超次次元ゲイムネプテューヌ Re;夢のヒーローを目指して   作:ホタチ丸

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はい、皆さんこんばんわ!
クリスマスだけど、今年は本編更新ですよ。
それでは、 そのディスク、吸い込む はじまります


そのディスク、吸い込む

 会議の後、すぐにベール達はフィナンシェさんに連れられてラステイションに渡る準備に取り掛かった。

 最終的に変な感じになったとはいえ、問題が問題だけに迅速に行動する必要があったからである。

 まだ大陸同士が離れているせいでラステイションに渡れないとしても、この街からでは時間がかかり過ぎてしまう。

 だから、ベール達はもう街を離れて、ラステイションに1番近い街まで移動している。

 

 それで残った俺達はと言うと……

 

「あっ、夢人さん。次はあっちに行きましょう」

 

 街の見回りをしている最中である。

 フィナンシェさんが言っていた破壊兵器は既にルウィーに何台か輸送されてしまっているとのこと。

 それを使って何時教会を占拠している魔王派がこの街を襲うか分からない。

 だから、俺達は警戒を怠っている暇なんて1秒もないのである。

 

「うーん、いませんね。じゃあ、次は向こうを探しに行きましょう」

 

 つまり、別にネプギアとデートをしているわけじゃない。

 手を繋いでいるのだって、ルウィーが寒いせいだ。

 手袋を着用するよりも胸の奥から温まるので助かる一方、動悸が激しくなる欠点がある。

 ……まだ慣れてないんですよ、ちくしょう。

 

「この辺りにはいないのかな? どうします? 1度戻ってみましょうか?」

 

「もうちょっと探してみよう。今度はあっちを」

 

「分かりました……ピーシェちゃん、どこに行っちゃったのかな?」

 

 ほら、デートじゃないってもう分かりましたよね? ――はい、ピーシェが失踪してしまいました。

 会議の間、暇だったピーシェはロムの制止を振り切って勝手に街へと飛び出してしまったらしい。

 だから、こうしてネプギアと一緒に探しているのだが、一向に見つかる気配がない。

 

「まあ、新しい街に加えて初めて見る雪に興奮していたからな」

 

「それでももう少し大人しくして欲しいですけどね。あのテンションはちょっと……」

 

「あの年頃なら普通だと思うぞ。リーンボックスの時も色々あって遊べなかったから、我慢できなかったんだろうし」

 

 元気の塊のような奴だからな、ピーシェは。

 きっと最近は暴れたりなくてうずうずしていたに違いない。

 苦笑するネプギアには悪いけど、俺はピーシェのそう言うところが結構好きなんだけどね。

 天真爛漫って言うか、やっぱりアカリと重ねて見ちゃうところがあるせいかもしれないな。

 

「それより、その髪飾り……」

 

「あっ、気が付いちゃいましたか? えへへ、昨日の夜にちょっと手を加えてみたんですよ」

 

 朝から色々あって聞けなかったことを尋ねると、ネプギアは嬉しそうにはにかんで見せた。

 昨日、俺がプレゼントした黒い十字キーを模した髪飾り。

 それは少し違う感じでネプギアの髪に添えられていた。

 まあ違うと言っても、塗装の艶が増していたり内側の凹んでいる部分が濃い紫色に塗られていることくらいしか俺には分からないのだが。

 

「既製品は塗装が禿げやすいですから、上からちょっと塗り直してみました。まあ、時間がなくて後はそのままなんですけど。どうですか?」

 

「うん、なんかちょっとだけ印象変わったよ。でも、やっぱり似合っていると思う」

 

「ありがとうございます」

 

 ……ここで可愛いのひと言も言えないから俺は駄目なんだよな。

 分かっているのに、どうして言えないんだよ。

 

「ふふふ、私最近幸せすぎて、ちょっと怖かったんです。最初、いつもと違うコレを付けるのもすごく緊張したんですよ? いつもと違う私になって、夢人さんに嫌われたらどうしようって」

 

「そんなことは絶対ないよ。それに、それだったら俺だって同じだよ。変なこと言ったりしたりして、ネプギアに嫌われたらどうしようってさ」

 

「お揃いですね。だったら、夢人さんも安心していいですよ。私が夢人さんを嫌うことも、絶対にあり得ませんから」

 

 愛を確かめ合うって、本当恥ずかしいなあ。

 でも、それ以上に嬉しくてもっと言葉にしてネプギアに伝えたくなる。

 世の恋人達も同じような悩みを持っているのだろうか?

