超次次元ゲイムネプテューヌ Re;夢のヒーローを目指して 作:ホタチ丸
新シリーズを投稿して、もう一週間が経ったんですね。
……それなのに、まだ舞台が超次元って。
それでは、 たった1つの冴えたやり方 はじまります
「今日もいい天気です。こういう日はいいことがありそうかもですね」
「おいらはこんぱちゃんと一緒にいられれば、毎日が幸せっちゅ!」
「もー、大げさですよ、ネズミさん」
早朝のプラネテューヌの街中で、1人と1匹が談笑しながら歩いていた。
青く澄んだ空を見上げながら柔らかく頬を緩ませるコンパと、その隣でニコニコと笑うワレチューである。
犯罪組織との戦いが終わった後、コンパは念願の看護師としてプラネテューヌの病院で勤務している。
常にほんわかとした笑みを絶やさない優しい雰囲気が人気の看護師として、多くの患者や同僚たちに慕われて充実した毎日を送っている。
対して、ワレチューは現在コンパと共に働くために、医療系の資格を取得しようと勉強中なのである。
普段はマジェコンヌ達と共にギョウカイ墓場で生活をしているのだが、コンパが休日の日に限り“看護師の勉強を教えてもらう”と言う建前の元、積極的なアプローチをするために何度か宿泊も繰り返している。
だが、コンパは一向にワレチューの思いに気付く気配を見せない。
鈍感なせいなのか、それともワレチューを自分を慕ってくれるペットか弟のように見ているのかはコンパにしかわからない。
ただコンパが自分の押し掛けに迷惑を感じていないようなので、ワレチューはとりあえずそれだけで満足しているのである。
「そんなことないっちゅ! おいらの幸せは、こんぱちゃんが楽しく毎日を過ごすことっちゅ! つまり、今が1番幸せなんでちゅよ!」
「そうですね。わたしも今が1番幸せです。ねぷねぷにギアちゃん、あいちゃんや夢人さん、それにネズミさん達と一緒に楽しく毎日を過ごせるのが、すっごく嬉しいんです」
力説するワレチューに、はにかむような笑顔を見せるコンパは脳裏に大切な人達の姿を思い浮かべる。
たくさん勉強をして、ようやくなれた看護師を放り出して犯罪組織と戦うことを決めたコンパ。
自分のことよりも、大切な友人達のために行動できるのは、コンパの優しさだろう。
その優しさに触れることで恋に堕ちたワレチューにしてみれば、今のコンパはとても魅力的に映ってしまう。
そのためワレチューはだらしなく頬を緩めながら、トロンとした瞳でコンパを見つめている。
「こんぱちゃん、マジ天使っちゅ。まさにゲイムギョウ界1の白衣の天使っちゅ!」
「は、恥ずかしいですよ。わたしはただ、これからも皆さんと一緒に……って、あれ?」
「どうした……ちゅ? アイツは……」
ほんのりと頬を染めて恥ずかしそうに眉根を下げながらも、コンパの口元は少しだけ緩んでいる。
照れ隠しをするように、耳元にかかっている髪を掻き上げてワレチューから視線を外すと、コンパは1人の人物を発見して首を傾げてしまう。
コンパ同様、ワレチューもその人物の姿を見つけることができたのだが、どうにも様子がおかしいことに気付く。
「……だったんだ……俺って……やっぱり……」
その人物は何かをぶつぶつと呟きながら、まるで幽鬼のようにふらふらと歩いていた。
この世の終わりだと言わんばかりに顔色を青くしており、瞳は暗く淀んでいる。
コンパもワレチューも、その人物のことはよく知っているのだが、今のように深く落ち込んでいる雰囲気を出している姿を見たことがないため、戸惑って顔を見合わせてしまう。
だが、コンパはすぐに眉をきりっとさせると、その人物へと声をかける。
「え、えっと、夢人さん? どうかしたんですか?」
「……ああ、コンパか。おはよう」
「お、おはようです。そ、それで、その、いったい何があったんです?」
