超次次元ゲイムネプテューヌ Re;夢のヒーローを目指して   作:ホタチ丸

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はい、皆さんこんばんわ!
予告通り、今日も投稿できました。
それでは、 候補生便り(ネプギア編) はじまります


候補生便り(ネプギア編)

 ……あれ? 今日はトリックさんはいないんですか?

 えっ、クビになったんですか?

 理由は……まあ、ラムちゃんやユニちゃんの時に色々と問題を起こしてましたからね。

 何となく、分かります。

 

 舞台裏はとりあえず置いておくとして、候補生便りも今回で4回目なんですね。

 担当は私、プラネテューヌの女神候補生ネプギアがお送りします。

 さて、今回はアカリちゃんを石に変えたネリネちゃんって子とフェル君がマジェコンヌさんの提示した条件でぶつかるところからですね。

 

 ……どこにいるのか分からない夢人さんと、石にされちゃったアカリちゃん。

 本当はどっちも私が何とかしたいのに……

 今の私にできることはいったい何なんだろう……って、ごめんなさい!? へ、変な空気にしちゃって!?

 よ、よーし、それじゃ、話を進めていきますよ!?

 

 それでは、 候補生便り ネプギア編 始まります。

 

 

*     *     *

 

 

「2人とも準備はいいな?」

 

「はい」

 

「……何時でもいい」

 

 マジェコンヌさんの声に、フェル君とネリネちゃんがそれぞれ返事をした。

 でも、緊張しているように見えるフェル君に比べて、ネリネちゃんはすごく落ち着いている。

 

「ルールは先程説明した通り、小僧がにょ……」

 

「ネリネ」

 

「チッ、ネリネを半径2mの円の外に出せば小僧の勝ちとする。ただし、制限時間は5分。小僧がネリネを外に出せなければ、ネリネの勝ちだ」

 

 フェル君とネリネちゃんの勝負は意外と単純なものだった。

 ネリネちゃんを中心として描かれた円から外に彼女を出せるかどうかである。

 だから、フェル君はネリネちゃんをどうにかして円の外に出せばいい。

 

「勝負は3回。1度でも小僧が勝てば、ネリネの負けとする……これが私が貴様に協力する条件だ。構わんな?」

 

「問題ない。3回全部勝つのはワタシ」

 

 フェル君が有利なはずの条件を突き付けられたのにも関わらず、ネリネちゃんは興味がなさそうだった。

 それだけ自信があるのだろう。

 対して、フェル君は表情を険しくしている。

 

「大した自信だね。でも、ボクは……」

 

「黙れ、無能。いいから、さっさと始めて」

 

「っ、マジェコンヌさん!!」

 

 2人の催促を受けて、マジェコンヌさんはため息をつく。

 

「はあ、分かった。では、始めるとしよう。おい、ちゃんと時間を見ておけよ」

 

「分かってるわよ……ったく、何で私がタイムキーパーなんてやらなきゃいけないのよ」

 

 ストップウォッチを片手に用意して愚痴をこぼすノワールさん。

 でも、人選は間違っていないと思う。

 お姉ちゃんや他の人達に任せるよりも、真面目なノワールさんの方が適任だ。

 

「フェルー! そんなロムちゃんを投げ飛ばした奴なんて、ぼっこぼっこにしてやんなさいよー! 絶対だからねー!」

 

「そーだそーだー! ぼっこぼっこにしてやれー!」

 

「うっさいわよ、あなた達!! そこで静かにしてなさい!!」

 

 ……ラムちゃんだけじゃなくて、お姉ちゃんまでノワールさんまで怒られてる。

 確かに、フェル君には勝ってもらいたいけど、そんなラムちゃんに乗っかかるような野次を飛ばすなんて。

 

「全く、ノワールは何にも分かってないんだね。戦いは始まる前から始まってるんだよ。試合前からブーイングを飛ばしてプレッシャーを与えると言う重大な役割がわたしにはあるんだってば」

 

「確かに、フェル君には勝ってもらいたいですけれど……」

 

「効果は全くないみたいよ」

 

「ふわぁ」

 

 ベールさんとブランさんの言う通り、お姉ちゃんのブーイングはネリネちゃんに全く効いていなかった。

 それどころか、あくびなんてしてるし……

 

「くっ、やっぱりわたしだけじゃダメなのか。こうなったら、皆でフェル君に有利な雰囲気作りを……」

 

