超次次元ゲイムネプテューヌ Re;夢のヒーローを目指して 作:ホタチ丸
ようやくPS4を手に入れたので、やっとVⅡを楽しんでおります。
まあ、まだ零次元編でゆっくりプレイしてますけどね。
それでは、 new女神通信(ベール編) はじまります
皆様、ごきげんよう。
リーンボックス発の人気番組【べるべるたいむ】が全国版になって放送開始ですわ。
司会はもちろんこのわたくし、リーンボックスの女神グリーンハート様と似ていると噂の1流ゲーマー、べるべるがお届けします。
さて、本日挑戦するソフトはと言うと……って、夢人さんはどうしてそんなに微妙な顔をしているのですか?
――2番煎じ……ですって!?
既に夢人さんの世界のネプテューヌが似たようなことをしていらしたなんて!?
ネプテューヌ……恐ろしい子!?
あっ、こう言うこともですか。
しかし、それではいったい何をしゃべればいいのか困ってしまいますわ。
せっかくこうして印象が薄かったわたくしの名誉を挽回するために色々と考えてきましたのに。
でしたら、今後の活躍でネプテューヌ達よりもわたくしの方が素晴らしい女神だと言うことを証明するとしましょう。
では、改めまして今回のお話はわたくしが夢人さん達と出会う少し前から始まります。
最後までお付き合いしてくれますよう、よろしくお願いしますわ。
それでは、 new女神通信 ベール編 始まりますわ。
* * *
「――あ、あれ……わたくし、寝てしまっていたのですか?」
とあるイベントの帰り道、わたくしは気が付けばベンチで眠ってしまっていたらしい。
しかし、その前後の記憶は曖昧になってしまっている。
ベンチに座る前と立ち上がろうとした記憶はあるのだが……
「って、もうこんな時間じゃありませんか!? 早く帰りませんと!?」
時計を確認すると、既に夜も遅い時間になってしまっていた。
慌てて戦利品の数々が納められた袋を手に、わたくしは協会へと急ぐ。
何故なら、もうすぐギルメンと約束していたクエストの開始時刻なのだから。
今からPCを立ち上げて接続するまでかかる時間を計算しながら、わたくしは協会へと忍び込む算段を考える。
ここで素直に正面玄関から入ってしまえば、厄介な説教――ではなく、わたくしを心配しているだろうイヴォワールに発見されてしまう。
今日の買い物はあくまでお忍びのものだ。
見つかってしまえば、いつものように女神としての自覚を……なんて、無駄に長い話を聞かされてしまうだろう。
だから、わたくしが無事にミッションを完遂させるためのルートは1つだけ。
「誰もいませんわよね?」
協会の裏手、わたくしは誰もいないことを確認して上を見上げる。
侵入経路はわたくしの部屋の近くの物置小屋の窓からだ。
先日、色々と物が増えてきたために私用で勝手に部屋をリフォームして物置部屋へと変えたのである。
女神であるわたくしの私物が置いてある部屋ということで、一般の職員は誰もいないはず。
しかも、出掛ける前に窓の鍵も開けておいたので条件は全てクリアできている。
後は女神化して忍び込むだけだ。
「誰にも気付かれませんように……っ!」
いつもより光らないで下さいと祈りながら、わたくしは女神化をしようとした。
こんなことで女神化するのは正直自分でも情けないと思う。
しかし、イヴォワールの話を聞いていたら、クエストが始まってしまうのは確実だ。
わたくしを信じて待つ人達を助けるために仕方なく女神化するのだと、もしも見つかってしまった時の言い訳を考えておく。
――だが、わたくしのそんな心配は杞憂に終わってしまう。
何故なら、いくら女神化しようとしてもわたくしの体には何の変化も起こらないのだ。
「ど、どうして!? もう1度……っ!?」
肉体の変化やプロセッサユニットの構築、いつもならわたくしの体を包み込む光の柱すら発生しない。
今まで経験したことのない恐怖がわたくしを襲った。
焦ってもう1度女神化を試みるが、結果は変わらない。
「女神化……できない!?」
立ち尽くしていたわたくしはやがて膝をつき、呆然と自分が女神としての力を失ってしまっていることに気付いた。
いったい自分の体に何が起こっているのか分からない。
しかし、仮説なら立てることができた。
――わたくしが国民の皆さんから見放されてしまったのではないかという恐ろしい仮説が。
