超次次元ゲイムネプテューヌ Re;夢のヒーローを目指して   作:ホタチ丸

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はい、皆さんこんばんわ!
今回は色々な状況の説明、その前半戦といったところでしょうかね。
それでは、 信仰に繋がるわけがない はじまります


信仰に繋がるわけがない

「お2人には本当に申し訳なく思っております。ですが、お2人の安全を考えれば、今すぐにでも……」

 

「ちょ、ちょっと待ってください!? 俺――いや、俺達には何を言っているのか、まったく分からないんですけど!?」

 

 頭を下げるイヴォワールを止めたのは、状況を飲み込めない夢人であった。

 隣で固まっているデンゲキコを横目で見やり、夢人は今の正直な気持ちをイヴォワールへと告げる。

 

「ミモザがクーデターを起こすとか、どう言うことなんですか!? あのミモザがそんなことをするはずが……」

 

「あるんじゃよ。いや、ワシがその理由を作ってしまったんじゃ」

 

 クーデターのことを否定しようとする夢人に、イヴォワールは首を振って応えた。

 だが、夢人はそれでも納得できない。

 夢人はラステイションでミモザの語った女神に対する思いが本物だと感じた。

 そんなミモザが混乱しか起こさないクーデターなどを起こすわけがないと信じているのだ。

 

「ミモザを旗頭にしたクーデター……いや、革命軍とでも言うべきかのぅ。とにかく、悪いのは古い慣習に縛られているワシらなんじゃよ。だから、おそらくミモザ本人にとっても本意ではないはずじゃ」

 

「古い慣習? ミモザの本意じゃない?」

 

「それがどうして私達の国外追放に繋がるのですか? それに、どうしてそんな重要事項を私達に教えたのですか?」

 

 自嘲気味に話すイヴォワールの言葉の意味を、夢人はほとんど理解できなかった。

 そもそもクーデターが起こると分かっているにもかかわらず、イヴォワールの様子が穏やか過ぎることに夢人とデンゲキコは気付く。

 冷静になって疑問を口にする夢人達に、イヴォワールは説明する。

 

「リーンボックスの問題に巻き込んでしまった責任――いえ、違いますな。ワシはただ、御波殿にこの話をしたかっただけなんじゃ」

 

「俺に?」

 

「ええ、御波殿には決してミモザのことを勘違いして欲しくなかったのですよ。そして、できることならばミモザのことを支えてやって欲しいのです」

 

 指名された夢人は戸惑うことしかできない。

 初対面であるはずのイヴォワールからの評価が高い理由が分からないからである。

 

「――死に逝くジジイの願い、どうか頼まれてはくれまいか?」

 

 そう言うイヴォワールの顔には穏やかな笑みが浮かべられていたのだった。

 

 

*     *     *

 

 

「さて、全員集まったわね」

 

 アイエフとシンが帰ってくると、ミモザはネプテューヌ達全員を食堂に集めた。

 全員分の椅子もあり、話を聞くにも楽だろうと言うミモザなりの配慮である。

 しかし、ミモザのどことなく刺々しい雰囲気にネプテューヌ達は緊張してしまう。

 

「え、えっと、ゆっくんさんとギアちゃんがまだ来てないのですけど……」

 

「2人のことなら問題ないわ。ネプギアには後で説明するし、ブ男はそもそもここにいないから」

 

「いないってどう言うこと? ネプギアと一緒に帰って来たんじゃないの?」

 

 おずおずとコンパが手を挙げて夢人とネプギアの不在を告げた。

 だが、ミモザは気にすることなく話を進めようとする。

 さすがにおかしいと感じたREDが質問すると、ミモザは……

 

「ああ、ブ男は捕まったのよ。だから、ここにはいないの」

 

 ――何でもないことのように、あっさりと夢人が職員に捕まったことを伝えたのである。

 

「へっ? 捕まった? ゆっくんが?」

 

「え、なんで?」

 

「罪状はゲイムギョウ界全体を混沌に陥れようと画策している邪教徒の1人である――と言うことになっているわ」

 