「いい加減にしろ!! 次にふざけたことをすれば、貴様だけギョウカイ墓場からゲイムギョウ界に戻すぞ!!」

 

「ねぷっ!?」

 

 懲りないお姉ちゃんを、怒ったマジェコンヌさんが叩いて止めた。

 叩かれた頭を押さえて静かになったお姉ちゃんを見て、マジェコンヌさんはノワールさんへと指示を出す。

 

「では――始め!!」

 

 マジェコンヌさんがそう宣言した瞬間、フェル君の姿は消えていた。

 残像を残す程の速さでネリネちゃんへと突撃していたのである。

 

 ――フェル君には特別な力がある。

 その名前は『人魔一体』。

 『転生者』であるフェル君が『特典』として貰ったらしい特別な力だ。

 この力を使って、フェル君はフェンリルのリンちゃんの力を自分の力のように使えるらしい。

 危険種に分類されるフェンリルの力が使えたからこそ、フェル君は私達と一緒に犯罪組織と戦ってこれたのだ。

 

 その力で今、フェル君はもの凄い速さでネリネちゃんを円の外へと追い出そうと……

 

「遅い」

 

「っ!?」

 

 ――と思っていたら、いつの間にかネリネちゃんがフェル君の両腕を掴んでいた。

 これには私達も驚いてしまう。

 何故なら、フェル君はネリネちゃんを後ろから円の外に押し出そうとしていたのだから。

 つまり、今ネリネちゃんは後ろ向きのままフェル君の両腕をがっしりと掴んでいるのだ。

 

「動きが荒い。もう1度」

 

「くっ!?」

 

 煽り文句と共に腕を解放するネリネちゃんの姿に、フェル君は悔しそうに顔を歪めた。

 しかし、すぐさま高速での移動を開始する。

 円の外側を回りながら機会をうかがっている。

 

「――ッシ!!」

 

 今度はネリネちゃんの真横から奇襲を仕掛けるフェル君。

 先程よりも鋭く入った右腕がネリネちゃんの肩に当たりそうになり……

 

「ッ、ガァッ!?」

 

 ――次の瞬間、フェル君がネリネちゃんの前でうつ伏せで転がっていた。

 

「嘘……何なの、あの子……」

 

「あそこまでフェルの動きを見切るなんて……」

 

 ファルコムさんとケイブさんの呟きは私達の気持ちの代弁でした。

 そう、ネリネちゃんはフェル君の右手が肩に当たる直前で状態を少し後ろにそらして避けたのである。

 避けた後は、無防備になったフェル君の背中を押しだしただけ。

 私にはまるで撫でるように添えただけのように見えたけど、今も起き上がれずにいるフェル君を見るとそれだけではないみたい。

 

「……やはり、無理だったか」

 

「ちょっと!! それって、どう言う意味よブレイブ!!」

 

 そんなフェル君を見て、呻くように漏らすブレイブさんの言葉にユニちゃんが反応する。

 私達も気になり、ほぼ全員がブレイブさんへと顔を向ける。

 

「フェルではあの少女――ネリネに勝つのはやはり無理だったのかと言ったまでだ」

 

「だから、どうして勝てないって決めつけているのよ!! まだ時間はあるし、フェルの強さはアンタも……」

 

「知っているからこそ、俺は断言できるのだ――フェルではこの勝負、ネリネには勝てないと」

 

 ユニちゃんの反論を聞きながらも、ブレイブさんは重々しく断言した。

 その様子に私達は誰も言い返せない。

 それだけブレイブさんの言葉には重みがあった。

 

「以前より弱くなったとはいえ、ネリネは俺とジャッジを片手で圧倒できる力を持っているのは先程のやり取りで既に分かっていた。加えて、皆がいたあの場に誰にも気付かれず侵入することができた――つまり、彼女の力量は少なく見積もっても女神に奇襲をかけられる程度にあると言うことだ」

 

「……女神と同等、とまではいかなくても近い実力があるってことね」

 

 ブレイブさんの分析を、ブランさんが噛み砕いて解釈した。

 その評価に私達は凍りついてしまう。

 同時に疑問を抱かずにいられない。

 フェル君と同い年くらいの子どもなのに女神に近い力を持っているネリネちゃんは何者なのだろうかと。

 

「対して、フェルは確かに年の割には強いだろう――だが、それはあくまで一般的な人間を基準にした場合だ。女神クラスの相手となると……」

 

「だ、だけど、フェルにはリンがいるじゃない!? えっと……そうだ、『人馬一体』!?」

 

