超次次元ゲイムネプテューヌ Re;夢のヒーローを目指して 作:ホタチ丸
前回からのシリアス継続モードです。
……この空気、もうちょっとだけ続くんじゃ。
それでは、 ありがとうと言われるわけがない はじまります
「ふざけんじゃないわよ!!」
――場所はラステイション、時は夢人達がシアン達の事情を聞いた日の翌日にまで遡る。
アイエフは座っていた椅子から腰を浮かび上がらせ、目の前の相手を威圧するように机を強く叩いた。
だが、目の前の相手――ガナッシュは貼り付けたようなにこやかな笑みのまま口を開く。
「私は別にふざけたことを言っているつもりはありませんよ。むしろ、アイエフさんのためを思って……」
「だったら、今すぐその口を閉じなさい。アンタのその不愉快な声を聞いているだけで虫唾が走るわ」
「おやおや、そのようなことを言われましても口を閉じてしまったら、仕事の説明を続けられませんので我慢してもらいたいのですが」
アイエフの罵倒をガナッシュは苦笑しながら受け流す。
だが、アイエフのガナッシュに対する敵意は消えない。
むしろ、睨む目の鋭さが増していく一方だ。
「何も難しいことないでしょ? ――御波夢人さんの剣と通信デバイスのデータを譲ってもらうように交渉していただくことなど、仲間であられるあなたには簡単ですよね?」
敵意の理由はガナッシュの依頼である。
車に乗せられてアヴニールの本社に連れて来られたアイエフは、ガナッシュからブレイブソードとNギアのデータを譲ってほしいと言われたのだ。
「そんなことは私じゃなくて、直接本人に交渉しなさいよ」
「ですから、その話をアイエフさんの口から彼にお伝えして頂きたいのですよ」
「お断りよ」
これ以上話しあっても時間の無駄だと判断したアイエフが席を立ち部屋から出ようとした。
シアンの話を聞く前までは夢人に話を取りつけたかもしれない。
しかし、黒い噂と目の前のガナッシュの胡散臭さにアイエフは嫌な予感を覚えたのである。
一刻も早くこの場を立ち去ろうとするアイエフの背中に、ガナッシュはにやりと口角を吊り上げながら告げる。
「もちろん、タダでとは言いませんよ。そうですね――ラステイションへの住人登録を申請する書類など、興味はありませんか?」
「っ!?」
投げかけられた言葉に反応し、アイエフはバッと慌ててガナッシュへと振り返った。
そこには既に白々しい笑みを浮かべたガナッシュがとある書類を机の上に出している。
「ご存じの通り、我が社はラステイションでも有数の大企業ですから色々と教会に融通が利くのですよ。例えば、この申請書類のように普通なら手に入らないものまで、ちょっと頼めばこちらに回してくれたり、ね」
「な、なん、で……えっ……」
得意げに説明するガナッシュの言葉を、アイエフはほとんど聞いていなかった。
……聞いていられるほどの余裕がなかったのである。
ガクガクと足が震え、今にも倒れそうなほどアイエフの顔は真っ青になっている。
(嘘……なんで、どうして……)
「おっと、これは失礼しました。アイエフさんは便宜上、冒険者を名乗られているのでしたね。いやはや、本当に申し訳ない」
「あっ……」
混乱しているアイエフに、ガナッシュは慇懃無礼な態度で謝罪を口にした。
そして、アイエフはようやく理解した。
――ガナッシュが自分の秘密を握っていることを。
「さて、依頼の話に戻りたのですが、アイエフさんはどう思いますか?」
「……わ、分かり、ました」
アイエフにガナッシュの提案を拒否する権利は既になかった。
恐怖で青くなった顔を俯かせ、アイエフは再びガナッシュの対面に座るしかなかったのである。
