超次次元ゲイムネプテューヌ Re;夢のヒーローを目指して   作:ホタチ丸

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はい、皆さんこんばんわ!
いやぁ、長くなった第3章も今話で区切りを迎えます。
本当、長かったなぁ……
それでは、 候補生便り(ユニ編) はじまります


候補生便り(ユニ編)

 うわぁ、本当にアンタが監督なのね。

 せっかく久しぶりの出番だって言うのに、どうしてアンタの指示に従わなくちゃいけないのよ。

 

 ……はあ!? 誰がエセ幼女よ!?

 そもそもアタシは幼女じゃないわよ!!

 そりゃ、確かにお姉ちゃんみたいな大人の女性じゃないけど、これでも立派なレディなのよ!!

 ……は、発育不良ですって?

 あ、アタシが気にしていることを……っ!

 

 ――ふぅ、ありがとう、ブレイブ、ジャッジ。

 撮影が終わるまで、その変態を隅にでも転がしておいてちょうだい。

 後でブランさんと一緒に2度と変なことが言えないように懲らしめてやるから。

 

 コホン、それじゃ改めて始めさせてもらうわね。

 第3回候補生便り、担当はこのアタシ――ラステイションの女神候補生ユニでお送りします。

 今回は夢人を助けようとするアタシ達の前に現れた突然謎の幼……じゃなく、少女がアカリを石みたいにしちゃったところからね。

 ……くっ、変態の言葉がうつっちゃったじゃない。

 と、とにかく、少女が現れた現れたところから始めていくわ!?

 

 それでは、 候補生便り ユニ編 始めるわよ。

 

 

*     *     *

 

 

「これ以上、あなた達をあっちに行かせない――絶対にあの人のゲームを邪魔させない」

 

 そう宣言した少女のアタシ達を見る目はぞっとするほど冷たかった。

 フェルやロム、ラムと同い年ぐらいの少女の目にしては険しすぎる。

 それこそ女神を恨んでいた頃のフェルよりも、目の前の少女の方が明らかな敵意をアタシ達にぶつけている。

 

「――ッ、アカリちゃん!? 返して!?」

 

「ふっ」

 

「あうっ!?」

 

 色々なことが一気に起こり過ぎて硬直していたアタシ達の中で1番最初に動いたのはネプギアだった。

 石のようになってしまったアカリの姿を目の当たりにして表情を凍らせていたネプギアだったが、すぐに取り返そうと少女へと掴みかかろうとする。

 でも、少女は後ろに跳んでネプギアの腕をかわしてしまう。

 アカリのことで冷静さを失っていたのだろう、ネプギアは腕を少女へと伸ばしたまま顎から地面に倒れてしまった。

 

「ネプギア!?」

 

「ギアちゃん!?」

 

 倒れたネプギアに、ネプテューヌさんとコンパが慌てて駆け寄った。

 

「ちょっとー! いきなり現れたと思ったら、アカリちゃんをそんな風にしちゃって! いったいどこの誰なの!」

 

「答える必要はない。目的の1つは達成した。後は……」

 

「――悪いんだけど、そう言うことを聞きたいわけじゃないのよ」

 

 怒り心頭と言った様子でネプテューヌさんが怒鳴るが、少女はやる気のない表情のまま淡々と呟くだけだった。

 その時、少女の声を遮るお姉ちゃんの言葉が聞こえてきた。

 ハッとすると、お姉ちゃんはいつの間にか少女の目の前にいて、アカリを取り戻そうと腕を伸ばしている途中だった。

 

「危ない」

 

「っと、避けられちゃったわね。だけど……」

 

「――悪いが」

 

「――ここまでだ」

 

 少女は難なくお姉ちゃんの腕を避けて、また跳躍してしまった。

 でも、お姉ちゃんは少しも残念そうな素振りを見せない。

 その理由が分からずにいると、着地した少女の後ろから2人の声が聞こえてくる。

 ブレイブとジャッジだ。

 2人は少女を逃がさないように後ろから肩を掴んで取り押さえている。

 お姉ちゃんは少女を捕まえるために、敢えて2人の方へと誘導したんだ。

 さすがお姉ちゃん!

