超次次元ゲイムネプテューヌ Re;夢のヒーローを目指して   作:ホタチ丸

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はい、皆さんこんばんわ!
何とか年内中に投稿が間に合ったー!
それでは、 その勘違い、必然 はじまります


その勘違い、必然

「ラステイションよー!! アタシは帰って来たー!!」

 

「帰って来たよ~!!」

 

「……ちょっと2人とも、騒ぎ過ぎだよ」

 

 ラステイションに到着して早々、ナナハは大声で叫び出すREDとプルルートに頭が痛くなる。

 無駄に注目を浴び、遠巻きにひそひそと眺めている者もいる。

 

「ここがラステイション……少々埃っぽいといいますか、空気が濁っているような気がしますわね」

 

「ベールはラステイション初めて?」

 

「ええ、そもそも他の国に行くこと自体ありませんでしたから」

 

 眉をひそめてハンカチを取り出して口元を覆いながら、ベールはREDの質問に答えた。

 守護女神戦争で争っているため、普通は女神が他国に向かうなんてことは今まで無かった。

 その答えに、REDは納得して手を打つ。

 

「そっか。ベールは今まで引きこもりだったんだもんね。そりゃ、知らないわけだよ」

 

「待ってください!? それは酷い風評被害ですわ!? いいですか、REDちゃん!? わたくしは引きこもりなどではなく……」

 

「ふっふっふっ、それならこのREDちゃんにお任せだよ! 初心者のベールにもラステイションの隅から隅まで教えちゃうから楽しみにしてね!」

 

「だから、わたくしの話を聞いてください!?」

 

 誤解を解こうとベールが必死になればなるほど、REDは楽しそうに笑みを深めている。

 わざと話を聞こうとしていない確信犯だ。

 そんな2人の様子を見て、ナナハはため息をついてしまう。

 

「はあ、私達は別に遊びに来たわけじゃないのに」

 

「何だか、ななちゃん元気ないの~? あたし、何かしちゃったかな~?」

 

「ううん、プルルートさんのせいじゃないよ。それに、私はいつも通りだし」

 

 気遣うプルルートに、ナナハは笑って答えようとした。

 しかし、上手く笑うことができず、プルルートは余計に心配になってしまう。

 

「あう~、あたしってそんなに頼りないかな~?」

 

「そんなことないよ。プルルートさんの気持ちは嬉しいし、そう言う人を安心させる雰囲気が羨ましいかな」

 

「そ~なの? えへへ~、でも、あたしはななちゃんのピシッとしているところが羨ましいんだけどなぁ~」

 

「……そう、なんだ」

 

 ほんわかと笑うプルルートの言葉がナナハに刺さる。

 表情を暗くさせたナナハを見て、プルルートは失言に気付いて慌てだす。

 

「え、えっと~、その~……あたし、やっぱり何か言っちゃったの~?」

 

「……プルルートさんは優しいね。でも、私は大丈夫。大丈夫だから心配しないで」

 

 それはまるで自分に言い聞かせているようであった。

 プルルートも気付いている。

 だが、何を言えばいいのか分からず、オドオドしてしまう。

 

「もー、なに2人して暗くなってんの? せっかくラステイションに来たんだし、テンション上げ上げでいかなきゃ!」

 

 ぎこちなく暗い雰囲気をぶち壊すように、REDがプルルートとナナハの背中を叩いて明るい声を出す。

 

「じゃあ、まずはお腹いっぱいご飯を食べよう! 腹が減っては元気も出ないしさ! 目標、シアンのお店へレッツゴ―!」

 

「ちょ、ちょっとREDさん? 私達はここでガナッシュって人と待ち合わせが……」

 

「そんなの待たせといても大丈夫だって!」

 

「駄目ですってば!? ちゃんと待ってましょう!?」

 

 強引に腕を引っ張ろうとするREDを振り払い、ナナハは怒った様子で注意した。

 すると、REDはつまらなそうに唇を尖らせる。

 

「ぶー、なっちゃんってば、お固いなあ。ほらほら、そんな顔をしていないでスマイルスマイル!」

 

「別に私はそう言うわけじゃ……」

 

「そーやって、また暗い顔に戻ってるぞ? 笑顔は元気の源。辛い時こそ、楽しいことして笑わなきゃね」

 

 ウインクするREDに、ナナハは泣きそうな顔で顔を歪めた。

 胸元に寄せた手で服を強く握りしめ、何かを我慢しているようにも見える。

 

「……ありがとう」

 

「それはなっちゃんが最高の笑顔を見せてくれた時に貰うよ。だから、ここはREDちゃんいち押しのラステイションツアーに……」

 

