超次次元ゲイムネプテューヌ Re;夢のヒーローを目指して 作:ホタチ丸
遂に明日セハガールの後日談がDLCで配信されますね。
どんな内容になっているのか楽しみです。
それでは、 そのプレゼント、交換 はじまります
「――と言うわけでして、経費で何とかなりませんか?」
〔まったく、この間は珍しく特ダネを拾って来たと思ったら、今度はカメラを壊すなんてな。分かった。ある程度、常識的な範囲でなら許可しよう。ただし、ちゃんと取材をしてくるんだぞ〕
「はい、ありがとうございます!!」
携帯を片手にデンゲキコは勢いよく頭を下げた。
インスタントカメラの現像を待っている間、店の外で上司に連絡を取っていたのである。
〔返事だけはいいんだけどな、お前って。壊れたカメラの方もメーカーで保証が効くんじゃないのか? ちゃんと先方に確認を取っておけよ〕
「分かってますよ。私もそこまで子どもじゃありませんって」
〔……ファミ通と違って、お前は言っておかないと心配だからな。とにかく、ルウィーは寒いんだから風邪なんて引くなよ。締め切りは待ってやらないからな。それじゃ、後は頑張りな〕
ぶつりと切れた携帯の画面を眺め、デンゲキコは嫌そうに顔を歪める。
「ひと言多いんですよ。あなたは私の親ですか……っと、それにしても案外早く現像を取り扱っている店が見つかったせいで暇になってしまいましたね」
デンゲキコが朝一で行動を開始した理由はインスタントカメラの現像をしてくれる店を探すためであった。
今までは自前のカメラで写真を撮ってそれをパソコンに落とすだけであったため、店に任せることなんて経験したことがなかったのである。
しかし、それも予想以上に早く見つかり、デンゲキコは完全に手持無沙汰になっていたのだ。
(あー、こうなるんでしたら、ルウィーの観光雑誌とかよく読んでおくべきでした。町並みもプラネテューヌと違いすぎて、何が何だか……)
ゲイムギョウ界の大陸で唯一、ルウィーだけは独自の発展が遂げられていた。
それは一重に魔法文化が広まったことが理由だろう。
科学による発達を続けるラステイションとは、正に真逆の進歩をしている。
(時間もまだありますし、散策ついでに何か他のネタ探しもしておきますか)
そう決めると、デンゲキコは適当に街中を歩き始める。
近代的な高層ビルが立ち並ぶプラネテューヌと違い、ルウィーはほとんどの建物が1階建てである。
降ってきた雪を積もらせないようにするために鋭角な円錐を思わせる屋根と相まって、建物がにょきにょきと生えたキノコのように見える。
「アレは露店、ですかね?」
建物に関して失礼な感想を抱きながら歩いていると、デンゲキコは少し開けた場所に辿りついた。
広場のようであり、ベンチや自販機、さらに子どもが作ったのであろう雪だるまが置いてある。
デンゲキコの目を引いたのは、地面に大きな布を敷いて座っている女の子だ。
頭に被っている白い兎のような耳が垂れている帽子が特徴的な小さい女の子だった。
彼女の前には薬っぽいものやアイテムのような物が並べられている。
「いらっしゃいませですの。ようこそ、がすとショップ出張店へですの」
あまりにも凝視し過ぎたせいか、女の子の方がデンゲキコに気付いた。
にっこりと笑う女の子――がすとにデンゲキコは困ったように頬を掻きながら近づく。
「え、えっと、私別にお客さんってわけじゃないんですけど」
「まあ、そうだったんですの? でも、他にお客さんもいませんし、よければ見ていって欲しいですの。どれもがすと自慢のアイテムですの」
「アイテム……具体的にはどんな効果があるんですか?」
見たことのないアイテムの数々に、デンゲキコの好奇心が刺激された。
まるでポーションのような試験管にピンク色の液体が入っている物を手に取り、デンゲキコはがすとに説明を求める。
「それは惚れ薬ですの」
「へえ、そうなん――えっ、惚れ薬? 惚れ薬って、よくマンガとかアニメに出てくる最初に見た相手を好きになっちゃう的な感じのですか?」
「大体あっているですの。ですが、これはそこまで強力な効果ではなく、相手の顔を見てドキッとしてしまう程度の物ですの。まあ、吊り橋効果を人為的に起こすための薬と言うわけですの」
「は、はあ」
説明されたものの、デンゲキコの頭の中にはほとんど入ってこなかった。
手に取ったアイテムが思った以上に尖っていたため、放心してしまっているのである。