* * *
「――というわけですので、申し訳ありませんが女神化できないわたくしはあなた達に協力することができないのです」
忍び込んできてまでクーデターを止めようとしてくれている夢人さん達に、わたくしは正直に答えた。
それがミモザとイヴォワール、ひいてはこの国のために動こうとしてくれている夢人さん達へのせめてもの礼儀だと思うから。
「あの、私も聞いていいかな?」
「はい、えっと……ナナハさんでよかったですよね?」
「っ、う、うん」
短い金髪の髪に黄緑色のヘアピンを十字に添えている少女、ナナハさんはわたくしが名前を呼ぶと傷ついたような表情をした。
どうしてそんな顔をするのだろうと思ってしまう。
直接の面識はなかったが、彼女のことはイヴォワールから何度も聞いている。
わたくしが異世界から来たと言うネプテューヌの話をすんなりと受け入れられたのも彼女の存在があったからだ。
「ベール……さんはどうして自分が見放されたって思ったの?」
わたくしのことを呼び辛そうにするナナハさんの気持ちは分からないけど、その質問には簡単に答えられる。
「このクーデターの発端、つまりリーンボックスが他国との交わりを可能な限り排していたことは既にご存知ですよね?」
「うん、そのせいでミモザのお母さんが駆け落ちしちゃったって」
「――実はそのことを提案したのがわたくしなのです」
場の空気が凍りついたように静かになった。
夢人さん達は驚愕しているようだが、わたくしの言葉は紛れもない事実なのである。
「今から随分と昔のことです。いつまでも決着のつかない守護女神戦争に疲れていたわたくしは、次第に国民の心が他国の女神に奪われてしまうのではないかと不安になってしまったのです」
当時のリーンボックスは今と比べても酷い有り様でした。
人の心が荒んでいたといたと言えばいいのかわかりませんが、それこそ人間同士の戦争が起こるのではないかと心配するほどに他国に対しての敵意が高かったのです。
その背景には長期化した守護女神戦争のこともありましたが、他にも原因不明の地盤崩落の恐怖もあったのだと思います。
ですから、国民の皆さんがわたくしに1番求めていたのは安心して暮らせる国作りでした。
しかし、自分の無力さを呪うしかありませんでしたが、簡単に安心を与えられる力はわたくしにありませんでした。
だから、当時のわたくしは女神としての禁じ手を使わざるを得ませんでした。
「わたくしは考えました。どうすれば国民の皆さんから変わらぬ信仰を得られるのかを……そして行き着いた答えが他国の文化を徹底的に規制し、リーンボックスをゲイムギョウ界でも独立した国家として確立することでした」
「……つまり、信仰する対象を自分だけに限定したってこと?」
「ええ、わたくしは自分勝手な願いのために国民の皆さんから自由を奪ったのです」
非難するような、それでいてどこか悲しそうな視線を向けてくるナナハさんの言葉を、わたくしは否定しない。
ミモザがクーデターを起こす原因となっているリーンボックスのあり方を確立させてしまったのは、間違いなく自分なのだから。
このクーデターで1番悪いのは誰だと問われれば、迷うことなく自分だと罪を認めよう。
それぐらいしか今のわたくしにできることはないのですから。
「言い訳でしかありませんが、当時はそれしか方法がありませんでした。女神の誰もが守護女神戦争の長期化に焦りを感じ、お互いの姿を見つけただけで斬りかかったくらいですからね。わたくしも信じられるのは、わたくしのことを信仰してくれる人達だけだと思い込んでいました」
「……ごめん、なさい。私、何も知らないで」
「いいえ、ナナハさんが謝る必要はありませんわ。結果的とは言え、リーンボックスを孤立させることで解決できた問題もありますし、わたくしも大切なことに気付くことができましたから」
申し訳なさそうに顔を伏せるナナハさんに、わたくしは苦笑しながら返した。
何も後悔ばかりがあった毎日ではない。
問題視されていた地盤崩落はリーンボックスを孤立させた当時から現在まで1度も起こっていない。
理由は不明だが、女神への信仰がどうこうと言う噂も馬鹿にできないかもしれない。
わたくし自身も、国民の皆さんから改めて支えられているのだと言うことを再確認することができた。
