超次次元ゲイムネプテューヌ Re;夢のヒーローを目指して   作:ホタチ丸

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はい、皆さんこんばんわ!
定期的に無印のネプをやりたくなるんですよね。
VⅡやvitaのもいいですけど、PS3を買って遊んだ当時の思い出があるから好きなんですよ。
……だから、サンタさん、プレゼントは時間をください、お願いします。
それでは、 その共同戦線、綱渡り はじまります


その共同戦線、綱渡り

 その日、ノワールは顔をしかめていた。

 

「失礼する。次の書類を――何だ、またそれを読んでいたのか?」

 

「悪い? 別に私が何をしていようと、勝手でしょ」

 

 書類の束を持ち執務室に入室してきたアヴニール社長秘書マーマレード……と言う偽名を使っているマジックは呆れてしまった。

 ぎろりと睨むノワールを無視して、マジックは書類を机に置くとため息をついてしまう。

 

「そんなに気になるのなら、直接聞いてくればいいものを。一緒にいた女がパッセの工場長の所に居候していると言っただろう」

 

「別に気になんてなってないわよ。ただの暇つぶしよ」

 

「よくもまあ、長続きする暇つぶしもあったものだな」

 

 マジックが呆れるのも理由があった。

 その雑誌を買ってから……正確にはマジックが持って来てから、ノワールはそれを毎日睨むように読み続けているのである。

 

「仕事さえ滞りなくこなしてくれるのであれば、私も貴様の趣味趣向に口出しはせん。だが、いつまでもそのようにウジウジしているだけならば、私にも考えがあるぞ」

 

「誰がウジウジしているって?」

 

「貴様以外に誰がいると言うのだ。やれやれ、こちらはようやく奴らの尻尾を掴んだと言うのにな」

 

「――何ですって? それは本当なの?」

 

 肩をすくめて報告するマジックの言葉を聞き、ノワールは目を鋭くした。

 バタンッと雑誌を閉じて机に置くと、続きを話せと言わんばかりにマジックを睨む。

 

「例の機動兵器……キラーマシンの貯蔵プラントと製作プラントを絞り込むことに成功した。連中は郊外に放置されていた廃工場の跡地を改造していたらしい」

 

「ちょっと待ちなさいよ。郊外の廃工場って、確かもう全部調べたはずよね? まさか……」

 

「察しの通りだ。教会を乗っ取られていたツケはまだまだ残っているようだな」

 

「くっ」

 

 皮肉を述べるマジックに、ノワールは悔しさで顔を歪めた。

 つまり、教会内部にまだアヴニールの息がかかった者がいると言うことである。

 その者達が虚偽の報告を行い、隠ぺい工作をしていたのだ。

 

「土地の利権者に話を聞いて回って正解だったな。連中は口を揃えて、土地も工場も全てアヴニールに売ったと話してくれたよ」

 

「……それなのにも関わらず、教会には元の利権者の名前がそのまま残っていると」

 

「奴らにとってはいい隠れ蓑になったのだろう。貴様がダンジョンの奥まで探索を行っていたのはまったくの無駄足だったと言うわけだ」

 

「うるさいわね。1つは見つけたんだから、別に無駄じゃなかったでしょ」

 

 因みに、ノワールが見つけた1つと言うのは最初にマジックが情報を流した工場のことである。

 このまま話しあっても埒が明かないと判断し、ノワールは1度大きく息を吐いて頭を切り替える。

 

「ふぅ、それで絞り込んだって言うけど、具体的な数はどれぐらいよ?」

 

「全部で10だな。“彼”のことを信頼するなら、残り8か所はダミーだろう。位置もバラバラで、とても1日で回りきれる距離ではない」

 

「だからと言って、適当にどこかを襲撃して、また雲隠れされたら堪らないわ。他には何かないの?」

 

 うんざりした顔でため息をつくノワール。

 そこにはマジックが口にした“彼”に対しての不信感は見えない。

 

「後は連中が管理していたモンスターを呼び出すディスク……便宜的にエネミーディスクと名付けたそうだが、ごく1部が倉庫から流出してしまったらしい。おそらく、警備兵代わりとしてモンスターを利用していると見て間違いないそうだ」

 

「……呆れたわね。そんなことしたら、1発で自分が後ろ暗いことしてますよって宣伝しているようなものじゃないの」

 

「だからこそ、犯人には既に監視を付けている。動きがあれば、すぐにでも動けるようにな」

 