話を聞こうと決意したとはいえ、近寄りがたい雰囲気を発している人物に声をかけるのは、さすがに躊躇いがちになってしまったため、コンパは弱気になってしまう。
例え、その人物が先ほど思い浮かべた夢人だとしてもだ。
話しかけられたことに気付いた夢人はゆらりと顔を上げ、コンパがいることを確認すると生気のない表情と声で返答する。
普段よりも格段に低い声にたじろぎながらも、コンパは夢人に何があったのかを聞きだそうとする。
すると、夢人は再び俯き、肩を小刻みに震わせながら口を開く。
「……俺、知らなかったんだ……ネプギアが俺のことを嫌いなことに……」
「えっ? 何を言って……」
「それなのに、俺はずっと勘違いしてて……ハハハ、普通に考えれば当たり前だよな。こんな腐れニートに告白されても、迷惑なだけだもんな」
最初は夢人が何を言っているのか信じられず、目をパチクリとさせるコンパであったが、自嘲的な笑い声を漏らし始めた辺りから事態の深刻さに気付く。
状況を正確に理解したわけではないが、色恋沙汰に疎いコンパですらわかったことがある。
夢人とネプギアの間に何かしらのトラブルがあったんだと。
(わたしの幸せが、大ピンチですぅ!?)
* * *
……はあ、何でおいらがこんなことをしなくちゃいけないんちゅか。
こんぱちゃんの頼みじゃなければ、絶対に断わってたっちゅよ。
「なあ、そろそろ俺にも説明してくれないか?」
「説明も何も、見たまんまのことしかおいらもまだ知らないっちゅよ」
隣でいやそうな顔をしながら説明を求めるレイヴィスを敢えて無視しておいらは目の前で突っ伏す勇者……いや、今はニートを呆れた表情で見つめているっちゅ。
ニートを見つけた後、おいらとこんぱちゃんはとりあえず近くにあって顔見知りもいるギルドに連れてきたっちゅ。
そこで、ちょうど依頼を受けようとしていたレイヴィスを巻き込んで、おいらはニートから詳しい話を聞こうとしていたところっちゅ。
幸いにも、朝の早い時間帯だってことでレイヴィスとギルドマスターであるイワしかいなかったからよかったっちゅ。
でなきゃ、場所を変える手間がかかるところだったっちゅ。
まったく、せっかくこんぱちゃんの家にお泊まりして朝の爽やかな散歩の時間を堪能していたと言うのに……
「仕方ない……おい、いったい何があったんだ?」
おいらと話していても時間の無駄だと悟ったレイヴィスが、ため息をつきながら未だに突っ伏したまま動かないニートに尋ねる。
すると、ニートはそのままの姿勢でぼそぼそと何かを言う。
「……振られた」
「はあ? 今なんて言ったんだ?」
「……俺、ネプギアに振られたんだ」
ニートがそう言った瞬間、おいらとレイヴィスは耳を疑ったっちゅ。
思わず互いに顔を見合わせて、数回瞬きをした後に声を揃えて叫んでしまったっちゅ。
『はあああっ!?』
椅子から腰が浮き上がってしまい、レイヴィスなんかは机を挟んで向かい側にいるニートに詰め寄ったっちゅ。
……おいらは小柄な体型のせいで、椅子に両足をついて立ち上がっただけだったっちゅけどね。
「待て待て待て!? ネプギアがお前を振っただと!? それは本当なのか!?」
「……うん」
「ありえ……いや、まずは落ち着け、俺。そうだな、まずは1つずつ話を聞いていこう」
興奮して身を乗り出していたレイヴィスだったけど、危ない発言をする前に冷静に戻れたようで何よりっちゅ。
おいら達の共通認識として、ニートとプラネテューヌの女神候補生は互いに好きあっているはずっちゅ。
ニートの方はわかりやすいとして、プラネテューヌの女神候補生もフィーナとの決戦前にゲイムキャラから貰ったディスクの中を観た時に……って、プラネテューヌの女神候補生はニートの気持ちを知っていたはずっちゅよね?