「そんなに硬くならなくてもいいのですよ。私共としましても、アイエフさんに無理強いするつもりはございませんから」
アイエフが態度を急変した理由を分かった上で、ガナッシュは敢えて煽るような言葉を選んだ。
その白々しさが余計にアイエフの逃げ道を塞いでいるのである。
どちらが上なのかを言外に告げている脅迫とも言えるだろう。
「ですが、この依頼を受けていただけるのであれば、この申請書類一式をアイエフさんに報酬としてお譲りしようと思っています」
「……っ、本当、ですか?」
「ええ、誓って嘘はないとお約束しましょう。なんでしたら、この場で誓約書を書いてもいいですよ」
報酬の話になり、アイエフは恐る恐る顔を上げてガナッシュの顔を伺った。
無駄ににこやかな胡散臭い笑顔だが、今の突然の事態に弱り切っているアイエフには救いを差し伸べている手のように見えてしまう。
(話すだけ……交渉の場をセッティングするだけなら……)
「――言い忘れていましたが、住人登録には申請書類の他にある程度地位のある後ろ盾からの推薦が必要なんですよね」
「っ、そん、な……!?」
傾きかけていたアイエフの心を、ガナッシュは敢えて絶望に叩き落とす。
承諾しようとしていただけに、アイエフは大きく目を見開かせてしまう。
そんなアイエフの反応を見て、ガナッシュは確かな手応えを感じた。
既にアイエフが自分の要求を飲むしかないと思い込むほど、周りが見えなくなっていることに気付いたのである。
「そうですね。もし、アイエフさんさえよろしければ、我が社の方から推薦と言う形で申請してさしあげても構いませんよ」
――だから、ガナッシュはアイエフに甘い言葉をかける。
「ですが、その場合は不確かな交渉の場ではなく、できれば現物を用意してもらえると嬉しいですね。我が社もタダで慈善事業をしているわけではございませんから」
――逃げ道を失くして誘導し、受け入れざるを得ない状況を作り出すために。
「剣と通信デバイスのデータ、ご用意していただけますよね?」
――秘密と言う爆弾と裏切りと言う罪悪感でアイエフの心をかき乱し、自分に向けられる不審な目を少しでも減らそうとしたシンのシナリオ通りに。
「……分かり、ました」
……結果、シンは自然と夢人達の間に溶け込むことに成功し、アイエフはガナッシュの要求を受け入れてしまうのであった。
* * *
アイエフの話が終わっても、夢人達は何も言えなかった。
すると、アイエフは自嘲的に笑いながら夢人に言う。
「分かったでしょ? 私はアンタ達のことを裏切っていたのよ。報酬に目が眩んで……我が身可愛さにアンタの剣をアヴニールに売ったのよ」
「アイエフ……」
「だから、さ……もうここで終わりにしましょう。私はもう2度とアンタ達の前に姿を現さない。だから、アンタも私のことを忘れてちょうだいよ。うん、それがお互いのため……」
「――アイエフっ!!」
「っ!?」
寂しそうな顔で立ち去ろうとするアイエフの両肩を夢人は強く掴んだ。
アイエフを逃がさないようにするためでもあり、泣きそうな顔を黙って見ていられなかったのである。
「勝手に決めつけるなよ!! 俺はまだ何も言ってないし、ネプテューヌやコンパ達のことはどうするつもりなんだよ!!」
「……答えなんて、聞くまでもないじゃない。ネプ子達にもアンタが上手いこと言ってくれれば、それでいいじゃないの」
「だったら、今すぐ俺の答えを聞かせてやる!! 俺はアイエフのことを……」
「――やめてよ!!」
強引に夢人の手を払いのけ、アイエフはバッと後ろへと距離を取る。
