超次次元ゲイムネプテューヌ Re;夢のヒーローを目指して   作:ホタチ丸

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はい、皆さんこんばんわ!
今年も残ること後わずか。
年賀状や正月準備、大掃除と忙しい時期になってきましたね。
本編もできるだけ投稿していかないと……
それでは、 そのモンスター、最弱? はじまります


そのモンスター、最弱?

 ブランの執務室を後にしたシンの足取りは不自然なほど、いつも通りであった。

 とてもブランや通信をした女性を騙してほくそ笑んでいた人物だとは思えない。

 夢人達の前で演じている好青年な“僕”のシンにしか見えないだろう。

 

「あっ、御波君。ちょっといいかな?」

 

「シン? どうかしたのか?」

 

 だから、夢人も気付かない。

 シンと偶然廊下で出会ったのではなく、探されていたことを。

 

「実は御波君に聞きたいことがあったんだ。今、ちょっといいかな?」

 

「別にいいけど……聞きたいことって何だよ?」

 

「御波君のそのブレスレット、僕の見間違いでなければ水晶が1つ少なくなっているような気がするんだけど、どうかしたの?」

 

 シンは夢人の右手首に巻かれているブレスレットを指さし、心配そうな顔で尋ねた。

 頷きながら右手首を持ち上げ、夢人はシンにもブレスレットが見やすい位置にする。

 

「ああ、コレは特別なブレスレットでさ……なんて言ったらいいのか分からないけど、俺の命綱みたいなものなんだ」

 

「命綱? 随分と変な表現をするんだね」

 

「変、か。まあ、そうだよな。でも、俺がこうしてゲイムギョウ界に居られるのはこのブレスレットの――コレを俺にくれたフィーナのおかげなんだ」

 

 素直なシンの感想に、夢人は苦笑してしまった。

 だが、すぐに優しい眼差しでブレスレットを見つめる。

 

「シン達にはまだ話してなかったけど、俺って実はゲイムギョウ界じゃない世界からやって来たんだ。だから、イレギュラーと言うか、俺の存在がゲイムギョウ界に悪影響を及ぼさないようにこのブレスレットの水晶に込められているシェアエナジーで認識を誤魔化している……だったかな? ごめん、俺も教えてもらっただけだから詳しく話せないんだ」

 

「ううん、大丈夫だよ。とりあえず、御波君にとってそのブレスレットがゲイムギョウ界で生きるためには必要不可欠なものだってことが分かったから」

 

「……自分でも言うのもアレなんだけど、よくこんな話信じられるな。正直、真面目に話せって言われるかと思ったんだけど」

 

 すんなりと自分の話を信じるシンを見て、夢人は表情を暗くさせた。

 頭の中に信じてもらえなかった2人の顔がよぎる。

 仕方がないと分かっていても、思い出すだけで夢人は気持ちを落ち込ませてしまう。

 

「信じるよ。御波君がそう言うのなら、本当にそうなんだって。こう見えて、僕も御波君のことを信頼しているからね」

 

「……ありがとうな。本当、お前っていい奴だよな」

 

「そんなことないよ」

 

 照れながらお礼を言う夢人と謙遜するシン。

 何も知らなければ、男同士の友情を分かち合っているように見えただろう。

 実際、夢人はそう思っているのだから。

 

「っと、僕の方こそ、ありがとう。お礼と言ったらなんだけど、コーヒーでもどうかな? 僕、結構美味しく淹れられる自信があるんだ」

 

「えっ、そんなことできるのか!? でも、道具も何もないんじゃ……」

 

「僕の部屋に一式あるからさ。迷惑じゃなければ、ごちそうさせてくれないかな?」

 

「迷惑だなんてとんでもない。そう言うことなら、喜んでごちそうされますよ」

 

 談笑を交わしながら、2人はシンの部屋へと向かっていく。

 一方は親交を深めるため。

 もう一方は自分の計画を推し進めるために。

 

 ――夜は更けていくのであった。

 

 

*     *     *

 

 

「おきろー!!」

 

「ごふぉっ!? ――な、何だ!? 何が起きたんだ!?」

 