「それはダメ」

 

「ちぇー」

 

 真面目な様子から急に自分の欲望へと走り出そうとするREDを見て、ナナハは少しだけ自然に笑えたような気がした。

 却下されたREDも不満を口に出しているが、どこか嬉しそうである。

 

「へぇー、REDちゃんって意外と気配りができる方でしたのね」

 

「ムッ、もしかして空気を読まずに突っ走るキャラだと思ってたの? 残念! REDちゃんのキャラはヨメに合わせて無限の可能性を秘めているのであったー!」

 

「おお~、すごいんだねえ~」

 

 ベールの発言を聞き、REDはクルリとその場で1回転して決めポーズをとった。

 パチパチと拍手を送るプルルートは違い、ベールは苦笑してしまう。

 

「無駄に説明口調なアピールですわね。でも、それはそれでキャラがブレ過ぎて安定しないのではないですか?」

 

「もーまんたい! アタシはいつだって自分に素直に生きているからね! キャラブレ恐れてヨメ探しなんて、出来っこないからね!」

 

「……問題だらけではありませんか」

 

 乾いた笑みをこぼすベールを尻目に、REDはチラチラとナナハに視線を送る。

 露骨な目配せに、ナナハは気後れして後ずさってしまう。

 

「な、なに?」

 

「もー、なっちゃんってば分かってるくせに! なっちゃんだって、アタシのヨメの1人なんだよ? しかも、あいちゃんと並ぶベストヨメオブジイヤーなんだから!」

 

「……それ、年内限定なんだけど?」

 

「細かいことは言いっこなしだよ! むっふっふっ、覚悟してなよ。アタシのテクニックでなっちゃんをメロメロにしちゃうんだから!」

 

 ハイテンションなREDにたじたじのナナハ。

 戸惑ってはいるものの、嫌がってはなさそうである。

 リーンボックスを離れた後から感じていた危うさがこれで少しは軽くなれば、とベールは2人の掛け合いを見て考えた。

 

(しかし、今回の件……やっぱり、妙に動かされ過ぎているような気がしますわ)

 

 ベールはルウィーに着いてからの状況に漠然とした不安を抱いていたが、今回のラステイションのことでより強まっていた。

 あまりにもルウィーの教会に居る偽物の動きがないからである。

 

 案内役として同行していたボッツの姿が見えなくなった辺りから、ベールは何らかの動きを見せると予想していた。

 だが、予想は外れ、ベール達は何の妨害もなく情報を手に入れてラステイションまですんなりと入ることができた。

 順調すぎるからこそ、ベールは見えない偽物の意図に絡め取られている気がしてならないのである。

 

「遅れてしまい、申し訳あ――わあああああっ!?」

 

 そんなベールの思考をかき消すように、男性の悲鳴が木霊する。

 声の方を見れば、いい成人男性が尻餅をついた状態で情けない顔のままガタガタ震えている。

 指先は激しい同様に揺れ動きながらも、しっかりとプルルートを指さしている。

 

「な、ななななな何であなた様がここにおられているのですか!? わ、私はホワイトハート様に協力をお願いしたはずなのですが!?」

 

「……ちょっと、ぷるるん何かやったの?」

 

「ほえっ? あたし、何もやってないとおもうけど?」

 

 尋常じゃない怖がり方をする男性を見かね、REDは小声でプルルートに聞いた。

 しかし、プルルートは首を傾げてキョトンとするだけである。

 

「えっと、あなたがガナッシュさんでよろしいのですか?」

 

「は、はい、そうです。すみません、見っとも無いところを」

 

「いえ、何やら事情が御有りのようですし、深くは聞かないでおきますわ」

 

「……感謝します」

 

 プルルートに怯えているのだろう、男性――ガナッシュにベールは深く理由を尋ねることはなかった。

 気にされている様子もないのに小刻みに体を震わせているのだ。

 ここで追い打ちをかけるような真似をするほど、ベールは加虐趣味じゃない。

 

「ですが、例の件については詳しくお話しして下さるのでしょう?」

 

「それはもちろんです。事態もそう悠長に構えている暇もありませんし、すぐにでも皆さんに協力していただきたいと思います」

 

 会話をぼかしながら交わすベールとガナッシュ。

 声は柔らかいが、2人の表情は真剣だった。

 ガナッシュはクイッと眼鏡のブリッジを押し上げて口を開く。

 

「では、時間も勿体ないですし、早速手を貸してもらいましょう」

 

「ええ。まずはどこに向かうので……」

 