俯いたまま涙をこぼし、夢人のことを見ないようにしながら言葉を続ける。
「何も知らないくせに無責任なことを言おうとしないでよ!! アンタは裏切った私を恨めばいいのよ!! 嫌って忘れて放っておいてよ!!」
「何でそこまで自分のことを……」
「――そっか。アンタ、本当に何も知らないのよね」
頑ななアイエフの態度に、夢人は悔しそうに顔を歪めた。
すると、アイエフは泣きながら無理に笑おうとする。
頬から流れる涙を拭う素振りも見せず、アイエフは痛々しく口元を震わせながららんらんの方を見る。
「自分のことを冒険者だとかゲイムギョウ界に咲く一陣の風とか言ったけど、本当の私はそんな立派なものじゃないのよ」
(……それ、立派なのでしょうか? 凄く痛々しいだけのような気がするのですけど)
「風来坊を気取っているだけの根なし草……カッコつけているだけで、本当の私はそこにいるらんらんと同じなのよ」
(あっ、自覚あったんですね)
全力で空気になろうとしているデンゲキコはアイエフに心の中でツッコミを入れていた。
口に出さないのは余計な面倒事に巻き込まれたくないからである。
だが、そんなデンゲキコに協会内での自分の発言に後悔してしまう出来事が起こってしまう。
「らんらん、さんと同じ? どう言うことなんだ、デンゲキコ?」
「ヴェエエッ!? 何で私に聞くんですか!?」
「いや、だって説明してくれるって言ったじゃないか」
(――少し前の私のアホー!?)
敬称をつけるべきか悩みながら、夢人がデンゲキコにらんらんのことを尋ねてきたのである。
確かに、デンゲキコはらんらんのことを夢人に説明すると言ってしまっていた。
しかも、適当にお茶を濁したような説明をしようと思っていたのに状況が許してくれない。
真剣な顔で見つめてくる夢人に、嘘も誤魔化しもできないことを悟ったデンゲキコは数分前の自分を心の中で罵倒する。
(そんな直接本人に――って、そんなことできませんよねー!? これ以上しゃべらせることなんてできませんよねー!?)
どうにかこの状況を脱しようとフル回転を始めたデンゲキコの脳細胞であったが、すぐにエンストを起こしてストップしてしまう。
さすがに今の泣いているアイエフに聞けと言えないのである。
話の流れからアイエフの秘密を察しているデンゲキコは最後の抵抗とばかりに愛想笑いを浮かべながら口を開く。
「あ、あははは、ご説明をするのは吝かではありませんが、そちらのアイエフさんのプライバシーにも関わってしまう事柄でして……」
「――わよ」
「はい? えっと、今何と仰いましたか?」
「……だから、別に話しちゃってもいいわよ。もう隠すこともないことだしさ」
しかし、現実は非情であり、デンゲキコの運命は変わらない。
自分のことをこれ以上説明することが辛くなったアイエフから許可が下りてしまったのである。
アイエフは自分のことを気遣ってデンゲキコは言い辛そうにしているのだと思っているのだ。
その罪悪感を少しでも軽くできればと、アイエフは無理に笑ってデンゲキコに説明を頼む。
――だが、デンゲキコからして見れば、それは悪魔のほほ笑みである。
(うおおおおい!? もうこれどうなっているの!? どうして私こんなことに巻き込まれちゃってるの!?)
夢人達の視線を集めているデンゲキコは背中にびっしりと冷や汗を流しながら頭の中で狼狽していた。
嫌ですと拒否もできない状況がデンゲキコを追い詰める。
「(´・ω・`)らんらんのことも気にしないでいいよ」
(あなたのせいで事態がややこしくなっているんですってば!? あーもう、迂闊なフラグ発言をするんじゃなかった!?)