 だとしたら、是非とも今すぐにその答えを教えて欲しい。

 

「この髪飾りも私が夢人さんの特別になった証ですね。実を言うと、最初2Pカラーっぽいアイテムかもとか思っていたんですけど、今はこっちの方がオリジナルカラーですって胸を張って言えます」

 

 ……俺、もう駄目かもしれない。

 そんな耳にかかっている髪をふわっと掻き上げながら嬉しそうに笑うのは反則だと思います。

 もうその仕草とかネプギアの髪の匂いとか、俺もピーシェみたいに我慢の限界を迎えてしまいそうじゃないですか。

 

「っ、うふふ」

 

 ドギマギし過ぎて握っていた手の力を強めてしまった。

 すると、ネプギアは一瞬目を見開き、すぐに頬を染めて口元を緩めだす。

 すごく見透かされてる感がある。

 今の俺、絶対に顔が真っ赤になっていると思う。

 

「ぴ、ピーシェはどこだろうなあ!? おーい、ピーシェ!? 居たら返事してくれー!?」

 

「あーい!! ぴいはここだよー!!」

 

「――って、居た!?」

 

 緊張に耐えられなくなって破れかぶれで叫んだだけなのに、まさか返事が返ってくるとは思わなかった。

 声をのした方を向くと、ちゃんとピーシェが居て俺達に向かって大きく手を振っている。

 

「もう心配したんだよ、ピーシェちゃん。勝手にいなくなっちゃダメだからね」

 

「えー、だって、つまんなかったんだもん。ぴい、おそとであそびたかっただけだもん」

 

 叱るネプギアの言葉もなんのその、ピーシェは不貞腐れた様子で頬を膨らませる。

 

「だったら、もう十分遊んだでしょ。皆も心配しているし、早く帰るよ」

 

「やだ! ぴい、まだあそびたい!」

 

「……いい加減にしないと私も怒るよ? いいから、皆の所に帰るの」

 

「やだやだやだ!! あそびたいったら、あそびたいの!! ねぷぎゃーのいじわる!!」

 

「ね、ねぷぎゃー!? わ、私の名前はネプギア!! そんな変な名前なんかじゃないよ!!」

 

「ま、まあまあ、落ち着けって」

 

 帰ろうとしないピーシェと口論の末、熱くなってしまったネプギアを俺は宥めた。

 さっきも言っていたが、ネプギアは本当にピーシェのことが苦手らしい。

 これも記憶喪失の影響なのかと、俺の記憶にあるネプギアとの違いに少しだけ戸惑ってしまう。

 

「なあ、ピーシェ。1人で遊ぶよりも、帰って皆で遊んだ方が楽しくないか?」

 

「めーともいっしょ?」

 

「おう。それに、俺だけじゃないぞ。帰ったら、ネプテューヌやロムとも一緒に遊べるんだ。皆で一昨日みたいに雪合戦したり、今度は大きな雪だるまを作ったりして遊んでみないか?」

 

「ほんとー!? あそぶあそぶあそぶ!! かえってみんなであそびたい!!」

 

 目を輝かせるピーシェを見て、俺は自然と頬が緩んだ。

 そうと決まったら、ピーシェの気持ちが変わってしまう前に帰らないとな。

 

「じゃあ、帰るか。帰ったら、まず雪だるまを……」

 

「めーと、めーと」

 

「うん、どうかしたか?」

 

「かたぐるまして」

 

「……肩車って、おい」

 

 はしゃいで街の中を回ったせいで、ピーシェはもう疲れているのかもしれない。

 ズボンの裾をクイクイッと引っ張るピーシェを見て、思わず苦笑してしまう。

 

「分かった分かった。落ちないように、しっかりつかまっとけよ」

 

「っ、うおおお! たかいたかい!」

 

 視点が高くなって嬉しいのはいいんだけど、地味に額を左右に強く引っ張るのが痛い。

 足もバタつかせるせいで肩にもかなりの負担が。

 

「暴れんなって。ネプギアも帰るぞ」

 

「……あっ、はい」

 

 ちょっと返事が遅れた気がしたが、すぐにネプギアも横に並んで歩きだす。

 周りからは親子に見えているかもしれない。

 そう考えると、顔がにやつきそうになる。

 

「めーと、ゆきだーまってなに?」

 

「雪だるまって言うのはだな、まず大きい雪玉の上に小さい雪玉を乗せるんだ。それから、小さな雪玉に落ち葉や小枝で顔を作ったり、赤いバケツを被せてみたりするんだ」

 

