FE転生 レフカンディの侯子 作:レフカンディのエテ侯
タリス戦士団の発足から早くも二ヶ月が経過した。
その間、国王から褒められたことで増長した一部の馬鹿が街で騒ぎを起こしたり、海賊退治に不参加だったオグマを侮った末に喧嘩を売ってコテンパンにされるような頭の痛い事件もあったが、それらを加味しても順調に戦士団は成長していた。
基地として与えられた砦に寝起きしながら、王宮のベテラン兵と我が家の騎士たちを教官として、団員たちは訓練の日々を過ごしている。
王都にほど近いこの小さな砦は、タリスがまだ無数の小邑に分かれていた時代に、後に王都となる集落を守るために築かれた出城だった。若き日のモスティン王はここを拠点にして兵を起こし、近隣の部族を併呑した。
統一戦争時代の偉大な遺産である。
数ある中でこの砦を選んだモスティン王の心境はいかなるものであろうか。それだけキミたち戦士団に期待しているんだと訓示する。
まあ、実際のところは分からない。ただ単に王都から一番近くて、現在は使われてないから、遊ばせておくよりは良いと選ばれただけかもしれない。
当初は鮮烈なデビューを果たしたことが忘れられず、すぐにも次の実戦を求める声が上がっていたようだが、模擬戦等を通して地力と練度の差を分からされた結果、今では真面目に取り組んでいるという話だ。
純粋に成長するのが楽しいというのもあるだろう。
同じ釜の飯を食う同年輩の仲間たちと一つの宿舎で起居を共にしながら、訓練を通じて汗を流す。まだキッチリとした規則などはないふんわりとした集団なので、士官学校というよりは男子校のノリが近いだろうか。
あまりやり過ぎると排他性と選民意識を生む懸念もあるが、競い合うことを通じて練度を深め、仲間意識を育んで欲しい。
ボク自身が宿舎に足を運ぶことはあまりないので伝聞だが、なかなか面白おかしく過ごしているらしい。先日はフットボール的な球技の大会を開いたとか聞いている。楽しそうで結構なことだ。
そういう話を聞くと、同格の友人を持てる彼らが時折、無性に羨ましくなる。まあ、ボクは体育会系は苦手なんだけどね。
専業の正規軍が兼業の民兵集団に勝る最大の理由は訓練に十分な時間を割けることにある。海賊討伐に名乗りを上げた当時は村の力自慢に毛が生えた程度だった戦士たちは、本格的な訓練を通じて長足の進歩を遂げた。
ゲーム的に表現すればレベル一つ二つ上がった状態。
中でも図抜けた成果を見せたのがバーツである。きこりの仕事で培った斧捌きと恵まれた体格が生んだ膂力は元より一級品であったが、今ではそこに足捌きや間合いの勘所、技の深みが備わりつつある。
今はまだ、力任せに叩き込むことしか出来ていないが、ここに練り上げられた技が加われば、無双の斧戦士となるだろうと期待されている。
同じく体格と器用さを見込まれたサジは斧と盾とを同時に扱う訓練を受けている。教官から上げられる報告によると、仲間意識が強く、良い意味での鈍感さがある彼は、重装歩兵への適性があるのではないかという話だ。
後のシリーズで言うところのアクスアーマーだね。
その他の戦士たちも負けてはいられないぞと訓練に励み、それぞれ腕前を上げている。
また訓練の過程で全員が一度は弓を触ったことで、カシムの弓の冴えに誰もが一目を置くに至った。
意外な才能を発揮したのがマジだ。
団員全員を対象に行った検査で、彼には強大な魔力が眠っていることが発覚した。検査を担当した魔道士が「このまま埋もれさせるのはあまりにも惜しいです」と興奮しながら伝えてきた。曰くパレス魔道宮にもそうそういないレベルだとか。
もっとも『新・暗黒竜』をプレイした人にとっては驚くべきことではないかもしれない。
たしかマリクと同格なんだよなあ。