しかし、新しい問題が発生したことも事実だった。
設立した協会内における派閥争い、貴族や平民と言った格差、ゲイムギョウ界の波から取り残されるように遅くなってしまったリーンボックス社会の成長――と、挙げればきりがないだろう。
この問題を解決するためには大きな改革――いや、変革が必要だった。
その中で最も現実的で確実に成功できるだろうと言うプランがミモザ達によるクーデターだけだった。
わたくしの案――わたくしが守護女神戦争に敗れたと言うことにして、リーンボックスの国民を他国の文化に触れさせる計画は予想よりも早くなったクーデターの決起によってご破算になってしまった。
その結果、わたくしにできることはもう何も残っていない。
「さて、皆さんはそろそろ帰られた方がよろしいと思いますわ。これ以上いると、またイヴォワールに見つかってしまいますわよ」
「……じゃあ、最後に1つだけ」
らんらんに目配せしながら夢人さん達に退出を促すと、ナナハさんが遠慮がちにわたくしへと問いかける。
「ベール……さんは後悔している? その、今の状況のことを」
その質問は酷く意地悪な物に感じられた。
答えることは簡単だけど、わたくしに本心を語る資格はない。
だから、わたくしはわざと笑って答える。
「――仕方ありませんわ。全部、わたくしのせいなのですから」
現状をどうにかすることも言い訳をすることも許されない私にできることは、これから起こることをあるがままに受け入れることだけ。
わたくしの笑顔はきっと諦めているように映るだろう。
でも、仕方ない。
事実、わたくしはもう諦めているのだから。
* * *
「まさか、このような結果に終わるとは思いませんでしたな」
クーデター……ではなく、夢人さん達の茶番劇が終わった翌日の昼下がり、執務室でイヴォワールはため息をつきながら報告を続ける。
「急ぎ調査した結果ですが、国民のほぼ全員が開国に賛成の意を示しており、先日のミモザによる宣誓も好意的に受け取られております。これで先ず間違いなく、リーンボックスは新体制へと移行することができるでしょう」
「ええ、よいことですわ」
「……しかし、その分の負担が全部ワシの方に来ているのですが」
調査結果に満足して笑うわたくしに、イヴォワールは恨みがましい目線をぶつけてくる。
仕事が増えたのは大変だろうけど、わたくしが肩代わりすることもできないので応援することしかできない。
「それはあなたの仕事ですわ。頑張ってくださいまし」
「……はあ、分かっていますとも。しかし、これで肩の荷が下りると思っておりましたのに、余計に重たいものを持たされるとは思いもしませんでしたよ」
「あら、夢人さんを焚きつけたのはあなただと思っていたのですけど?」
イヴォワールの愚痴を聞き、わたくしは不思議に思って首を傾げてしまう。
正直、今回の結果を狙った上でイヴォワールはクーデターのことを夢人さんに話したのだと思っていた。
「確かにそう言う意図があったことは認めましょう。話に聞いていた御仁ならばと思っていたことも事実ですし、何か悩んでいたご様子でしたので解決の糸口をとも――しかし、あのようなことをされるとは思いもしませんでした。ワシも老いたと言うことでしょうか」
「アレはあなたも驚かされたと言うことですのね」
「はい、ワシは御波殿があのようなこと……言ってしまえば、自分の評判を下げるような真似を避ける御仁だと思っておりました」
「……詳しく聞いても?」
ちょっと興味がわき、わたくしはイヴォワールに先を促す。
延々と愚痴を聞くよりも、イヴォワールの目から見た夢人さんの人物像が気になる。
そんなわたくしの願いを聞き、イヴォワールは軽く頷きながら続きを話す。
「ワシから見て、御波殿は何かに怯えているように見えました。周りの者を信じていない……わけではなかったようですが、どうにも1歩引いた位置で話す青年でしたな」
「それは何となく分かりますわ。上手く言えませんけど、言動と行動が一致していない――そう、ちぐはぐな方だとわたくしも最初思いましたわ」
「左様ですか、ならば間違いなかったのでしょう。得てして、そう言った者は周りからの評価を気にしております故、御波殿があのような自分を悪い立場に追い込む真似をすると思っておりませんでした」