「『人魔一体』ですわよ……でも、わたくしも初めてフェル君が戦っている姿を拝見しましたが、あのままではまず勝てないと思いますわ」

 

「何でですか、ベールさん!?」

 

 難しい顔で顔をしかめるブレイブさんとベールさんの言葉を聞き、ラムちゃんとユニちゃんが声を荒げた。

 すると、2人に代わってノワールさんがため息をつきながら説明してくれる。

 

「はあ、2人とも落ち着きなさい。あなた達はさっきまでのフェルの動きをちゃんと目で追えたでしょ?」

 

「う、うん、何となくだけど――あっ」

 

「そう言うことよ。今のフェルのスピードは女神である私達の目でも追える程度のスピードなのよ」

 

 ……ノワールさんの言葉に私はラムちゃんと同じく納得してしまった。

 確かに、フェル君の今までの動きは速かったけど、目で追えないほどじゃない。

 仮定とはいえ、女神に近い実力を持っているネリネちゃんなら、フェル君の動きを捉えられてもおかしくない。

 

「ついでに教えといてやろう。小僧の使っている『人魔一体』だが、アレには致命的な欠陥がある」

 

「致命的な欠陥? それっていったい何でちゅか?」

 

「ってか、アタイらそんなの知らないんですけど?」

 

 勝負の結果に嫌な予感を感じていた私達に、マジェコンヌさんがフェル君達の方を見たまま話しかけてきた。

 すぐに反応を返したのはワレチューとリンダさんだった。

 

「そもそもフェルが使ってる『人魔一体』ってのは『特典』とか何とかいうもんじゃないんですか? アタイとコイツが魔物使いについて調べた時にはまったく出て来なかったんですけど……」

 

「そうっちゅ。本人もそう言ってたし、話を聞く限りデメリットは無いように……」

 

「無いわけないだろう。そんなご都合主義のような良いこと尽くめの特殊能力があってたまるか」

 

 リンダさんとワレチューの反論を、マジェコンヌさんは一蹴した。

 その表情は何故か苦々しい。

 

「この世に完全無欠の力などありはしない。それは絶対だ」

 

「やけにはっきり言い切るじゃない。どうしてそんなことが言えるのよ?」

 

「当たり前だ。そんな矛盾だらけの力が形を持てるわけないと分かっているからだ……ふん、まあいい。話を戻すぞ」

 

 実感がこもっているように感じられたマジェコンヌさんの宣言を聞き、アイエフさんが眉をひそめながら尋ね返した。

 その話をしたくないのか、マジェコンヌさんは露骨に顔を歪めながら脱線した話を元に戻そうとする。

 

「貴様らはコップに水を注ぎ続けてもこぼれないと思うか?」

 

「……急にどうしたの、マジェっち? もしかして熱でもあるの?」

 

「貴様はどうしてそう空気を読まん行動ばかりとるのだ!? それと、2度とマジェっちと呼ぶな!?」

 

 急なマジェコンヌさんの問いかけを、お姉ちゃんが無駄に心配そうな雰囲気で返した。

 重くなりかけた空気を払拭させるためにしたんだろうけど、さすがにそれはないよ、お姉ちゃん。

 マジェコンヌさんが怒るのも仕方ない。

 

「なるほど。そう言うことね」

 

「おっ、ブラン分かっちゃったの? で、答えは?」

 

「要するに、フェルの体が『人魔一体』に追いついてないってことよ」

 

 お姉ちゃんのボケを無視して、ブランさんはポツリとマジェコンヌさんの言葉の意味を理解して納得していた。

 すると、お姉ちゃんはすぐさま標的をブランさんへと変えて絡み始める。

 そんなお姉ちゃんの顔を押しのけつつ、ブランさんは自分の辿りついた答えを口にする。

 

「マジェコンヌの例え話で考えると、コップはフェルで注がれる水はフェンリルの力ってことになるわ。だけど、フェルは『人魔一体』の力を持つ以外は特に珍しいところもない普通の少年よ。そんな子がフェンリルの力を十全に使いこなせるわけがない……って、言ったところかしら?」

 

「そうだ。『人魔一体』は突き詰めれば自己の力を取りこむ力によって底上げする能力のことだ。小僧が今、素早く動けているのも取り込んだ力が偶々フェンリルだからだと言うだけだな」

 

