? まさか1周してくるなんて!?」

 

 まるで先生のように聞いてくるあいちゃんの質問に、わたし達は誰も答えられませんでした。

 目を泳がせるねぷねぷ。

 自信満々だったのが嘘のように慌てるREDちゃん。

 何故か楽しそうに笑うぷるちゃん。

 そんな風に誰ひとり答えられなかったわたし達を見て、あいちゃんはため息をついてしまう。

 

「はあ、少しは自分で考えなさいよ。確かに、ガナッシュはシアン達の造った商品を流通させるとは言ったけど、その名義については何も言っていないわ――シアン、その書類には【商品をアヴニールの名義で流通させる】とでも書いてあるんじゃないの?」

 

「ああ、その通りだ。このままじゃ、わたし達が造った商品もアヴニールの名義で売られちまう。実質、わたし達がアヴニールの社員になったのと一緒になるんだ」

 

 あいちゃんが書類を指さしながら尋ねると、シアンさんは苦虫を噛み潰したかのように表情を歪めて肯定しました。

 そんなシアンさん達にガナッシュさんは肩をすくめてしまったです。

 

「我が社も今回の騒動で大幅な支出を出してしまうのですよ。ですから、ここはお互いに助け合いの精神で売り上げの3割ほどを我が社の方に収めて頂きたいのです。当然、皆様に何かを造って欲しいなどと強制させるつもりはございません。我が社のプラントをご自由に使ってもらって構いませんし、希望されるなら今後も我が社の方で皆様の商品流通を手助けさせていただきたいと思っているだけなんですよ」

 

「……それはわたし達をアヴニールの下請け会社にした上での援助って意味だろ。わたし達の工場を乗っ取ろうとしているのと同じじゃないか!」

 

「そんな人聞きの悪いことを言わないでくださいよ。これは我が社ができる最大限の皆様への援助なんですよ? 街も工場も元通りになり、仕事もできると良いこと尽くめではございませんか。正直、どうしてそのようにご不満なのかが理解できませんね」

 

「わたしにはそれを平然と言ってのけるお前の方が信じられないさ。お前には技術者としての誇りはないのか? 造った物が他人の物になっても平気だって言うのかよ!」

 

「はあ、何を言い出すかと思えば、そんなことですか。技術者として大事なことはお客様に商品を提供することではないのですか? 私もアヴニールで働く身ですし、あなたの言う誇りも理解できます。ですが、私達技術者が1番に考えなければいけないことは、どのような商品を生み出して世の中を発展させるかではないのでしょうか? 商品の商標争いなどと言う狭い話ではなく、我が社は今後のラステイションを大いに発展させると言う大きなヴィジョンを持って……」

 

「ストップ、ストップ、ストーップ!!」

 

 議論を交わすシアンさんとガナッシュさんの間に、ねぷねぷは割って入ってしまったです。

 その行動に皆は目を丸くして、ねぷねぷに注目してしまうです。

 

「……ネプテューヌさん、申し訳ありませんが、邪魔はしないでもらえますでしょうか? 今、とても大事な話をしている途中ですので」

 

「そうだぞ。悪いが、今はお前の話を聞いてやる余裕なんて……」

 

「そうじゃないって!! 正直、さっきからシアン達が何言ってるのかも分かってなかったけど、今言いたいことは別にあるんだよ!!」

 

 ねぷねぷの突然の行動に、ガナッシュさんは眼鏡のズレを直しながら低い声で注意しました。

 続けて困惑した顔でシアンさんに注意されたのですけど、ねぷねぷは首を横に振って答えたです。

 すると、ねぷねぷはガナッシュさんを指さしながら口を開いたです。

 

「わたしが言いたいのは、アヴニールは謝る気があるのかってことだよ!! さっきから聞いていれば、上から目線でシアン達に対する誠意が足りないよ!!」

 

「そーだそーだ!! 本当に謝る気があるなら、そんな難しいことばっかり言ってないで、シアン達にちゃんと頭を下げて謝りなよ!!」

 

「やっぱり~、悪い人だったんだぁ~。これ以上、シアンちゃん達を困らせるんだったら~……」

 

「っ、待って!? 待ってください!? 私は何も意地悪をしてこんなことをしているわけじゃないんですよ!? そもそも私も1社員なんですから、社の方針には逆らえないんですって!?」

 

 ねぷねぷに続いて怒りを露わにするREDちゃんとぷるちゃんに責められ、ガナッシュさんは酷くうろたえてしまったです。

 心なしか、わたしもぷるちゃんが少し怖い気がするんですけど……

 

「いいですか!? 今の我が社の実績はラステイションの維持に大きく貢献しているんです!? ですから、他国に弱みを見せないためにも、我が社が衰退するのは避けたいと言うのが教会からの指示でして、それに答える形で出来る限りの援助を考えた結果がこの書類の内容なんです!? 反感はございますでしょうが、どうかご理解ください!?」

 

「お、おう。そんな必死にならなくても、そう言う事情なら仕方ないって理解はできるさ。でも、わたし達だって技術者の端くれだ。売上なんて関係なく、商標だけは絶対に譲れない。そこの部分だけ変えてくれれば、わたし達だって納得して受け入れるさ」

 

「ですが、それは……」

 

「――構わん。彼女達の要求通り、内容を変更したまえ」

 

 怯えを隠すように必死になって頭を下げるガナッシュさんに、シアンさんは引いている様子でした。

 それでも気を取り直すと、シアンさんは自分達の要求をガナッシュさんに伝えたです。

 それでも渋るガナッシュさんの言葉を遮って、落ち着いた男性の声が聞こえてきたです。

 そちらの方に目を向けると、そこには年配の男性と赤い髪の女性がいたです。

 

「新しいヨメキター!! ねえねえ、そこのクールビューティーなお姉さんのお名前は何て……」

 

「社長!? それにマーマレードさんまでどうして!?」

 

「へっ? 社長?」

 

 女性を見て興奮するREDちゃんでしたけど、ガナッシュさんの慌てた声にきょとんとしてしまったです。

 社長って、あの社長さんですよね?