 

「あまり手荒なことはしたくない。素直にアカリを……」

 

「やだ」

 

「何を――ぬぐぉっ!? ガハッ!?」

 

「ジャッジ!? ――うおっ!?」

 

 大人しくするように勧告するブレイブの言葉を無視して、少女はジャッジにひじ打ちを喰らわした。

 しかも、そのまま下がったジャッジの頭を片手で掴んで投げ飛ばしてしまう。

 フェルやロム達と同じくらいの身長しかないのに、成人男性を軽々と投げ飛ばす少女。

 いくらジャッジがガリガリの細身だとしても、少女の細腕では実現不可能なはずの光景だった。

 間近で見たブレイブも信じられなかったのだろう、ジャッジの名前を叫んで硬直している隙に少女から回し蹴りを喰らわされてしまう。

 

「ブレイブ!? 平気なの!?」

 

「あ、ああ。だが、この少女は見た目以上にできるぞ」

 

 アタシは少女に蹴られて吹き飛ばされたブレイブを抱き起こしながら話を聞いた。

 確かに、今のブレイブは小さくなって弱くなっているけど、決して簡単に蹴り飛ばされるような程弱くはない。

 ブレイブの忠告を聞いて警戒を強めていると、少女は冷めた目で仰向けに倒れているジャッジを見下ろしながら口を開く。

 

「負け犬の犬は、やっぱり負け犬。無様」

 

「――っ、貴様!! 今、何て言った!!」

 

「何度でも言う。馬鹿で愚かで無様な負け犬の犬は、やっぱり同じ負け犬でしかない。お揃いね」

 

「貴様アアアッ!!」

 

 激昂したジャッジは雄叫びをあげながら立ち上がり、少女へと腕を振り上げて向かっていく。

 だけど、少女はまったく避けようとしない。

 気だるげに腕を持ち上げて手のひらをジャッジへと向けるだけだった。

 次の瞬間、ジャッジの拳と少女の手のひらがぶつかる乾いた音が聞こえてくる。

 ――しかし、その結果はアタシの予想外のものだった。

 

「これで全力?」

 

「なん……だと……」

 

 首を傾げながら尋ねる少女に、ジャッジは驚愕に大きく目を見開かせてしまう。

 少女の手のひらは、ジャッジの拳を完全に受け止めているのだ。

 腕がぷるぷると震えているのを見ると、ジャッジは受け止められても尚、少女を殴ろうと力を入れているに違いない。

 でも、少女の手はまるで固定されているみたいに少しも動かない。

 

「もういいや」

 

「まだ終わって――ぐふっ!?」

 

「弱過ぎて話にならない」

 

「ゴハッ!?」

 

「ジャッジ!?」

 

 つまらないと言わんばかりに少女は呟くと、受け止めていたジャッジの腕を引っ張り、前のめりに倒れてきたお腹に拳を突き刺す。

 思わず膝をついてしまったジャッジに対して、少女は手を緩めることなく回し蹴りで顎を蹴り上げた。

 蹴り飛ばされたジャッジは壁にぶつかるまで床を転がり、沈黙したまま起き上がらない。

 ブレイブが呼びかけても反応がないところを見ると、気絶しているのかもしれない。

 

「ジャッジさん!? しっかりしてください!?」

 

「く、クソォ……」

 

「とりあえず、意識もあるし、目立った怪我はなさそうね。コンパ、後は頼むわ」

 

「は、はいです!?」

 

 ジャッジを心配して近くにいたフェルとブランさんが顔を覗き込んだ。

 フェルが必死に呼びかけても、ジャッジは低い声で少女への恨み事を口にするだけで気絶はしていなかったらしい。

 その様子に、ブランさんも本職のナースであるコンパにジャッジを頼み、少女へと険しい視線を向ける。

 

「可愛らしい外見で騙されるところでしたわ。あなた、ただ者ではありませんわね?」

 