「――それには及びませんよ。言ったはずですよ? 手を貸してもらうと」

 

 ベールの言葉を遮り、ガナッシュが顔を俯かせながら言う。

 いぶかしむベールに、そっとガナッシュの手が伸びる。

 

「……まずは私を立たせてください。お願いします」

 

 ベール達のラステイションでの初仕事は腰の抜けたガナッシュを立たせることであった。

 

 

*     *     *

 

 

「ここまで来れば人の目も気にならないでしょう。では、改めて皆さんに協力してもらいたいことをお話しします」

 

 何とも言えない初ミッションをクリアしたベール達はガナッシュに連れられ郊外の寂れた区画にまで足を伸ばしていた。

 きょろきょろと周りの目をやたらと気にしながら、ガナッシュは説明を始める。

 

「この区画はアヴニールが新しい工場プラントを開発する計画が進められていた区画なのですが、諸事情があり計画が凍結された区画でもあります。ですが、ここ最近になって閉鎖していたはずの工場が稼働状態に入ったと報告があったんです」

 

「それが例の破壊兵器の開発に関わっていると?」

 

「その通りです。加えて言わせてもらえるのであれば、不審者の報告も上がっているのです」

 

 ベールの質問を肯定し、ガナッシュは悔しそうに顔をしかめた。

 握った拳を廃工場の壁に叩きつけ、声に怒りが滲みだす。

 

「不審者の報告は今までも何件かありましたが、最近になって【豆腐屋はどこだ?】とか訳の分からないことを言うマント姿の男まで現れたんです! しかも、その男はこの区画を調べるように指示を出した私の部下を問答無用で病院送りにした挙句、【この辺りではないのか】とまるで期待が外れたと言わんばかりの捨て台詞を吐いて姿を消したんですよ! コレが悔しくなくてなんだって言うんですか!」

 

「まあ、落ち着いてくださいな。あなたがそうカッカしたところで部下の人達の怪我が早く治るわけではありませんわ」

 

「……申し訳ございません。少々、取り乱してしまいました」

 

 大きく息を吐いて、ガナッシュは冷静さを取り戻す。

 

「つまり、私が言いたいことは相当の手練れの者が護衛として雇われているのではないかと言うことです。これは軽率な連絡をしてしまった私の失態でもあり、あなた達にかなりの負担を強いることになってしまいました。本当に申し訳ございません」

 

「そのマントの男がどの程度の強さなのか知りませんが、わたくしもそう簡単にやられるつもりはありませんわ。ですから、気にしないでくださいまし」

 

「ありがとうございます。そう言っていただけると、嬉しいです」

 

 頭を下げるガナッシュを見て、ベールは苦笑してしまう。

 いくらマントの男が強いとしても、ベールには女神としての自負がある。

 負けるつもりなど、少しもなかったのだ。

 

「でもでも、何かその人って普通に迷子っぽいんじゃない? ここに間違って迷い込んだってことはないの?」

 

「あり得ませんね。この区画は一応立ち入り禁止になっていますから。何も知らない一般人が迷い込むなんて絶対にあり得ませんよ」

 

「そう言えば~、とげとげがいっぱい付いているので入れないようにしてたよね~」

 

 REDの素朴な疑問に、ガナッシュはにこやかに答えた。

 少しは余裕を取り戻せたのだろう。

 しかし、次の有刺鉄線を可愛く言ったプルルートの声を聞いて、ガナッシュは頬を引きつらせる。

 

「そ、そうですよ。普通はアレがあれば入ってこようなんてする人はいませんから」

 

「う~ん、やっぱり怖がられている。あたしが忘れちゃってるせいなのかなぁ~……あれ?」

 

 理由も分からずに怖がられていることに、プルルートは少なからず傷ついていた。

 だが、思いだそうとした途端、プルルートのガナッシュを見る目が変化する。

 まん丸とした瞳は半分になり、まるで睨むようにガナッシュを見つめだす。

 

「ラステイション……瓦礫の山……眼鏡でスーツ……あたし、やっぱりガナッシュさんに会ったことがあるかもしれない」

 

「む、むむむ無理に思い出さなくて結構ですよ!? 忘れたままでいてくださっても構いませんから!?」

 

「う~ん、あとちょっとで思い出せそうなんだけど、何故かガナッシュさんを見ているとムカムカした気持ちまで沸き上がってきちゃいそうで~……」

 

「忘れててください!? 本当にお願いします!?」

 

 段々と低くなるプルルートの声に、ガナッシュは恥も外聞も捨てて必死に祈り続ける。

 あの時の恐怖を思い出し、ガナッシュは既に泣きそうだ。

 事情を知らないベール達3人は訳が分からず、置いてけぼりをくらってしまう。

 

