超次次元ゲイムネプテューヌ Re;夢のヒーローを目指して   作:ホタチ丸

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はい、皆さんこんばんわ!
寒かったり暑かったりで、今年の冬は安定しませんね。
そのせいか、私も最近喉の調子が悪くて……
皆さんも体調管理は気をつけてくださいね。
それでは、 その声、むなしく響くだけ はじまります


その声、むなしく響くだけ

「……本当にどうしようかしら」

 

 ブランは悩んでいた。

 昨日、ベールから提案された協力を受け入れるかどうかを。

 時間も忘れて考えこんでしまい、結局一睡もできずに朝を迎えてしまったほどである。

 

(やっぱり、駄目。でも……)

 

 何度も同じ考えを思い浮かべては否定し、また同じ結論に至っては打ち消している。

 優柔不断な自分の気持ちに苛立ちすら、ブランは感じていた。

 

 ベールからの提案はブランにとって喉から手が出るほどに魅力的なものだった。

 瞬く間に教会を手中に収めた自分の偽物とそのバックにいる魔王派と言う組織をブランは甘く見ていない。

 だから、自分と一緒に戦えるネプテューヌやベールを味方にすることは戦力的に大きな意味を持つことをブランも理解している。

 

 ……しかし、一方でブランはネプテューヌ達を信じられないでいた。

 今までずっと守護女神戦争で争っていたのにも関わらず、全てを忘れて仲良く共闘なんて真似をすることが出来ないのである。

 

(偽物にネプテューヌ達のことがバレたのは確実。時間はもうないのに……)

 

 さらにブランを焦らせていることがある。

 それはボッツの行方が分からなくなっていることだ。

 自分が最も信頼を寄せているフィナンシェからの忠告を受け、監視をつけようとした時にはボッツの姿は街のどこにもなかった。

 順当に考えれば、偽物に報告へ向かったのだろう。

 つまり、それは教会内でスパイ活動をしているフィナンシェの身も危なくなっている可能性がある。

 だから、ブランは焦っていた。

 一刻も早く魔王派からルウィーを取り戻してフィナンシェの安全を確保しなくてはいけないのだが、そのためにネプテューヌ達に協力を仰がなければならない状況に苦悩していたのである。

 

 ――そんな時、ブランのいる執務室の扉が叩かれる音がした。

 

「どうぞ」

 

 突然の訪問者を不思議に思いながら、ブランは入室を許可した。

 今の時間帯でブランは誰とも会う約束をしていなかった。

 もしやベールかと考えていると……

 

「え、えっと、失礼します」

 

「あなたは確かネプテューヌ達と一緒にいた……」

 

「ろ、ロム、です」

 

 酷く緊張した様子のロムを見て、ブランは困惑してしまう。

 ブランは昨日チラリと擦れ違った程度のロムが何をしに来たのか分からないのだ。

 何かを言おうとしては口をパクパクさせるだけのロムと、それを黙って見続けるブラン。

 どちらも話を切り出さずに気まずい沈黙が流れてしまう。

 

「……はあ、わたしに何か用?」

 

「え、えっと、その……はぃ」

 

「そう、それで何を聞きに来たの?」

 

 仕方なくため息をつきつつブランが話しかけると、ロムはしどろもどろになりながら頷いた。

 俯いたロムの返事はとても小さい。

 ブランを怖がり、ビクビクと縮こまっているようにも見える。

 

「それは、その……」

 

「言いたいことがあるなら、はっきり言ってちょうだい。別に怒ったりしないから」

 

「ご、ごめんなさい……」

 

 余計に小さくなって謝るロムに、ブランはどことなくやり辛さを感じてしまう。

 威圧的に話しかけているつもりはないが、怖がられているのではないかと思って傷ついているのだ。

 

(どうしよう、こう言う時は何て言えば……)

 

「あ、あの!」

 

「うん? どうしたの?」

 

 急に大きな声を出すロムに、ブランは考えを中断させた。

 出来るだけ優しくと心掛けながら、ブランはロムに先を促す。

 

「おね――ブランさんとお話ししたくて来ました!!」

 

(……えっ、それだけ?)