「ここに侵入してきている時点で、既にただ者じゃないわ。みんな分かりきっていることよ」

 

「いえいえ、こう言うことを言うのもお約束と言うものですわ。会話を繋げて情報を聞きだすきっかけにもなりますし、とても意味のあることだと思いますわよ」

 

 険しい視線でブレイブとジャッジを軽くあしらった少女を見つめるベールさんに、ブランさんは呆れたようにツッコミを入れた。

 2人とも少女のことを警戒しているのは分かるんだけど、どうにも緊張感が足りない気がする。

 ……後、ベールさんはそれを言ったら駄目だと思いますよ。

 情報を聞きだすとか、思いっきり目的を聞かれちゃってますから。

 

「あなた達ねえ、何をのんきに構えてるのよ。少しはそこにいるトリックを見習いなさい」

 

「ぐぬぬぬぬ……」

 

 そんなベールさんとブランさんに、お姉ちゃんは苦言を呈した。

 真面目に少女からアカリを取り戻そうとしていたお姉ちゃんからすれば、2人の態度に怒っているのだろう。

 しかも、あの変態を見習えと言ったのだ。

 アタシも言われてから見てみると、そこには険しい顔で低い声で呻きながら体を震わせている変態がいた。

 

 あの何時もいつも幼女と言っていた変態が真面目な顔つきで少女を睨んでいる!?

 てっきり、アタシはいつものように幼女だ! とか、ペロペロさせて! とか言っていると思っていた。

 でも、実際には変態は1歩も動かずに少女の出方をうかがっている。

 正直、初めて変態が頼もしく見えて……

 

「何故だ!? 外見はバッチリ幼女であるにも関わらず、吾輩のセンサーに反応がなかっただと!? 吾輩が幼女の気配を察知できなかったと言うのか!? ――ハッ、まさか彼女こそが伝説のロリバ……」

 

「何考えてるのよ、このバカ!!」

 

「おうふっ!?」

 

 ――勘違いした自分を殺したいくらいに後悔してしまった。

 変態は所詮変態に過ぎなかった。

 今だって、ラムに殴られて恍惚の表情を浮かべているし。

 割りと本気で少しでも期待した自分が恥ずかしい。

 思わず両手で顔を覆い、その場で泣き崩れそうになってしまった。

 

「で、誰を見習えって?」

 

「う、うるさい!? とにかく、あなた達も黙って見てないで協力しなさい!?」

 

 冷静にツッコミを入れるブランさんに、お姉ちゃんは恥ずかしそうに赤面してしまった。

 それを誤魔化すように、お姉ちゃんはまた少女へと飛びかかろうとする。

 

「コード入力【LIVE FREE】」

 

「はあ? 何を言って……」

 

「金ダライ」

 

「――ごぶっ!?」

 

 ……それはまるでコントを見ているような光景だった。

 少女が何かをぼそりと呟いたかと思ったら、お姉ちゃんの頭に金ダライが落ちてきた。

 何を言っているのか分からないけど、アタシにも意味が分からない。

 ただお姉ちゃんが痛そうに両手で頭を押さえてうずくまっているのを見ると、金ダライが落ちてきたのは夢でも幻でもなかったことがはっきりと分かる。

 

「プッ、あははははは! 金ダライって! ノワールの頭に金ダライが当たって! しかも、ごぶっ!? だって!」

 

「――っ、笑うんじゃないわよ!? 本当に痛いんだから!?」

 

「先走ってフラグを踏み過ぎたわね。まあ、あなたらしいけど」

 

「ですわね。相手の出方が分からないのに焦り過ぎですわ」

 

「なんで私が責められるような流れになってるの!? どうして誰も私の心配をしてくれないのよ!?」

 

 ネプテューヌさんが噴き出したことをきっかけに、お姉ちゃん達はいつものように仲よさそうに会話を始めてしまった。

 でも、アタシが心配しているから大丈夫だよ、お姉ちゃん。

 