 急な腹部の痛みにより、夢人は意識を覚醒させた。

 忙しなく周りを見渡すと、下手人であるピーシェが眉根を吊り上げて夢人を見つめている。

 

「ねるな!! おきろ!! しぬぞ!!」

 

「いや、別に寝たぐらいじゃ死なないから……と言うより、ピーシェが何で俺の部屋に居るんだよ?」

 

「残念ながら、ここはあなたの部屋じゃないわ」

 

「はあ? ――えっ……」

 

 横から投げかけられた声を聞き、夢人はようやく今自分がいる場所を正しく認識することができた。

 ベッドで眠っていたはずの体はいつの間にか砂の上に投げ出されていた。

 周りを見渡すと、観客席らしきものが見える。

 まるでコロッセオのような闘技場を思わせる場所に夢人達は居たのである。

 

「とりあえず、現状は認識できたようね」

 

「ブラン……さん? あれ、何で俺達こんな場所に……」

 

「別に呼び捨てでも構わないわ。それと、あなたの疑問なんだけど、わたしは答えられそうにないわね。なにせ、わたしも気がついたらここに居たんだから」

 

 ブランの言葉に、夢人はさらに混乱してしまう。

 いきなりピーシェに叩き起こされたと思えば、よく分からない場所にブラン達と一緒に閉じ込められていた。

 言葉にすると単純だが、どうにもまだ状況を上手く飲み込めないのである。

 

「夢人お兄ちゃん、大丈夫(心配)?」

 

「ロムもなのか? えっ、でも、何で俺達がこんな所に?」

 

「慌てないで。ここはまず、お互いにこうなる前の状況を思い出してみましょう。何か分かることがあるかもしれないわ」

 

「は、はい」

 

 疑問ばかりを口にする夢人を、ブランは落ち着かせるように解決策を提示した。

 戸惑いながらも、夢人は1度深呼吸をして冷静にこうなる前のことを思い出そうとする。

 

「俺はシンの部屋でコーヒーを飲みながら話をしていて、それから……あれ? 俺、自分の部屋に戻ってないような……」

 

「そのまま眠くなってシンの部屋で寝た、と言うことね?」

 

「多分」

 

 眠った時の記憶もないので、夢人はブランの推測を断定できなかった。

 すると、ブランは次にロムへと顔を向ける。

 

「じゃあ、あなたは? 何か覚えていることはないかしら?」

 

「えっと、わたしはぴいちゃんと一緒に眠ってそのままだったはずだよ。ぴいちゃんは何か覚えてる(期待)?」

 

「うーん、わかんない! ぴいもおきたら、ざらざらしててビックリした!」

 

「……そう、ありがとう」

 

 ロムとピーシェからも事情を聞き、ブランは考えこむ。

 目を閉じて集中し、集まった情報を頭の中で整理する。

 

「ここは闘技場なのか? 向こうの方から何か出てきそうな感じがするよな」

 

「夢人お兄ちゃん、それってフラグ……」

 

「――グルルル」

 

「あっ」

 

「……回収されちゃったかも(うわー)」

 

 夢人が指をさした入り口から、わらわらとモンスターが姿を現し出す。

 フェンリルや牛鬼と言った中型モンスターが合わせて10体。

 どのモンスターも血走った目で夢人達を睨んでいる。

 

「はあ、ひとが考え事をしている最中だと言うのに喧しい連中ね――いいわ。あなた達は下がってなさい。すぐに片づけるわ」

 

「だったら、俺も……」

 

「必要ないわ。それに、あなたは丸腰で戦えるの?」

 

「えっ……あっ!?」

 

 ため息をつきながら1歩前に出るブランに加勢しようとする夢人であったが、今の自分には武器が1つもないことに気付いた。

 ブレイブソードもB.H.C.も自分の部屋に置いたままである。

 

「とりこぼす気はないけど、もしもの時は2人を頼むわ」

 

 ゆっくりとブランはモンスター達へと歩いていく。

 気負う様子も見せないブランに、モンスター達は警戒しながら散らばる。

 取り囲むようにモンスター達が動くのを見て、ブランは眉をひそめる。

 

「連携? 普通のモンスターよりも知能が高いと言うの?」

 