 重要なことをあまりにも淡々とミモザが話すため、ネプテューヌ達は理解が遅れてしまった。

 全員の気持ちを代弁するようにネプテューヌとロムが尋ねると、ミモザは然もつまらなそうに言う。

 

「どうやら嵌められたみたいね。昨日から今日にかけて、御波夢人がグリーンハート様を害そうとする犯罪者だって噂が協会の職員の間で流れていたみたいよ。ご丁寧に顔写真まで職員の間限定で拡散されてね」

 

「誰がそんなことを……」

 

「そこまでは分からないわ。でも、火元は確実に職員の誰かでしょうね。自発的に起こしたのか、それとも第3者から吹き込まれたのか――まあ、特定は無理ね」

 

 コンパの悲しげな問いかけを聞いても、ミモザの感情が表に出ることはない。

 

「そう言うわけだから、あなた達も余計なことをして騒ぎを起こすんじゃないわよ。後、明日から2日間は屋敷の外に出ないこと――話はそれで終わりよ。はい、解散」

 

「って、ちょっと!? それってどう言うこと!?」

 

 ネプテューヌ達が理不尽なことに襲われた夢人を心配して押し黙っている中、ミモザはポンと手を叩いて話を強制的に終わらせようとした。

 だが、そんな一方的な通告を黙って受け入れるネプテューヌではなかった。

 

「ここは流れ的にゆっくんの無実を証明するためにわたし達が力を合わせて証拠探しに奔走する場面じゃないの!! そして、処刑台に上らされたゆっくんを助けるために、力強く【異議ありっ!!】って言ってやったりしちゃったりさ!!」

 

「あなた、そんな馬鹿なことが本当にできると思っているの?」

 

「だったら、今すぐ夢人を助けに行こうよ!! 夢人が無実なのはアタシ達が証明できるし、イヴォワールだって話せば分かってくれるよ!!」

 

「アポイントもなしに協院長に会えるわけがないでしょ? 受付の職員に捕まってブ男と同じ牢屋に入れられるのが落ちだわ」

 

 ヒートアップするネプテューヌとREDに対して、ミモザの態度は冷めきっている。

 冷たいともとれるミモザの態度に、夢人を助けたいと思っているネプテューヌ達の反感は強まるばかりだ。

 

「じゃあ、ミモちゃんなら大丈夫ですよね? お願いします、イボ爺さんに会わせて欲しいです!!」

 

「わたしからも、お願いします!!」

 

 孫のミモザならイヴォワールに会う機会を作れるのではないかと望みを託し、コンパとロムは必死に頭を下げた。

 一方で、ネプテューヌ達から期待を込められた目で見られているミモザはと言うと……

 

「嫌よ」

 

 ――露骨に嫌そうな顔をしてコンパ達の懇願を拒否したのである。

 

 

*     *     *

 

 

 自分の死を予感しながらも笑みを浮かべるイヴォワールに圧倒され、夢人は即答することができなかった。

 軽々しく答えていいものではないと受け止め、夢人は思わず息をのんでしまう。

 頼まれている本人でないデンゲキコですら、いつもは軽快に回る口はおろか、頭の中が真っ白になってしまって何も言えなくなっている。

 

「そこまで深く考えめされるな。あの子も何もできないわけではありませんし、御波殿に婿になって欲しいと言っているわけでもありませんからのぅ」

 

「む、婿!?」

 

「ほっほっほっ、冗談じゃよ」

 

 突拍子もないことを言われて驚く夢人に、イヴォワールはお茶目な悪戯が成功したと口元を緩める。

 おかげで部屋の中の空気がわずかに弛緩し、夢人はバツが悪そうに頬を掻きながらも口を開くことができた。

 

「えっと、ミモザのことは頼まれなくても困っていたら助けますけど、それよりも最初から説明してくれませんか? クーデターとかあなたが死ぬとか、よく状況が分からなくて」

 

「そう言っていただけるだけで嬉しい限りです。さて、では何から話したものか……」

 

「あー、それでは私の方から――クーデターについてからでお願いできますか?」

 

 夢人から了承の意を伝えられて喜ぶイヴォワールに、デンゲキコはおずおずと手を上げながら疑問を投げかけた。

 心情的には空気の如く話を聞いているだけがよかったと思いながらも、記者としてのプロ根性と持ち前の好奇心がデンゲキコを突き動かしてしまったのである。

 