「あまりお気に召さなかったようですの。でしたら、コレなんてどうですの? 短い時間ですけど、体を透明にする薬なんですが……」
「い、いえ、今日はあまり手持ちが多くないので遠慮させて頂きます」
「そうだったんですの。残念ですの」
商品をPRしようとするがすとの言葉を遮り、デンゲキコは曖昧な笑みを浮かべながら首を横に振った。
肩を落とすがすとを見て、デンゲキコは内心で安堵する。
面白そうではあるが、そのまま商品を買わされそうで怖かったのである。
「ところで、店主に聞きたいことがあるのですが、最近変わったことってありましたか?」
「変なことを聞きますの。もしかして、刑事さんだったりするんですの?」
「残念ながら、私のバックには国家権力なんていませんよ。後ろにあるのは中小の出版会社だけですから」
「記者さんだったんですの?」
首を傾げるがすとに、デンゲキコは不思議に思う。
今の会話のどこに疑問があるのかが分からないのだ。
「よくそんなきつい職業を選んだものですの。今や情報がネットで拡散し放題の中で中小の出版社なんて吹けば飛ぶようなものと一緒ですの。ああ、だから足で情報を手に入れようとしているんですのね」
「うぐっ、そこら辺の事情は察するだけにとどめて頂けると嬉しいです」
図星を指され、デンゲキコは弱々しくがすとに懇願した。
実際、デンゲキコも大手の出版社が自分達のようにネタを探すのではなく、載せる記事の方からやってくることを知っているために何も言えない。
「おっと、これは失言だったですの……でも、残念ながら特にお話しできることなんて何もないですの」
「そうですか。まあ、何もないことは平和の証拠ですし、そっちの方がいいですけどね」
「お役に立てなくて申し訳ないですの」
強がりを言うデンゲキコに、がすとは頭を下げた。
だが、デンゲキコ自身あまり期待していなかったこともあり、がすとに頭を下げられて気まずく感じてしまう。
「代わりと言っては何ですけど、最近色々と街の中がピリピリしているですの。街の外でモンスターを見るって噂も多くなってますし、お客さんも気をつけた方がいいですの」
「分かりました。ご忠告、ありがとうございます。店主も気をつけてくださいね」
「こう見えてもがすとは強いので大丈夫ですの。それにこれから街を離れてプラネテューヌに行く予定ですの。実は今日ががすとショップ出張店の閉店日ですの。まあ、元々お客さんもあまり来なかったですし、もう実質閉店ですの」
「プラネテューヌに? 差支えなければ、理由をお尋ねしても?」
プラネテューヌから来た自分達と逆にルウィーを離れるがすとの目的がデンゲキコは気になった。
既に見切りをつけているのだろう、がすとはテキパキと大きなリュックサックにアイテムを片付けながら答える。
「がすと、今ちょっとした人探しの旅をしている最中ですの。風の噂で知人がプラネテューヌで路上ライブをしていると聞いたですの」
「路上ライブ、ですか? はて、どこかで聞いたような……」
「人見知りですから、きっと心細くしているはずですの。本命の方も元気なのが分かりましたし、今は早くあの子に会って安心させてあげたいですの」
話を締めくくると同時に、アイテムの片付けも終わったらしい。
パンパンに膨らんだリュックサックを背負い、がすとはデンゲキコへと声をかける。
「それじゃ、がすとはこれで失礼するですの。お仕事頑張ってですの」
「はい、道中お気をつけて」
「ありがとうですの。縁があったら、また会うですの。その時までには気に入っていただけるアイテムを作っておくですの。期待しておくですの」
「あ、あはは」
不吉な言葉を残して去っていくがすとを、デンゲキコは苦笑いを浮かべながら見送った。
惚れ薬や透明になる薬よりもインパクトのあるアイテムが出来上がったらどうしようかと思ってしまう。
それはそれで怖いもの見たさはあるものの、自分に危険が及ばないで欲しいとデンゲキコは願った。
* * *
「うぅ、着こんでてもちょっと寒いですね」
「あ、ああ、そうだな」
シンの計らいにより、夢人とネプギアはネプテューヌ達よりも先に街へと繰り出していた。
男女が2人っきり、しかも恋人同士とくれば、デートと言う単語が浮かび上がるだろう。
その例にもれず、夢人達もこれがデートだと認識している。
しかし……
(デートって、何をすればいいんだっけ?)
