超次次元ゲイムネプテューヌ Re;夢のヒーローを目指して 作:ホタチ丸
随分と遅くなってしまい、申し訳ありませんでした!
ちょっと先月末に手首を捻ったらしく、手のひら全体に違和感が……
それもようやく治まったので投稿再開です!
それでは、 女神化できないわけがない はじまります
「ムッ、何やら上が騒がしいような気がするな」
リーンボックスの地下に建設された牢屋。
その1室でMAGES.が眉をひそめながら不吉なことを呟くと、同じ牢屋にいる鉄拳はうんざりしたような顔をする。
「もー、またですか? それ、毎日言ってますけど、飽きないんですか?」
「別に私はキャラ付けのためにこんなことを言ってるわけではないのだが……」
クマと共に牢屋に入れられた日から毎日、鉄拳はMAGES.の予感めいた発言を聞いている。
いい加減、いちいち反応することも馬鹿らしく思っていたのである。
「こう、ゴーストが囁く的な感じで私の頭にピンと来るんだ。今日、これから何かが起こるとな」
「はいはい、本当に起こるといいですね」
反応がいまいちな鉄拳に、MAGES.はにやりと口角を吊り上げて自分の雰囲気に巻き込もうとした。
しかし、出会った当初ならともかく、今ではすっかりMAGES.の扱いにも慣れてしまった鉄拳の対応は適当なものである。
「むー、では、コンベルサシオンは……」
「知らん。と言うよりも、私を巻き込もうとするな」
「そう釣れないことを言うな。同じ牢の中で飯を食った仲ではないか」
「それを言うなら、同じ釜の飯を食った仲だろうが」
鉄拳が相手をしてくれないので、MAGES.は標的を同じ牢の中にいるもう1人の人物――コンベルサシオンへと変更した。
この場にいるメンバーに取り繕う気がないらしいコンベルサシオンはぶっきら棒な言葉遣いでMAGES.に答える。
どうにかして自分のペースに巻き込みたいMAGES.であったが、そもそも仲良くする気もないコンベルサシオンが相手では無理だろう。
「まったく、少しくらい話に付き合ってくれてもよいではないか」
誰も話相手になってくれない現状に、MAGES.は唇を尖らせて愚痴をこぼす。
そもそも、MAGES.のこの発言は牢屋生活が退屈でつまらないから出てきたである。
食事や寝床の心配をしないで済むが、娯楽も何もない牢屋生活はストレスが溜まってしまう。
最初のうちは趣味の構想を考えていたのだが、それも限界が来てしまっていた。
だから、MAGES.は鉄拳やコンベルサシオン……暇を紛らわすためなら向かい側の牢屋にいる兄弟にさえ声をかけるつもりである。
そして、会話からさらなる構想を練りだすヒントも得られるのではないかと打算的な思惑もある。
「仕方ない、おいそっちの2人――うん?」
渋々兄弟へと声をかけようとしたMAGES.だったが、聞こえてきた足音に顔をしかめる。
既に朝食を終え、余程のことがない限り誰も牢屋に近づかないはずである。
「えっ、まさか本当に何かあったんでしょうか?」
「だろうな。まあ、まぐれ当たりだろうがな」
「……2人とも、さすがに失礼ではないか?」
驚いた様子で目を瞬かせる鉄拳と興味を引かれて牢屋の入り口の方を見つめるコンベルサシオンの言葉のナイフがMAGES.を貫く。
信じてもらえていないだろうと思ってはいたが、直接言われる破壊力は想像よりも大きかったのである。
「おい、さっさと歩け! まったく、無駄な手間をかけさせやがって」
「イタタタッ!? そんなに捻らなくても逃げませんって!?」
「うるさい! さっさと牢に戻ってろ!」
響いてきた声はどちらも聞き覚えがあった。
片方は何度か牢屋に食事を届けに来てくれた協会職員のもの。
そして、もう片方は……
「夢人さん、ですよね?」
「ああ、そうだな」
聞こえてきた会話と声に、MAGES.とコンベルサシオンは一気に興味を失くした。
戸惑っている鉄拳も別段驚くことでもないので落ち着いている。
「逃げたって聞こえたけど、彼って意外と行動力あったんだね」