「さすが敏腕社長秘書様は仕事が早いわね」

 

 マジックから渡された書類に目を通し、ノワールはにやりと口角を吊り上げた。

 そこには話の肝である犯人の情報が書かれており、ここ数日の不可解な行動も記載されている。

 

「定期的に誰かと連絡を取っている、か。それと決まった時間に1人で出かけている、ね。もう真っ黒じゃないの」

 

「ああ。ここまであっさりと尻尾を出してくれたせいで、逆に私も“彼”も戸惑っている。どうやら、奴も先日のラステイションの事件で大分焦っているようだな」

 

「まあ、こっちとしては勝手に自滅してくれるのを待つって手もありそうだけど、そうも言ってられないみたいね」

 

 資料を捲る度に、ノワールの瞳は鋭さを増す。

 

「キラーマシンだけじゃなくて、人型のロボット、挙句の果てには戦車みたいなものまで造ってるじゃない。しかも、まだ何か変なものの開発も続けているみたいだし」

 

 “開発計画”と項目が付けられた紙面には、キラーマシンの他にも多くの兵器が写真付きで記載されていた。

 量産続行、改良案、製造中止など、それぞれに赤字で様々な書き込みがされている。

 

「とにかく、急いで工場の絞り込みをしてちょうだい。こんな物をよその国に流したら、それこそラステイションの恥だわ」

 

「分かった。奴の背後関係ももう1度洗い直しておこう。1週間もあれば裏付けも取れるだろうしな」

 

「長いわ。5日――いえ、4日で終わらせなさい」

 

 それは女神としての命令だった。

 有無を言わせぬ迫力を伴う言葉は、普通の人間であれば息をのんで頭を下げてしまうことだろう。

 だが、普通じゃないマジックは薄く笑みを浮かべるだけである。

 

「ふっ、人使いの荒い女神だ。いいだろう、すぐに調べてくるさ」

 

「ええ、頼りにしているわ」

 

 2人は同時に口の端を吊り上げて、強気な笑みを交わす。

 当初はマジックの行動の意図が掴めず、いぶかしんでいたノワール。

 しかし、今までの働き振りで信頼とまではいかなくとも、信用するレベルにまで引き上げたのだろう。

 言わば、先ほどの命令や今の好戦的な笑みはマジックに対するノワールなりの信用の証なのかもしれない。

 

「では、私はこれで失礼させてもらうぞ。どこかの間抜けな女神にとんだ無茶ぶりをさせられたものでな。今は時間が惜しいのだ」

 

「はいはい、文句なら悪だくみをしている奴にぶつけなさいよ……後、コレも処分しておいて」

 

 皮肉を交えるマジックに苦笑しながら、ノワールは机の上に置いてある雑誌を指さした。

 そんなノワールの仕草に、マジックは眉をひそめる。

 しかし、敢えてマジックは何も言わずに雑誌を拾い上げる。

 

「……分かった。コレは私の方で処分しておこう」

 

「助かるわ。あなたのその無駄に詮索しない所、私結構好きよ」

 

「残念だが、私は貴様のその無駄に意固地になる態度が気に入らないのでな」

 

 そう言い残すと、マジックはノワールに背を向けて部屋を無言のまま出て行ってしまった。

 残されたノワールはしばらく閉じた扉を眺めていたが、やがてマジックから渡された書類を机に置くと椅子の背もたれにもたれかかる。

 額に手の甲を当てて瞳を閉じるノワールの頭にあるのは、マジックに処分してもらうように言った雑誌の内容だった。

 

「……くだらない。魔王派なんてあるわけないじゃないの」

 

 

*     *     *

 

 

「ラステイションから、ね。それは確かなの?」

 

「はい、間違いありません」

 

 ブランが夢人達の協力を受け入れた翌日、教会内でスパイ活動をしていたはずのフィナンシェが慌てた様子でやって来た。

 緊急事態発生と言うフィナンシェの言葉を重く見て、ブランは夢人達も全員揃えてから話を始めたのである。

 

【昨夜、ラステイションにいる協力者から連絡がありました。どうやら、今まで製作してきた破壊兵器の全てをルウィーへと輸送する計画が進められているそうです】

 

 集められて困惑していた夢人達も、フィナンシェのこの発言を聞いて全てを理解した。

 つまり、教会にいる偽物が本腰を入れてルウィーの乗っ取りを開始したのだ、と。

 