「ならば、まずは当協会の成り立ちについて説明せねばいけませんな」

 

「ほーほー、それはいったいどう言ったものなのでしょうか?」

 

「簡単に説明しますと、当協会は他国の『教会』と違い、グリーンハート様への信仰を積極的に増やす活動を行っておらんのだ」

 

「えっ、それじゃベー――んっ、グリーンハート様への信仰が増えないんじゃないですか?」

 

 説明を始めるイヴォワールを前にして、デンゲキコは後に引けないことを悟って開き直ることにした。

 興味深そうに頷くデンゲキコの横で、危うくベールの名前を出しそうになった夢人は疑問を覚える。

 

 女神にとっての信仰――シェアがどれだけ大事なのものなのかは夢人もよく知っている。

 シェアの低下により意識不明の状態に陥ってしまったロムやギョウカイ墓場でシェアを持続的に供給しなければ生きていけないアカリのこともあり、夢人はこの世界のベールが心配になってしまう。

 

「その通りじゃよ。しかし、無暗矢鱈に信仰を広めることもまた、グリーンハート様を苦しめてしまうことになるんじゃ」

 

 そんな夢人の疑問を肯定したが、イヴォワールはすぐに目を伏せて首を横に振る。

 

「女神様の守護は有限である――御波殿はよく分かっているかもしれませんが、女神様とてワシら人間とそう変わりなく生きておられるのです。全ての者の願いを叶える都合のよい偶像ではないんじゃ」

 

「っ、それは……」

 

 大きく目を見開かせた夢人であったが、それ以上言葉を紡ぐことはできなかった。

 何故なら、頭の中で夜の河原でノワールにぶつけられた言葉を思い出したからである。

 しかし、それは同時に容易くキラーマシンを斬り裂いたノワールに突き付けられた現実までも思い出してしまうことに繋がり、夢人はイヴォワールに同意の言葉を返すができなかったのだ。

 

「先代の女神様の話はご存じですかな? まだゲイムギョウ界が4つの大陸に別れる前、女神様が1人だった時のことですが、平和を守ってきた女神様がある日突然ゲイムギョウ界に凶暴なモンスターを解き放ったんじゃ」

 

「女神が、モンスターを……?」

 

 夢人はイヴォワールの話が信じられなかった。

 ネプギア達――夢人の知っている女神達は誰もがゲイムギョウ界の平和を願っている。

 それは意見が対立したこの世界のノワールであっても例外でない。

 だからこそ、女神がモンスターをと言う話が信じられないのだ。

 

「ワシも詳しくは分かりませんが、当協会ではそう伝えられているのです。先代の女神様がモンスターを操り、ゲイムギョウ界を混乱に陥れようとしたと」

 

「先代の女神様がモンスターを――あっ、もしかして、4英雄と眠りの魔女の話ですか?」

 

「4英……え、何それ?」

 

 イヴォワールの話に心当たりのあるデンゲキコと違い、初耳の夢人には訳が分からなかった。

 すると、デンゲキコはバッと驚いた様子で夢人へと顔を向ける。

 

「知らないのですか!? 4英雄と眠りの魔女と言えば、ゲイムギョウ界中で知らぬ者はいないと言っても過言ではないほどの知名度を誇る昔話じゃないですか!?」

 

「昔話?」

 

「その通りです!! ……ああ、私もよくお母さんに読み聞かせてもらっていたなぁ。言うことを聞かない悪い子は先代の女神様が遣わしたモンスターに食べられちゃうぞーって」

 

「ほっほっほっ、どこの家でも似たようなことをするものじゃな。ワシにも覚えがあるぞ」

 

 思い出に浸るデンゲキコとイヴォワールに置いてけぼりを喰らわされた夢人は難しい顔で首を傾げることしかできない。

 先程までの話と昔話の内容がどう繋がってくるのかを夢人が考えていると、イヴォワールは1度仕切り直すように咳払いをする。

 