しかも、その時の反応は嫌がっていたわけじゃなくて、ただ単に恥ずかしがっていたように見えた気が……
「夢人、お前どんな酷い告白をしたんだ?」
「……俺としては普通に気持ちを伝えただけなんだけど」
「本当か? 無理やりキスを迫ろうとしたり、押し倒そうとしなかったか?」
「それとも、あのモザイク処理が必要な気持ち悪い笑い方をしてたんじゃないっちゅか? よく思い出してみるっちゅ」
おいらとレイヴィスは最初からニートが悪いと決めつけて質問を繰り返すっちゅ。
ニートとプラネテューヌの女神候補生の場合、気持ちは通じ合っているから問題は告白の仕方だけになるっちゅ。
そして、告白をしたのはニートだから、必然的に全部この男の自業自得になるっちゅね。
……そう考えると、ニートのせいでおいらはこんぱちゃんとの幸せな一時を邪魔されたわけっちゅか。
こうしているうちにも、いつまでもうじうじと突っ伏した状態のニートに段々と怒りが湧いてくるっちゅ。
「……普通に好きだって言っただけなんだ。緊張して、頭が真っ白になって、そう言うだけで精一杯だったんだよ」
ぶつぶつと涙声になっていくニートの言葉を聞いて、おいらは妙に納得してしまったっちゅ。
よくよく考えてみれば、このヘタレにレイヴィスの言ったようなことができるわけないっちゅね。
聞いた話だと、ニートはゲイムギョウ界に来てからずっとプラネテューヌの女神候補生に片思いをしていたらしいっちゅ。
それなのに、今の今まで告白をしていないことを考えると、奥手と言えば聞こえはいいっちゅけど、実際はただの甲斐性なしっちゅよね。
まったく、本当に情けないニートっちゅ。
おいらのこんぱちゃんに対する溢れんばかりの愛を見習うっちゅよ。
どんな場所や状況でも、おいらはいつでもこんぱちゃんへの愛を叫べるっちゅ。
……こんぱちゃん、愛してるっちゅ!!
「それなら、いったい何が原因だ? 告白した場所か? それともシチュエーションか? もしかして服のセンスか?」
「いやいや、コイツにそう言うことを求めるのは酷っちゅよ。ここは普通に考えて、気付かないうちにコイツが変なことをしていたに決まってるっちゅ」
おいらがこんぱちゃんに届くように心の中で愛のメッセージを送っていると、レイヴィスは眉間に深くしわを寄せてニートの失恋した原因を考えだすっちゅ。
と言うより、もしかしておいら達って結構酷いことを言ってるっちゅか?
いやでも、ニートには前科として色々な噂と事実があるから、そう言う意味で信用しちゃ駄目な奴っちゅからね。
急に時代遅れな熱血になったり、おっぱいがどうとか言う変態になったり……うん? もしかして告白の途中でそうなったんじゃないっちゅか?
緊張のしすぎで理性がプッツンしちゃって、プラネテューヌの女神候補生に……ニートならありえるっちゅね。
本当にコイツが勇者だったのかと思うくらいに、マイナスイメージが定着しているニートだからこそ、不思議なくらい鮮明にそういう場面が思い浮かべられるっちゅ。
もうこれが結論で間違いないっちゅね!