 

 ロム本人にしてみれば真剣なのだろうが、ブランの受け取り方は違う。

 ブランが欲していたのは話の内容である。

 

(これが子どもの感性と言うわけね。ここで追い出すのもちょっと大人気ないかしら?)

 

 ブランはロムをどうするか悩んでしまう。

 ただ無為に話をするだけの時間など、ブランにはない。

 しかし、ここで追い出すのもさすがにかわいそうだと思っていた。

 

「……えっと、具体的にはどんなことを?」

 

「それは……その、ブランさんのこととか……」

 

(つまり、話題は特になしか)

 

 もじもじするロムの姿から、ブランは本当に話をするためだけに来たのだと察した。

 しかし、そうなると本当に困ってしまうのはブランの方である。

 ロムは話をするだけで満足だろうが、ブランには聞かせるような話題がない。

 そもそもブランは何を話せばロムが満足するのか分からないのだ。

 

「じゃあ、わたしから聞きたいんだけど、あれからネプテューヌの様子はどう?」

 

「ネプテューヌちゃんなら、もう元気だよ(にこにこ)」

 

「……そう」

 

 苦肉の策でネプテューヌの話題を振ってみたが、すぐに会話が途切れてしまった。

 話を膨らませられない自分の不甲斐なさと自分を見てニコニコと笑うロムに、ブランは気まずさを感じてしまう。

 

「きょ、今日はこれから何かやりたいこととかないの?」

 

「んー、ないかも(たぶん)。だから、ブランさんと一緒にいたいな(だめ)?」

 

(うっ……)

 

 上目遣いでお願いしてくるロムを見て、ブランは頬が引きつりそうになるのを必死に我慢した。

 正直に言えば、ブランはロムと2人きりの今の状況が苦痛だった。

 魔王派への対処とベールへの返事、ブランにはロムと話す以上に考えなければならない大切なことがある。

 煮え切らない自分への苛立ちと焦り、加えて眠気でブランはいつロムに怒鳴り散らしてしまうかもしれないことが1番心配だった。

 だから、ブランは八つ当たりをしてしまう前にロムを退室させようと考えた。

 

(悪いけど、彼女には出て行ってもら――いや、その前に1つだけ聞いておこうかしら)

 

 それはふと頭をよぎった疑問だった。

 このまま追い出してしまうのも悪いと考え、ブランはせっかくだからとロムに尋ねる。

 

「あなた達と一緒にいた男性……えっと、竹刀袋を持った黒髪のゆっくんとか呼ばれてた……」

 

「夢人お兄ちゃんのこと?」

 

「そう、その人のことを教えてもらえないかしら?」

 

 首を傾げるロムに、ブランは頷いて見せた。

 何でもない風を装おうとしながらも、ブランの顔は強張っている。

 何故なら、夢人の存在もブランの悩みの種の1つなのだから。

 

 

*     *     *

 

 

「違う。全然なっていない」

 

 ディックが目の前で竹刀を振るっているリュータを鋭く睨みながら叱責を飛ばす。

 それだけ見れば、ディックがリュータに稽古をつけてあげているようにも思える。

 しかし、実際には……

 

「だから、そこはグッとしてギューッとする感じだと何度言えば分かるんだ」

 

「分かるわけねーだろ!?」

 

 そんなコントみたいなことを繰り返しているだけなのだ。

 文句を叫ぶリュータの気持ちは分かる。

 私も同じ立場なら、あのディックの真顔をぶん殴ってやりたくなる。

 

「何故分からん? グッとしてギューッだと言っているだろ」

 

「それ、同じ意味じゃねーか!? どう動けばいいんだよ!?」

 

「仕方ない。そこまで言うのなら、手本を見せてやろう」

 

 やれやれと頭を振りながら、ディックは剣を構えた。

 剣の柄がちょうどおへそ辺りにくる構え――よく夢人が素振りの時にしていた中段の構えだ。

 

「よく見ていろ。グッとして、ギューッだ!」

 

 ディックが宣言すると、ブォンと言う風の音だけが聞こえた。

 剣がどう動いたのかはまったく見えなかった。

 しかし、私には確かにディックが何かを斬ったのだと分かる。

 いや、そんな強いイメージを叩きつけられたかのような気分だ。

 

「分かったな? 今のがグッとしてギューッだ。さあ、やってみろ」

 

「出来るかぁ!? ってか、全然分かんねーんだよ!? もっとゆっくりやってくれよ!?」

 

「何を言っている? 今のはかなり遅くしたはずだぞ? アレでも見えないのか?」

 

「普通見えないっての!?」

 

 やはり、ディックはズレているわよね。

 あんなの見切れる奴の方が少ないって言うのに、どうしてそれを周りにも求めているのかしら?