男の方――夢人は大いにテンパっていた。
デートと言うことを意識し過ぎて、頭の中が真っ白になりかけている。
(落ち着け、こう言う時のために色々と妄想してきたんじゃないか!? え、えーっと、何だっけ? まずは小物を物色? あれ、それとも映画だったっけ?)
冷静になろうとすればするほど、夢人は混乱していく。
寒いはずなのに汗が額に滲みだし、頬も不自然に引きつっている。
そんな夢人が面白い状態になっているのを見て、ネプギアの不満が募るのは当然なわけで……
「夢人さん、話し聞いてませんでしたよね?」
「……ご、ごめん」
頬を膨らませて怒るネプギアに、夢人は謝ることしかできなかった。
すると、ネプギアはプイッと顔を夢人から背ける。
「もういいです! ちょっとそこのお店を見てきますね!」
「あっ、ネプギア!?」
そのままスタスタと歩き、ネプギアは夢人の声にも耳をかさずに1人で店の中に入って行ってしまった。
置いていかれた夢人は伸ばした腕をだらりと下げ、項垂れながら続いて店の中に入る。
(アクセサリーとかの専門店なのか? うわぁ、すごい場違い感がある)
2人が入った店はアクセサリーを主に販売している店らしい。
髪留めからネックレス、指輪などの小物も商品棚に並んでいる。
普段、お洒落なんてする余裕もない夢人は酷く落ち着かない気分に陥ってしまう。
(ネプギアは……あっ、いた。見ているのは髪留めなのか?)
きょろきょろと不審な動きをした甲斐もあり、夢人はすぐにネプギアを見つけることができた。
手に持っているのはシュシュとヘアゴムである。
2つを見比べて唸るネプギアに近づき、夢人は声をかける。
「え、えっと、その2つで悩んでいるのか?」
「いいえ、そうじゃなくてルウィーにいる間は髪をまとめちゃおうかなって思ったんです。昨日もそうだったんですけど、湿気で髪が重くなっちゃって……」
「そうなんだ」
もうネプギアが怒っていないようで、夢人はとりあえず安心した。
納得したように頷くが、いつも短く切りそろえるだけの夢人にはネプギアの悩みが分からない。
髪が長いのも大変なんだな、と言う感想しか浮かばなかったのである。
「うーん、いっその事短くしちゃおうかな? 夢人さんはどう思いますか?」
「えっ、俺?」
「はい。今みたいなロングとショートヘア、夢人さんはどっちが好きですか?」
「それ、俺がどうこうよりもネプギアの気持ちの方が大事なんじゃないのか?」
「違いますよ。女の子は少しでも好きでいてもらえるように努力を惜しまないんです。だから、夢人さんの意見が聞きたいんです」
なるほど、と夢人はネプギアの気持ちに共感する。
1度恋人になったら、その関係がずっと続いていくとは限らない。
昨夜ネプギアが漏らした不安もあり、夢人はその気持ちを察することができた。
「今のままがいい、かな。せっかく綺麗に伸ばしてきたんだし、勿体ないって言うか。後、いい匂いがす――って、ごめん!? 何でもない!?」
「そ、そうですか……うん、だったら、このままにしておきますね」
深く悩むことなく答えを出せたが、夢人は勢いで危ない本音がこぼれ出そうになった。
しかし、気付いた時には既にネプギアに聞かれてしまった後である。
恥ずかしさで互いの顔が見れなくなってしまう。
(な、何を言っているんだ、俺は!? いくら嘘をつかないって決めたからってデリカシーがないにもほどがあるぞ!? ああもう!? とにかく、何かこの空気を変えるものはないのか!?)