「REDちゃん、本当にぷるるんは何かしたのですか? わたくしには全然想像できないのですけど」

 

「アタシにも分かんないなー。と言うより、ぷるるんってあんな低い声も出せたんだね」

 

「うん、ちょっと意外かも」

 

 意外な一面を見たと、ベール達はプルルートを珍しそうに見ていた。

 だが、さすがにこのままじゃ話にならない。

 仕方なく、ナナハは後ろからプルルートの頭にチョップを落とす。

 

「イタッ。も~、ななちゃん何するの~?」

 

「何するのって、ガナッシュさんが困っていたでしょ? それに思い出さないで欲しいみたいだし、忘れたままでいいんじゃないの?」

 

「う~ん、そ~なのかな~?」

 

 どこか消化不良気味ながらも、ブンブンと必死に頭を振るガナッシュを見てプルルートも納得するしかなかった。

 本人も思い出して嫌な気分を味わうのが嫌だったのだろう。

 プルルートはすぐにいつものぽわぽわした笑顔に戻ってナナハに抱きつく。

 

「まあいいか~。その代わり、ななちゃんをぎゅ~ってしちゃうから~」

 

「あっ、ぷるるんだけズルイ! アタシもなっちゃんにダーイブ!」

 

「っと、急に抱きつかないでよ、もう」

 

 驚きはしたが、ナナハは2人を拒もうとしなかった。

 されるがまま抱きつかれ、ナナハは優しく2人を見つめてほほ笑むのであった。

 そんなスキンシップを目の当たりにして、ベールも黙っていられるわけない。

 

「だったら、わたくしも……」

 

「ベールさんはダメ~」

 

「悪いね。なっちゃんの腕はアタシ達2人で満員なのだ」

 

「そんな!? お2人の方がズルイではありませんか!? どちらかわたくしと代わってください!?」

 

 満面の笑みを浮かべたプルルートとREDに除け者扱いされ、ベールは大きなショックを受けた。

 だが、すぐに子どもっぽく駄々をこねだす。

 必死に頼むベールと一向に離れようとしないプルルートとREDの3人を見て、ナナハは不意に懐かしさを感じる。

 気を抜けば、涙がこぼれてしまいそうな思い出が頭の中によぎったのである。

 

(駄目。これ以上考えたら……)

 

「さて、皆さん。お話はそこまでにしておいてください。ここです」

 

 ナナハが感情を自制できなくなる前に、ガナッシュの言葉がそれを中断させた。

 すると、ベールの顔つきにも締まりが戻り、油断なく目の前の工場を見つめる。

 外からは他の工場と変わらないように見える。

 

「まずは制御ルームに向かい、この工場の稼働データを入手します。工場と兵器の破壊はその後にしましょう」

 

「当然ですわ。暴れたせいで証拠が紛失しましたでは、第2第3のと続いてしまいますからね」

 

 納得したように頷くベールを見て、ガナッシュは工場の扉を開けた。

 慎重に音を極力出さないように開いた扉の先は薄暗く無数の埃が舞っていた。

 

「ここからは静かにお願いします。気付かれないように案内しますので、ついて来てください」

 

 口の前で人差し指を立てるガナッシュに、プルルートとREDは頷くだけで答えた。

 自分が静かにできないのを自覚しているのだろう。

 2人とも、両手で完全に口元を覆っている。

 

 ――だが、ベールが最後に工場の中に足を踏み入れた途端に異変が起こる。

 

「っ、これは!?」

 

「警報です!? 私達は既に見つかってしまったようです!?」

 

 ヴィーヴィーとうるさく工場内に響きだす。

 ベール達の表情は驚愕に染まり、慌てて周りを見渡す。

 

「わわわわ!? あたし、大きい音なんて出してなかったのにどうしてなの~!?」

 

「アタシだって黙ってたのに!? どうしてバレちゃったの!?」

 

「そんなこと言っている場合ではありませんよ!? こうなったら、強行突破です!? 急いでください!?」

 

 自分のせいでないと叫ぶプルルートとREDに構わず、ガナッシュは慌てて指示を出す。

 ここで怖気づいてしまえば、2度とチャンスは巡ってこないかもしれないからだ。

 ダッと駆け出すガナッシュに、ベール達も急いでついていく。

 

「どうするの!?」

 

「制御ルームに向かいます! このタイミングでのセキュリティーシステムの起動、確実に誰かいるはずです! そいつを押さえますよ!」

 