「今までは何とか抑えられてきましたが、今回は向こう側で強い動きがあったらしく……すみません、私の力不足です」

 

「あなたのせいじゃないわ。それよりも、報告を続けてちょうだい」

 

「分かりました。現在、分かっている範囲で破壊兵器の数は優に100を超えているそうです。詳細は不明ですが、何でも女神との戦闘を前提に造られているそうで非常に危険だと思われます」

 

 申し訳なく思い項垂れそうになるフィナンシェの顔は報告をしていくうちに曇っていく。

 それは夢人達も同じだ。

 話を聞いているだけで、事態が急を要しているのは簡単に察することができる。

 

「不安要素が多い中で動くのは得策じゃないけど、そうも言ってられないと言うことね」

 

「そうなります。私はこちらから先手を打ち、ラステイションにいる協力者と共に破壊兵器のルウィーへの輸送を阻止すべきだと思います」

 

「妥当な案ね。現状、こちらに女神3人がいるとしても、その破壊兵器の物量に押されて被害を大きくする可能性がある以上、輸送自体を阻止するのが1番か」

 

 会議はブランとフィナンシェによって滞りなく進められていく。

 さすがのネプテューヌやREDも、2人の会話から発生するシリアスな雰囲気に押されて茶々を入れられずにいた。

 しかし、そんな中控えめに手を上げて発言する者がいる。

 

「……あの~、あたしも女神なんだけどぉ~」

 

「そう言えば、ぷるるんも女神なんだよね。つまり、こっちは女神が4人だったってことだね」

 

「おおー! 女神様が4人も揃うなんて! 何だかもう怖いものなしって感じだよね!」

 

 口を開くプルルートに便乗して、ネプテューヌとREDも思い思いの発言をした。

 特にREDは重たい雰囲気を払拭しようと、わざと大きな声で言っている。

 

「……静かにしてくれないかしら。今、わたしは真面目に考えているのよ」

 

「あっ、はい。ごめんなさい」

 

 静かに怒気を放つブランの迫力に、REDは思わず敬語で謝ってしまう。

 シュンとするREDを見て、迂闊に口を挟まない方がいいと感じたネプテューヌは冷や汗を滲ませる。

 

「だ~か~ら~、あたしもプラネテューヌのめが……」

 

「ぷるちゃん、静かにしてないとメッですよ」

 

「そうだな。怒られたくなかったら、今は大人しくしておけ」

 

「ぷる~ん……」

 

 それでも食い下がろうとするプルルートだったが、さすがにコンパとMAGES.の2人に諌められたら何も言えなくなってしまった。

 話を聞いてもらえずしょんぼりするプルルートを置いて、ブランはベールの方を向いて口を開く。

 

「早速で悪いのだけど、力を貸してもらうわ。任せてもいいかしら?」

 

「構いませんわ。具体的な破壊兵器輸送を阻止する方法は後回しにして、まずはラステイションにいる協力者に話を聞いた方がいいですわね」

 

 これからの行動をベールはすぐに決断した。

 輸送する計画がいつ実行されるのか分からない現状では、迅速に行動することが何より大事だと分かっているからである。

 

「セオリーとしては少数精鋭の電撃作戦で向こうの出鼻を挫くのが定石ですわね。でしたら、ラステイションに向かうのはわたくしと……」

 

「はいは~い! あたしも一緒に行く~!」

 

「だから、ぷるちゃん駄目ですって!?」

 

 ラステイションに向かうメンバーの選出にベールが悩んでいると、プルルートがまたもや口出ししてきた。

 満面の笑みを浮かべてアピールするプルルートを止めようとするコンパだが、既に遅かった。

 

「ラステイションってことは、久しぶりにノワールちゃんに会えるかもしれないよね~。だったら、あたしもベールさんと一緒に行きたいなぁ~」

 

「……どうするの?」

 

「……まあ、危険なことに巻き込むよりも知り合いに会いに行ってもらった方がよろしいんじゃないでしょうか?」

 

「……確かにそうだけど」

 

 プルルートの頭の中では既にラステイションに行くことは決まってしまっているらしい。

 ぽわわんとノワールとの再会を楽しみにするプルルートを見て、ブランとベールは小声で検討し合う。

 困ったように笑うベールの考えに、顔をしかめるブランだったが……

 

「分かったわ。あなたも頑張って来てね」

 

「は~い、がんばりま~す」

 

