超次次元ゲイムネプテューヌ Re;夢のヒーローを目指して   作:ホタチ丸

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皆さん、大変お待たせしてすいませんでした!
今日から投稿を再開していきますので、またよろしくお願いします。
それでは、 さすらいの風日記(リーンボックス編) はじまります


さすらいの風日記(リーンボックス編)

 色々と言いたいことはあるけど、まずこのタイトルはいったい何なのよ?

 コレでどうして私の話になるわけ?

 

 ……私だったら、どんなタイトルにするかですって?

 そうね、私だったら――Mystical Blooming Windってところかしらね。

 ただ単語を並べただけだけど、直訳すると私の異名とほぼ同じ意味になるわ。

 【神秘的に輝く風】、本当だったらゲイムギョウ界にって部分を入れたかったんだけど、タイトルは簡潔にした方がいいじゃない?

 だから、敢えてイニシャルを取ってM.B.W.みたいに表記してもいいと思うんだけど……って、何でそんな微妙な顔をしているのよ?

 だったら、【colpo di vento~緑、揺れて~】とか【Gruen Wind Herumwandern】とかならどうよ?

 

 まあ、ここで私が駄々をこねても仕方ないか。

 とりあえず、タイトルはこれで納得しておいてあげるとして、さっさと本編に入るわよ。

 ……はいはい、話を長引かせた私が悪かったですよ。

 

 そんなわけで、今回は私――ゲイムギョウ界に咲く一陣の風こと、アイエフがお送りするわ。

 話は夢人の無茶振りで始まった協会の前のお芝居からね。

 

 それでは、 さすらいの風日記 リーンボックス編 始めるわよ。

 

 

*     *     *

 

 

「……アイツ、案外ノリノリでやってるわね」

 

「うむ、私にはやけくそになっているように見えるのだが」

 

 協会の屋根の上で馬鹿みたいに高笑いしている変態……もとい、夢人を私達は少し離れた位置から見守っていた。

 私の独り言に反応したMAGES.の言葉を聞き、もう1度よく夢人を観察してみる。

 

「嘘だと思うのなら、よく見てみるといい!! 彼女は正真正銘、諸君らが信仰する女神グリーンハートなのだからな!! まさか、彼女を信仰する諸君らが見間違うわけないだろう?」

 

「……お、おい、本当にグリーンハート様が?」

 

「お、俺に聞くなよ!? でも……」

 

「おやおやぁ? 諸君らはもしかすると、彼女がグリーンハートであると分からないのかな? リーンボックスは他のどの国よりも女神への信仰が厚い国ではなかったのか?」

 

 ざわざわと騒ぎだすクーデターを企んでいた集団を、夢人は嘲るように見下す。

 その言葉も非常に神経を逆なでするような煽り文句だ。

 正直に見たままの感想を言えば、今の夢人はかなりウザい。

 もちろん、わざと煽っているんだけど。

 

「悪辣って言うか、すごく悪役っぽいですよね」

 

「何をいまさら言っているんだ。そうなるように私達で考えたのだから、悪役に見えてくれなければ困るのだよ」

 

 ――そう、多少アドリブは加えられているが、今夢人が言っている内容は私とMAGES.で考えた台詞だ。

 むしろ、皆が鉄拳ちゃんのように思ってくれないと困ってしまう。

 この茶番劇で1番注意しなければならないことは、誰か1人でも冷静になって今の状況に疑念を抱いてしまわないようにすることである。

 オセロみたいに黒い集団の中で1人でも白と叫ぶ者がいれば、瞬く間に全部ひっくり返されてしまうのが集団心理の怖いところよね。

 しかも、それを容易く行うことができる人物……クーデターのリーダーであるミモザがいるのはすごく厄介だ。

 

「ふざけるな、悪党め!! 私達の信仰を馬鹿にするな!!」

 

「そうだとも!! 僕達の女神様を早く解放しろ!!」

 