「ふっ、人を見かけで判断するのは3流だぞ、弟よ。我ら兄弟、ゲイムギョウ界中の巨乳を守るためにも常に1流の心構えを身につけておかねばならんのだ。分かったな?」
「……ああ、僕が間違っていたよ、兄さん。人を見かけで判断する3流じゃ、愛する巨乳を守ることなんて夢のまた夢になってしまうからね」
(いちいち胸のことを言わなければ気が済まんのか、あの馬鹿兄弟は)
胸に関することを除けば、至極真っ当な弟を兄を窘める構図になったであろう。
口に出さない代わり、コンベルサシオンは兄弟を呆れた目で見る。
「でも、デンゲキコさんの声は聞こえませんし、いったい何があったんでしょうね?」
「さあな。詳しくは直接聞けばい……い?」
首を傾げるデンゲキコの問いに答えようとした途中、MAGES.は我が目を疑ってしまった。
パチパチと何度も瞬きを繰り返しても見えてくる光景は全て同じ。
それは言葉にしていないだけで、鉄拳達もMAGES.と同じ気持ちである。
――何故なら、職員に連行されてきた夢人が似合わないメイド服を着ていたからである。
昨日牢屋で会った時は普通に男性ものであった夢人がメイド服で帰ってきた現実を直視できず、MAGES.達が逃避してしまうのも無理はないだろう。
「――うぷっ!?」
その現実をいち早く認識できたのは、何を隠そう人を見た目で判断するなと言った兄であった。
兄は途端に顔色を青から紫色へと変え、即座に牢屋の一画に備え付けてあるトイレへと駆け込む。
「ちょっ、兄さん!? さっき人を見かけで判断しちゃ駄目だって言ったよね!?」
「……ああ、確かに私はそう言った。だが、何事にも例外と言うものがあってだな――うぷっ、私は巨乳メイドしか認めんのだよ」
(何だか逆に尊敬できてしまいそうになるな)
次に正気に戻った弟は兄の行動に慌ててしまった。
すると、兄は吐き気を我慢しながらも自らの信念を堂々と宣言する。
こんな時でも巨乳を絡めてくる兄に、コンベルサシオンは呆れながらも感心してしまう。
だからと言って、その主張を受け入れられるかどうかは別問題ではあるのだが……
「さっさと入れ!」
「分かってま――うわっ!?」
MAGES.達が絶句している間に、職員は牢屋の中に夢人を叩きこむ。
あまりにも乱暴なやり方であったため、勢いのあまり夢人は前のめりに倒れてしまう。
「うっ、ええい、今度こそ大人しくしていろよ!?」
めくり上がったスカートから夢人のパンツが見えてしまい、職員は気持ち悪そうに顔をしかめた。
因みに、着用しているパンツはちゃんと男性用である。
スタスタと早歩きで去っていく職員の背中が見えなくなったのを見計らい、MAGES.はにっこりと笑いながら夢人へと声をかける。
「昨晩はお楽しみでしたね」
「――違うから!?」
スカートを直しながら顔を真っ赤にして否定する夢人に説得力はなかったのであった。
* * *
「くっ、まさかミモリンがこんな手段に出るなんて!?」
「アタシ達を解放しろー!?」
ネプテューヌとREDは声を張り上げていた。
仲良く背中合わせで胴を縄で縛られており、2人は満足に動くことすら困難な状態になっているのである。
「ってか、コンパはどうして助けてくれないの!? わたし達、仲間じゃなかったの!?」
「でも、ミモちゃんが絶対にねぷねぷ達を自由にするなって言ってたですし……」
「だったら、プルルートは!?」
「今の2人、とぉってもかわいいよ~」
『何その感想!?』
同じ部屋にいるコンパとプルルートに助けを求めても無駄だった。
コンパは困ったように眉根を下げて申し訳なさそうにしており、プルルートに至っては満面の笑みを浮かべている。
――実はこの状態に至った理由は、アイエフにある。
昨晩、屋敷を飛び出したアイエフを急いで追いかけようとしたネプテューヌ達をミモザは絶対に外へと出さなかった。
アイエフが飛び出した後、食堂の外で待機していた屋敷の使用人によりネプテューヌとREDは即座に縄でぐるぐる巻きにされてしまったのである。
ミモザは最初から力づくで大人しくさせる気満々だったらしい。