マジの成長率が魔力と魔防とが伸びやすく設定されているのは有名な話。ダークマージに兵種変更した彼を指して『ダークマジ』なんていう渾名まであったくらいだ。
各人の成長率なんてとても覚えていないが、マジについてだけは、あまりの意外性とそのキャッチ―な響きでよく覚えている。
あるいは『マジ』なんて名前の時点で必然だったのかもしれない。
なんならこの検査自体が、この世界のマジに魔道の才能があるか確認するために行わせた面が大きい。もしそれで他にも逸材がいれば儲け物と思ったんだけど、流石にそう都合良くはいかなかったね。
「ダメで元々で期待してなかったけど。そんな逸材がねえ。何事もやってみるもんだ。マジだっけ? 屋敷に来るように伝えてもらえるかい」
検査員にマジを屋敷に来させるように命じた。
本当は自分から砦まで向かいたいところだが、彼我の身分と立場を考えると、それは許されない行動だ。面倒くさいと思うけど、権威はボクの武器だから、自ら毀損するわけにはいかない。
「そう仰せられるかと思って、待機させております」
家令の許可を得て、出入りの商人などを入れる部屋で待機させているとのこと。
これは気が利くのか、ボクが分かりやすいのかどっちだろうね。
「応接室に通すように」
「畏まりました」
側仕えに指示を出す。執務室を出て応接室に移動する。
服はこのままで構わないよね。
「よろしいかと」
「よかった」
割と距離がある廊下を歩きながら、人を迎えるのに致命的な問題がないか確認してもらう。
ボクが到着した時にはすでに客人は応接室に通されていた。
「お待たせ。キミがマジだね。こうして会うのは王宮での式典以来かな」
呼び出されたマジは相当戸惑っていたが、斟酌せず直球で用件を告げる。
「魔法を学んでみる気はないかい?」
「まほー?」
ボクの言葉がよほど予想外だったのだろう。最初何を言われているのか分からない様子だった。無理もない。彼のこれまでの人生に魔法は無縁だったし、将来設計にも欠片も存在しなかったはずだ。
目を白黒させるマジに説得の言葉を畳みかける。
まあ。問いの形を取っているけど、彼は命令と受け取っているだろうし、実際にそうだ。貴重な魔道士の素質のある人間を逃がす気はない。
「つまり……ああ、その、なんだ。俺にも侯子様みたいに空から火の玉を降らせることができるようになるってことですか?」
「ああ。メティオか! ははっ。そうだね」
ようやくのことで絞り出されたマジの言葉にボクは笑った。とんでもないことを言い出すなと思ったが、そうか彼にとっての魔法というのはアレになるわけだ。
「修行を積めばと言ってあげたいが正直に言おう。ボクが言うのもなんだけど、実際あれはかなり高位の魔法だ。使える魔道士は限られている。それにとても稀少な部類に入る魔道書だからね、使いこなせる技量があっても、おいそれと使わせてはあげられない」
一般の魔道士の家系なら家宝として伝えられてもおかしくないレベルの魔道書だ。
ボクは割と嘘つきだが、ここは本音で対するのが礼儀だろう。
「そうっすか」
ほっとした様子だった。あの力を振り回す自分の姿に恐怖していたのだろう。だが同時にちょっと残念にも思っているな。
だがそれはあくまでも一般論である。ボクには当てはまらない。
「けど。そうだね。もしキミがメティオを使いこなせるだけの魔道の境地に至れたならば、プレゼントしても構わない。どうだい?」
ギョッとした顔でこちらを見た後、マジはおずおずと頷いた。
「うっす。頑張ります」
作者はアーマーナイトの中で『蒼炎』『暁』のチャップが一番好きです。次点はヘクトル(アーマー?)。
ちなみに主人公も教官も知らないことですが、サジをアーマーナイトにして育成すると速さと魔防の成長率が0になるそうです。すごいですね。