超次次元ゲイムネプテューヌ Re;夢のヒーローを目指して 作:ホタチ丸
ようやく本編の再開と新章に突入です。
それでは、 俺が覚悟を決めていないわけがない はじまります
俺が覚悟を決めていないわけがない
――俺は何をやっているんだろう。
この世界、ゲイムギョウ界に来てからも何度も投げかけた自問自答に明確な答えなんて1回も出せたことはなかった。
俺はいつだってそうだ。
何度も迷って気付かされて進んだと思ったのに、また後ろに下がっている。
やるべきことは分かってる。
でも、どれだけ頑張っても前に進めない。
俺の努力が足りてないってことは最初から分かってる。
目指すべき理想がどれだけ遠いものなのかも理解しているつもりだ。
それでも俺は諦めるわけにはいかない。
元のゲイムギョウ界に帰るためにも……
チェアーさんを助けるためにも……
一緒に旅をするネプテューヌ達の足手まといにならないためにも……
夢物語だと言われた理想を実現させることができることをノワールに証明させるためにも……
そして、俺がネプギアを守れる強さを手に入れるためにも――ここで立ち止まっている暇なんてないんだ!
「うごふっ!?」
……だが、現実はいつだって非情だ。
腹部に受けた強烈な痛みと衝撃に、俺の体はまた宙を舞う。
目の前には、既に見慣れてしまった雲ひとつない青空が映り込む。
今日だけで既に4度も仰向けに倒れている。
うつ伏せに倒れた回数も入れれば、今日だけで10回は地面を転がっている。
そのせいで体はあちこち痛いし、服も泥まみれだ。
傍で見ているはずのネプギア達にもきっと間抜けに見えているだろう。
でも、何度倒れようとも今日だけは負けられない。
諦めるわけにはいかない。
例え、無様と罵られようとも立ち上がらなくちゃいけないんだ。
倒れても手放さなかったブレイブソードを支えに立ちあがり、俺はまた目の前の相手を睨みつける。
ファルコムに教えてもらったことさえできれば、必ず勝機はある。
ブレイブソードを下段に構え、頭の中でイメージする。
弱気は禁物、焦りは失敗に繋がる。
何度も練習してきたと自分に言い聞かせ、俺は相手が動き出すのを待つ。
「――っ、今だ!!」
しばらく睨み合いが続いたが、痺れを切らした相手が体勢を低くして動き出す仕草を見せた。
伊達に何度も失敗しているわけじゃない。
俺だって相手がどんな動きから次の動作に移るのかぐらい学習している。
問題はタイミングだ。
だが、それも既に把握している。
今度こそ、決めてやる!
俺の予想通り、飛び出してきた相手に合わせてブレイブソードを振り上げる。
タイミングも完璧だった。
動き出した相手はブレイブソードの描く軌道から逃げ出せない……はずだった。
「なぁっ!?」
突然、視界に捉えていたはずの相手が消えてしまった。
どこに行ったのかと探すよりも早く、足元から奇妙な音が聞こえてきた。
「あがっ!? ……がっ!?」
――気付いたら、今日5度目になる青空が目の前に広がっていた。
何が起こったのかは分からない。
分かるのは顎に走る強烈な痛みとブレイブソードを手放してしまったことだけ。
飛びそうになってしまった意識は背中から地面に落ちた痛みでなんとか繋ぎ止められているが、頭を揺さぶられたせいで体が上手く動かせない。
そんな俺を嘲笑うかのように、アイツの声が聞こえてきた。
「ぬら!!」
……なんで俺はいつまで経ってもスライヌに勝てないんだよ!?