「はいはい、ネプ子や女神様達もその辺にしておいてください。今はアッチの方が大事ですから」

 

 騒ぐお姉ちゃん達を仲裁し、アイエフはアカリを抱いている少女の方へと険しい視線を送る。

 一方で、少女は退屈そうにあくびをしながらアタシ達のことを見ていた。

 

「どうやら逃げるつもりはないみたいだけど、いったいあなたは誰なのかしら? 正直に答えてもらえると嬉しいわ」

 

「ふわぁ……んっ、やだ」

 

「強情――いえ、それだけ自信があるってことかしら。私達なんて、どうにでも出来るって」

 

 アイエフの問いかけに、少女は目を擦りながら答える。

 その仕草はどこまでも自然体だった。

 ケイブの言う通り、アタシ達に周りを囲まれていても逃げ出せる自信があるのかもしれない。

 

「だったら、質問を変えるわ。今のはいったい何なの? 何かを言ったと思ったら、急に金ダライが降って来たのって……」

 

〔それには私の方からお答えしましょう。先程のノワールさんの頭に落ちてきた金ダライは私のセキュリティーシステムの1つです〕

 

 取りつく島のない少女に、アイエフは諦めることなく質問を投げかけた。

 だけど、その質問に答えたのは何故かエヴァだった。

 

「なんであなたがその子の味方をしているのよ? おかげでこっちは酷い目にあったわ」

 

〔それについては申し訳ありません。彼女がパスコードを口にした瞬間、私の中の優先順位が変動されてしまいました。今現在、彼女こそが私の全ての機能を使用する権限を有している唯一の存在なのです〕

 

「だったら、私達が今からそのパスコードを口にすれば、こっちの味方に戻るのよね?」

 

〔すみません。私が権限を委譲できるのは3人までですので、これ以上パスコードを入力されても無意味になってしまいます〕

 

「ちょっと!? 何よ、そのいきなりの設定は!?」

 

「な、何だか作為的なものを感じるのは気のせいかな?」

 

 恨めしそうにお姉ちゃんが文句を言うが、エヴァは淡々とした様子で説明する。

 そのせいで、少しも申し訳なさそうには聞こえない。

 しかも、取って付けたような制限も嘘臭く思え、お姉ちゃんやファルコムじゃないけど、アタシも疑問を感じてしまう。

 

「それよりもアカリちゃんは!? アカリちゃんは大丈夫なんですか!?」

 

「それを言うなら、ロムちゃんやナナハちゃん達もよ!? いきなりあの穴が消えちゃったけど、大丈夫なんでしょうね!?」

 

〔心配いりませんよ。今はこんな姿をしていますが、アカリさんは無事です。ロムさん達も無事に向こう側へと渡ったのを私の方で観測できています〕

 

 そんな風にエヴァと少女の関係を怪しんでいると、ネプギアとラムがアカリとロム達のことを心配して声を荒げた。

 それに対して、エヴァはどことなく先程よりも温かみのある声で安心させるように断言する。

 気休めにも聞こえるけど、アタシはそれを聞いて密かに胸を撫で下ろした。

 少なくとも、今はアカリやロム達の心配はしなくてもよさそうだと思う。

 だから、今アタシ達がしなければいけないことは――今も眠たげに瞼を擦っている少女の目的を知ることだろう。

 

「おい、テメェ。よくもまあ、好き放題してくれやがったな」

 

「別に好き放題なんてしていない。ワタシはあの人のゲームを邪魔させたくないだけ」

 

「ああ? それが意味わかんねェって……」

 

「うるさい奴――生卵」

 

「っ、アダッ!?」

 

 リンダが指をポキポキと鳴らしながら近づいても、少女は何の反応も示さない。

 それどころか、興味もなさそうに見える。

 そんな少女の態度に、リンダの顔はさらに強張ってしまう。

 でも、リンダが語気を強めた瞬間、少女は不快そうに眉をひそめて呟く。

 すると、どこからともなく落ちてきた卵がリンダの頭に直撃してしまう。

 直撃した卵は割れ、黄身と白身がリンダの顔を汚す。

 すると、リンダは俯いて体を震わせ始める。

 