 2人の話を聞いて、私も『人魔一体』の致命的な欠陥が分かってしまった。

 要するに、『人魔一体』には覆せない力の上限があると言うことだ。

 それはフェル君自身の限界であって、いくらリンちゃんの力を使っても越えられない。

 

「で、でも、おかしくないですか? それが本当なら、フェル君はフェル君の限界までしか強くなれないはずですし、あんなに速く動けるわけないです」

 

「それは単純に小僧の体がフェンリルの力に適応し始めているからだろうな」

 

「適応って……まあ、意味は分かるけど、もっと違う言い方はないの?」

 

「意味は変わらん。小僧の体がフェンリルの力を引き出しやすく成長しているのに違いはないからな」

 

 疑問を感じたコンパさんが尋ねると、マジェコンヌさんは戸惑うことなく即答した。

 多分、そう聞かれるのが分かっていたんだと思う。

 先程の例え話だと、コンパさんの疑問は解消されないと分かっていたから。

 

「うーんとさ、長々と難しい話をしたのはいいけど、フェル君に勝ち目があるからこの勝負にしたんだよね? だったら、フェル君はどうすればネリネちゃんに勝てるの?」

 

「……そうだな。私はネリネがあまりにも有利過ぎるからこの勝負を提案した」

 

「そうそう、だったら当然フェル君が勝つために必要なことも分かって……」

 

「知るか、そんなもの」

 

「ほえ?」

 

 暗い話題を明るくしようとしたお姉ちゃんだったけど、マジェコンヌさんはそれを否定してしまう。

 どうでもいいと言わんばかりに切り捨てる様子に、私達は全員驚いてしまった。

 

「ま、またまた~、マジェっちはフェル君が勝てるようにこの勝負を提案したんでしょ? だったら……」

 

「誰がそんなことを言った? 私は別にどっちが勝っても構わん。ただ、あのままでは“奴”の気遣いが無駄になるのが我慢できなかっただけだ」

 

 冷たいとも思えるマジェコンヌさんの対応だけど、何故か私にはそれだけじゃないと思ってしまう。

 だって、マジェコンヌさんのフェル君を見る目が厳しいけど温かいような……上手く言えないけど、フェル君に勝ってもらいたいと思っているように見えるから。

 

「“奴”? それって、ネリネちゃんが言っていた“あの人”のこと?」

 

「そうだ。そもそもネリネが言っている“奴”は……」

 

「――ァアアアァァァッ!!」

 

 続けて質問をぶつけるお姉ちゃんにマジェコンヌさんが答えようとした瞬間、フェル君の大声が聞こえてきた。

 ハッとしてそちらを向くと、ネリネちゃんの周りをフェル君が残像を残しながら駆けまわっていた。

 

「どうするつもりなのかしら? あのまま攻撃してもさっきの二の舞になるって分かっているのに」

 

「……今は見守ろう。フェルが勝つって信じて」

 

 眉間にしわを寄せながらケイブさんが呟くと、ファルコムさんが静かに告げた。

 

 ……そうだよね。

 私達の中で1番フェル君を心配しているのはファルコムさんだもの。

 夢人さんとユニちゃんが出会う前の危うい時期からずっと見守って来たファルコムさんにそう言われたら、私達も信じるしかない。

 フェル君が必ず勝つって。

 

「ノワール、時間は?」

 

「……後、40秒よ」

 

 時間はまだある。

 その間にネリネちゃんを1歩でも円の外に出せれば。

 

「――何で」

 

 ネリネちゃんが何かを言った気がした。

 でも、私の位置からでは唇が動いたことしか分からない。

 

「――――なの」

 

 すると、ネリネちゃんは何故か俯いてしまった。

 もうどんな顔をしているのかも分からない。

 そんなネリネちゃんの姿を見て、私は背筋が凍りついていくような感覚に襲われた。

 でも、それはネリネちゃんが怖いからじゃない。

 ネリネちゃんの姿が私の知っている“あの子”の姿に重なってしまったからだ

 

「何でワタシじゃなくて無能なの?」

 

「――えっ?」

 

 ネリネちゃんが顔を上げた次の瞬間、フェル君の足は止まっていた。

 フェル君自身もどうして動けなくなったのか分かっていないみたいだ。

 でも、私達の方から見るとよく分かる。

 