内心で焦りながら、夢人は何か話題を逸らすものがないかと探す。
挙動不審なその態度は1歩間違えれば、通報ものであっただろう。
特に、一緒にいるネプギアはかなりの美少女で多くの目を引いている。
遠くでひそひそと話す人達がいても不思議ではない。
「あっ、アレ」
それを見つけた瞬間、夢人は自然に声を出していた。
目に止まった商品を手に取り、ネプギアへと見せる。
「なあ、これってネプギアの髪飾りにそっくりだよな」
「確かに、色違いでしょうか? 珍しいですね」
同意したネプギアも軽く目を開いて驚いている。
何故なら、白い部分が黒くなっただけで、ほとんど今ネプギアが付けている髪飾りと同じだったのだから。
「他にも青と黄緑があるな。これって、結構種類があったんだ」
「私も知りませんでした。いつも付けているコレは自分で作ったものですし、売っているお店も知りませんでしたから」
「へえ、そうだった……作った? 自分で?」
一緒に並べてあった青と黄緑色の十字キーを模した髪飾りを見ながら話題を膨らませようとした夢人であったが、ネプギアの告白に固まってしまった。
思わず手に持っている黒とネプギアの髪に付けられている白を見比べてしまう。
「はい、コレは私が初めて作ったものなんです。どうしても欲しかったから、それなら自分で作っちゃおうって」
「……何だか、そこで作ろうって発想になったことがすごいな」
「言わないでくださいよ。私だって、そう思っているんですから」
自分でも突然の思いつきだと理解しているため、ネプギアの顔は赤くなっている。
そんなネプギアを見て苦笑すると、夢人は黒い髪飾りを角度を変えて眺め始める。
「でも、コレだけ何か世界観が違うよな。他はファンシーと言うか、可愛い感じのものが多いのに」
「多分、プラネテューヌから輸入してきたものだと思いますよ。探せば、ラステイションっぽいのもあるかもしれませんし」
「なるほど。確かにプラネテューヌっぽいもんな、コレ」
店のラインナップは思っていたよりも多国籍であったようだ。
幅広いニーズに応えるためなのか、今夢人達が見ている髪飾り以外にもプラネテューヌやラステイションの特色が強い商品は並んでいる。
「あっ、そうだ。せっかくだから、コレも買っちゃおうかな」
「コレをか? ネプギアもネプテューヌみたいに2つ付けるのか?」
「そうじゃなくて、付け換えようかなって思うんです。コレも結構傷が付いちゃってますからね」
髪留めを外し、ネプギアは夢人へと見せた。
何度も塗装を塗り直していたのだろう、綺麗に見えた白い髪留めには細かい傷が多くあった。
「初めて作った思い出の品ですので、出来れば壊したくないんです。でも、コレがないと私って、無個性ですごく地味な女の子に見えちゃって」
「そうか? 俺は別にそう思わないけど……まあでも、何だか寂しくなるな」
「自分でも鏡を見た時にそう思うんですよね。だから、色々と可愛い髪留めを他にも買ったり作ったりしているんですけど、どうにもしっくりこなくて」
苦笑するネプギアと手に持つ髪留めを交互に見ると、夢人は決断した。
「ならさ、コレは俺が買うよ」
「えっ!?」
笑顔でそう宣言する夢人を見て、ネプギアの表情は驚愕に染まった。
どうしたのだろうと夢人が思っていると、ネプギアの体はよろめかせて後ろに倒れそうになる。
何とか踏みとどまると、ネプギアは震える指を夢人へと向けて口を開く。
「ゆ、夢人さん? い、一応、コレは女性用のアクセサリーでして、その……あっ、別に夢人さんに似合わないって言いたいわけじゃないんですよ!? で、でも、夢人さんの髪質や短さじゃ付けた時に痛いだけじゃなくて、すぐに落ちちゃうんじゃないかって!?」
「……あ、あの、ネプギア?」