「て、テメェ、いい度胸してるじゃ……」

 

「小麦粉」

 

「――ぶわっふっ!?」

 

 ひくひくとこめかみをひくつかせながらリンダが凶悪そうに表情を歪めても、少女はつまらなそうに呟くだけだった。

 次の瞬間、頭上から大量の小麦粉が降り注ぎ、リンダの体は真っ白に染まってしまった。

 

「ちゅー、さすが下っ端っちゅね。見事に信頼を裏切らないっちゅ」

 

「……テメェも真っ白に染めてやろうか、おい!」

 

「それはごめんっちゅ。おいらはもうパンダみたいになるのは嫌っちゅ」

 

 真っ白になったリンダに、ワレチューは納得したように何度も頷いた。

 それが癪に障ったらしく、リンダは怒りの矛先をワレチューへと向けてしまう。

 

「因みに、他にもそのセキュリティーシステムのバリエーションってあったりするの?」

 

〔はい。他にも少しヒヤッとする冷凍ガスやクリームパイ、落とし穴なんてものもあります〕

 

「……うわぁ、何か芸人さんの罰ゲームみたいなものばっかりだね。古典的って言うか、古臭いって言うか。地味に嫌なことばっかりなのが逆に怖くなってくるよ」

 

 素朴な疑問をぶつけるネプテューヌさんに、エヴァは素直に答える。

 聞いているアタシの方も微妙になってしまうセキュリティーシステムに、何も言えなくなってしまう。

 それって、本当にセキュリティーシステムの役割を果たしているの?

 

「脇道に逸れるのはここまでにしましょう。まとめると、エヴァがいる限りその子に手出しは出来ない、と言うことで間違いないみたいね……後、リンダはこれで顔だけでも拭いておきなさい」

 

「お、おう。サンキュー」

 

 ちょっと強引かもしれないと思ったけど、ケイブのおかげで話の軌道が修正されたと思う。

 そっとハンカチを手渡されたリンダを除いて、アタシ達は誰もケイブの言葉を否定しない。

 

「でも、だからと言って、このまま大人しくゲームとやらの終わりを待っているわけにはいかないよね。ねえ、少しでもいいから、あたし達の質問に答えてくれないかな?」

 

「やだ」

 

「……やっぱりかぁ」

 

 今度はファルコムが柔らかく笑みを浮かべながら問いかけるが、少女はにべもなく即答する。

 その変わらない態度に、ファルコムはため息をついて肩を落としてしまう。

 

「うむ。では、エヴァに尋ねよう。あなたはこの少女の目的を知っているのか?」

 

〔それは……〕

 

「――知っているだろうさ」

 

 膠着状態を打破しようと、ブレイブが今度は質問を向ける先をエヴァへと変更した。

 今までの通りなら、エヴァはアタシ達の質問に素直に答えてくれるはず。

 その返事に期待を抱いていると、何故か今まで黙りこんでいたマジェコンヌさんがエヴァに代わって断言する。

 

「ふん、最初はくだらんことに巻き込まれたと思ったが、なるほどな。ようやく私も事情が理解できたぞ」

 

「マジェコンヌ様?」

 

「おい、貴様。確か、にょ……」

 

「――違う。“ネリネ”」

 

「そんなことはどうでもいい。さっさと用件を言え」

 

 口の端を大きく吊り上げて怪しげな笑みを浮かべるマジェコンヌさんに、ブレイブは疑問の声を上げた。

 でも、マジェコンヌさんはブレイブに答えず、少女――ネリネに命令する。

 

 ネリネって、多分名前のことよね?

 と言うよりも、マジェコンヌさんやエヴァはネリネのことを知っているの?