……イヴォワールの話には、わたくしも納得できるものがある。
何があったのかはわからないが、2度目に出会った夢人さんはまるで別人のようだった。
最初に会った夢人さんは、悪く言ってしまうと逃げ道を確保しながら周りを頼っているだけのように見えた。
でも、2度目――夜遅くに頭を下げながら茶番劇に協力して欲しいと頼み込んできた時は、自分で逃げ道を潰して覚悟を決めた顔をしていた。
あくまでわたくしの主観だけど、イヴォワールの話も合わせると間違ってなかったのだろう。
「まあ、この話はここまでにしておきましょう。それで旧貴族派の皆さんの動きはどうなってしますの?」
「それなのですが……」
わたくしの質問に、イヴォワールは苦い顔を浮かべる。
まさか、と思ってイヴォワールの報告に集中する。
「実は旧貴族派から現体制に関する反対意見が1つも出て来なかったのです」
「それは……また厄介ですわね」
「はい、まったくです」
報告を聞いたわたくしの眉間にも力がこもってしまう。
イヴォワールからの報告が確かならば、旧貴族派のこの動きは不気味すぎるからだ。
「現在ジャッドに詳しく調査をさせていますが、報告を聞く限りは彼らの近辺に異常はありません。しかし、あれほど頑なにリーンボックス以外の国を敵視していた彼らが今のワシらを認めるなど……」
「怪しすぎますわよね。順当に考えれば、裏にわたくし以外の女神の影があると?」
「おそらく」
元々、旧貴族派はリーンボックスに不利益をもたらしていたわけではない。
彼らはその高すぎる信仰心によって、わたくしに代わってリーンボックスを守ろうとしていたにすぎないのだ。
だからこそ、他国の文化を強く否定してリーンボックスを閉鎖していたのである。
そんな彼らが今更になって開国に協力的な理由として考えられるのが、信仰する女神をわたくしから別の者へと変えたのではないかと言う疑いだ。
夢人さん達の茶番劇で広めた魔王派に脅威を感じたと言うのは考えにくい。
それこそ自分達だけで問題ない、と胸を張って言いそうな人達なのだから。
だから、可能性として高いのは開国をするメリットが彼らにはある――他国の女神に鞍変えをしているのかもしれない。
「そうなると、怪しくなってくるのはプラネテューヌとルウィーかしら? それとも姿を見せていないラステイションと言う可能性も……」
「いずれにせよ、情報が不足している現状で判断を下すのは危険かと思われます。しかし、今のリーンボックスの不安定な情勢を考えれば、1国も早く味方が欲しいのも事実。いやはや、開国は早まりましたかな」
笑いごとのように話すイヴォワールだが、わたくしは全く笑えない。
新体制に移行中の地盤が固まっていないリーンボックスは、他国からすれば格好の的である。
要するに、他国の文化や情報を取り入れるために頭を下げなければならないと言う弱い立場にあるのだ。
しかし、これもいずれは通らなければならなかった道。
暮らしを豊かにするためには、早く協力してくれる味方を見つけて関係を良好なものにしなければならない。
「ルウィーの宣教師の方は既にルウィーに?」
「はい、残念ながら」
「……でしたら、まずはプラネテューヌに親書を送る必要がありますわね」
宣教師の方が既にルウィーに帰られているのは、わたくし達にとってかなりの痛手だ。
魔王派と言う女神への信仰を正面から否定する連中の詳しい情報やらルウィーが未だにリーンボックスと友好を結ぶ意思があるのかを確認することができない。
だからといって、全ての国に親書を送っても上手くいかないだろう。
ここはずるいかもしれないが、女神が不在のプラネテューヌに手を打たせてもらう。
「十中八九、答えは先延ばしにされますぞ?」
「構いませんわ。重要なのはこちらから歩み寄ったと言う事実ですし、他の女神を相手にするよりも確実にプラネテューヌの技術を手に入れることができますわ」
確認するように問いかけてくるイヴォワールに、わたくしは問題ないと首を横に振って答える。
こちらの世界のネプテューヌが不在であるなら、いくらでも付け入れる隙はあります。
むしろ、今のうちにリーンボックスとプラネテューヌの繋がりを強固にしてしまえば、ルウィーやラステイションも無視はできなくなるでしょう。