 倒してきたモンスターの中で今のように動いたものをブランは知らない。

 モンスターは大抵本能の赴くままに襲いかかって来るからだ。

 

「まあ、返って好都合だけど。さっさと終わらせたいから、最初から本気で行かせてもらうわ!」

 

 しかし、ブランは動じない。

 自分1人に狙いが定まっているのなら、夢人達を守りやすいからだ。

 宣言通り、ブランは瞬く間に女神化を完了させる。

 

「かかって来いよ、腰抜けども。まとめて相手になってやるぜ」

 

 茶髪は水色へ、他の女神と比べて極端に露出の少ないプロセッサユニット《ホワイト》を身に纏うホワイトハートへと姿を変えたブラン。

 肩に巨大な斧を担ぎ、好戦的に吊りあがった赤い瞳でモンスター達を挑発する。

 

「グゥラアアァァ!!」

 

 最初に動いたのはブランの目の前に陣取っていた牛鬼だった。

 力任せに斧を振り上げ、ブランへと突撃する。

 

「ハッ、上等だ!! 返り討ちにしてやるよ!!」

 

「アアアアアアッ!!」

 

「オウラッ!!」

 

 振り下ろされる牛鬼の斧を迎え撃つため、ブランはにやりと笑って自身の斧を振り上げた。

 激突する刃の感触から、ブランは牛鬼の斧を破壊したと確信する。

 

 ――だが、次の瞬間に有り得ない光景を目にして驚いてしまう。

 

「う、ウゴォ」

 

(……はあ?)

 

 確かに砕けたと思った牛鬼の斧が刃毀れひとつせずに残っていたのだ。

 それどころか、牛鬼は数歩よろめいただけである。

 手応えと実際の状況の差に、ブランもさすがに驚きを隠せなかった。

 

「ガアアアアッ!!」

 

「――っと、考えるのは後だったな!!」

 

 跳びかかってくるフェンリルの叫び声にハッとし、ブランは違和感の正体を考えるのを中断させた。

 横から襲いかかってくるフェンリルをバックステップで避け、次の襲撃に注意する。

 

「ヨッ! ホッ! ハッと!」

 

 次々と跳びかかってくるフェンリルを、ブランは巧みに避け続ける。

 しかし、それは回避に専念しているからにすぎない。

 モンスター達の動きは不自然なほどに統制がとれ過ぎている。

 だから、ブランも下手に動けずにいたのだ。

 

「……夢人お兄ちゃん、ぴいちゃんのことお願い」

 

「ロム?」

 

「わたし、ブランさんを手伝ってくる(ぐっ)!」

 

 形勢が不利なブランを見て、ロムは固く手を握りしめた。

 夢人の返事も聞かずに駆け出し、モンスター達へと向かっていく。

 

「馬鹿!? 来るんじゃ……っ!?」

 

 向かってくるロムを捉え、ブランは焦って叫ぶ。

 だが、走るロムの姿が光の柱に包まれた瞬間、言葉を失ってしまう。

 

「アイスコフィン!!」

 

 光の中から飛び出したのは大きな氷柱だった。

 氷柱は的確に隙を見せたブランに襲いかかるフェンリルを阻むように飛んでいく。

 

「ッ、ガウ!?」

 

 間一髪氷柱の直撃は避けられるも、フェンリルは無理な回避の影響で地面をゴロゴロと横転してしまう。

 すると、ピタリとモンスター達の動きも一斉にストップする。

 その間に、ロムもブランのすぐ横へと辿りつく。

 

「ロム、なのか? でも、その姿は……」

 

「話は後。今は一緒に戦おう(警戒)」

 

「お、おう。分かった」

 

 女神化したロムの姿に、ブランは戸惑ってしまう。

 ロムが自分そっくりの姿に変わったのだ。

 混乱しかけるが、背中を守るようにモンスター達を睨むロムを見てブランも斧を構え直す。

 

「何だかよくわかんねえことばっかりだが、とりあえず全部後回しだ!! コイツら全員ぶっ飛ばすぞ!! ついて来い!!」

 

「うん!!」

 

 尽きない疑問を振り切り、ブランは一気に攻勢へと転じる。

 1番近くに居た牛鬼へと弾丸の如く突撃を開始する。

 

「ブランさん!!」

 