* * *
「はあ!? 3年前ってどう言うことだよ!?」
ラステイションの裏路地、夢人は目の前の相手から離された内容に驚きを隠せなかった。
「先程も説明した通りだ。私は3年前からこちら側にいて、貴様を探していたのだ」
赤い長髪と金色の瞳が特徴的なスーツ姿の女性、アヴニールの社長秘書であるマーマレードは夢人に淡々と事実だけ告げる。
シアン達とアヴニールの会合が終わった後、マーマレードが夢人を裏路地に呼び出したのである。
「いや、それは分かったんだけど、俺がこっちに来てからまだ2週間も経ってないんだぞ!? それ、絶対におかしいだろ!?」
「確かにな。だが、事実として私は不本意ながらこちらで3年も過ごしてしまった。全ては貴様がいなくなったのが原因でな」
「うっ、それはそうだけど……」
「――ふぅ、とにかく、この問題はここまでにしておくとしよう。いくら考えたところで起こってしまったことはもうどうにもならん」
責めるようなマーマレードの物言いに、夢人は申し訳なさそうに頬を指で掻いてしまう。
すると、マーマレードはため息をついて話を先に進める。
「今は貴様の方が問題だ。何だあの情けない姿は……それでも貴様は女神どもと共に我らの計画を邪魔した勇者なのか」
マーマレードの冷たいナイフのような視線に射抜かれ、夢人は何も答えることができず俯いてしまう。
自分でも分かっているのだろう、固く握られた夢人の拳は小刻みに揺れていた。
「貴様がどれだけ堕落しようが、一切興味はない。だが、いつまでも無様な姿を晒したままでいるな」
「……分かってる」
「いいや、分かっていないな。今の自分の姿を理解しているのなら、そのような口を叩けるわけがない。今の貴様はただの愚者だ」
はっきりと告げられた評価に、夢人の顔は悔しさに歪む。
しかし、マーマレードは夢人の気持ちなどまったく関係ないと言わんばかりに鼻を鳴らす。
「ふん、少しは理解できたらしいな。ならば、いつまでも遊んでいないで、さっさと貴様本来の力を引き出せ」
「俺の、力?」
「――『再誕』の力のことだ」
ビクッと夢人の肩が震えたことを、マーマレードは見逃さなかった。
呆然と呟いていながらも、マーマレードが何を言いたいのかを夢人も理解していた証拠だろう。
しかし、夢人は表情を曇らせたまま首を横に振る。
「無理だ。今はあの時みたいにアカリが体の中にいるわけじゃないのに、どうやって……」
「何を寝惚けたことを言っている。私は貴様の言い訳など聞く気はない」
「あっ……」
夢人の弱音を切って捨て、マーマレードは壁に立てかけられていた竹刀袋――正確にはその中身であるブレイブソードへと視線を向けた。
続いて夢人の右手首に巻かれている紫色の水晶が連なったブレスレットへと目を落とす。
それが何を意味するのかを理解し、夢人はバツが悪そうにマーマレードから顔を背けてしまう。
「1つ減っているな。それに、そこにあるのはブレイブの剣――まだ白を切る気か?」
「……ああ、間違いない」
「答えが違う。いい加減理解したらどうだ」
俯く夢人の右手首を掴み上げ、マーマレードは言い放つ。
「今の貴様がしていることは、児戯に等しい逃避だ。何の意味もない、な」
「っ!?」
覗きこんでくるマーマレードの鋭い瞳に見つめられ、夢人は息をのんでしまう。
反論しようともせず、口を固く噤む夢人の表情は悔しさが滲んでいた。
「悔しいのなら、さっさと『再誕』の力を引き出せ。そううすれば、今よりも少しはマシになる」
パッとマーマレードが手を離すと、夢人はその場で尻餅をついた。
立ち上がる気力すらないのか、夢人は俯いたまま口を開く。
「……分からないんだ。俺がブレイブソードを“再現”できたのは偶然で、どうすれば『再誕』の力を引き出せるのかなんて、まったく分からないんだ」
何も言い返せなかった夢人の零した弱音は、まるで泣いているかのように震えていた。
――努力が否定された悔しさ。
――何もできなかった無力感。
――己の不甲斐なさに対する怒り。
他にも様々な感情が胸に込み上げ、夢人の体全体を震わせていたのである。
「くだらん。そのようなつまらないことで悩むな。馬鹿馬鹿しい」
「っ、本当に分からないんだ!! 『再誕』の力の引き出し方なんて……」
「――いいや、違うな」
感情のままに叫んだ夢人を否定し、マーマレードは静かに告げる。
「貴様は『再誕』の力を引き出す方法を既に知っている。分からないじゃない――ただ使おうとしていないだけだ」
「そんなこと……」
「私が知っている限り、貴様は単独で『再誕』の力を3度引き出せている。ブレイブの体の再構成、ギョウカイ墓場から流出するシェアエナジーをせき止める保護膜の施錠、そしてそのブレイブの剣の“再現”だ。偶然は3度も続かん」
マーマレードの言葉を夢人は否定できない。
事実だからこそ、口を挟めないでいた。