他のメンバーにも暴れたら同じことをすると言い、ミモザはネプテューヌ達の前から立ち去ってしまった。
残されたシンを除くコンパ達と縛られたネプテューヌとREDは同じ部屋に入れられた。
さすがに男性であるシンを同室にはしなかったようである。
だから、ネプテューヌ達はアイエフを追うこともできず、悶々とした気持ちを抱いたまま朝を迎えてしまったのであった。
「くっ、こうなったら――やるよ、ネプテューヌ!!」
「ほいきた、REDちゃん!!」
助けが期待できないことが分かり、REDとネプテューヌは互いに声を出してタイミングを合わせて立ち上がろうとする。
だが、お互いに背中合わせであり、腕も縄で動かせない状態では……
『いっせーのせ――だあっ!?』
上手く起き上がることすらできず、再び倒れてしまうのも当然であった。
「ちょっと重いから早く退いてよ!?」
「無茶言わないでよ!? わたしだって動けないんだから!? と言うより、重いって酷くない!?」
下敷きにされたREDがネプテューヌへと訴えるが、ジタバタと動くだけで状況は一向に変わらない。
2人で反動をつければよいのだろうが、自分の体の上で暴れるネプテューヌに潰されているREDは痛みのあまり床にへばりついているように動けないのである。
「重いのは重いんだから仕方ないでしょ!? ってか、この間夜にプリン食べたから太ったんじゃないの!?」
「ねぷっ!? なんでそのことを……って、REDちゃんだってわたしのプリンを食べたじゃん!? ゴミ箱にわたしのが捨ててあったもん!? アレを食べたのはREDちゃんでしょ!?」
「はあー!? アタシ、そんなことしてないよ!? 自分で食べたのを忘れただけじゃないの!? アタシのせいにしないでよ!?」
不用意なREDの発言により、会話はいつの間にか脱線してしまった。
危機的状況に陥ると、人は協力し合うか、お互いに醜く争うかの2通りの状況になると言われている。
ネプテューヌとREDの場合は後者であったようだ。
「……プリンって、ぴいちゃんが食べてなかった?」
「そうだっけ?」
言い争っている2人に聞こえないように、ロムがピーシェへと小声で話しかけた。
因みに本人は忘れているようだが、実際にネプテューヌのプリンを食べたピーシェである。
つまり、2人の争いは不毛としか言えないくだらない喧嘩であった。
「何もプリン1つでそんなに騒がなくても、わたしのでよければ何時でも作って食べさせてあげられるんですけど……」
「分かってない! 分かってないよ、コンパは!!」
「ちょっ、暴れな――ぐえっ!?」
困った顔でため息をつくコンパに、ネプテューヌはクワッと目を見開かせて怒鳴った。
その際に上半身を起こそうとして反動をつけた結果、床にREDがうつ伏せの体勢で床に叩きつけられると言う悲劇が起こっていた。
しかし、苦しそうな声を出すREDに構わず、ネプテューヌは必死に首を起こしてコンパの方を向く。
「プリンに同じ物は1つもないんだよ!! 同じような工程で作るプリンでも味が一緒とは限らないのが分からないの!! プリンは生き物と一緒なんだよ!! 食べられちゃったプリンはもう2度と……もう2度と戻ってこないんだよ!!」
「……それって、当たり前なんじゃないかな~?」
瞳に光る粒すら浮かばせて熱弁するネプテューヌであったが、その内容は実にくだらないものだった。
ツッコミを入れるプルルートの声にも力がない。
すると、ネプテューヌは眉間にしわを寄せて口を開く。
「当たり前だけど大事なことなんだよ!! 1個のプリンを笑う者は、1個のプリンに泣くってことわざを知らないの!! こんな簡単なことも理解できないなんて、いくらぷるるんと言ってもプリン界のカリスマであるこのわたしが許さな……」
「――だああああもおおおおおお!? うるさあああああい!?」
「ねぷっ!?」
遂にネプテューヌの重さと大声に耐えきれなくなったREDが体を勢いよく回転させた。