 つまり、この2人のどちらかがアヴニールの社長って言うわけで……

 

「彼女達の要求通り、商品の名義は彼女達のものにしたまえ。商品の流通も我が社を通さず、彼女達自身が直接輸出できるようにする」

 

「そ、それでは我が社の経営が……」

 

「異論は認めん。これは既に決定事項だ」

 

 男性の方が一方的に通告すると、ガナッシュさんは目に見えて慌てだしました。

 でも、男性の方はガナッシュさんの言い分をまったく聞かずに後ろに控えていた女性の方へと視線を向けるです。

 

「後日、改めて教会と協議した内容を書類にして伝えよう。その時は彼女が私の名代として邪魔をさせてもらう」

 

「社長秘書をしております、マーマレードと申します。どうぞ、よろしくお願いいたします」

 

「こ、こちらこそ」

 

 有無を言わせぬ迫力を放つ社長さんと秘書のマーマレードさんに、シアンさん達は戸惑ってしまったです。

 それはねぷねぷやREDちゃん達も同じみたいで……

 

「まさかのラスボス登場!? さすがにこの展開はわたしも読めなかったよ!」

 

「おー、美人の社長秘書なんて分かってるー! 伊達にアヴニールの社長はしてないってことだね!」

 

「……アンタ達ねえ」

 

 ――そうでもなかったみたいですね。

 2人とも社長さん達の登場にすごく興奮しているみたいです。

 あいちゃんも呆れて何も言えないみたいです。

 

「そう言うわけだ。今日は帰らせてもらう。行くぞ」

 

「はい」

 

「は、はい」

 

「――っ、待てよ!!」

 

 言いたいことが終わった途端、社長さんは秘書さんとガナッシュさんを連れて帰ろうとしたです。

 でも、そんな社長の前にタツタ君が割り込んだです。

 

「テメェ、話はそれで終わりなのかよ? 他にも言うことがあんだろ?」

 

「お、おい、リュータ!? 何やってんだよ、お前!?」

 

「離せ!! オレはコイツに言いたいことがあるんだ!!」

 

 タツタ君が社長さんを睨んでいるのがマズイと感じた、ゆっくんさんは慌てて宥めようとしました。

 でも、タツタ君は肩に置かれたゆっくんさんの手を振り払おうと暴れてしまうです。

 

「行くぞ」

 

「よろしいのですか?」

 

「――2度は言わん。行くぞ」

 

「はい、分かりました」

 

 そんなタツタ君を一瞥しただけで、社長さんは帰ろうとしました。

 確認するガナッシュさんの言葉に力強く答え、社長さんはさっさと歩いて行ってしまったです。

 それに続いてガナッシュさんも行ってしまうのですけど、秘書さんだけは残ってゆっくんさんに近づいたです。

 

「……えっ」

 

 秘書さんに何かを耳打ちされたゆっくんさんは目を大きく見開いて驚いていました。

 そんなゆっくんさんの様子に苦笑しながら、秘書さんも社長さん達の後を追ったです。

 すると、タツタ君はゆっくんさんの手を振りほどき、社長さん達が去って行った方へ向かって声を張り上げたです。

 

「アヴニールの……バカやろー!!」

 

 タツタ君のその叫びは、どこか寂しく聞こえたです。

 

 

*     *     *

 

 

 その翌日、わたし達はラステイションからプラネテューヌへと戻りました。

 何でも、ブラックハート様がアヴニールと協力体制をとってラステイションの復興に力を入れると宣言したからだそうです。

 しかも、これからはシアンさん達も普通に商品を売買できるみたいで、一気に問題が解決したと言っていたです。

 

 でも、正直に言うと、何だかもやもやする結末だった気がするですぅ。

 わたし達はシアンさん達を手伝うと言っておきながら、結局何もできませんでした。

 シアンさんは気にするなと笑って言ってくれましたけど、それでも納得できないです。

 それにゆっくんさんやあいちゃん、ミモちゃんの様子もあれからおかしいんですよ。

 上の空と言うか、何か思いつめているような気がしたです。

 

 鍵の欠片を探す雰囲気でもなくなり、わたし達はシアンさんやファルコムちゃん、タツタ君と別れてプラネテューヌに帰りました。

 新しいお友達のぷるちゃんやぴいちゃん、REDちゃんにミモちゃんとシンさんも一緒です。

 でも、パーティーの空気は最悪ですぅ。

 うぅぅ、これからどうしたらいいんですか!?

 

 

 …………

 

 

 えっと、以上がラステイションからわたしの部屋まで帰って来るまでに起こったことです。

 人も多くなって、広めのわたしの部屋も何だか狭く感じてしまうです。

 これからもっと旅をしてお友達が増えたら、もっと部屋が狭くなりそうですよね。

 

 ……現実逃避だなんて言わないでくださいですぅ!?

 わたしだって、もうどうしたらいいのか分からないんですから!?

 今はシンさんが色々とやってくれてますけど、ゆっくんさんもしっかりしてくださいです!

 看護師見習いですけど、わたしだってゆっくんさんの悩みを聞くことぐらいはできるですよ。

 ですから、早くいつものゆっくんさんに戻ってくださいね。




という訳で、今回はここまで!
これで実質、夢人君達の1回目のラステイション訪問が終わりました。
ネプギアとの約束やその他諸々については次章の頭にするとして、次回は超次元側の続きです。
それでは、 次回 「候補生便り(ユニ編)」 をお楽しみに!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。