しかし、いくら実績を並べられようとも、夢人は素直にマーマレードを肯定もできなかった。
黙ったままブレスレットを見下ろす夢人の瞳は戸惑っているように揺れていた。
「今の貴様に何を言っても無駄のようだな」
そんな夢人を見て、マーマレードはこれ以上の問答を続けても無意味であると悟った。
いくら言葉を並べても解決の糸口すら見つからないのならば、マーマレードが夢人に送る言葉はない。
マーマレード自身、アヴニールの社長秘書としての責務もあるため、夢人が満足する答えを見つけるまで付き合うつもりはなかったのである。
「その剣は貴様が好き勝手振り回す玩具ではない。それすらも分からないのであれば、貴様は大人しくプラネテューヌに引きこもっていろ。今の貴様にはその方がお似合いだ」
「……ごめん」
「次に会う時までに、その顔を少しは見られるようにしておくのだな」
マーマレードは1度ブレイブソードへと視線を向けたかと思うと、すぐに謝罪する夢人の横を通り裏路地を出て行ってしまう。
1人残されても変わらず俯く夢人は固く拳を握りしめ、マーマレードの言われた言葉を頭の中で反芻させる。
やがて、両手で頬を強く叩き、顔を上げて口を開く。
「ありがとう、マジック」
それはマーマレード――マジック・ザ・ハードへと向けた感謝の言葉だった。
冷たくあしらわれたように思えても、夢人はアレがマジックなりの激励だったと感じていた。
それだけ自分が情けない姿を晒しているのも自覚している。
だからこそ、夢人は己を奮い立たせようとしていたのである。
次にマジックと会う時には、しっかりと前を向いていられるように……
* * *
――しかし、気持ち1つで全て上手くいくわけではなかった。
「おおっと!? スライヌ選手の体当たりがまた決まったー!! これは勝負あったか!?」
「見事に顎を打ち上げられましたからね。さすがのゆっくん選手もここまでじゃないでしょうか」
実況と解説の真似事をしながら、面白おかしく夢人とスライヌの対決を見ているREDとネプテューヌ。
2人の言う通り、夢人は仰向けに倒れたまま立ち上がれず、スライヌは悠然と構えている。
勝者と敗者がはっきりと分かる光景である。
「ほえ~、スライヌってあんな動きもできるんだぁ」
「わたしも初めて見たですぅ」
傍にいたプルルートとコンパは、スライヌの動きに目を丸くしていた。
先程のブレイブソードを避けたスライヌの動きに驚いていたのである。
「グーッてなったら、ギュルギュルッてして、バァーッてうごいたよ! ロムもみてた?」
「う、うん、見てたよ」
「あははは、今のは凄かったね」
体全体でスライヌの動きを表現しようとするピーシェに問いかけられても、ロムは満足に答えることができなかった。
ピーシェに同意するシンとは違い、ロムは心配そうに倒れたままの夢人を見つめている。
「……ありえない。何なのよ、あのスライヌは」
「……スライヌに対する認識を改めるべきかしら」
一方で、アイエフとミモザは頭を抱えていた。
能天気に騒ぐネプテューヌ達とは違い、先程見たスライヌのあまりにも非常識な動きに戸惑いを隠せない。
――それ程、夢人を見下ろすスライヌの動きは常軌を逸していた。
完全に夢人が振るうブレイブソードの軌道にいたと思われていたスライヌだったが、突如として急降下したのである。
野球で例えるのならば、フォークボールのような動きであった。
そのままブレイブソードを避けたスライヌは地面に着陸すると同時に、体を急速に回転させた。
まるでドリルのように地面を掘り進むのかと思われたが、その動きは反発を利用して跳び上がるための予備動作に過ぎなかったのである。
回転することにより勢いを増すことに成功したスライヌは夢人の顎を目掛けて急浮上。
視界の外からのアッパー気味に決まったスライヌの体当たりを喰らい、今の仰向けに倒れている夢人ができ上がったのである。
「ま、まだまだぁ……」
「ぬら~?」
しばらくすると、夢人は地面についた腕をぷるぷるとさせながらも立ち上がろうとする。
そんな姿を見て、スライヌは呆れたようにジト目になる。
「夢人さん、もう限界なんじゃ……」
「大丈夫!! 俺はまだ戦える!!」
ネプテューヌ達に混ざり、何故かタオルを持っていたネプギアが心配そうに夢人へと声をかけた。
だが、夢人はそれを大声で否定し、気合を入れて一気に立ち上がる。
このスライヌとの対決こそ、1週間前ラステイションで夢人がネプギアと約束した強くなったのかどうかを証明するための戦いである。
場所はプラネテューヌのバーチャフォレスト。
相手は偶然出会ったスライヌ。
ある程度ブレイブソードを扱えるようになってきた夢人なら、充分勝算のある戦いであった……はずである。
しかし、蓋を開けてみれば、スライヌの動きを捉えることの出来ない夢人は翻弄されてばかりである。
(このままじゃ……くっ、やるしかない!)