問題はこちらの世界のネプテューヌが急に現れることですが……その時は根気強く交渉するしかありませんわね。
わたくし、そこまで嫌われてなければ良いのですけど……
「とにかく、最優先でしなければならないことはプラネテューヌとの交易を開始するに当たっての地盤固めですわね。こちらから提供できる技術や商品などをリストアップした上で、わたくしの名前が入った親書をプラネテューヌに送ります」
「加えて、ラステイションやルウィーにもリーンボックスが歩み寄ろうとしている旨を伝えておくべきでしょうな。こちらは親書ではなく、通知となってしまいますが」
「そうですわね。では、任せますわ」
「畏まりました」
……ふぅ、問題は山積みですわね。
いるかもしれない他国のスパイに警戒しつつ、一刻も早く友好条約を結ばなければいけませんわ。
弱みをさらけ出してでも前に進むと決めた以上、わたくしもしばらくゲームの時間を減らすしかありませんわね。
「それで、これからのわたくしの予定ですけど……」
「――ありません」
「はい?」
「ですから、現状でグリーンハート様のしなければならない仕事は1つもございません」
耳が聞こえなくなったのかと疑ってしまう程、イヴォワールの言葉は信じられなかった。
しかし、いきなりイヴォワールがボケたと言うこともないらしく、至極真面目な顔でわたくしを見つめている。
「正直に申し上げますと、新体制に移行するに当たって決めなければならない法改正や規制緩和などは既に他の職員の者が草案を作成中であり、後は実際に交易を開始してからの修正が望ましいかと思われます。さらに、開国が好意的である以上、リーンボックス国内での混乱はほぼないでしょう。仮に起こったとしても、協会の職員で片づけられます。――つまり、グリーンハート様がしなければならないことは何もないのです」
「そ、そうなのですか?」
た、確かに、法改正やらの知識は専門家に任せた方が安全ですし、混乱が起こらなければ治安維持の名目でわたくしが出向く必要もありません。
えっ、本当にわたくしがすることは何もないのですか?
「ですから、勝手ながらワシの方からグリーンハート様にお頼みしたいことがございます」
頑張ろうとした矢先に何もすることがないと言われて戸惑っているわたくしに、イヴォワールは提案を持ちかける。
「グリーンハート様にはこちらで雇った護衛と共に他国を回って来てはもらえないでしょうか?」
「……つまり、わたくし自身が大使としての役割を果たせと?」
「いえいえ、大使にはもっと適任者がおります。グリーンハート様には直接他国の文化や空気に触れ、今後のリーンボックスの統治に役立つ知識を蓄えてきてもらいたいのです」
イヴォワールの提案に、わたくしはなるほどと頷く。
頭の中で国をどう運営していこうかと言うヴィジョンは確かにあるが、理想と現実は違う。
加えて、わたくし自身が他国に赴くことで積極的に交流を持とうとしていることを国民にアピールすることにも繋がる。
「しかし、それは些か不用心でありませんか? さすがに他国の女神が勝手に自分の国に足を踏み入れれば、不快に思って友好を結ぶどころの話ではなくなってきますわ」
「ですが、グリーンハート様がずっと協会に閉じこもって動かないことも問題となってしまいます。ですから、先ずはしばらく身分を隠してプラネテューヌに滞在してもらいたいと思っております」
「プラネテューヌ? もしかして……」
「お考えの通りでございます。既に正面の方でお待ちになられていると思いますぞ」
そう言われ、わたくしは窓の外から協会の入り口付近を見下ろした。
すると、そこにはわたくしの想像通りの光景があった。
――ネプテューヌ達がわたくしを待っていたのある。
こちらに気付いたらしいネプテューヌが手を振りだすと、REDちゃんやピーシェちゃんも続いてわたくしを見上げてくる。
控えめに手を振ってくれているのはコンパさんにロムちゃん、それにぷるるん。
少し離れた位置には困ったように笑っているシンさんもいる。
「あのようなことがあった後ですので、御波殿やアイエフ殿には既にリーンボックスを離れてもらっていますが、快く護衛の依頼を受けてくださいましたよ。部屋の外にも大使としてミモザが控えております。後はグリーンハート様の準備が整うのを待つだけです」