肩にポンと手を置くらんらんに少しだけ苛立ちを覚えながらも、デンゲキコは腹を括った。
開き直ったとも言える。
「えー、もう御波さんが聞きたい部分からお話ししちゃいますね。そもそも、らんらんと言うのは女神様への信仰を捨てた人間じゃない存在のことを言います」
「信仰を捨てた? 人間じゃない?」
「質問とかは後にしてくださいね。まあ、色々複雑な理由があって生まれた国を捨てなくちゃいけなくなった場合とかあるのですよ。国の環境とか、仕事のストレスとか、様々な理由から生まれた国を飛び出した人達が白い豚のお面を被って自分達を無害な豚だと言い出したのがらんらんの始まりです」
疑問を口にする夢人を無視して、デンゲキコは説明を優先する。
早く説明を終わらせて楽になりたい心の現れである。
「先程のアイエフさんのお話や協会での協院長の話のように、リーンボックスに限らず他国への移民は基本的に厳重な審査の元に行われます。ぶっちゃけますと、莫大な費用と教会へのコネを持っているお偉いさんとのコネクションが必要なんですよ。だから、らんらんは自分を豚だと蔑み、媚を売って偉い人に媚を売っているのです。そうすることが、結果的に新しい国での生活や早く自分の名前を取り戻せる機会を得ることに繋がりますからね」
まるで奴隷のようだと夢人は思った。
決断するのは自分だろうが、住み慣れた国を離れることは簡単にできることではない。
規模は異なるが、夢人だって自分の世界からゲイムギョウ界で生きることを決断することには躊躇いもあった。
葛藤の末、目の前のらんらんも国を離れなければならない理由があったのだと思い、夢人は辛そうに表情を曇らせる。
チラリと夢人が自分を見たのが分かり、らんらんはわざとらしく明るい声を出す。
「(´・ω・`)らんらんは豚だから難しいことは分からないよ」
「……まあ、こんな風に逆らいませんって意思表示をするのです。これがまた本当に移民を成功させたこともありましたから、余計にゲイムギョウ界中で広まってしまったのです。今では一種の通過儀礼やらニートの社会復帰制度のような役割も担っているのだから質が悪いですよ」
何でもかんでもらんらんと言うことを免罪符に重たい雰囲気を意に介さない様子の彼女に、デンゲキコはイラッとした。
できれば自分もそんな立ち位置に戻りたいと願うが、デンゲキコの思いが天に届くことはない。
自分でもそれが分かっており、らんらんに対する怒りをこめかみをぐりぐりと指で押すことで抑えながらデンゲキコは説明を続ける。
「これがらんらんの一般的な認識です。要するに、自分から国を捨てて豚になった人達ってことで理解してください。大雑把なところはそれでだいたいオッケーですから――ですが、アイエフさんの場合は違うんですよね?」
「っ……ええ、そうよ」
確認するように問いかけてくるデンゲキコの言葉に、アイエフの肩がビクッと大きく震えた。
その反応を見て、デンゲキコは違って欲しかったと思わずにいられない。
ここから先を話してしまえば、絶対に夢人が騒ぐことになるだろうと分かっているからだ。
(うわぁ、もうお腹いっぱいって言うか、今すぐ逃げたい。そうですよ、私はもう説明をし終えたのでお役御免のはず。このまま振り返らず明日の光に向かって猛ダッシュを……)
「気に、しないでいいわよ。お願い、コイツに最後まで話げ上げて」
(――だから、私を巻き込まないでくださいよぉぉぉ!?)