「……アイツらの方はノリノリよね」

 

「そのようだな」

 

 クーデターに参加している連中が呆然としている間に紛れこんだ変態兄弟を見て、私とMAGES.は揃って頷いた。

 兄弟からすれば、女神様の中で1番胸が大きいらしいグリーンハート様は確かに信仰の対象になるだろう。

 そんな熱の入った兄弟の言葉に同調するかのように、クーデターに参加している連中も夢人に敵意を向けだす。

 見た限りでは俯いているミモザ以外の全員が怒りによって冷静さを失っているように見える。

 

「――その通りです、皆さん!! 絶対に諦めてはいけません!!」

 

 そんな時、協会の扉を勢いよく開けてコンベルサシオンさんが協院長を支えながら現れる。

 大きく響いた声と現れた2人に誰もが驚いて目を向ける。

 

「あの異教徒の言葉は偽りです!! グリーンハート様はあの男によって力を封じられているだけなのです!! そうですよね、協院長?」

 

「う、うむ、その通りじゃ」

 

 わざとらしくコンベルサシオンさんに話題を振られたが、協院長は戸惑いながらも肯定する。

 その拙い演技でばれてしまうのではないかと不安になったが、熱に浮かされている集まった人々は協院長の言葉を信じて夢人を睨みつけるだけであった。

 

「おやおや、もう眠りから覚めてしまったのですか? そのまま眠っていればよかったものを」

 

「黙りなさい!! 私達はあなた達に決して屈しません!! すぐに他の職員の皆さんもあなたの魔法を打ち破り、ここにやってきます!!」

 

 ――よし、これでまた条件をクリアできたわ。

 今の会話できっと集まった人達は協会の職員が夢人に出し抜かれた被害者だと勘違いしてくれたはず。

 本当はコンベルサシオンさんの魔法で全員眠っているのだけど、これならクーデター側の視点でグリーンハート様を守ろうとして倒されたと思い込ませられる。

 そうすれば、今回の剣が終わった後も両陣営がお互いに悪感情を抱くことはないだろう。

 なにせ、どちらもグリーンハート様を助けると言う強い感情を共有するのだから。

 

「ならば、仕方がない。ここは一先ず退さ……っ!?」

 

 多くの視線を集めたまま夢人が計画通りに動こうとした時、1発の銃声が鳴り響いた。

 驚きで静まり返る中、音の発生源へと視線を向ける。

 

「――ふ、ふふふ、そう。そう言うことなのね」

 

 そこにいたのは、真上に小型の拳銃を構えたまま不気味に笑うミモザがいた。

 周りにいた人達もそのミモザの異様な雰囲気に圧倒され、思わず後ずさってしまっている。

 

「マズイな。もしもこのまま流れを変えられたら……」

 

「あわわわわ!? ど、どどどどどうしたらいいんですか!?」

 

 隣にいるMAGES.が苦々しい表情でミモザを見つめながら焦りを露わにしている。

 鉄拳ちゃんも突然の事態に慌てふためいているし、言葉にしないだけで私も自分の顔が強張っているのを理解してしまう。

 

「こうなったら、私が……」

 

「――全員、直ちにグリーンハート様を救出するのよ!! 私達の敵は協会じゃない!! 真の敵はあの変態よ!!」

 

「えっ?」

 

 ミモザの行動を止めようとして飛び出そうとしたが、続けられた指示に私は動きを止めてしまう。

 予想外にもミモザはこちらの意図に乗ってくれるようだ。

 こちらの思惑を理解したからなのか、それともグリーンハート様の救出を最優先すると決めたからなのか分からないけど、私達にとっては嬉しい誤算だった。

 後の問題は夢人が捕まらず、ナナハって子がスタンバイしている場所まで全員を誘導すれば私達の勝利となる。

 

「何をボーっとしているのよ!! さっさとあの変態を捕らえなさい!! 早くグリーンハート様を助けるのよ!!」

 