 ルウィーにとどまって偽物達の襲撃に晒されるリスクまで考え、ブランはプルルートにもラステイションに行ってもらうことを認めた。

 本当に話の内容を理解しているのか分からない能天気な返事をするプルルートに、全員の肩の力がいい意味で抜けていく。

 空気が緩くなったことで、それぞれ自分の考えを口にし始める。

 

「最初から荒事になると分かっているのなら、足手まといの私は残った方がよさそうですね。ここでグリーンハート様が無事に戻って来て下さるのを信じて待っていますわ」

 

「わたし的にはルウィーに着いたばかりですぐにラステイションに行くのもアレだなぁ。もっと雪国特有のロケーションやら隠しイベント的なものを消化してからにしたいから、今回はパスで!」

 

「それじゃ、アタシが2人と一緒にラステイションに行こうかな。あそこなら2人よりも土地勘あるし、色々と役に立てると思うんだよね」

 

「重大な任務だし、ちょっと自信ないかな。僕もここに残ることにしますよ」

 

「わたしも――といきたいところなんですけど、わたしじゃベールさん達の足を引っ張りそうです。残念ですけど、わたしは大人しくお留守番していた方がいいですね」

 

「では、REDさんも一緒に行くと。ミモザとネプテューヌ、それとシンさんとコンパさんの他にここにいないピーシェちゃんとロムちゃんもお留守番だとして、あなた達はどうしますか?」

 

 まだ何も口にしていない他のメンバーに、ベールは問いかける。

 因みに、この場にロムとピーシェがいないのは2人がまだ幼いからだ。

 会議の最中に騒がれたら困ると、ロムにピーシェを任せたとも言う。

 

「うーむ、正直ラステイションにも行ってみたいと言う気持ちはある。しかし、今回はゆっくりと見て回る余裕はなさそうだからな。それにアイエフからの頼み事もあるし、どうしたものか」

 

(ここまで来て今更ラステイションに行くなんて面倒なこと絶対に嫌ですって。どうせなら、このまま残ってホワイトハート様の本物と偽物の対決を取材した方がいいに決まってますよ)

 

 悩むMAGES.とは対照的に、デンゲキコの考えは既に決まっていた。

 わざわざ自分から危険なことに首を突っ込むよりも、残って安全な位置で取材を続ける心づもりなのである。

 しかし、そんなことを正直に口に出せるわけなく、デンゲキコは黙ったままでやり過ごそうと思っているのであった。

 

「だったら、俺も……」

 

「夢人さんは駄目ですよ」

 

「ええ、夢人さんはお留守番確定ですわ」

 

「何で!?」

 

 それならと立候補しようとした夢人だが、ネプギアとベールにすぐさま却下された。

 驚く夢人だが、隣にいたネプギアの目は冷ややかである。

 

「無茶をしてしまうのとするのは別物です。夢人さんは今、とりあえずで何かしなくちゃとか考えているんですよね? だったら、尚更夢人さんをラステイションに行かせるわけにはいきません」

 

「わたくしも概ねネプギアちゃんと同じ考えですわ。こちらは大丈夫ですので、夢人さんは夢人さんに出来ることを頑張ってくださいまし」

 

「……はい」

 

 心配してくれる2人の気遣いは嬉しいが、夢人は言外に戦力外通知を叩きつけられているような気分である。

 ガックリと項垂れる夢人を見て、黙っていたナナハが口を開く。

 

「だったら、私が行くよ」

 

「ナナハ、あなたまさか……」

 

「勘違いしないで。何が起こるか分からないのに、3人だけじゃ不安でしょ。私もそれなりに強いつもりだし、適任だと思うけど?」

 

「……分かったわ」

 

 渋々と言った様子でナナハのラステイション行きを認めるミモザ。

 しかし、その顔は不服そうにナナハを睨んだままである。

 

「なら、私はこちらに残るとしよう。無事に任務を遂行して帰って来てくれることを祈っているよ、緑の女神達よ」

 

「任せてくださいな。では、わたくし達4人がラステイションに向かうことでよろしいですわね?」

 

 悩んでいたMAGES.が結論を出したことで、ラステイションに向かうメンバーが決定した。

 ベール、プルルート、RED、ナナハの4人である。

 問題ないかとベールはブランへと確認を取る。

 

「お願いするわ……後、頼んだわたしが言うのもアレだけど、あまり無茶をしないで。危ないと思ったら、すぐに手を引いてくれても構わないから」

 

「あら、それはわたくしの腕を信じられないと言うことでしょうか?」

 