ここまで用意周到に準備をされていたら、断わると言う選択肢が浮かんでこないではないか。
準備に不満があるわけではないが、ひと言だけでもわたくしに言っておいて欲しかった。
でも、これはイヴォワールなりのプレゼントなのだろう。
今までリーンボックスと言う名の籠に閉じ込めていたことに対する謝罪の意味もあるのかもしれない。
またはこれからゲイムギョウ界全体にわたくしの名を轟かせろと言う激励なのかもしれない。
……どちらにしても、よくもまあわたくしに内緒でここまでしてくれたなと言う不満は消せそうにないが。
内心で愚痴をこぼしながら振り向くと、イヴォワールは悪戯が成功して嬉しいようで笑ったまま告げてくる。
「ワシらのことを気に病むことなく、多くのことを学んできて下され。そして、元気なお姿で帰って来て下されば、ワシらは何も言いません」
「……分かりましたわ。留守の間のことはよろしくお願いしますわね」
「承りました。行ってらっしゃいませ」
「――行ってきます」
頭を下げて道を譲るイヴォワールの横を通り過ぎ、わたくしは部屋の外に出る。
扉の前では既にミモザが立っており、わたくしを待っていた。
「グリーンハート様、今回大使として任命されましたミモザと申し……」
「そんなことはどうでもいいですわ。さあ、早く行きますわよ」
「って、ちょっ!? ど、どこに行くのですか!?」
「わたくしの部屋に決まってますわよ!」
恭しく頭を下げようとするミモザの手を引っ張り、わたくしは自室への道を急ぐ。
事前に聞かされていたミモザと違って、わたくしは先程いきなり聞かされたばかりなのだ。
ゲームとか最低限の旅支度が必要なのは当たり前ではないか。
「えっ、いや、まさか……は、離してください!? わ、私は先に表で待ってますので!?」
「何を言っていますの! あなたも手伝うんですわよ! ほら、早く!」
「い、嫌!? やだ!? 助けてワンダー様あああ!?」
何故か青い顔で絶叫するミモザに構わず、わたくしは頬を緩めて歩き続ける。
イヴォワールにお膳立てされたこととはいえ、わたくしも新しい1歩を踏み出そうとしている。
この始まりを素晴らしいものにするために、わたくしはミモザと繋いだ手をギュッと握りしめるのであった。
* * *
……こうして、わたくしも夢人さんやネプテューヌ達と一緒にいることになりました。
イヴォワールはああ言ってくれましたが、わたくしも他国との友好を深められるように他の女神との交渉を頑張りませんとね。
一方的にこちらを敵視してくるルウィーの女神はともかく、ラステイションの女神は冷静になれば話が通じそうですからね。
後はこちらの世界のネプテューヌですけど、いったいどこにいることやら……
まあそれはともかく、今回のことで夢人さん達には多大な迷惑をかけただけでなく、助けてもらったお礼をしなければなりませんね。
お礼になるか分かりませんが、わたくしも鍵の欠片とチェアーさんなる人物の捜索には協力を惜しみませんわ。
そして、リーンボックスの女神が伊達ではないことをしっかりと証明してみせますわ。
では、これからよろしくお願いしますね。
…………
そう言えば、わたくし夢人さんにお聞きしたいことがありましたわ。
ナナハさんって、別世界のわたくしの妹なのですよね?
それなのにどうしてか微妙に避けられているような気がするのですけど。
……戸惑っているのかも、ですか。
確かに、別世界の知り合いと会ってもどう接したらいいのかなんてすぐ分かりませんわよね。
同一視なんてしたら、その人にも目の前の相手にも失礼にあたりますし――って、どうして顔を逸らしているのですか?
でも、そう言うことなら仕方ないですわね。
ミモザに加えて新しい妹的存在ができると思ったのですが、少しずつ攻略していくしかありませんわ。
まずは好感度アップには何が必要なのかを見極めるために色々とお話を伺いつつ好印象を与えませんと。
……も、もちろん冗談ですよ?
ほ、本当ですから、そんな引かないでください!?
お願いですから信じてください!?
と言う訳で、今回はここまで!
PS4の映像、本当にすごかったんですね。
そのクオリティに無駄に声をあげて感動してしまいました(苦笑)。
それでは、 次回 「さすらいの風日記(リーンボックス編)」 をお楽しみに!