「おう!!」

 

 後ろから呼びかけてくるロムに短く答え、ブランは渾身の一撃を牛鬼へと叩きこむ。

 正面からの突撃と強襲、牛鬼は斧を構えて防御を選択する。

 しかし、ここで牛鬼に1つ誤算があった。

 それはロムが叫んだ瞬間、ブランの体が淡い緑色の光に包まれたことに気付かなかったことである。

 

「オラァッ!!」

 

「ッ、グ、ウォ……」

 

 盾にした斧ごとブランは牛鬼を両断した。

 上半身がズレ落ちながら光となって消えていく牛鬼を見つめ、ブランは先ほどから感じていた違和感の正体を確信する。

 

(やっぱり、そうだ。コイツらが強いんじゃなく、わたしの方が弱くなってやがる)

 

 理由は分からないが、ブランはそうとしか考えられなかった。

 ロムにかけてもらった強化魔法の力を借りて、ようやく牛鬼レベルのモンスターを倒せる力なのだ。

 明らかなパワーダウンにブランは思わず舌打ちをしてしまう。

 

「チッ、あんまりわたしから離れんなよ! 基本はさっきと一緒だ! 1匹ずつ確実に仕留めんぞ!」

 

「うん!」

 

 だからと言って、ブランは怯むわけにはいかなかった。

 すぐにロムへと指示を飛ばし、モンスター達が連携を再開させる前に攻撃へと移る。

 手近なフェンリルへと狙いを定める。

 

「ガアアアアアッ!!」

 

(少しくらいハンデがあるからってな……)

 

 飛びかかってきたフェンリルの爪を上体を逸らすだけで避け、ブランはクルリと体を回転させる。

 それは斧を全力で振り上げるための予備動作。

 流れるような動きで振り上げた斧を無防備なフェンリルの腹部へと叩きこむ。

 

「ガフッ!?」

 

「トドメッ(燃えて)!!」

 

(――伊達に女神やってねえんだよ)

 

 宙に浮かんだフェンリルに、ロムの魔法が炸裂する。

 炎に包まれ、フェンリルは断末魔すら残せず消滅する。

 この即席の連携が上手くいったのはブランの働きが大きい。

 

 そもそもブランの本領は巨大な戦斧から繰り出される強力な一撃……ではなく、それを扱うテクニックだろう。

 身の丈以上の斧によるパワーだけで守護女神戦争を戦い抜いてきたわけではない。

 ネプテューヌ達の素早い攻撃を避けたり受け流せるテクニックがあるからこそ、ブランは火力を前面に出して強気で責める戦い方ができるのだ。

 いくら力が弱まっていようとも、染み付いた体の動きは失われない。

 先ほどの強化魔法から、ロムの魔法の威力を信じて任せたブランの判断が即席の連携を上手く機能させたのである。

 

「まだやれるか?」

 

「大丈夫。まだまだ元気」

 

「おし、それなら行くぞ!!」

 

「うん!!」

 

 残り8体になり、モンスター達も先ほどまでのように簡単に倒せないだろう。

 しかし、不思議とブランは負ける気がしなかった。

 それは幼いロムに負けられないと言うだけかもしれない。

 だが、ブランはそれを自然と受け入れられていた。

 

「けん制、します(注意)!!」

 

「おう!!」

 

 モンスター達が固まるのを防ぐように、ロムの杖から冷気の渦が放たれる。

 分断され、孤立したフェンリルには……

 

「――だあああああ、りゃあっ!!」

 

 ブランの斧が叩きこまれる。

 アイシクルトルネードを避けた直後を狙われ、フェンリルは吹き飛ばされて壁へと激突する。

 舞い上がった粉塵に紛れ、フェンリルだった粒子が消えていく。

 

「すげー!! ロムもあっちもすっごくつおい!!」

 

「あ、暴れるなって!? 危ないから落ち着け!?」

 

 鮮やかにモンスター達を倒すブランとロムの姿を見て、ピーシェはすっかり興奮してしまった。

 自分も、と言わんばかりに駆け出しそうである。

 慌ててピーシェを抱き上げ、夢人は限界ギリギリまでブラン達が戦っている場所から遠ざかる。

 