「……よくわかんない」

 

「まあ、実際に作ってみれば分かるさ。皆で作れば、ピーシェよりも大きい雪だるまなんて簡単に作れるんだぞ」

 

「ぴいよりも!?」

 

 こう言う素直な反応が可愛いよな。

 よし、ピーシェを楽しませるためにも頑張って大きな雪だるまを作らないとな。

 だから、まあ……“アレ”はピーシェにあげちゃってもいいか。

 ピーシェも嬉しそうにキラキラだって言ってたし、また新しいのを見つければいいんだしな。

 

「はやくはやく!! はやくゆきだーまつくりたい!!」

 

「痛い痛い痛い!? 髪を引っ張るなって!? 分かったから!? 分かったから、もう引っ張るなって!?」

 

 グイグイと俺の髪を引っ張るピーシェに急かされながら、ネプギアと一緒に皆の所に帰るのであった。

 

 ……そう言えば、ネプギア帰る途中は何もしゃべらなかったな。

 どうかしたのか?

 もしかして、俺また何かやらかしたか?

 

 

*     *     *

 

 

「買い物、だと?」

 

 正気かと言わんばかりに、ディックは眉をひそめながら問い返す。

 

「自慢じゃないが、俺は普通に道を歩いているだけでもどこか知らない場所に辿りついてしまうのだぞ。そんな俺に買い物を頼むなど、正気か?」

 

「正気も何も、子どもじゃあるまいしお使いぐらい行けるでしょ? ほら、地図も用意したから、さっさと行ってきなさいよ」

 

「うむ」

 

 呆れた様子のアイエフから地図を受け取り、ディックは低い声で唸る。

 ジッと地図を眺めていたと思うと、ディックは顔を上げて口を開く。

 

「すまん。この暗号はどうやって解けばいいんだ?」

 

「……暗号じゃなくて地図だって言ってるでしょ。まったく、分からないなら分からないって言いなさいよ」

 

「ムッ、分からないのはこの地図のせいなのだが」

 

「はいはい、分からないのは私のせいですね。それだったら、リュータに案内してもらいなさいよ。きっとそこらで暇しているんだから」

 

「分かった。そうしよう」

 

 アイエフに会話を続ける気がないことを察し、ディックはさっさと食堂の外へと出て行ってしまう。

 この数日、ディックと過ごす中でアイエフの身に付けた処世術の1つである。

 話を切り上げようとすると、ディックもそれ以上何も言おうとしないのだ。

 そんなディックの行動を逆手にとり、アイエフは上手くあしらえるようになったのである。

 

「はあ、本当最近ついてないわ」

 

 ため息をつき、椅子に座ってテーブルの上に頬を乗せるアイエフ。

 頬から伝わる冷たさでも、今のアイエフを悩ませている問題の熱を冷ましてはくれそうにない。

 

「振り回されっぱなしじゃないの? 私って、もっと冷静で頭が回るほうだと思っていたんだけど。1歩引いた位置からリスクマネージメントやら困った奴に助言をしてクールに去る的なポジションだったはずなのに……本当、らしくなくなっているわ」

 

 愚痴とも願望とも取れる言葉を漏らすも、アイエフの気分は沈んだままである。

 ゴソゴソとポケットから頭を悩ませる諸悪の根源の1つ――ディックから買い取った鍵の欠片を取り出す。

 

「ねえ、そろそろ返事ぐらいしなさいよ。アンタが誰で、コレが何なのか、ネプ子達とどんな関係だとか、聞きたいことがいっぱいあるのよ。いつまでも黙ってないで、何とか言ってみなさいよ」

 

 勘違いで怒鳴って黙らせて以来、鍵の欠片から声は聞こえてこない。

 自分の不注意があったとはいえ、さすがに何も答えてくれないことには苛立ちを感じてしまう。

 客観的に見て、自分がまるで物に話しかけているような痛い人物になってしまうじゃないかと、アイエフは考えているのだ。

 

「……本当、どうしちゃったのよ私」

 

 そんな今の状況が、余計にアイエフに惨めさを感じさせていた。

 テーブルに突っ伏すように顔を転がし、アイエフは泣きそうな声で呟く。

 気を抜けば緩みそうになる涙腺が憎らしかったのだ。

 誰にも顔を見られないよう――なお且つ、周りを見ないようにするためなのか、アイエフは目を閉じる。

 