遠くに転がってしまったブレイブソードへと目を向けるが、夢人は拾いに行こうとしない。
それどころか、夢人は瞳を閉じてしまう。
(負けられないんだ。今できなくて、いつやるって言うんだよ!)
意識を右手首に嵌めているブレスレットへと集中させ、夢人は『再誕』の力を引き出そうとする。
マジックに発破を掛けられたこともあり、夢人はこれから先も戦い抜くために覚悟を決めたのである。
(頼む、フィーナ! 俺に力を貸してくれ!)
ブレスレットを託してくれた娘のことを思い浮かべながら、夢人はイメージしていく。
『再誕』の力を引き出す自分の姿を。
怖いくらいに表情を強張らせて研ぎ澄ましたイメージを解放しようとして……
「ぬらっ!!」
――隙をついたスライヌの体当たりを顔面に喰らってしまうのであった。
それがトドメとなったのか、夢人は静かに意識を手放して仰向けに倒れた。
四肢を投げ出して大の字に倒れる夢人に、スライヌはつまらなそうに唾を吐き捨てて森の中に姿を消す。
「夢人さん!?」
「……えー、最後は呆気ない幕切れでしたね。まあ、予想通りだけどね」
「まあ、ゆっくんだからね」
「ゆっちゃんだからね~」
「めーとはよわいもん」
慌てて倒れているネプギアをよそに、REDとネプテューヌ、プルルートは困ったように笑っていた。
ピーシェですら夢人の負けっぷりに呆れている。
夢人のことを心配しているのは、ネプギアの他にコンパとロムぐらいである。
ミモザに至っては射殺さんばかりに冷たい視線を送っていた。
(予定通りだな。後は……)
そんな中、シンはネプギアに泥だらけの顔を拭いてもらっている夢人を心配そうに見ていると装いながら内心でほくそ笑む。
見つめる先は8つの水晶が連なったブレスレットと転がっているブレイブソード。
これから先のことを思うと、シンは興奮を隠し切れず、わずかに口角を上げていた。
「……じゃあ、先に戻ってるわ」
「え、う、うん」
「わ、分かったです」
しばらくすると、アイエフは近くにいたロムとコンパに声をかけて1人で帰ろうとした。
その冷たいように思える態度に戸惑う2人であったが、アイエフは呼び止める間もなく立ち去ってしまう。
――誰にも言えない秘密を胸に秘めたまま。
* * *
「はあ、今日も見つかりませんでしたわ」
深夜、1人の女性がベンチに腰をかけていた。
赤縁の眼鏡にマスクをつけ、胸元を強調するような大胆な服装をしている女性である。
両脇には筒のように丸められた紙が何本も顔を覗かせているカラフルなデザインが施された手提げ袋が置かれている。
買い物の帰りに休憩しているのだろう。
「いったいどこに売っているのかしら?」
ため息をつく女性は、どうやら目当ての物を買えなかったようである。
悩ましげに頬に手を添える女性は大きく肩を落とす。
ベンチに座ったことで買い物帰りの疲れもドッと出て来ていたのだ。
「……さて、そろそろ帰りましょう」
独り言を呟いているのは寂しさを紛らわすためだった。
時間も遅いことで、周りに女性以外の人影はない。
――そう、女性は思っていた。
「えっ……」
ベンチから立ち上がり帰ろうとした瞬間、女性は突然足に力が入らなくなってしまった。
何が起こったのかは分からない。
意識も段々と遠のき、受け身すら取れずに前のめりに倒れてしまう。
「クックック、まずは1人目だ」
その後ろで体をすっぽりとローブで隠した人物が倒れた女性を見下ろして忍び笑いを浮かべていた。
手に持つ紫色に輝く刀身で緑色の球体を貫きながら……
という訳で、今回はここまで!
サブタイや最後の部分でもわかる通り、新章の舞台はあの大陸です。
VⅡ発売までにどれだけ投稿できるのやら……
まあ、テンポよく更新できるように頑張るしかありませんよね。
それでは、 次回 「私が帰るわけがない」 をお楽しみに!