 

「――で、同じ剣士としてあなたはどう思うの、ファルコム?」

 

「あはは、それをあたしに聞くの?」

 

 隣で一緒にコントを見ていたファルコムへと話を振ってみた。

 話には付き合ってくれるようで、私が顔を向けるとファルコムは苦笑している。

 

「だって、私は剣のことなんてさっぱり分からないもの」

 

「うわー、まったく興味がないって感じだね。そうだな……一応、ディックさんが何を言いたいのかは分かるよ」

 

 予想外の答えに、私は目を丸くした。

 あの擬音しかないディックの説明で何が分かるのだろう。

 

「多分だけど、ディックさんは筋肉の使い方のことを言っているんだと思う。今見せた中段からの突きと戻しの動作、違和感がまったくなかったからね」

 

「……ごめん、私アイツが何をやったのかも分からなかったんだけど」

 

「ああ、そうだったんだ。えっと、どう説明したらいいんだろう」

 

 悩みだすファルコムに、私は少し申し訳なく思ってしまう。

 そこまで真面目に答えてくれなくてもいいのに。

 ……ってか、ファルコムはさっきのが見えてたのね。

 

「うーん、突きの動作って普通に斬るよりも難しいんだよ。どうしても予備動作が必要になるから、避けられやすくなるし下手をすると大きく体勢を崩しちゃうから」

 

「でも、アイツはそんな風に見えなかったけど?」

 

「そう、そこが彼のすごいところなんだよ」

 

 そう言うと、ファルコムは実際に見せてくれるらしく、おへその辺りで両手の握り拳を重ねた。

 剣がないだけで中段の構えを取っているらしい。

 

「さっき、彼はこの状態から突きを放ったんだ。でも、このままじゃ、まともな突きなんて打てっこない。どうしてだか分かる?」

 

「力を入れられないからでしょ? それくらいは分かるわ」

 

「うん、アイエフの言う通り、中段の構えを取っただけの腕の余裕だけじゃ突きなんて打てないんだよ。だから、普通は剣の柄が体と並ぶくらいまで引かないといけないんだ」

 

 その理屈はさすがに分かる。

 要は勢いをつけられないのだ。

 前に剣の突きは弓矢のように放つのだと、どこかで聞いた気がする。

 そのまま弓を放つのではなく、限界まで弦を緊張させて放つからこそ真っ直ぐに飛んでいくのだとか何とか。

 

「でも、ディックさんは剣をあそこからまったく後ろに下げていない。その代わり、少しだけ切っ先が下がっていたのには気付いた?」

 

「えっ、そうなの?」

 

 ごめん、本当にそこまで真剣に見てなかったわ。

 だって、暇つぶし程度のつもりで見ていただけだから。

 

「そうなんだよ――ここからは私の推測なんだけど、彼の突きは打つ前に少しだけ力を入れただけなんじゃないかなって思うんだ」

 

「少しだけって、まあその少しがどれだけなのかは私には分からないけど……」

 

「それは彼も言っていたようにグッとした程度じゃないのかな。それを緩めた反動で突きを放ち、ギューッて感覚で元の中段に構える……それが彼の実演したことなんだと思うよ」

 

 ファルコムの説明で、私は一応の理解を得られた。

 グッもギューッも、どっちも引く力の擬音だったのね。

 確かに、それならディックの理不尽な指導の説明もつく。

 ……だけど、納得はできそうにない。

 

「それって簡単に言っているけど、かなり難しいじゃないの」

 