「ごめんくださーい。ちょっといいですか?」

 

「えっ、あっ……ごめんなさい。まだ準備中でして……」

 

「そうじゃなくて、ちょっと聞きたいことがあるんですけど。えっと、大丈夫ですか?」

 

 ガラガラと戸が開き、知らない誰かの声に反応してアイエフはバッと顔を上げた。

 だが、すぐに自分の視界が滲んでいたことに気付き、慌てて目を擦る。

 当然、食堂に入ってきた人物はそれを目撃してしまうわけで、心配そうにアイエフに尋ねる。

 

「大丈夫よ。ちょっとウトウトしていただけだから。それで、聞きたいことって何かしら?」

 

「変な風に思われるかもしれないけど、ここってどこなんですか? フコーカではないですよね?」

 

 困惑して尋ねてくる相手に、アイエフはまたかと頭を抱えてしまう。

 目の前の相手から厄介事の臭いがプンプンしているのだ。

 

「ここはラステイションよ。そもそもフコーカなんてゲイムギョウ界中旅したけど、1度も聞いたことないわよ」

 

「らす、ていしょん? えっ、でも、さっきまで……」

 

「はあ、私も詳しく知らないけど、アンタと似たような事情の奴を知っているわ。とりあえず、知っていることは説明してあげるから、落ち着きなさい」

 

「う、うん」

 

 戸惑う相手を宥めながら、アイエフは自分でもよく分かっていない異世界説を話し始めるのであった。

 

 ――そして説明が終わったその夜、買い物に出かけたディックが帰ってくることはなかった。

 

 

*     *     *

 

 

 同時刻、ルウィーでもとある問題が起きようとしていた。

 

「失礼します。ホワイトハート様、お時間よろしいでしょうか?」

 

「構わないわ。入って来なさい」

 

「失礼します」

 

 コンコンとノックをしながらブランの執務室に入ってきたシン。

 その表情は険しく、手には1枚のディスクを持っていた。

 

「実はちょっと怪しいものを見つけたので、ホワイトハート様にも見てもらいたいのです」

 

「怪しいもの? それって、あなたの持っている円盤のことかしら?」

 

「はい。実は見回りをしている最中、不自然に隠してあるのを見つけまして」

 

 報告しながら、シンはディスクをブランの机の上に置いた。

 ブランはディスクを手に取り、表と裏を交互に見比べる。

 

「……特におかしいところは無さそうね。不法投棄とかポイ捨てとかじゃないの?」

 

「いえ、それを見つけたのは木の裏側なのですが、テープで固定されてたんですよ。まるで誰かがこのディスクをどこか別の場所に行ってしまわないようにするかのように」

 

 話を聞くにつれ、ブランの眉間にも深いしわができ上がる。

 シンの報告通りなら、今手に持っているディスクは誰かが意図的に木の裏に隠したもので間違いない。

 問題は隠した人物が何を考えていたのかだが、さすがにディスクだけでは読み切れない。

 

「分かった。コレはわたしが預かって調べてみるわ。報告してくれて、ありがとう」

 

「お礼なんてとんでもない。僕はただ当然のことをしたまでですよ」

 

 ニコリと笑みを浮かべて退室していくシンを見送り、ブランは再び問題のディスクへと目を向ける。

 ディスク自体に変わった特徴は見当たらない。

 

(悪戯かしら? それとも、何か特別な意味があるとか……とりあえず、中身を確認してみないと)

 

 眺めているだけでは結論が出せず、ブランは愛用のパソコンを起動させてディスクを再生しようとした。

 ディスクに記録されているものが音声であれ映像であれ、パソコンならば問題なく起動できるはずだと判断したからである。

 

 ――しかし、ブランがトレイにセットする前に、ディスクが強烈な光を放ち始めたのである。

 

「っ!? これ、は……」

 

 急なディスクの発光に、ブランは驚きを隠せなかった。

 だが、眩しすぎる光にディスクを観察し続けることができず、固く目を閉じてしまう。

 すると、ブランの意識が急に薄れだす。

 まるで不意に地面がなくなったかのような浮遊感を感じる。

 そのまま意識を失い、執務室からもブランの姿は消えてしまうのであった。

 

「案外呆気なく終わったものだね。まあ、こっちとしては順調に進んで嬉しい限りなんだけど」

 

 パソコンの起動音だけが虚しく響く執務室に舞い戻ったシンはクスクスと笑いながら床に落ちたディスクを拾い上げた。

 ディスクを透明なケースにしまうと、シンは口を開く。

 