残念、デンゲキコは逃げ場を失った……などと言うテロップが頭の中で流れるほどにデンゲキコは自分の置かれている状況を嘆いた。
辛そうに笑みを浮かべようとして口元を引きつらせているアイエフに、デンゲキコはノーと答えられない。
「分かりました。では、最後までご説明させて頂きます――実はらんらんには2種類のパターンがあるのです。先程まで話したらんらんはまだ恵まれていますが、アイエフさんのようなパターンのらんらんは正直レベルが違います」
説明したくなさそうに歪めた顔が、話すことを辛そうにしているのだと勘違いされているデンゲキコはおそらく幸せ者だろう。
「両者の大きな違い――それは女神様への信仰を許されているかどうかです。後者、アイエフさんのタイプは女神様から見捨てられた存在だと言われているのです」
「……悪い、よく分からないんだけど」
「言葉通りの意味です。事実、教会からそう認定される者も少なくな……」
「――何なんだよ、それはっ!!」
「ひゅいっ!?」
いきなり大声を出す夢人に驚き、デンゲキコは変な声を漏らしてしまう。
分かっていたことでも心の準備はできていなかった模様である。
「アイエフはどうしてそんなことになっているんだよ!! そもそも女神が見捨てたってどう言うことだ!! 信仰を許さないとか意味が分からないだろう!!」
「わ、私に怒らないでくださいってば!? 私だってそこまで詳しいわけじゃないんですから!?」
1度火がついた怒りは収まらず、夢人は感情のままに叫んだ。
当然、対面にいて着火人でもあるデンゲキコは堪ったものではない。
そんな時、ナナハは今にもデンゲキコに詰め寄ろうとする夢人の肩を掴んで止める。
「落ち着いて、夢人。デンゲキコさんに怒っても仕方ないよ」
「だけど……」
「――本当にどうしたの? 今の夢人、全然らしくないよ」
「っ、ごめん」
食い下がろうとする夢人に、ナナハは違和感を覚えた。
夢人の様子がおかしいことを感じ取ったのである。
バツが悪そうに顔を俯ける夢人を見て、余計にナナハは不信感を強める。
「デンゲキコさんもすいません。話の続きをお願いできますから?」
「え、ええ。ですが、私の知っていることはもう全部話してしまったわけでして……」
「――だったら、続きは私が話すわ」
ナナハに先を促され、デンゲキコは内心で嫌だと思っていても断われない。
しかし、そんなデンゲキコにようやく救いの手が差し伸べられる。
「アイエフ、大丈夫なの?」
「大丈夫よ。これ以上、デンゲキコさんに迷惑をかけるわけにはいかないからね」
(だったら、最初から私を巻き込まないでくださいって!?)
自分の口から説明すると言いだすアイエフをナナハは心配する。
それも当然であり、アイエフの様子はまた泣き出してしまいそうなくらい弱々しいのだ。
だが、それでもアイエフは自分で説明したいと思ったのである。
それが今のアイエフにできる激情を露わにした夢人と内心で毒づいているデンゲキコに対するケジメだった。
「デンゲキコさんの話にもあった通り、私は女神様を信仰をすることを許されていないのよ。まあ、アンタには理解できないかもしれないけど、そう言う人達もゲイムギョウ界中には結構いたりするのよね」
「……何でなんだよ?」
「それは私達が居たら都合が悪いからよ。だから、教会は私達の存在を抹消するの。記録に残っていなければ、いなかったのと同じだから」
「だから、なんでアイエフはそんなことになっているんだよ?」
アイエフが軽い口調で説明しようとしているのは涙がこぼれてしまわないようにするためだった。
しかし、夢人にはそれが余計に痛々しく見えてしまう。
自分のことでもないのに何度も真剣に尋ねてくる夢人を見て、アイエフの胸は痛み出す。
ちゃんと答えてられない申し訳なさと少しの嬉しさを感じながら、アイエフは覚悟を決めて告げる。
「簡単な話よ。私の生まれた街は、もうゲイムギョウ界には存在していないの」
「えっ……」
「――正確には落ちちゃったのよ」
話の内容に理解が追いつかず、夢人は固まってしまった。
そんな夢人に構わず、アイエフは自嘲気味に笑いながら言葉を続ける。