「で、でも、夢人さんがどうしてもって言うんでしたら……ペアルック? ううん、ペアアクセサリーですし、それも何か恋人っぽくていいかもしれないんですけど、さすがにいつもウイッグを付けた状態でいるのは……」
「ちょっと戻って来てください、ネプギアさん!? おーい!?」
いきなり意味の分からないことを捲し立てるネプギアを前にして、夢人は思わず敬語になってしまった。
慌てて肩を掴んで呼びかけると、虚ろになりかけていたネプギアの目に光が戻ってくる。
「あ、あれ? 私、どうしていたんですか?」
「……とりあえず、元に戻ったみたいだな」
数度目を瞬かせるネプギアを見て、夢人は安堵の息をつく。
そして、夢人は話を戻そうとするのだが、急に恥ずかしさが込み上げて頬を掻いてしまう。
「だから、コレは俺が買って――その、プレゼントしたいんだ」
「プレゼント? 誰にですか?」
「いや、ネプギアに」
「私に? あっ、そうだったんで――えええええっ!?」
理解が追いつかずにきょとんとしていたネプギアであったが、気がつくと周りの目も気にしないで大声で驚いた。
顔は一気に赤く染まり、落ち着かない様子で視線をさまよわせる。
しかし、その頬は確かに緩んでいた。
「そ、そんなプレゼントだなんて!? べ、別にコレくらい自分で買えますよ!? だ、だから、その……」
「俺が買ってあげたいんだ。むしろ、俺の方がこんな安物しか買えなくて悪いって思っているんだぞ。だから、ここは俺に買わせてくれ」
「あ、あうぅぅぅ……お、お願いしますぅ……」
耳まで真っ赤にさせて俯くネプギアの言葉を聞き、夢人は嬉しそうに笑って髪飾りをレジへと持っていく。
その際、先ほどネプギアが悩んでいたシュシュとヘアゴムも一緒に購入しようとしている。
(ず、ズルイです!? さっきは全然気付いてくれなかったくせに、こう言う時だけあんなことを平気で言ってくるんですから!? もー、何で私ばっかりドキドキさせられているんですか!?)
レジに並ぶ夢人に気付かず、ネプギアは1人で頬に両手を当てて顔を左右に振っていた。
にやにやと緩む頬を見られないようにするためである。
内心で理不尽な文句を夢人にぶつけている。
少し前の夢人も同じ状況であったため、似た者同士と言えなくもない。
「おーい、買ってきたぞ」
「ひゃい!? ありゅがとうございます!?」
「何でそんなに慌ててるんだよ? ほら」
「ご、ごめんなさい――黒、ですか?」
変な声を出した羞恥に悶えるネプギアの手に、夢人は買ってきた髪留めを置いた。
それは青や黄緑ではなく、黒い髪飾りだった。
意外な色の選択に、ネプギアは目を丸くしてしまう。
「青とかの方がよかったか?」
「そうじゃなくて、どうして黒なのかなって思って」
今までの白い髪飾りと真逆の黒。
ネプギアが不思議に思ってしまうのも無理はない。
「ほら、ネプギアの新しくなったプロセッサユニットって黒と紫だったろ? だから、この色にしてみたんだ」
夢人が思い出すのは女神化して《ライラックMK2》を身に纏ったネプギアの姿。
全てを忘れてゲイムギョウ界から消えた夢人が、パープルディスクに残っていた記憶を取り戻して帰還した時の忘れられない思い出である。
……しかし、懐かしさにほほ笑む夢人とは対照的に、ネプギアの表情は凍りついていた。
「新しい……プロセッサユニット……?」
「どうかしたか?」
「えっ――あ、そう言うことだったんですね! ありがとうございます! 嬉しいです!」
心配する夢人の言葉に首を振り、ネプギアは笑顔でプレゼントされた黒い髪飾りを胸に抱きしめる。
何かを誤魔化していると分かっていても、そう言われたら夢人も深く追求できない。
記憶喪失の影響で何か引っかかりを感じているのかもしれない、と勝手に納得する。
「そうだ! お返しってわけじゃないんですけど、コレは夢人さんが持っていてくれませんか?」
「コレって、壊したくないんだろ? だったら、自分で持っていた方がいいんじゃないか?」