「別にあなたの実力を疑っているわけじゃないわ。今回の事件はわたしの怠慢が招いたことなんだし、あなた達が無理をしてまで頑張る必要はないと言いたいのよ」

 

「それこそ無用の心配ですわ。魔王派の脅威は明日の我が身でもありますから。むしろ、あなたの方こそ大丈夫なんですの?」

 

「……どう言う意味よ?」

 

 眉間に深い皺をよせ、ブランは鋭くベールを射抜く。

 だが、ベールは怯むことなくブランを見つめ返しながら言う。

 

「偽物のことですわ。わたくしの目から見ても、偽物の擬態は完璧。むしろ、黙っていればあちらの方が女神として相応しいと思われてしまうかもしれないのに、わたくし達の心配ばかりしていても大丈夫だと本気で思っているのですか?」

 

「っ……聞き捨てならない部分があったけど、今は何も言わないでおくわ。あなたの心配こそ必要ないわ。わたしはルウィーの女神で、この国も人も街も全部守るために全力を尽くすだけよ」

 

「それを聞いて安心しましたわ。言ったからには、絶対にこの国の人達の目を覚まさせてあげなさいな」

 

 思わず口から出そうになった言葉を飲み込み、ブランはベールへと己の決意を語った。

 すると、ベールもふわっと頬を緩めて笑みを浮かべる。

 

「それで聞き忘れていたのですが、その協力者とはどのような方なのでしょうか?」

 

「あっ、すいません。言い忘れてましたね――協力者の名前は“ガナッシュ”と言います。アヴニールの製品開発部門の主任を任されている人です」

 

(が、ガナッシュだって!?)

 

 ベールの問いかけに答えたフィナンシェの口から出た人物の名前に、夢人は大きく目を見開いて驚く。

 その際、ガタッと椅子を揺らしてしまい、全員から注目を浴びてしまう。

 

「どうかしたんですか、夢人さん?」

 

「あっ、いや、その……知っている名前が出たものだから、つい」

 

「あら、夢人さん達は面識が御有りなのですか?」

 

 誤魔化しながら椅子に座り直す夢人を見て、ベールは軽く目を瞬かせた。

 そのままベールはネプテューヌやコンパへと視線を移す。

 

「えーとー、どんな人だったっけ? 確か、眼鏡にスーツって言うのは覚えているんだけど。コンパは覚えている?」

 

「もー、忘れるなんて失礼ですよ。ガナッシュさんは……えっと、わたし達にモンスターを退治するように依頼した眼鏡でスーツの人です」

 

「……貴様ら2人の記憶には眼鏡とスーツしかないのか」

 

 2人のあんまりな記憶力に、面識のないMAGES.でもガナッシュを憐れに思ってしまう。

 

 ――だが、夢人の抱いているガナッシュ像は2人と異なる。

 リーンボックスでアイエフから聞いた取引の話のこともあり、後でベールに注意をしようと決めた。

 

「えっと話を戻しますけど、彼は出身がラステイションではあるものの、以前からブラン様を信仰しておりました。今回もアヴニールの上層部――特に社長に怪しい動きがあり、破壊兵器のルウィーへの輸送計画を知ったそうです」

 

「つまり、黒幕はアヴニールの社長ってこと?」

 

「おそらくは」

 

 フィナンシェの報告から、ブランは今回の事件の背後にいる相手に見当を付けた。

 肯定も否定もしなかったが、報告をしたフィナンシェも同じことを考えているのだろう。

 1度目を閉じて頭の中で情報を整理すると、ブランはフィナンシェに尋ねる。

 

「そのガナッシュと言う人物は、あなたの目から見てどの程度信頼できるのかしら?」

 

「彼のブラン様への信仰を考えれば、情報に偽りはないと思います。信頼できる人物であることは間違いないのですが……」

 

「どうかしたの?」

 

 急に言い淀むフィナンシェを見て、ブランは表情を険しくさせた。

 すると、フィナンシェは慌てて答える。

 

「い、いえ!? ブラン様が心配することは……あると言えばあるのですけど、今回はそれと関係なくてですね!? 単純に私が彼を苦手と思っているだけでして……」

 

「問題がある人物だと言うのなら、わたしの代わりにラステイションに向かってもらう彼女達にもちゃんと伝えておくべきなのよ。だから、包み隠さず正直に答えなさい」

 

「……はい、分かりました」

 