「は、はい!?」

 

「分かりました!?」

 

 怒気を飛ばすミモザの指示に従い、全員が慌てて行動を始めた。

 どうやら最初の関門は突破できたようである。

 

「よし、では私達も動くとしよう」

 

「分かりました! それじゃ、わたしは先回りして夢人さんと追ってくる人達を誘導すればいいんですね?」

 

「頼むぞ。後、夢人が捕まりそうになったら……」

 

「陰ながらサポートしますね! MAGES.さんとアイエフさんも気をつけてくださいね!」

 

 MAGES.の言葉を聞くなり、鉄拳ちゃんはすぐさま夢人が通る順路に先回りしに行った。

 夢人が逃亡するルートは事前に変態兄弟が安全を確認している。

 回り込まれないように昨日の夜から朝にかけて嘘の工事看板などを設置したりしたが、完璧とは言えない。

 そんなイレギュラーをどうにかするのが私とMAGES.の仕事だ。

 

「私達も気付かれないように移動するわよ」

 

「そうだな。頼むぞ、クマゴロウ」

 

「ガウ」

 

 私達の“足”になってくれるクマにMAGES.は呼びかけながら背中にまたがる。

 このクマ、鉄拳ちゃんがいなくても人を襲うことは絶対にないらしい。

 言葉も理解しているのか、かなり賢いクマなのだ。

 ……安全なクマとか意味が分からないが、少しくらい常識を投げ捨てておこうと思う。

 

「お2人とも、頑張ってくださいね! 私はここで陰ながら応援していま……」

 

「ほら、アンタもさっさと乗る!!」

 

「えっ、いや、ちょっ!?」

 

 ここまで付き合ったくせに馬鹿なことを言うデンゲキコの首根っこを掴み、私は無理やりクマに乗せる。

 3人全員が乗ったことにより、クマは走り出す。

 

「降ろして!? 降ろしてくださいってば!? 私、スクープは欲しいですけど、犯罪者にはなりたくないんですってばあああ!?」

 

 喚くデンゲキコに辟易しながら、私は茶番劇が終わった後のことについて思いを馳せた。

 

 ……大丈夫よ。

 この茶番劇で被害を受けるのは夢人だけなんだから。

 

 

*     *     *

 

 

「――私達がしたことって意味があったのかしら?」

 

 ひと足先にプラネテューヌに戻って来た私はポツリとそんなことを呟いてしまった。

 

「さあな」

 

 素っ気なく返事をするMAGES.に、私は少しだけ苛立ちを感じた。

 しかし、それが身勝手なものだと理解しているので口には出さない。

 

 ――結局のところ、ミモザはクーデターの落とし所をちゃんと考えていたのだ。

 人々の注目を浴びるために空に向かって撃った拳銃……銃弾が入っていないアレを使って協院長を殺したように思わせる予定だったらしい。

 その後、協会の地下に匿おうとしていたとか何とか。

 

「考えても仕方ないだろ。既に終わってしまったことだ」

 

「だけど……」

 

「1番の被害者が平気な顔で笑っているんだ。私達が気にしても仕方なかろうに」

 

 不満を漏らす私を宥めるMAGES.がクイッと顎を向けた方を見ると、夢人とネプギアの姿があった。

 人の苦悩を知らないで能天気にへらへらしている夢人に、私は先程よりも強い怒りを感じる。

 

 ……今回の茶番劇、実質的に被害を受けたのは夢人だけだ。

 確かに、今回のことでグリーンハート様も少なからず女神としてのイメージを崩されはしたが、リーンボックスの情勢を考えれば今後はより一層信仰が厚くなるだろう。

 だが、代わりに夢人に対するヘイトが高まったとも言える。

 ほとぼりが冷める――もしくは本物の魔王派がなくなるまで、夢人はリーンボックスに行けない。

 いくら顔を隠していたとはいえ、何かの拍子でばれてしまうかもしれないのに迂闊な行動を取れるわけがない。

 