勢いのままゴロンと転がったことで今度は上がRED、下がネプテューヌと位置が逆転してしまう。
「ふぅ、これでやった落ち付けるよ。まったくもー、いくらネプテューヌがアタシのヨメだからって、さすがのREDちゃんも腹上死は勘弁だよ」
「それ、意味違うから!? ってか、今度はわたしがREDちゃんに腹上死させられそうになっているんですけど!?」
大きく息を吐いて余裕を見せるREDとは対照的に、ネプテューヌは苦しそうに叫んでいた。
見事に先程までのやり取りが逆転してしまっている。
そんな2人を見て、コンパはため息をつく。
「はあ、2人とも遊んでいるのはいいですけど、あいちゃんのことはどうするんですか?」
「ハッ!? 忘れてた!?」
「アタシ達が言い争っている場合じゃなかったんだ!?」
正に鶴の一声とでも言うべきコンパの問いかけに、ネプテューヌとREDはようやくアイエフのことを思い出せた。
だが、2人は何故か責めるような目でコンパを見つめだす。
「もー、どうしてもっと早く言ってくれなかったのさ!!」
「そーだよ!! 黙っているなんて酷いよ!!」
「なんでそうなるんですか!? わたし、悪くないですよね!?」
理不尽な怒りをぶつけられ、コンパは大いに戸惑ってしまう。
客観的に見ても、コンパに悪いところはどこもない。
すると、ネプテューヌとREDは悔しそうに顔を歪めて呟く。
「くっ、やっぱりわたし達のパーティーにはツッコミ役のあいちゃんがいないと駄目なんだ!!」
「アタシとネプテューヌのボケに素早くツッコミを入れてくれるあいちゃんの大切さが今になって分かるなんて!!」
……アイエフはネプテューヌ達の元に戻らない方が幸せかもしれない。
ネプテューヌとREDの言うアイエフの役割に、コンパとロムは割と本気で呆れてしまっている。
「ねぷねぷもREDちゃんも、あいちゃんは2人のツッコミ役じゃないんですよ!!」
「アイエフさんがかわいそう(ジト目)」
『うっ!?』
コンパとロムに非難の目を向けられ、ネプテューヌとREDは気まずそうに呻いた。
当然、2人も本気で言っていたわけではない。
ノリと勢いで口から出てしまった言葉なのである。
「まぁまぁ、2人も落ち着いてぇ。今はねぷちゃんやREDちゃんよりも、あいちゃんやゆっちゃんをどうするか考えるのが先じゃないかな~?」
「そうですね。でも、屋敷からどうやって抜け出せばいいんでしょうか?」
「……外、人がいっぱい(見つかっちゃう)」
ネプテューヌ達を無視して、プルルートがこれからどうするのかを話題に上げた。
しかし、コンパもロムもどうすればいいのか分からない。
部屋の外にはネプテューヌ達が抜け出しても、すぐに見つかってしまう程の使用人達で溢れているのだ。
仮に部屋から抜け出せても、屋敷の外に出るのは困難である。
「ちょっ、ピー子!? その手に持ったペンで何する気なの!?」
「うんとね、ねぷてぬとREDのかおでおえかきしていいってぷるるとがいってたよ?」
「なんてことを許可しているの、ぷるるん!?」
「だって~、2人ともふざけ過ぎだもん。すこぉしお仕置きが必要かなぁ~って思ってぇ」
「って、ぷるるんもお絵描きする気満々じゃ――や、やめてええええええ!?」
「……本当にこれからどうしたらいんだろう」
「……2人の無事を信じましょう」
敢えてプルルートとピーシェによるネプテューヌとREDへのお仕置きを見ないようにして、ロムとコンパは隠しきれない不安な気持ちを吐露するのであった。
* * *
初めて歩く階段をゆっくりと下っていく。
自分の家と言っても差支えない協会の中でも、地下の牢屋に出向くなんて経験は初めて。
少し薄暗い廊下を歩くと、奥の方から声が聞こえてくる。
「ほう、何が誤解なのかを説明してはくれないか? なに、時間などここにいる限りあり余っているのだからな」
「そ、それはその……上手く説明はできないんだけど、この服装にはちゃんとした意味があるんだって」
「その似合わないメイド服を着ている意味を教えて欲しいのだよ」
聞こえてきた話の内容に思わず息を潜めた。