「安心しなよ。5日後ぐらいには外に出してあげるから。まあ、寂しくないように後2、3人ぐらいは送るかもしれないけどね」

 

 シンはまるでディスクの中にブランがいるかのように話しかけた。

 そしてディスクを懐に隠すと、シンは徐に携帯を取り出す。

 

「もしもし、まだ起きてますか?」

 

〔当たり前だ。それで、貴様から連絡があったと言うことは上手く行ったのだな?〕

 

「ええ。こちらは予定通りに進みましたよ。後はそちらの襲撃に合わせて、ね」

 

 通信の相手は高圧的な態度だが、声から女性だと分かる。

 女性の口調を気にした様子も見せず、シンは話を進めて口角を吊り上げる。

 すると、女性の方も満足そうな声で話す。

 

〔ふふっ、ようやくだ。この時をどれほど待ちわびたことか。いよいよあの忌々しい女神どもを……〕

 

「あっ、その前に少し段取りを変更させてもらえませんか? ちょっと予定外のことがあったので、どうしてもそちらに用意してもらいたい物があるんですよ」

 

「……何だと?」

 

 へらへらと笑うシンの言葉に、上機嫌だった女性の声が急に冷たくなった。

 

〔どう言うことだ? 問題はないのではなかったのか?〕

 

「いやいや、計画自体は問題なく進行中ですよ。ただ、ちょっと見過ごせないことも同時に起こってしまいましてね。いやあ、失敗失敗って感じですか?」

 

〔……珍しいな。貴様がそんなことを言うなど。イレギュラーなど、貴様の最も嫌うものの1つだったと思っていたのだがな〕

 

 怪しむ女性に、シンの笑みは深まった。

 その表情は女性との会話に流れるスリルを楽しんでいるかのようである。

 

「買いかぶり過ぎですよ。俺だって人間ですよ? 当たり前のように失敗だってしますし、全部を思い通りになんて出来るわけじゃないじゃないですか?」

 

〔……ふん、一応納得しておいてやろう。それで、私は何を用意すればいいんだ?〕

 

「じゃあ、1人分の部屋を用意しておいてください。後、そうだなあ……花嫁衣装みたいなものを用意しておいてくださいよ」

 

〔はあ? 何を言っているんだ、貴様は?〕

 

 シンの要求は、女性にとって意味の分からないものだった。

 一瞬、先ほどまでシンのことを怪しんでいたことを忘れてしまうくらいに女性は戸惑ってしまう。

 

「だから、1人分の部屋に花嫁衣装――うん、純白のウエディングドレスを用意しておいてください。それぐらい簡単でしょ?」

 

〔確かにそうだが……何だ? もしや、結婚式でもあげるつもりなのか?〕

 

「当たらずとも遠からず、ってところですかね。まあ、ちょっとした演出ってやつですよ」

 

〔……どうにも要領を得んな。貴様、いったい何を企んでいる?〕

 

 シンの考えが読めず、遂に女性は直接問い質そうとする。

 それはもう命令に近かった。

 嘘偽りは許さないと言わんばかりに語気を強めた女性の問いかけがシンを襲う。

 しかし、それでもシンは動じる様子も見せない。

 

「企むだなんて人聞きが悪い。俺はただ好奇心を満たすついでに、とあるカップルの恋を応援するだけですよ」

 

〔応援だと? 随分と似合わない言葉を吐くじゃないか〕

 

「おっと、全然信じてもらえてないようで。悲しいなあ、俺は至って真面目なのに」

 

〔ふん、まあいい。計画に支障さえ出なければ、貴様が何をしようと貴様の勝手だからな。準備はしておいてやる〕

 

「感謝しますよ。きっと2人も喜んでくれますよ」

 

〔減らず口ばかりを叩きおって……話は終わりだな? こちらは予定通りに動く。何かあれば、すぐに連絡しろ〕

 

 言いたいことだけ言い放ち、女性は通信を一方的に切ってしまった。

 ツーツーと音を鳴らす携帯を耳から離し、シンは薄く笑いながら呟く。

 

「ええ。問題なんて起こるわけがない――あなたは俺の計画通りに動けば、それでいいんだから」




と言う訳で、今回は以上!
まあ、今はとりあえず本編集中ですね。
一応、この章が終わってから番外編に1話追加したいと思っています。
それでは、 次回 「そのモンスター、最弱?」 をお楽しみに!
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