「ゴホン、話を戻しますと、突然の凶行に出られた先代の女神様を止めたのが4英雄と眠りの魔女なのです。彼らは先代の女神様が暴走した原因を突き止めたからこそ、ゲイムギョウ界を4つの大陸に分けたと言われています」

 

「その原因ってもしかして……」

 

「――然様、皮肉なことに先代の女神様への信仰が当時のゲイムギョウ界を危機に追いやってしまったのです」

 

 話の流れでも覚悟していたが、それでも夢人はイヴォワールの言葉に衝撃を受けてしまう。

 

「信仰とは元を辿れば人の心です。果たして、人の心は常に正しいものでありますでしょうか――信仰や願いと言った思いに色があるのであれば、黒く淀んだものがあることも否定できますまい。人の心は透明なままでいられるほど、強くも純粋でもいられないとワシは考えておるのです」

 

 悲しそうに語るイヴォワールの考えを、夢人とデンゲキコは否定できなかった。

 何故ならイヴォワールの言う通り、自分の心が強くも純粋でないことは夢人自身が1番よく知っている。

 デンゲキコだって同じ気持ちだ。

 しかも、それを確かめる術など存在せず、不安だけが募っていく。

 

「先代の女神様はそんな人間の心を見抜かれたのでしょうな。だからこそ、愛するゲイムギョウ界を守るために敢えて凶暴なモンスターを解き放ったのだと伝えられております」

 

「……まさか、悪い人間をゲイムギョウ界から間引くためってことですか?」

 

「そうじゃな。ワシらは先代の女神様がお与えになった試練だと考えておるが、デンゲキコ殿の言う通りでしょう。惰性で続けられる信仰は依存と変わらず、依存はやがて腐敗を生み、ゲイムギョウ界を滅ぼしてしまうと先代の女神様は危惧なされたのだと思います」

 

 知らずうちに夢人は拳を強く握りしめていた。

 イヴォワールとデンゲキコが話している内容は理解できている――だが、それで納得できるかは別問題だったのである。

 

「自ら信仰を失くそうとした行為は、先代の女神様にとってまさに身を削る思いそのものだったでしょう。ですが、ゲイムギョウ界の未来のために先代の女神様は非情にならざるを得なかったのだと思います。そして、自分が破れることが新しいゲイムギョウ界の礎を築くための芝居だと気付いた4英雄と眠りの魔女は、先代の女神様の意向を汲んで4つの大陸でそれぞれ違う女神様を信仰することを決めたのです。ゲイムギョウ界中の信仰を1人の女神様に集中させるのではなく分散させることで、信仰とは自由であり、妄信のような依存と違うことを証明したかったのだと思います」

 

「それが今のゲイムギョウ界の成り立ちと言うわけですか」

 

「真偽は分かりませんが、少なくともリーンボックスの協会にはそう伝わっております。ですから、リーンボックスはグリーンハート様の教えを広める『教会』ではなく、グリーンハート様を共に支えることを目的とした『協会』となっているのですよ」

 

 イヴォワールの話を聞いて感心するように頷くデンゲキコと違い、夢人は表情を険しくさせるだけだった。

 そんな夢人のことを当然見ているにもかかわらず、イヴォワールは話を続ける。

 

「さて、前置きが長くなりましたが、グリーンハート様を支えると言う目的の元に設立された当協会で最も厳しく取り締まっているのが他国からの移民です」

 

「移民、ですか?」

 

 意外な発言に、デンゲキコは首を傾げる。

 

「増えすぎた信仰のせいで先代の女神様が悲しい結末を迎えてしまったことを省み、当協会では徹底的にグリーンハート様への信仰を管理することを決めたのです」

 

「それって本当にできるのですか?」

 

「まあ、国内だけの話ですよ。人の心ゆえ、どうしても計算通りにはいかないところがありますからな」

 

 デンゲキコから投げかけられた疑問に、イヴォワールは苦笑してしまう。

 それは自嘲しているようにも見えるし、疲れきっているようにも取れる。

 

「今でこそ気軽に旅行に来られる人々もおりますが、つい30年ほど前まではリーンボックスの地を踏むことすら許さなかったのです。国内でのグリーンハート様への信仰を確かなものにするために、他国の女神様に影響される要因……人や文化を徹底的に排除することが協会の仕事じゃった」