手渡された白い髪飾りを見て、夢人は困惑してしまう。
大切な思い出がある品だと先ほど説明された手前、非情に受け取り辛い。
特に、夢人は1度ラステイションでブレイブソードを失くしたことがあるので、ネプギアの大切な思い出の髪飾りを紛失してしまわないかと不安なのだ。
「大切だから、ですよ。夢人さんだから、安心できるんです。それに……」
「それに?」
「――私の思いがきっと夢人さんを守ってくれますから」
はにかむネプギアを見て、夢人は改めて手の中にある白い髪飾りへと目を落とす。
強く握れば、壊れてしまうかもしれない軽い髪飾り。
だが、そこに込められた思いの重さに夢人の胸が熱くなってくる。
不安なもしもを考えるよりも、大切なものをネプギアが預けてくれた嬉しさが込み上げてきたのだ。
「分かった。大事に預かっておくよ」
「そうしてください。肌身離さず持っておかないと、私の思いが薄まっていっちゃいますから気を付けてくださいね」
「思いが薄まるって……それじゃ、本当にお守りみたいだな」
「あー、馬鹿にしちゃダメですよ。恋人からのプレゼントで九死に一生を得たってニュースはいっぱいあるんですから。ですから、夢人さんは絶対に絶対それを手放しちゃダメなんですからね!」
「……危険なことになるのは確定なの? 俺、そこまでネプギアに心配かけてる?」
念を押してくるネプギアの不吉な発言に、夢人は今までの自分を思い返してみる。
しかし、残念ながら否定できそうにない。
聞き返しておきながら、色々と無茶をしていると自覚もしているのだ。
「心配するのは当たり前じゃないですか。夢人さんはいつも無茶してばかりなんですから」
「……分かった。コレ、大切にするよ」
「大切にするだけじゃダメです。ちゃんと私の思いを感じてくださいね」
自分でもグレーな答えだと夢人は思っていた。
これから先、危険なことに巻き込まれたり首を突っ込むこともあるだろう。
だから、夢人はネプギアに無茶を絶対にしないと言えないでいる。
それはネプギアも察しており、大切な髪飾りを預けたのはもっと自分のことを大切にしろと伝えたかったのだろうと夢人は解釈する。
「それじゃ、デートの続きをしましょう。次はどのお店に行きましょうか?」
「歩きながら考えればいいんじゃないかな? まだ時間はいっぱいあるし、ゆっくり見て回ろう」
「そうですね。じゃあ――あっ」
次の予定について話しながら店を出た途端、夢人はネプギアの手を握った。
驚いてネプギアが顔を上げると、夢人は柔らかく頬を緩めて口を開く。
「さっきは気付かなくてごめん。これでいいんだよな?」
「……そう言うことをいちいち確認しなくてもいいんです。夢人さんはもっと強気でいていいんですよ」
「あー、コレでもいっぱいいっぱいで」
「もう、夢人さんは仕方ないんですから」
困ったように眉根を下げる夢人に、ネプギアは不満を告げた。
しかし、その顔は嬉しそうに綻んでいる。
ネプギアはギュッと手を握り直し、少しだけ夢人に近づく。
距離を縮めた2人はそのまま手を繋いでデートを再開するのであった。
* * *
その日の夜、夢人達は全員ブランの執務室に集められていた。
全員の視線が自分に集まっていると確かに感じながら、ブランは言う。
「女神パープルハートとグリーンハート、それに一緒にいるあなた達にこの地の女神としてお願いするわ。どうか、わたしと一緒にルウィーを救うために力を貸してちょうだい」
頭を下げて頼み込むのは、ベールの提案の返事である。
――ここに、ルウィーで魔王派に対する女神3人の共同戦線が始まるのであった。
と言う訳で、今回は以上!
次回からは本格的にルウィーの問題に直面ですね。
つまり、今回ハブられている彼女にもそろそろ出番が……
それでは、 次回 「その共同戦線、綱渡り」 をお楽しみに!