足音を立てないようにそろりそろりと奥へと向かっていく。
「え、えっと、ここではちょっと話せないこともあるから……」
「ならば、私は貴様が好き好んで女装をする変態と認識を改めなければならなくなるのだが、それでも構わんよな?」
「いっ!? それは絶対にないから!?」
はっきりと声が聞こえるようになったことで、ようやく確信を持つことができた。
わたくしはこの声の主を知っていると。
「だったら、ちゃんと説明してくれ! こっちはずっとこんな薄暗い所に閉じ込められたままで暇なんだ! 鉄拳もコンちゃんも何も答えてくれない空間はもううんざりなんだ!」
「誰がコンちゃんだ、誰が!!」
「……そうなのか?」
「……はい、基本的に眠って過ごすしかありませんから」
上で騒がれていた話も馬鹿にできませんが、わたくしも随分と短絡的な行動に出たものだと思ってしまう。
なにせ、わたくしは“メイド服姿の変態がグリーンハート様を訪ねてきた”と言う話を聞いて、わざわざ来たこともない牢屋に足を運んだのだから。
ある種の予感と共に動いたのはいいけど、本当に思っていた人物がいる可能性はかなり低かっただろう。
でも、今はそんな自分の予感に感謝しよう。
「――随分と賑やかなのですわね」
『っ!?』
わざと声を出して、わたくしは堂々と廊下を歩きだす。
先程まで騒いでいたのが嘘のように牢屋の中にいる皆さんは緊張した様子を見せた。
「お、おおうっ!? なんて……なんて素敵なレディなんだ!? くっ、ここまで自らの語彙の少なさを痛感する日がくるなんて!?」
「僕も同じ気持ちだよ……! ああ、正に天女だ!! 湧き上がるこの衝動を抑えられそうにないよ!!」
……何故だか興奮した様子でわたくしを見つめてくる2人の男性がいましたが、その視線にどこか含むものを感じる。
褒められて嬉しくはあるのだが、素直に喜べないような微妙な気分に陥ってしまったのだ。
そのせいもあり、わたくしは敢えて2人を無視することにした。
2人の前を通り過ぎ、わたくしを待っていたであろう人物に声をかける。
「やはり、あなたでしたわね。ご無事なようでよかったですわ」
「……あ、あははは、その節はどうも」
「あら、巻き込んでしまったのはわたくし達ですもの。あなたが気にする必要はありませんわ」
気まずそうに頬を掻くメイド服姿の変態に、わたくしは苦笑した。
実際に後から考えたことではあるが、あの時のわたくしは冷静さを欠いていた。
守護女神戦争のことなんてあまり気にしていなかったのに、ネプテューヌを倒すことを優先していたなんて馬鹿な行動だったと自分を恥じている。
だが、今は再び会えたことを……いや、彼が生きていたことを喜ぼう。
「あの時は聞けませんでしたが、あなたのお名前を聞かせてくださいますか? それと、わざわざそのような格好をしてまでわたくしを訪ねてきた理由も」
* * *
……作戦の第1段階は成功したも同然だった。
この世界のベールに会うために、俺達は協会に戻る必要があった。
しかし、正面から戻ったところでイヴォワールさんに追い返されるか、職員に捕まってしまうのが落ちである。
そこで俺は多少分の悪い賭けになるが、メイド服に女装してわざと捕まると言う方法に出たわけだ。
ラステイションで会ったノワールの反応から、空から落ちてきた俺の存在を女神達が忘れていると言うことはないと判断したのである。
自分の興味に対するフットワークの軽いベールなら、これで会えるかも……って、あくまで元の世界のベールを基準に考えた結果の元に行動に移したのだ。
結果的にベールとコンタクトも取れ、これから話を聞くつもりなんだが……
「――なんで、お前らが普通にいるんだよ!?」
牢屋からベールの私室へと移動した俺を待っていたのはソファーに座っていたナナハとアイエフ、デンゲキコにらんらんだった。
外で待機しているはずの4人が全員普通に協会内に……しかも、ベールの部屋にいたのである。
「え、えっと、あのね夢人……ちょっと言い辛いんだけど……」