「アンタもゲイムギョウ界が浮遊大陸だってことくらい知っているでしょ? だからね、別に崩れて落ちることは珍しいことじゃないのよ。でも、そんな場所に住んでいた人達が居たら、国の世間体と言うか女神様の顔に泥を塗っちゃうわけ」
「……もういい」
「ほら、自分の国もまともに管理できないのかって話に繋がるわけよ。だから、私達を異端者として追放するの。ご丁寧に女神様の加護を失った存在って烙印を押して……」
「もういい!! ――ごめん」
夢人は笑おうとしながら説明を続けるアイエフをもう見ていられなかった。
自虐を繰り返させてしまったことに謝罪し、アイエフの両肩を掴む。
「なんで、アンタが謝るのよ? 元はと言えば、私が……私が悪いのに……」
「アイエフは悪くないだろ。悪いのはアイエフの境遇を利用したアヴニールと――何も知らなかった俺の方だ。お前がそんなに悩んでいたのに俺は気付きもしなかった。それなのに頼ってばかりで……」
「謝ん、ないでよ……っ!」
辛そうに顔を歪めて謝る夢人を前にして、アイエフの涙腺は限界を迎える。
溢れだした涙は止まることなく頬を伝ってアイエフの顔を濡らす。
「黙ってたのは……私なの……ばれたら……もう一緒にいられないって……いちゃいけないって……」
「それは俺達のためにか?」
「だって……私がいたら……アンタ達まで……」
「馬鹿。俺達は仲間だろ。迷惑かけてもいいんだよ……って、かける側の俺が言っても説得力無いか」
最後はおどけたようになってしまったが、その言葉は紛れもなく夢人の本音だった。
それはアイエフにも伝わり、嬉しさやら情けなさなどの複雑に絡まった感情が極まって夢人の胸にストンと体を預けてしまう。
「――ありがとう」
ボソリと呟いた言葉はアイエフの背中を撫でる夢人にしか聞こえなかっただろう。
これが話を一向に聞かないで目の前からいなくなろうとしていたアイエフの答えだと分かり、夢人は安堵して口元を緩める。
同時に、燻ったまま残っていた決意にも炎が灯る。
「らんらん、悪いんだけど道案内はここまででいいよ」
「(´・ω・`)どうかしたの?」
理由を尋ねてくるらんらんに、夢人は迷いなく答える。
「ああ、まだリーンボックスを離れるわけにはいかなくなったからな。クーデターのことも含めて色々とベールに――いや、グリーンハートに聞かなくちゃいけないことができたからな」
* * *
……昨日の夜は本当に不覚だったわ。
まさかあんな風に絆されるなんて思わなかった。
まだ自分のことを全部許せたわけじゃないけど、夢人に話せて少し心が軽くなったような気がする。
泣きついちゃった手前、このままオサラバする決意も鈍っちゃったのね。
本当、自分の優柔不断さが恨めしいわ。
でも、まだアイツらと一緒にいてもいいかもって期待している私はもっと馬鹿な女なんだと思う。
結局、私は居心地のよかったアイツらの傍を離れたくなくて駄々をこねていただけなのよね。
「……アイエフさん、そろそろ現実逃避はやめにしませんか?」
隣にいるデンゲキコさんが凄く憂鬱そうな顔で私の肩を叩いてきた。
言われなくても、私自身現実逃避をしていた自覚はある。
協会の窓からこっそり中を覗き見ながら、私達は後悔していた。
そもそも私達は夢人がグリーンハート様に会うなんて言いだした時に止めればよかったんだ。
クーデターのことで納得できなかった所があったのはもちろんだけど、多分夢人は私のこともあって協会に再び足を運んだのだと思う。
自惚れではなく、昨日私自身が夢人はそう言う男なんだって理解させられてしまったから分かる。
夢人はただのお人好しの馬鹿じゃない。
「御波ユメ子でーす! グリーンハート様に会いたくて来ちゃいました!」
――アイツは変態の大馬鹿野郎だった。
メイド服を着て正面から堂々と協会に入っていったのである。
いったい何を考えているのよ!?
と言う訳で、今回は以上!
アイエフの事情もリンクした上での次回は久しぶりのベールです。
おかしい、前章のノワールに比べて彼女の出番が少ないような……
それでは、 次回 「女神化できないわけがない」 をお楽しみに!