「そうなんだよね。力の抜き加減が大事だから、リュータ君みたいなタイプは特に……」

 

 ああ、いつもブンブン振り回しているだけだもんね。

 アレで上達するんだったら、夢人もきっと今頃は剣の達人になっているでしょうし。

 

「多分だけど、ディックさんはリュータ君にもっと肩の力を抜けって伝えたいんじゃないかな? かなり遠まわしだけど……」

 

「絶対に違うと思うわ」

 

 ファルコムには悪いけど、これは断言できる。

 アレは周りに自分と同じレベルのことを求めているだけだ。

 自分ができるのだから、相手もできて当たり前とか考えているに違いない。

 

「でも、律儀な人だよね。とても復讐なんて目的で旅をしているようには見えないよ」

 

「そうね」

 

 困ったように眉根を下げて笑うファルコムの言葉に頷きつつ、私はディックへと目を向けた。

 天然具合やら人よりもズレた感性のせいで忘れそうになるが、ディックは片目に傷があるドラゴンに復讐するために剣の腕を磨いてきた。

 それがファルコムの言う通り、シアンに剣を造ってもらう代わりにリュータの面倒を見ている人物だとは到底思えない。

 

「勝手なイメージだけど、復讐を考えている人はもっと悲壮感や威圧感を垂れ流しているような感じだと思っていたよ。こう、触れれば斬れる刀のような感じでね」

 

「まあ、その話題になると確かにそんな感じになってたわね……でも、目的があるだけ幸せなのかもね」

 

「アイエフ?」

 

「……ううん、何でもない」

 

 ついこぼれてしまった本音を聞かれなくてよかったと思う。

 ディックの旅の目的を聞いてから、何度も自分との違いを考えていた。

 どうしようもないことに諦めて目的もないままフラフラとしている私と、報われないことを理解していながらも突き進むディック――いったい何が違ったんだろうと。

 

「あれ? もう終わりなの?」

 

「ああ、あの様子ではもう無理だからな」

 

 考えに耽っていると、どうやらディックの指導は終わったらしくリュータが大の字で転がっていた。

 

「そう言えば、アイエフはトレジャーハンターだと聞いたのだが本当なのか?」

 

「誰から――って、聞くまでもないか」

 

「そこで寝転がっている奴からだ。聞いてもいないのにしゃべっていたのでな」

 

 おしゃべりなのも考えものね。

 でも、それくらいしかリュータにはストレスの発散法がないのかしら?

 毎日倒れるまで面倒を見てもらってるからね。

 

「それで、それがどうかしたの? まさか、アンタの探しているドラゴンがいるダンジョンを教えろとか言うんじゃないでしょうね? 言っとくけど、私はそんなドラゴンを1度も見たことがないからね」

 

「だろうな。簡単に見つかるようでは俺も苦労しない。これを見てもらいたいんだ」

 

「はいはい、いったい何な――えっ?」

 

 ディックがポケットから取り出した物を見て、私は固まってしまった。

 何故なら、私はそれと似たような物を見たことがあるんだから。

 

「以前、雨宿りのために入った洞窟の中で見つけたものなのだが、どれくらいの価値があるんだ?」

 

「……ちょっと聞きたいんだけど、どこの国の洞窟で見つけたのよ?」

 

「分からん。いつも気が付けば、違う国に着いているのでな。ただ、今まで見たこともないモンスターが洞窟にいたな。人の上半身と蜘蛛のような下半身が合体した全体的に虫っぽいモンスターだが、それで分からないか? 他に特徴として……硬そうな外見に似合わず溶けたバターのように柔らかい外皮だったことくらいか」

 

 ……うん、ツッコミを入れたい気持ちはあるけど我慢しないと。

 今大事なのはディックの持っている金属片の方だ。

 

「へえ、そんなモンスターがいたんだ。でも、ラステイションじゃ見たことないかも。アイエフはどう?」

 

「……前に1度、プラネテューヌで戦ったことがあるわ」

 

「そうか。ならば、あそこはプラネテューヌだったのだな」

 

 のんきに会話をしているファルコムとディックに、声を大にして言ってやりたい。

 その洞窟は絶対にプラネテューヌじゃないって。

 何故なら、その金属片――鍵の欠片は1つの国に1つしかないはずなのだから。

 

 ……どうして私が鍵の欠片を見つけてるのよ!?