 ……何故なら、ネリネちゃんはフェル君を後ろから抱きしめているのだから。

 そう、円の外を走っていたフェル君がいつの間にかネリネちゃんに捕まっていたのだ。

 どんな風に動いたのかは私にも分からない。

 まるで自然とフェル君がネリネちゃんの腕の中に捕まりに行ったのではないかと勘違いしてしまう程に違和感がない。

 ただ、分かっているのはフェル君自身が気付かない速さでネリネちゃんが動いたと言うことだけ。

 

「ねえ、教えて。ワタシに無くて、無能にあるものって何なの?」

 

「っ、離して!?」

 

「――答えろ」

 

「うぐぅっ!?」

 

 ようやく自分が捕まったことに気付いたフェル君が逃げようとしたが、威圧感を増して腕の力を強めるネリネちゃんの拘束を解けない。

 

「いいから答えろ――どうしてお前なの? どうしてワタシじゃない? 無能なお前がどうして“その力”を持っている?」

 

「そん、な、こと……っ」

 

「――もういい。分かった」

 

 息をするのも苦しいほど抱きしめていたフェル君を、ネリネちゃんは不意に解放した。

 突然のことに驚きバランスを崩したフェル君だったが、すぐにネリネちゃんの方へと振り返る。

 

「無能に聞くのが間違いだった。だから……」

 

 ネリネちゃんは無表情のままフェル君の胸に手のひらを添えて……

 

「死ね」

 

 ――フェル君を軽々と弾き飛ばした。

 力を込めたようには思えなかった。

 だけど、実際ネリネちゃんに吹き飛ばされたフェル君は大分離れた位置で地面に転がっている。

 うつ伏せに倒れたまま身動き1つしていない。

 

「っ、フェル!?」

 

「急ぐわよ、コンパ!?」

 

「は、はいですっ!?」

 

 動かないフェル君を見て、いち早く正気に戻ったファルコムさんが駆け出す。

 続けて固まっているコンパさんに呼びかけたケイブさんも慌てて動き出した。

 

「時間は?」

 

「……くっ、後13秒よ」

 

 あまりに呆気なく吹き飛ばされたフェル君の姿に動揺して動けずにいた私達に、ネリネちゃんは残り時間を尋ねた。

 悔しそうに顔を歪めて答えるノワールさんの気持ちは分かる。

 気持ちとしてはすぐにでもフェル君に駆け寄りたいけど、目の前で起こった出来事に体が動かないことが悔しい。

 結局、私も他の皆もオロオロとフェル君とネリネちゃんを見ることしかできないでいた。

 

「おい、さすがに殺すのはやり過ぎだぞ」

 

「弱いのが悪い。弱い奴にあの力は相応しく……」

 

 マジェコンヌさんが睨みながらネリネちゃんへと苦言を呈した。

 不服そうに眉を寄せるネリネちゃんだったけど、その言葉が最後まで告げられることはなかった。

 

 ――何故なら、ネリネちゃんの左腕がいつの間にかなくなっていたのだから。

 

 本当に私達にも何が起こったのか分からない。

 だけど、気付けばネリネちゃんの左腕には肘から下が存在していなかった。

 そして、次に私達が目にしたのは遠くに吹き飛ばされて倒れていたはずのフェル君の姿。

 ……その口に無くなっていたはずのネリネちゃんの左腕を咥えた姿で。

 

 

*     *     *

 

 

 今回は、ここまでですね。

 

 ……ごめんなさい。

 まだちょっと気持ちの整理がついてなくて……

 目の前で起こったことなのに、信じられないんです。

 フェル君に何があったのか――どうしてあんなことになったのかも……

 

 それと、多分ネリネちゃんもそんなに悪い子じゃないと思うんです。

 自分でもよく分からないんだけど、アカリちゃんを目の前で石にされたのに私はネリネちゃんを憎めないでいる。

 色んなことが1度にあり過ぎて頭の中がまとまらない。

 今の私に何ができるのかも、何をしなくちゃいけないのかも分からないんです。

 夢人さんとアカリちゃんも大切だけど、どうしてなのかネリネちゃんのことも気になっちゃって……

 

 

 …………

 

 

 ……すいません。

 こんなことばかり考えてちゃ駄目ですよね。

 もっとしっかりしないと。

 状況に流されるだけじゃなくて、私にできることをちゃんと探していきます。

 

 でも、願いが叶うなら――夢人さん、今すごくあなたに会いたいです。




と言う訳で、今回は以上!
これでようやく次話からルウィー編に入ります。
……本当、お待たせしてすいませんでしたm(_ _)m
それでは、 次回 「そのニート、レベルアップ」 をお楽しみに!
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