「ぴい、もっとちかくでみたい!! めーとのいくじなし!! へたれ!!」

 

「意気地無しでもヘタレでもいいよ!? ってか、お前はそう言う言葉をどこで覚えてくるんだ!?」

 

「みーもとめーじす!! あと、あいえふもいってた!!」

 

「……出来れば聞きたくなかった」

 

 素直すぎるピーシェに聞いたのが間違いだった。

 分かっていたこととはいえ、夢人は心にグサッと痛みが走る。

 

「きゅうにどったの?」

 

「……いや、これは俺の問題だから気にすんな。それよりも、本当にここはどこなんだ?」

 

 ブラン達が戦っている間に、夢人は少しでもこの場所のことを調べようとした。

 周りを見渡しても自分達以外の人影は一切ない。

 上を見上げてみても屋根で空が隠されている。

 分かることは自分達の居る場所がドーム状の闘技場らしき場所と言うことぐらいだった。

 

(いったい何だって言うんだよ? どうして俺達がこんな場所に……)

 

「――よし、やっと出れた!! ……って、ゲェッ!? 貴様らは!?」

 

「えっ……あっ、アンタは確か教会の」

 

 モンスター達が出てきた入り口とは反対側――つまり、夢人達のすぐ傍の閉まっていた扉から1人の人物が飛び出した。

 見覚えのある教会の職員の服と特徴的な後ろ髪が外にはね放題になっている人物。

 

「ぐぅ、どうして貴様らがここに居るのかは知らないが、ここで会ったが100年目だ!! このボッツ様があの人のために……」

 

「うっさい!! へんなめがね、うっさい!!」

 

「へ、変な眼鏡だと!?」

 

 ボッツが指をさしながら高らかに口上を述べようとしたのだが、ピーシェに一喝されてしまった。

 急に叫ばれたことと夢人に抱き上げられて動けないストレスに、ピーシェも機嫌が悪いのである。

 

「このレンズが大きいのはお洒落なんだ!! 大きく丸いレンズは男の包容力を上げるアイテムだって雑誌にも載っていたんだぞ!!」

 

「ぴい、そんなことしらないもん!! あと、へんなのはあたまのほう!!」

 

「ボクは貴様みたいなお子ちゃまにまで馬鹿にされるような頭だっていうのか!? ふざけるな!? こう見えても、学生時代の成績はいつもトップクラスだったんだからな!?」

 

「……いや、髪型のことだと思うんだけど。それよりも、アンタはどうしてここに居るんだ?」

 

 噛み合っていないボッツとピーシェの言い合いを見かね、夢人は口を挟んだ。

 ついでに自分の疑問も投げかけ、この状況の突破口を探ろうとする。

 

「ぼ、ボクがここに居るのはちょっとした事故のようなものだ……まさか、モンスターを出そうとして逆に吸い込まれたなんて絶対に言えない」

 

「ごめん、全部聞こえてる。ってか、思いっきり言ってるぞ」

 

「ハッ、貴様ボクに何をした!? まさか自白を強要させる魔法を!?」

 

「ただの自爆だって」

 

 ボッツは自分がここにいる理由を誤魔化そうとするが、思いっきり口に出していた。

 しかも、夢人に指摘されるまで自覚もなかったらしい。

 驚愕するボッツに、夢人は苦笑してしまう。

 

「色々と知っているのなら教えてくれないか? ここがどこなのかとか、どうすれば出れるのかを」

 

「ふん、そんなこと教えるわけが……」

 

「グルオオオオオオッ!!」

 

「――って、ぎゃああああ!? 忘れてたー!? 助けてくれー!?」

 

 突然聞こえてきた叫び声に、ボッツは慌てて夢人の背中へと隠れる。

 ボッツが出てきた扉から、牛鬼とよく似たフォルムのモンスターが足音を鳴らしながら姿を現したからだ。

 

「うおー、でかいなー」

 

「お、おい!? アイツはいったい何なんだ!?」

 

「アイツはサイクロプスだ!? そんなことも知らないのか!?」

 

 のんきなピーシェを除き、夢人とボッツは大いに慌ててしまう。

 自分達を見下ろす1つ目の巨人に睨まれ、下手に動けもしない。

 