 それはネプ子達の役目でしょ!?

 こっちに来るんじゃないわよ!?

 

「まあ、そんなことはどうでもいい。今まで持っていたことすら忘れていたのだが、せっかくだからこれを売りに出そうと思ってな。その前にアイエフの意見を聞きたい。どれくらいで売れそうだ?」

 

「……どうかしらね。私もアイテムの鑑定ができるってわけじゃないから、ちょっとよく分からないわ」

 

「そうか。しかし、これはいったい何なんだろうな。何かのパーツのように見えるが、これ単独でも音声機能があるらしくて変な声が聞こえてきたことがあるんだ」

 

 仮称チェアーさん、アラーム機能か何かだと思われているのね。

 まあ、よく分かんない理屈でただの金属片が通信機みたいになる方が信じられないか。

 私も体験しなかったら、絶対に信じなかったものね。

 ……これ、私が確保しておいた方がいいわよね。

 

「ねえ、よかったら私が買い取ってあげましょうか? 実はそれと似た物を探していたの。それで、アンタはいくら必要なのよ?」

 

「探していたのなら、別にタダでも構わんぞ。別に金が必要なわけではないのだから」

 

「アンタがそうでも私が気にするのよ。それに旅の路銀は多い方がいいじゃない」

 

「……なら、頼む。だが、俺は相場に疎くてな。しばらく飯の心配をしなくて済む程度で頼む」

 

「結構、難しい注文をしてくれるわね。でも、分かったわ。そこら辺は戻ってから話し合いましょ?」

 

「ああ」

 

 商談が無事成立し、これで一安心と言ったところか。

 とりあえず、下手な店に売りに出されて行方が分からなくなりましたじゃ困るからね。

 でも、離れてもアイツらの事情に巻き込まれるなんて、私って今年が厄年だったかしら? それとも呪われているとか?

 

「とりあえず、これは渡しておこう。俺はアイツを起こしてから帰る」

 

「受け取っちゃってもいいの? 私がこのまま猫ババするとか考えないわけ?」

 

「自分でそう言う奴がするとは思わない。仮にそうしたとしても、お前にはシアンの所以外に行くところがないだろ? だから、安心だ」

 

「どう言う意味よ、それ!?」

 

「それはお前がぼ――すまない、デリケートな問題だったな。配慮の足りない俺を許してくれ」

 

「誤解をした上に謝るんじゃないわよ!?」

 

 初対面の時から私のことをボッチだと、ディックは勘違いしている。

 その度に誤解だと叫ぶが、ディックはまったく聞こうとしない。

 今も私の言葉を無視して、倒れているリュータの方へと歩いて行ってしまう。

 

「まあまあ、落ち着きなって」

 

「フンッ、帰るわよ!!」

 

「はいはい」

 

 苦笑しながら宥めてくるファルコムを置いて、私はズンズンと帰り道を歩いていく。

 頭の中はディックへの怒りでいっぱいだ。

 

〔――ますか! この声が聞こえますか! 聞こえていたら返事を……〕

 

「うるさい!!」

 

〔ご、ごめんなさい!?〕

 

 だから、やたらエコーがかかった声で話しかけてきたファルコムに怒鳴っても仕方ないだろう。

 まったく、今は話しかけないでよ。

 思わず八つ当たりしちゃったじゃない。

 

「急に叫んでどうしたの?」

 

「何言っているのよ? ファルコムが話しかけてきたんでしょ?」

 

「えっ、あたしは何も言ってないよ」

 

 それでもしつこく話しかけてきたファルコムを立ち止まって睨むが、どうにも様子がおかしい。

 よく考えれば、さっきの声はファルコムじゃなかったかもしれない。

 

 ……あれ、もしかして私が怒鳴った相手ってチェアーさんだったの?




と言う訳で、今回はここまで!
次回はデート回……リーンボックスの時のようにはならない、はず。
それでは、 次回 「そのプレゼント、交換」 をお楽しみに!
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