「しかし、アイツも現金なものだったな。夢人から許可を取るなり、すぐさま走っていくなんて」

 

「……本当、最後の最後までうるさく言ってたくせにね」

 

 話題を変えるMAGES.に感謝しつつ、私は満面の笑みで走り去っていったデンゲキコを思い浮かべる。

 私達と一緒にプラネテューヌに戻ってきた途端、デンゲキコは恐る恐る夢人へと尋ねたのだ。

 

【あのぅ、本当に今回のことを記事にしちゃっていいんですか?】

 

 そう、最後までデンゲキコを連れまわした理由は今回のリーンボックスの茶番劇を広めるため。

 具体的にいえば、魔王派の脅威をゲイムギョウ界中に広めるためだった。

 記者であるデンゲキコには打って付けの役目だ。

 これが必要なことであることは理解していても、私はあまり納得していなかった。

 

 何故なら、やはりこれも夢人だけが割りを食っているから。

 魔王派としてグリーンハート様を誘拐した犯人として、記事に写真を残してしまうのが夢人1人と言うところが気にくわない。

 確かに、計画の立案とか大部分は夢人がしたことだ。

 しかし、共犯者である私達に被害がないのはおかしい。

 それなのにネプギアと一緒に笑っている夢人に、私は胸の奥から湧き上がる怒りを止められない。

 

「アイエフ、少し落ち着け」

 

「何を言っているのよ。私は落ち着いているわ」

 

「だったら、その目はやめておけ。かなり危なくなっているぞ」

 

 MAGES.に注意され、私は指で目頭をほぐす。

 自覚はなかったが、思っていた以上に思考が熱くなっていたようだ。

 反省しつつ、私は夢人達を視界に入れないように顔の向きを変えた。

 

 ……思い出すだけでもムカついてくる。

 あの馬鹿が全部理解した上でデンゲキコに言った言葉が忘れられない。

 

【おう! ちゃんと俺が悪役になるように書いてくれよ!】

 

 躊躇うことなく夢人が口にした言葉に、デンゲキコはおろか私達も唖然としてしまった。

 デンゲキコは戸惑い、MAGES.は呆れ、ナナハは悲しそうに目を伏せ……私は怒りと恐怖を覚えた。

 自分の立場を進んで悪くしようとする意味が分からない。

 理解できなくて、私は夢人を怒鳴ることも記事を書きに行ってしまったデンゲキコを止めることもできなかった。

 

「本当に何を考えてるのよ……」

 

「心配のし過ぎではないのか? まあ、いい。そんなに気になるのなら――おい、夢人!」

 

「ちょっ、MAGES.!?」

 

 ぼやいている私が鬱陶しくなったのか、MAGES.は夢人を呼ぶ。

 不思議そうに首を傾げながらも夢人はネプギアに断わりを入れ、私達の方へと近づいてきた。

 

「どうかしたのか?」

 

「いや、何少し聞きたいことがあってな。なあ、アイエフ?」

 

「……そんなんじゃないわよ」

 

 意地の悪い笑みを浮かべながら話を振ってくるMAGES.から顔を背け、私はできるだけ感情を表に出さないように答えた。

 確かに、夢人がどうして茶番劇の責任を1人で背負おうとしているのとか、自ら進んで悪評をばら撒こうとしているのかは気になる。

 しかし、どう尋ねればいいのか分からない。

 正直な話、そのことを直接聞いてしまうと、いらないものまで胸の中から噴き出してしまいそうで怖いのだ。

 

「はあ、仕方のない奴だ。ならば、代わりに私が聞こう。貴様は今回の結果についてどう思っている?」

 

「えっと、クーデターのことでいいんだよな?」

 

「ああ。私達が介入しなくてもクーデターは丸く治まっていただろう。結局、貴様が泥を被ったのは自業自得だったと言うわけだ。そのことについて、何か思うことはあるか?」

 