「……そもそもさ、嫌われてたのに勘違いしていた俺が悪いんだよな。告白の仕方云々以前に、ネプギアにしてみれば迷惑以外の何物でもなかったんだよ」
「ん? ちょ、ちょっと待て。誰が誰を嫌いだって?」
「ネプギアが俺を、だよ……本当、何で今まで俺は気付かなかったんだろうな」
おいらの中で結論が固まりだそうとした時、ニートが突然愚痴りだしたっちゅ。
そのせいで、せっかくまとまりかけた失恋の理由がまたわからなくなってしまったっちゅ。
聞き返したレイヴィスの気持ちもよくわかるっちゅ。
すると、ようやく顔を上げたニートが額を手で押さえながら自虐的な笑みを浮かべて話しだすっちゅ。
「今までネプギアはきっと俺を勇者として召喚した罪悪感のせいで優しくしてたんだろう? だってほら、ネプギアは誰にでも優しいもんな。馬鹿で、顔もさえなくて、誘拐犯に間違えられたり、女装したり、街中や人が大勢いる場所で問題を起こす変態で、剣も魔法も碌に使えない口先だけ立派なできそこないの勇者なんて、ずっと疎ましく思ってたんだろ。しかも、アカリが生まれてからママなんて呼ばれて、嫌いな俺なんかと夫婦みたいな関係になってからは、かなり無理してたはずだ。あの時からネプギアの態度が変わったもんな。ネプギアなりにアカリのためにママをしようとしていただけなのに、俺は恋人を通り越して夫婦みたいだなんて1人で喜んでたんだよ。本当、妄想も大概にしろよって感じだよな。俺のことが嫌いなネプギアが一緒にいてくれたのは、勇者でアカリのパパって理由だけなのにさ。それなのに、これからは勇者じゃない俺としてゲイムギョウ界で生きていく、なんてかっこつけた結果、何の職にも就けないニート野郎だよ。教会でずっとヒモ野郎でいたくなくて飛びだしたせいで、アカリと会う時間もなかなか取れない。こんなパパ失格のニートな俺とネプギアが一緒に居てくれるか? ……居てくれるわけないよな。こんな何もいいところがないくせに、悪評だけが付きまとう俺なんかがネプギアと一緒に居ようだなんて……ごめんな、アカリ。俺はもう、お前のパパじゃなくなっちゃったんだよ。ごめんな、フィーナ。せっかく俺がゲイムギョウ界で生きていられるようにしてくれたのに、新しいスタートも切れないなんて……」
「お、おい、少し冷静になって……」
「ハハハ、そうだよな。元はと言えば、全部俺が悪いんだよな。俺がネプギアに嫌われていた事に気付かないで告白したせいで、今もコンパやお前達に迷惑かけてばっかりで……本当にごめん。こんな妄想クソニートの馬鹿な話に付き合わせちゃってさ」
「……おい、これどうする?」
「……おいらに聞かれてもわかるわけないっちゅよ」
痛々しいとしか表現できない姿で一気にまくし立てて来るニートに、おいら達は何も言えずにただ顔を見合わせて小声で話すっちゅ。
何でニートがこんな勘違いしているのかはわからないっちゅが、これは酷過ぎるっちゅ。
プラネテューヌの女神候補生は、いったいどんな振り方をしたっちゅか?
と言うより、本当に2人が両思いなのかも怪しく思えてくるほどっちゅ。
……まあでも、このままにしておくわけにはいかないっちゅよね。
おいら個人としても、こんぱちゃんのためにもニートには早く立ち直って欲しいっちゅ。
多分、隣で悩むように眉を寄せているレイヴィスもおいらと同じ気持ちっちゅね。
敵であったおいら達がこんぱちゃん達との日常を謳歌できるきっかけをくれたのは、紛れもなくニートのおかげっちゅ。
偶然ニートと同じ船に乗り合わせてゲイムギョウ界中で指名手配されたあの事件がなかったら、おいらと下っ端はきっと今でも悪いことを続けていたに違いないっちゅ。
フィーナに操られたマジック様だって、女神達に助けを求めたから生きてるっちゅ。
何だかんだ言って、おいら達はニートに大分助けられているっちゅ。
だから、仕方なくいつまでもネガティブになっているニートのプラネテューヌの女神候補生への誤解を解いてやるっちゅかね。
あくまで仕方なくっちゅよ?