 

「……まるで鎖国じゃないか」

 

「鎖国――語感から察しますに、鎖で縛られた国家と言う意味でしょうか? なるほど、ワシらはまさに国を縛る鎖であったと言うわけですな」

 

 絞り出すように夢人が呟いた言葉を聞き、イヴォワールは愉快そうに笑みを浮かべた。

 非難するように夢人が目を鋭くされて見つめるが、イヴォワールは意に介した様子も見せない。

 

「いやはや、御波殿の言葉は何も間違ってはおりませんよ。ワシらはリーンボックスを……ひいてはグリーンハート様を守ろうとして鎖の内側に繋ぎ止めてしまった。鎖から棘を生やして外敵を寄せ付けず、自分達の楽園を守ろうとしていたのじゃ」

 

「……だったら、なんで何もしないんですか? なんで国のあり方を変えようとはしないんですか? そうすれば、ミモザだってクーデターを起こそうとは思わなかったんじゃないですか?」

 

「無理じゃよ」

 

 悲痛な面持ちで問いかけてくる夢人に、イヴォワールはきっぱりと答えた。

 緊迫した様子の2人を仲裁すべきかとデンゲキコが思案していると、イヴォワールは真っ直ぐに夢人を見つめながら口を開く。

 

「御波殿の言うことは確かに正しい。グリーンハート様のことやこれから先のリーンボックスのことを思えば、古い慣習を脱して新しく生まれ変わるべきだとワシも理解しておる。おそらく、ミモザもワシがそう考えていると分かった上で1日の猶予を置いているのだろうからのぅ」

 

「だったら……」

 

「――しかし、ワシは気付くのが遅すぎたのです。今更、手のひらを返してリーンボックスを開国はすることはできないのです」

 

 頑なな態度を貫くイヴォワールを前にして、夢人は二の句が継げない。

 ただ悔しそうに表情を歪めて、目だけでイヴォワールに先を促す。

 すると、イヴォワールはまるで罪を告白する犯罪者のような顔で口を開く。

 

「ワシは協会の教えこそが絶対だと信じておりました。それが家族を、国を、グリーンハート様を守ることに繋がるのだと信じて――ですが、そのせいでワシは……」

 

 

*     *     *

 

 

「誰があんなブ男を助けるために下げたくない頭を下げなくちゃいけないのよ。そんなの私は絶対に嫌よ」

 

「そんなこと言わないでぇ、ゆっちゃんを助けるために力を貸してよ~!?」

 

「お断りよ。私は絶対にブ男を助けないわ」

 

 取りつく島もない様子のミモザに、ネプテューヌ達は困ってしまう。

 プルルートの頼みすら一蹴するミモザを、どう説き伏せようかと考えを巡らせていると……

 

「そもそも私は今日から2日間、あなた達を屋敷の外に出すつもりは一切ないわ。それでどうやってブ男を助けようと思っていたのよ?」

 

「え、それってガチの話だったの?」

 

 呆れたようにミモザが問いかければ、ネプテューヌがきょとんとした顔で首を傾げた。

 REDやピーシェも同じような反応をしている。

 その反応を見る限り、ミモザの話を真面目に聞いていなかったことが丸わかりだった。

 

「……あのね、この国に来る前にも私は言ったはずよ。絶対にリーンボックスの問題に関わるなって」

 

「で、でも、それじゃゆっくんさんが……」

 

「少しは落ち着きなさいよ。私はあくまで私がブ男を助けないって言っただけで、ブ男の安全は確実に保証されているわ」

 

「……へ? それってどう言う意味?」

 

 夢人のことが心配で頭がいっぱいいっぱいのコンパを宥めるように、ミモザは困ったように眉尻を下げて口を開く。

 だが、ネプテューヌ達はその言葉の意味を理解できない。

 思わず問い返してしまったREDが皆の気持ちを代弁している。

 

「あの協院長なら、確実にブ男を今夜のうちに国外に逃がしているはずよ。だから、あなた達は安心して屋敷に引きこもっていなさい」

 

「え、え、えっ? ちょっと真面目に何を言っているのか意味が分からないんだけど?」

 