 MAGES.の問いはまさに私の疑問だった。

 私の気持ちを汲んでくれたのか、それともMAGES.自身も気になっていたのか分からないが、今は助かる。

 どんな答えを出すのか気になり、チラッと夢人の顔を見ると……

 

「うーん、まあ、仕方ない、かな」

 

 困ったように頬をかきながら口にする夢人の言葉の意味が分からなかった。

 あまりにも説明不足な答えに私達が困惑していると、夢人は続きを話し始める。

 

「あの時はああするのが1番だって思っていたんだけどさ、結局ミモザもイヴォワールさんのことを考えてただろ? でも、俺達はそんなミモザの気持ちを知らなくて勝手にあんなことしたわけだし、MAGES.の言う通り自業自得って言われても仕方ないかなって」

 

「……つまり、何だ? 後悔しているのか?」

 

「まあ、少しはな。でも、やってよかったって思うところもあっただろ?」

 

 要領を得ない説明にMAGES.が戸惑いながら簡潔に答えを求めると、夢人は嬉しそうに笑いながら肯定する。

 

「だって、ミモザの計画した通りにクーデターが成功していたら、イヴォワールさんはずっと死んだことになって牢屋に入ってるしかなかったんだろ? 俺達が行動を起こしたから、イヴォワールさんはミモザと一緒にいられるわけだし……」

 

「ふむ、つまり協院長を助けるためか?」

 

「それもあるけど……うーん、そう言うの全部ひっくるめて自分のためって言うのが俺の答えかな」

 

「……自分のため? 周りから悪く言われるのが自分のためになるって言うの?」

 

 率直に尋ねるMAGES.に、夢人は悩みながら曖昧な答えを出す。

 その答えを聞き、私の口は自然と開いてしまう。

 結果だけ見れば、今回の件で夢人のプラスになったことは何もない。

 それがどうして自分のためになるのかを聞きたかったのだ。

 

「何かそう言われると、俺が罵られて喜ぶ変態みたいじゃないか。そうじゃなくて、俺が言いたいのは何もしないよりはいい結果になったからよかったんだよ」

 

「……何よ、それ。自分の評価を下げて他人を助けて満足ってこと? 意味わからないわよ」

 

「そんなことまで考えてないよ。俺はただ、ミモザにイヴォワールさんを切り捨てて欲しくなかっただけだ」

 

 真剣な表情になった夢人に真っ直ぐ見つめられ、私は息をのんでしまった。

 堂々としている夢人の姿に比べ、自分が嫌に小さく思えてしまう。

 

「多分だけど、ミモザにはまだイヴォワールさんが必要だったと思うんだ。考えてみれば、当たり前だよな。イヴォワールさんはお爺ちゃんで、ミモザはその孫なんだからさ」

 

 自分の考えを語る夢人の顔はどこか誇らしげだった。

 しかし、そんな顔を見ている私の胸にはチクリと痛みが走りだす。

 

「それなのに、自分のやるべきことは全部終わった、みたいな雰囲気を出しながら勝手に退場するのはおかしいだろ? 残された人達のことを考えろってんだ……本当、男ってそう言う馬鹿な生き物なんだよな」

 

 ……気付いてしまった。

 協院長の話をしながら、夢人は今自分のことを貶しているって。

 根拠はないけど、泣き顔にも重なる夢人の顔が私にそう思わせてくる。

 

「あー、うん、つまりだな……とにかく、俺はあの2人の家族が離れ離れになるのが嫌だったんだよ。その結果、俺が馬鹿やって悪く言われるのは仕方ないことだし、今更開き直れることでもないだろ」

 

「ああ、よく分かった。すまないな、変なことを聞いてしまって」

 

「別にいいけど……」

 

「つまり、貴様は正真正銘の大馬鹿者だったと言うわけだ」

 