「普通にらんらんが裏口から案内してくれたわよ」
「(´・ω・`)ふっ、楽勝だったぜ」
「――そんなことができるなら最初に言えよ!?」
困ったようにしているナナハの横に座っていたアイエフが目を閉じたまま俺の疑問に答える。
俺の行動にかなり呆れているようだ。
自覚がある分、言葉のナイフが鋭く突き刺さってくる。
「まあまあ、御波さんも落ち着いてくださいよ。今はそんな些細なことよりもここに来た目的を果たす方が先じゃありませんか?」
「お、おう」
苦笑しながら俺を宥めてくるデンゲキコに、微妙な違和感を覚える。
それが何かまでは分からないけど、言っていることは正しいので俺はベールへと視線を移す。
そこにはベールがニコニコとしながら俺達を見ていた。
「……えっと、どうかしましたか?」
「いえ、別に何でもありませんわ。ただ、そんな恰好をしてまでわたくしに会いに来てくれたのがおかしくて、つい」
「そこには触れないでください!? お願いします!?」
気まずさを感じて尋ねると、ベールはより一層笑みを深めながら俺の格好を指摘してきた。
自分の短絡的な行動に恥ずかしくなり、頬が熱くなってくる。
全力で頭を下げてベールにお願いすることしか現状が辛い。
「ふふっ、分かりましたわ。では、そちらも楽に話してくださいな」
「わ、分かった。今日ここに来たのはベー――じゃなかった、グリーンハート様に聞きたいことが……」
「ベールで構いませんわ」
「……ベールに聞きたいことがあるんだ」
横でアイエフがぎろりと睨んできたので、慌ててベールの名前を言い直そうとした。
しかし、即座にベールからお許しが出たのでそう呼ばせてもらうことにする。
そして、俺は不躾であるがここに来た目的を切り出す。
「――ベールなら、ミモザがクーデターを起こさなくてもリーンボックスを開国させることができるんじゃないのか?」
ここに来た最大の目的は、クーデターを止めるためにベールの力を借りることだ。
ミモザもイヴォワールさんもそれぞれの立場のせいで対立せざるを得ない状況だが、とある共通点が存在している。
それがベールへの信仰心だ。
実際、俺はラステイションにいた時にミモザが自国の女神に対する信仰の強さを垣間見た。
昨日の話を聞く限り、イヴォワールさんもベールへの信仰心は強い。
ならば、ベールが開国を宣言すれば、ミモザがクーデターを起こす必要もなくなってくるのではないかと考えたのである。
「そうですわね……YesかNoかでお答えするのならば、Yesですわ」
「なら……」
「ですが、既にクーデターはわたくしが止められる段階ではなくなっていますわ」
ベールの答えに希望を抱いたが、すぐに絶望へと代わってしまう。
悲しそうに目を伏せながら、ベールは話を続ける。
「火がついてしまった導火線を止める方法はないのです。今のわたくしにはこのクーデターが良き終わりを迎えることを祈ることしかできませんわ」
「……どうしても、なのか?」
諦めきれずに問いかける俺の声は震えてしまっていた。
ベールの答えは半ば覚悟していたようなものであった。
ミモザもイヴォワールさんも、こんな大きなことをリーンボックスの女神であるベールに隠れてできるわけがない。
つまり、ベールはこのクーデターを黙認していたのである。
「そう問われてしまうと困ってしまいますわね。わたくしも本当ならこんなことで彼女達を苦しませたくはありませんもの――ですが、今のわたくしが女神としてできることは何ひとつありませんわ。何故なら……」
わずかでも希望に縋りつこうとする俺の問いかけに、ベールは儚い微笑を浮かべた。
その表情はまるで全てを諦めきっているかのように、俺の目に映る。
「――女神化ができなくなってしまったわたくしが女神として意見を言い出せるわけがありませんから」
と言う訳で、今回はここまで!
個人的に次回からはこの章で1番書きたかった部分でもあるため、早く投稿できたらと思っております。
それでは、 次回 「俺が縛られているわけがない」 をお楽しみに!