 走りながら疑問を投げかけるREDに対して、ガナッシュは必要最低限の答えを返した。

 詳しく話している余裕がないのである。

 口よりも足を動かし、一刻も早く制御ルームに向かおうとする。

 

「こちらです!」

 

「ま、待って~!? あたし、そんなに速く走れないよぉ~!?」

 

「頑張ってプルルートさん!? ほら!?」

 

「わっ!?」

 

 通路の角を曲がろうとした時、プルルートが早くも弱音をこぼした。

 1人だけ走るペースが明らかに遅くなっている。

 焦ったナナハはプルルートの手を握り、無理やりに走らせようとする。

 急なことに驚くが、プルルートは転ぶことなくナナハに引かれていくのであった。

 

「あそこの階段を登ります! 急いでください!」

 

 通路の先に階段が見えた。

 素早く指示を出すと、ガナッシュは後ろを振り向かうに登り始める。

 続いてRED、ナナハと手を引かれたプルルートも階段へと辿りつく。

 最後に1番後ろで警戒していたベールが階段を上ろうとした途端、ガシャンと目の前でシャッターが下りてしまう。

 

「これは!? くっ、間に合わなかったのですか!?」

 

 1人遅れてしまったことを悔やむベール。

 別のルートか、それともシャッターを壊して無理やり後を追おうかを考えようとした時……

 

「――やれやれ、ようやく尻尾を出したと思ったら、予想以上に大物が釣れたじゃない」

 

「っ、その声は!?」

 

 聞き慣れた……いや、忘れたくても忘れられない声がベールの耳に届いたのである。

 バッと後ろを振り向くと、そこにはベールの予想通りの人物がゆっくりと歩いてきていた。

 

「まさか、あなたがここに来るなんて思わなかったわ」

 

「ブラックハート!? 何であなたがこんな所に!?」

 

「それはこっちの台詞よ。ここを誰の国だと思っているのよ?」

 

 白く輝く髪にハイレグな黒い衣装――女神化をしているブラックハートこと、ノワールは既に臨戦態勢であった。

 呆れた顔をしても、大剣を握る手は緩みもしない。

 

「まあ、いいわ。あなたがここに居たのは予想外だったけど、おかげでスムーズに事が片付きそうだもの」

 

「――っ、なるほど。そう言うことでしたか」

 

 にやりと笑って見せたノワールに、ベールは頭の中で一連の事柄が繋がったような気がした。

 だが、それはノワールも同じである。

 

(ここにいるってことはアヴニールの背後で兵器を作らせていたのがリーンボックスなのは間違いない。だとしたら、この間の友好なんちゃらとか今までのスタンスはブラフだったと言うわけね。本当、やってくれるわね……!)

 

(わたくし達は勘違いをしていたわけですね。破壊兵器の製造と輸送に協力していたのはラステイションの1部じゃない。むしろ、今回のことはわたくし達を誘き寄せるための罠だったと……!)

 

 立場や関係上、女神が他国に踏み入ることは滅多にない。

 だからこそ、互いに得た情報から裏を想像してしまう。

 しかも、目の前には本人と言う動かぬ証拠がいるのだ。

 

「もう勝ったつもりでいるのですか? 随分と余裕ですのね」

 

「言ってなさい。これ以上、ラステイションをあなた達の好きにさせるわけにはいかないわ――それに、私は個人的にあなたのことが気に入らないのよ」

 

「……奇遇ですわね。わたくしもこれ以上あなたの蛮行を許しておくことはできませんわ」

 

「蛮行ですって? 裏でこそこそするしか能がないあなたに言われたくないわ!!」

 

「何ですって!! それはこっちの台詞ですわ!!」

 

 売り言葉に買い言葉。

 ヒートアップする会話は決定的にズレたまま交わされていく。

 それが互いに武器を持って争うことに繋がるのは必然だったのかもしれない。

 

「とにかく、これ以上好き勝手はさせない!! 話は全部あなたを倒してから聞かせてもらうわ!!」

 

「やれるものならやってみなさい!! 勝つのはわたくしの方ですわ!!」

 

 瞬時に女神化を果たしたベールが槍を、ノワールが大剣を構えて相対する。

 寂れた工場の中で2人の女神が激突しようとしていた。

 互いに勘違いをしたままだと気付かないで……




と言う訳で、今回は以上!
年内投稿はこれで最後だと思います。
すぐに書ければそのまま投稿しますが、一応挨拶だけはしておきます。
今年も1年間、ありがとうございました。
来年もよろしくお願いします。
それでは、 次回 「その眼帯、遅刻」 をお楽しみに!
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