 MAGES.の言う通り、夢人は馬鹿だ。

 最初から分かっていたくせに、それを受け入れている。

 でも、理解できても私はMAGES.のように皮肉気に笑い飛ばせない。

 

「馬鹿で結構だよ。しょっちゅう言われてるし、そう簡単にやめる気もないしな」

 

「おっと、それは私の失言だったようだ」

 

「だから、気にしないっての。それに、悪評に関しては元の世界に戻れば関係なくなるしさ」

 

「それもそうだな」

 

 ……ましてや、夢人のように軽く流せない。

 私にはどうして2人がそんな風に談笑できるのかが分からない。

 今はここにいないナナハも同じ気持ちなのだろうか。

 1人になりたいと歩いていった悲しげな表情を浮かべた少女を思い出す。

 

「やれやれ、まさかあのように返してくるとはな。まあ、自棄を起こしているわけではないだけマシ……」

 

「ねえ、MAGES.」

 

「うん? どうかしたか?」

 

 ネプギアの方へと戻っていく夢人の背中を生温かい目で見ていたMAGES.に呼びかけ、私は尋ねた。

 

「MAGES.から見て、夢人は本当のことを話したと思う?」

 

「……どうだろうな。嘘はついていないように見えるが、全部が本当と言うわけでもあるまい。自覚していない所もあるのではないか? それに、前向きな姿勢でいる分には問題はないと思うぞ?」

 

「そう」

 

 顔をしかめながら推測を口にするMAGES.の姿に、私は軽く目を閉じて思考する。

 この瞬間、私は覚悟を決めることができた。

 だから、私はMAGES.を真っ直ぐ見つめて言う。

 

「MAGES.、1つだけ頼みを聞いてもらってもいい?」

 

「別に構わんが……」

 

「――だったら、私の代わりにアイツらと一緒にいてあげて」

 

 ……それは夢人やネプ子達と別れる覚悟だった。

 

 

*     *     *

 

 

 私の頼みをMAGES.は深く尋ねずに了承してくれた。

 正直、その心遣いはすごく嬉しい。

 理由とか色々聞かれたら、きっと決心が鈍ってしまっていたと思うから。

 

 ……そして、私はネプ子達がプラネテューヌに戻ってくる前に出発した。

 別れ話なんて切り出したら、あのネプ子やREDのことだ。

 きっと周りの迷惑などお構いなしで騒ぎだすだろう。

 だから、別れの言葉もMAGES.だけに伝えておいた。

 【今まで一緒にいてくれてありがとう。そして、勝手にいなくなってごめんなさい。最後に、縁があればまた会いましょう】って。

 

 1人旅に戻った私の行き先は最初から決まっている。

 ――ラステイション。

 あそこにはまだやり残してことや話を聞きたい人がいるから。

 とりあえず、シアンの所に行こう。

 そして、次にアイツらと会うまでに胸のもやもやに答えを出せるようになっていようと思う。

 

 

 …………

 

 

 まあ、そう言うわけで私は夢人達のことをMAGES.に任せてラステイションに向かったわけね。

 これが今生の別れってわけじゃないし、またすぐに会っちゃったりしてね。

 だから、MAGES.の伝言にもさよならって言わなかったわけだし。

 

 ……次に会うときに、ちゃんとアンタ達に胸を張って会える私になりたかっただけよ。

 今のままじゃ、きっとまた逃げ出しちゃうと思うから。

 アンタ達の優しさとか甘さとか色んなのにどっぷりと浸かっちゃって――きっと耐えられなくなっちゃう。

 

 だから、私が答えを見つけたらまた会いましょう。

 じゃあね。




と言う訳で、今回はここまで!
がっつりVⅡをプレイしていたら、いつの間にかパソコンが遠くなっていました。
改めて携帯機の偉大さに気付きましたよ。
まあ、それは明日次話を投稿してから活動報告にでも書きますね。
それでは、 次回 「候補生便り(ネプギア編)」 をお楽しみに!
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