そうでなきゃ、おいらがいつまでも就職できない勇者御波夢人(仮)によく似ているこんなネガティブ思考のニートを励ます理由なんてないっちゅ。
「あー、ゴホン! 少なくともプラネテューヌの女神候補生はお前のことを嫌ってはいないはずっちゅよ」
「そうだ。今までのことをよく思い出してみろ。本当にネプギアがお前を嫌う素振りを見せたことがあったのか?」
「……俺だって、少なくとも嫌われてないと思いたいよ。でも、それならどうして……」
「だあああああ、もう!! お前らいつまでも俺の仕事場でそんな陰気くさい雰囲気を出してんじゃねえよ!!」
おいらとレイヴィスの言葉で、ニートが少しは希望が持てるような考え方をするように軌道修正することができそうだと思った時、今までカウンターの所に居たプラネテューヌのギルドマスターであるイワが青筋を立てながら近づいてきて机を片手で思いっきり叩いてきたっちゅ。
イワは鋭い目つきで未だ覇気のない顔をしているニートを睨みながら、もう片方の手に持っていた本のような冊子を突き付けたっちゅ。
「おら、これでも読んで元気出せ!! いつまでも振られたことを引きずってねえで、男ならさっさと新しい恋でも見つけやがれってんだ!!」
「ちょ、ちょっと待て、イワ!? 夢人の話はそう言うものじゃなくてだな……」
「あん? コイツがプラネテューヌの女神候補生の嬢ちゃんに告白して振られたって話じゃなかったのか?」
慌てるレイヴィスを見て、イワは話が飲み込めない様子で眉をしかめてしまうっちゅ。
確かに事実としては合ってるっちゅけど、2人の背景事情が複雑なんっちゅよ。
本当だったら、ニートの告白が成功してもおかしくなかったはずっちゅから、おいら達も頭を悩ませているっちゅのに。
「っ、これは!?」
おいら達が詳しくイワに説明しようとしている間に、ニートは受け取った冊子に目を通して驚愕の表情を浮かべていたっちゅ。
すると、すぐにニートは顔を引き締めておいら達に尋ね出すっちゅ。
「なあ、イワ。これに書いてあることは事実なのか?」
「へっ? いや、そりゃ作者の主観も入ってるし、事実ってわけじゃねえだろうよ」
「なら、レイヴィス。お前の知ってるこの世界の恋愛ってどんな物なんだ?」
「れ、恋愛か? 俺が知ってる範囲では、ネプテューヌシリーズに男のメインキャラクターは出てこないし、そもそもゲームとしてのジャンルが……」
「いいや、それだけ聞ければ充分だ。ありがとうな」
困惑するおいら達をよそに、ニートは先ほどまでと打って変わって爽やかな笑みを浮かべて立ちあがったっちゅ。
いや、コイツはいったい何を聞きたかったっちゅか?
イワやレイヴィスに尋ねた質問の意味がまったくわからないっちゅ。
「それじゃ、これから行かなきゃいけないところができたから、俺もう行くな」
「ゆ、夢人? どこに行くつもりなんだ?」
ほほ笑みながらギルドから立ち去ろうとするニートを、慌ててレイヴィスが呼び止めたっちゅ。
何だか、このままニートを行かせたらいけない気がするっちゅ。
多分、レイヴィスもおいらと同じ気持ちだから、戸惑いながらもニートを呼び止めたに違いないっちゅ。
「ちょっとラステイションまでな。じゃあ、そう言うことで」
「お、おい!? ……行っちまったな」
行き先を笑顔と共に宣言すると、ニートは制止の言葉も聞かずにギルドを出ていってしまったっちゅ。
声をかけたイワは面倒くさそうに頭を掻きながら、ニートが出ていった方を見てため息をついたっちゅ。
でも、ニートはラステイションにいったい何の用事があるっちゅか?