 しどろもどろになるフィナンシェに、ブランは強い口調で命令した。

 ベール達の安全を確保するためにも、しっかりとガナッシュと言う人物を知っておかなければならないからである。

 だが、それでもフィナンシェは言い辛そうに顔をしかめていた。

 

「彼は信頼できる人物ですが……人格面において多少、いえ多大な問題を抱えておりまして……」

 

「フィナンシェ」

 

「……はい。その、ブラン様へのいき過ぎた信仰心と言いますか、どうにも不埒な願望を抱いているようです」

 

「彼女に不埒な願望、ですか」

 

 再度ブランに強く言われてフィナンシェが口にした内容を聞き、ベールはつい目を向けてしまう。

 当然、ブランへだ。

 そんなあからさまな視線を受け、ブランは眉をひそめる。

 

「なに? 何か言いたいことでもあるって言うの?」

 

「いえ、別にありませんわ。殿方の好みは人それぞれですし、あなたにもそう言う願望を向けてくれる相手がいてよかっただなんて思っていませんわよ?」

 

「――だったら、こっち見てんじゃねえ!? つか、わざわざ言うんじゃねえよ!?」

 

 明らかに自分を見下した言い方に、ブランは遂に我慢の限界を迎えてキレてしまった。

 バンッと机を強く叩き、今にもベールに掴みかかりそうである。

 

「だ、大丈夫ですよ、ブラン様!? そう言う類のものでなく、彼の場合はランドセルを背負って欲しいとかお兄ちゃんと呼ばれたいとか優しく起こして欲しいとか、そう言う種類の妄想ですから!?」

 

「何の慰めにもなってねえよ!? 逆に追い打ちをかけんじゃねえ!?」

 

 フォローするつもりが、フィナンシェのそれはまったくの逆効果だった。

 頭を抱えて叫ぶブランを見て、フィナンシェが言った内容を想像したネプテューヌが黙っているわけなかった。

 

「プッ、アハハハハハ! 似合う! 確かにブランって大人しくしてれば、そう言うの似合うかも!」

 

「テメェまで笑ってんじゃねえ!! 笑い事じゃねえんだよ!! ってか、そう言うテメェだってわたしと似たようなもんだろうが!!」

 

「ふふーん、残念ながらわたしが制服着たら普通の美少女高校生になっちゃうんだな、コレが。お子様体型のブランとは違うのだよ」

 

「鏡見てから言いやがれ!! よくて喧しい女子中学生だろうが!!」

 

 もう会議の内容など知ったものかと、ブランはヒートアップしていく。

 それが面白くて、ネプテューヌも楽しそうに笑ってブランと会話を続ける。

 

「まったまたー、そんなに僻まなくてもいいじゃん。ブランも素材はいいんだからその手の人達に大人気間違いなしだって」

 

「何で上から目線で語ってんだよ、オイ!! 一昨日の決着、今すぐつけてやろうか!!」

 

「おやめなさいな、見っとも無い。そんなくだらないことで喧嘩なんてするものじゃありませんわ」

 

「うっせーぞ!! 年増は黙ってろ!!」

 

「なっ!? だ、誰が年増ですって!?」

 

 仲裁に入ったベールにまで飛び火していく話題。

 置いてけぼりにされた夢人達は止めることもできず、見ていることしかできずに戸惑うばかりだ。

 

「わたくしだって、まだまだぴちぴちですわ!! ネプテューヌが女子中学生なら、わたくしはぴちぴちの女子高生に決まってます!!」

 

「……うわー、もう言葉の選択からして古いって言うか。ベールが制服を着たら、なんかそこはかとなく犯罪臭がするのはわたしだけかな?」

 

「……わたしもそう思うわ。若づくりし過ぎて逆に痛々しくなるタイプね」

 

「何でそこで冷静になるんですの!?」

 

 ギャーギャーと会議と関係ないことで騒ぐ女神達3人を見て、夢人達は揃ってため息をつく。

 

 しかし、そんな3人を見て夢人は心強くも思う。

 まるで自分の知っている3人のように言い合う女神達なら、きっと何があっても大丈夫だと信じて。




と言う訳で、今回はここまで!
まあ真面目な話、無印ネプはまたプレイし直しているんですけどね。
本当、日本一やがすとはもう出てこないのだろうか……
新しい子が出てくるのはそれはそれで嬉しいんですけどね。
それでは、 次回 「そのディスク、吸い込む」 をお楽しみに!
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