「頼む!? アイツを倒してくれ!? 倒してくれたら、出口でも何でも教えてあげるから!?」

 

「無茶言うなよ!? こっちは丸腰なんだぞ!? どう戦えって言うんだ!?」

 

「だったら、どうしろって言うんだ!? 言っておくけど、ボクは非力な一般人だからあんな棍棒で殴られたら、ひとたまりもないんだぞ!?」

 

「それは俺も同じだ!?」

 

 ギャーギャーと夢人とボッツが騒ぐ間にも、サイクロプスはじりじりと距離を近づいてくる。

 仕方なく、夢人は腹を括って背中にしがみ付くボッツにピーシェを預ける。

 

「コイツを頼むぞ。俺が囮になるから、安全な場所まで逃げろ」

 

「えっ、でも、丸腰だって……」

 

「いいから!! 頼むぞ!!」

 

 戸惑うボッツの返事も待たず、夢人はサイクロプスへと駆け出した。

 勝算なんてない。

 少しでもピーシェとボッツから気を逸らせようとするための突撃だ。

 

「めーと!!」

 

 焦った様子でピーシェが後ろから呼ぶ声を無視して、夢人は一直線にサイクロプスへと向かっていく。

 愚直な突進など、避けるまでもない。

 サイクロプスは夢人を叩き潰そうと棍棒を振り上げる。

 

 ――だが、腕を振り上げた時には夢人の姿を見失っていた。

 

「ぶっ!?」

 

「ゴハァッ!?」

 

 2人分の情けない声が響く。

 1人は尻餅をついて顔を擦る夢人。

 もう1人は棍棒を手放して仰向けに倒れているサイクロプスのものである。

 

「イタタタ……あれ? どうなっているの?」

 

 状況が飲み込めず、夢人は目を瞬かせる。

 気が付けば、サイクロプスに激突していたのだ。

 それはまるでタックルを決めたようにボッツとピーシェには見えた。

 しかし、夢人にそんなつもりは一切なかった。

 

「ゴオオアアアアアッ!!」

 

 だが、雄叫びをあげながら立ち上がるサイクロプスには関係ない。

 自身を吹き飛ばした夢人を血走った眼で睨みつけ、握り潰さんと腕を伸ばす。

 

「あぶない!!」

 

 未だ呆然としているように見えた夢人に、ピーシェの注意が飛ぶ。

 しかし、夢人が避けるよりもサイクロプスが握り潰す方が早い。

 ボッツは数秒後に悲惨な姿になってしまうだろう夢人を見せないよう、ピーシェの目を手のひらで覆った。

 自分も固く目を閉じて見ないようにするが、音だけはどうにならない。

 

 ――ズドンッ、と言う大きな音がやけに耳に残った。

 

(ズドン?)

 

 握り潰したにしては奇妙な音がしたと思い、ボッツは薄目を開けて確認する。

 すると、そこには予想外の光景があった。

 

「え、えっと……」

 

 サイクロプスの手に握り潰されたと思われた夢人が生きていたのだ。

 だが、その表情は困惑している。

 ボッツはそんな夢人の状況を見て、顎が外れてしまうかもしれないほど口を開けて言葉を失くしている。

 

 ……何故なら、サイクロプスが頭から地面に突き刺さっているからだ。

 高く尻を突き上げる姿は夢人達を震え上がらせていたとは到底思えない。

 

「どう、なってるの、これ……」

 

 そんな状況を1番信じられないでいたのは、サイクロプスの腕を掴んでいる夢人自身だろう。

 自分が投げ飛ばしたサイクロプスと両手を見比べ、夢人は戸惑うのであった。

 

「――キキィ」

 

 その様子を余すことなく目撃していた1つ目の蝙蝠……使い魔だけが気付けた。

 サイクロプスの腕を避けた瞬間、夢人の黒い瞳の縁が微かに赤く光ったことを。

 使い魔の瞳を通じて見ていた人物も、この結果に静かにほくそ笑んでいたのであった。




と言う訳で、今回はここまで!
今年中にできるだけ投稿しておきたいですからね。
次回もマッハで書かないと。
それでは、 次回 「その勘違い、必然」 をお楽しみに!
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