イワとレイヴィスにした質問と何の関係が……って、そう言えば、アレのことを忘れていたっちゅね。
「イワ、アイツに渡した物ってなんだったっちゅか?」
「別に大したもんじゃねえよ……ってか、アイツ持ってきやがったな。クソ、俺のコレクションをよくもっ」
おいらがニートに渡した冊子について尋ねると、イワはそれがどこにもないことに気付いて悔しそうに表情を歪めたっちゅ。
イワのコレクション……って、何のことっちゅかね?
「だから、結局アレはいったい何だったんだ?」
「だから、俺の秘蔵の一冊……まあ、所謂男のバイブルってわけだ」
目を鋭く細めてレイヴィスが追及すると、イワはどこか楽しげに口角を上げたっちゅ。
……男のバイブルって何のことっちゅ?
* * *
その頃、コンパは1人プラネテューヌの教会に向かって走っていた。
夢人のことをワレチュー達に頼んだ後、もう1人の当事者であるネプギアに話を聞こうと思ったからである。
「ハア、ハア……ようやく着いたです。早くギアちゃんに夢人さんのことを聞かなきゃ……」
「2人がどうかしたんですか?」
「よくわからないんですけど、何だか夢人さんがギアちゃんに嫌われたとか……って、ひゃあっ!? だ、誰ですか!?」
教会の入り口に辿りついたコンパが息を整えていると、ふいに後ろから声を掛けられた。
コンパは反射的にその声の主に事情を説明するのだが、自分が1人でここまで来たことを思い出すと驚き慌ててしまう。
「おいおい、いくらなんでもその反応は遅すぎだろう。それに、誰ですか、じゃねぇだろうが」
「え、え、え、あれ? ど、どうしてお2人が? それに……」
「うん、ちょっとネプギアに用があったんだけど、その前に確認しなくちゃいけないことができたみたいだね」
振り返ったコンパの目の前には、2人の人物が立っていた。
片方はコンパの反応に呆れ、もう片方は軽く口元に笑みを浮かべている。
……しかし、その目は決して笑っておらず、コンパは見つめられているだけで冷や汗をかいてしまう。
「2人に何があったの?」
その問いには有無を言わせぬ響きが含まれているのであった。
* * *
「ふんふふーん」
ラステイションのギルド、そのカウンター席で1人鼻唄を歌いながら書類を捌いていく人物がいた。
ラステイションのギルドマスターのアヤである。
本名をアヤトと言う男性なのであるが、心は女性であると宣言している身長180オーバーの筋骨隆々な乙女である。
因みに、今日は艶のある黒髪をツーサイドアップにして狸のような丸い耳のカチューシャを付けたピッチピッチの魔法少女服を着ている。
巨漢に似合わず軽やかにペンを書類へと滑らせる姿はまさに繊細な手つきで作業をする乙女に見えてしまうのは、ラステイションのギルドにある不思議の1つである。
そんなアヤの元に1人の男が訪ねてきたのだ。
男、プラネテューヌのギルドから真っ直ぐにラステイションのギルドまでやって来た夢人は真剣な顔でアヤへと声をかける。
「アヤ」
「あ~ら、あなた随分とご無沙汰じゃないの? それに、そんな怖い顔してどうしたって言うの?」
独特のイントネーションがあるアヤの言葉を聞いて、夢人はその場で正座をしてしまう。
そのまま夢人は三つ指をついて額を地面に擦りつける。
「ちょ、ちょっと、どうしたのよ? いきなり土下座なんてしちゃって」
並大抵のことでは動揺しないアヤでも、さすがに目の前でいきなり夢人に土下座をされて驚きを隠せない。
しかし、夢人はそんなアヤの戸惑いを気にすることなく言葉を続ける。
「お願いします!! 俺を……いいえ、私をっ!! 私を立派な乙女にしてください!!」
……夢人の頼みは、どこからどう聞いても変態発言にしか聞こえないものであった。
という訳で、今回はここまで!
まあ、そろそろ舞台を移さなきゃいけませんよね。
多分、この章はおまけも入れて後3話に収まればいいかな? っと思ってるんですよね。
それでは、 次回 「愛したからこそ願う幸せ」 をお楽しみに!