 マジェコンヌさんの様子を見ると、色々と知ってそうな気がするんだけど……

 

「分かってる。ワタシの目的はあと1つ――おい、そこの無能」

 

「え、ボクのこと!?」

 

 マジェコンヌさんとの関係を疑っていると、ネリネはフェルを指さして強い口調で呼びかけた。

 しかも、名前で呼ばずにフェルのことを無能呼ばわりしてだ。

 自分が指名されたことにフェルが戸惑っていると、ネリネは強い口調で言い放つ。

 

「お前の“力”を寄越せ。お前にはもったいない」

 

「ボクの“力”? いったい何のこ……」

 

「とぼけても無駄。渡さないなら、奪うだけ――そして、ワタシがプレイヤーになる。今度はワタシがあの人を助ける」

 

 今までのやる気のない表情や眠そうな顔が嘘のように、ネリネはフェルを鋭く睨み続けた。

 その言葉の意味はよく分からないけど、ネリネがフェルに特別敵意を抱いていることは察しがつく。

 でも、プレイヤーだとかあの人を助けるだとか、説明が足りな過ぎて理解が追いつかない。

 

「だから、寄越せ! お前の“力”を!」

 

 今度は聞き間違えようがなく、ネリネは明らかな怒気を孕ませてフェルへと叫んだ。

 そして、今まで大事に抱えていたアカリを床に下ろし、腰を落として体勢を低くする。

 次の瞬間、ネリネはフェルへと飛びかかろうと床を蹴り……

 

「――おい、待て。貴様、本当にそんなことができると思っているのか?」

 

 ……フェルに飛びかかろうとしたネリネだったけど、マジェコンヌさんの言葉にピクッと体を震わせて動きを止めてしまう。

 いつでもフェルへと飛びかかれる体勢のまま、ネリネは顔だけをマジェコンヌさんの方へと向ける。

 

「できるできないは関係ない。ワタシは奪うだけ」

 

「ふん、奴の悪いところだけを学習しよって。仕方ない、私が手を貸してやろう」

 

「っ、本当?」

 

 言い切るネリネを鼻で笑い飛ばし、マジェコンヌさんはにやりと口元を緩める。

 目を瞬かせるネリネだけでなく、アタシ達も一瞬耳を疑ってしまうような一言がマジェコンヌさんの口から出た。

 

 ネリネに協力するってどう言うこと?

 まさかマジェコンヌさんもエヴァみたいにネリネの味方になるんじゃ……

 

「ああ、嘘はつかん――ただし、貴様が私の出す条件を受け入れればの話だがな」

 

 

*     *     *

 

 

 フェルの“力”を狙う謎の少女、ネリネ。

 マジェコンヌさんが彼女に提示する条件とはいったい何なのか。

 こう言うのは悪いかもしれないんだけど、マジェコンヌさんの最後に浮かべた笑みがすごく悪役染みていた気がするわ。

 まあ、悪い人じゃないってことは分かっているんだけど、色々と隠し事をしているみたいだし、アタシもマジェコンヌさんについてはまだよく分からないのよね。

 エヴァもエヴァでネリネに従っちゃうし、夢人を助けるために集まったアタシ達はこれからどうすればいいんだろう。

 そして、ネリネの言うゲームとかプレイヤーとかの意味っていったい……

 

 

 …………

 

 

 ……正直、分からないことが多すぎて頭が痛くなってくるわ。

 ネプギアの馬鹿な行動から夢人の行方不明、アカリのことやネリネの目的とか、もう訳が分からないわよ!?

 って、愚痴をこぼしていても仕方ないわよね。

 アタシはアタシができることをやっていくだけ。

 きっと“神次元”に行った夢人達も頑張っているはずだもの。

 アイツらが帰ってくるのを待っているだけじゃなくて、アタシ達の方から迎えに行ってやるくらいの気持ちでいないとね。

 夢人の無事をこの目で確認するまで、アタシも頑張らなくっちゃ。




という訳で、今回はここまで!
まあ、今章の反省とか今後の投稿予定はこの後あげる活動報告の方で書きます。
とりあえず、第3章完!
それでは、 次回 「俺が覚悟を決めていないわけがない」 をお楽しみに!
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