「それなら、ブ男の安全は保証されてるってことだけを理解しておきなさい」

 

「そっか、なるほど――って、なるわけないじゃん!? それじゃ、肝心なところを何も話してくれてないじゃん!?」

 

 はぐらかそうとするミモザに、ネプテューヌ達の疑念を強まる一方だ。

 特にネプテューヌとREDは明らかにミモザの対応を不満に思っている。

 

「もー、ミモリンってば、ゆっくんのことをどう思っているの!!」

 

「ただの不快な男」

 

「そうでしょ、仲――って、こんな時にまでツンを見せなくてもいいんじゃないかな!? ほら、ここは流れ的にミモリンも本当はゆっくんのことをって……」

 

「反吐が出るわ」

 

「……うわぁ、夢人ってそこまで嫌われてたの?」

 

 真顔で即答するミモザを前にして、ネプテューヌとREDはドン引きしてしまう。

 当然、ミモザにではない。

 そこまで言われている夢人の嫌われ具合にである。

 

「どうしてそこまで夢人お兄ちゃんのことを嫌っているの?」

 

「ふん、そんなのあの男がどうしようもないレベルで駄目でくだらない男だからに決まっているでしょ」

 

「夢人お兄ちゃんは駄目でもくだらなくもない……!」

 

「それはあなたの主観でしょ? 私からしたら、そこらに転がっている小石の方がまともに見えるわ」

 

 自分が好意を向けている相手を馬鹿にされ、ロムはキッとミモザを睨みつけた。

 だが、ミモザは関係ないと言わんばかりに真っ直ぐロムを見つめ返す。

 

「ふ、2人とも落ち着いてくださいです!? ミモちゃんも真面目に答えてください!?」

 

「あら、私は正直に答えているつもりだけど?」

 

「それが通じていないから困っているのですぅ!? と、とりあえず、イボ爺さんがどうしてゆっくんさんを国外に逃がすって考えたのかを教えて欲しいです!?」

 

 ミモザとロムの仲裁に入ったコンパは既に涙目だった。

 今にも頭がパンクしてしまうくらいコンパは混乱しているのである。

 だから、コンパはミモザがはぐらかせないように具体的な質問を投げかける。

 

「今の協院長はリーンボックスの改革に肯定的な意見を持っているわ。だから、今ここで他国からもたらされた不穏の種を割るような真似は絶対にしない。そんなことをしたら、昔のリーンボックスに逆戻りだもの」

 

「え、えっと、色々と聞きたいことはあるけど――なんでミモリンはイボ爺さんのことをわざわざ協院長なんて他人行儀に呼んでるの?」

 

「そう言えばそうだよね。イヴォワールとミモリンって家族なんでしょ? だったら……」

 

「――家族? そんな笑えない冗談は2度と言わないでちょうだい」

 

 コンパの疑問に答えたミモザに、ネプテューヌとREDは不思議そうに尋ねた。

 言葉にしないだけでコンパやプルルート達も思っていたことである。

 すると、ミモザは忌々しそうに表情を歪めて冷たく吐き捨てる。

 

「あの男に家族を思う心なんて存在しないわ。身も心もグリーンハート様への信仰に捧げ、協院長なんて立場に固執するだけの男よ」

 

 昼間に見た悲しそうにミモザのことを話すイヴォワールの様子を知っているネプテューヌ達は絶句してしまう。

 少なくともネプテューヌ達にはイヴォワールがミモザの語るような人物と同一人物と思えない。

 

「それは何かの誤解なんじゃ……」

 

「誤解? そんなことありえないわ。あの男は協会の教えを守るためになら、平気で事実を闇に葬り去ることも家族を切り捨てることもできる男よ。なにせ……」

 

 意を決してコンパが口を開くが、ミモザは鼻で笑って否定した。

 そして、ここにはいないイヴォワールへと向けた怨嗟の声を続ける。

 

「自分の娘を――私のお母様を見捨てたのですもの」




という訳で、今回は以上!
一応、次話まででクーデターの理由を終わらせる予定です。
早く凹んでる彼女に焦点を当てないといけませんからね。
それでは、 次回 「信じられるわけがない」 をお楽しみに!
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