FE転生 レフカンディの侯子   作:レフカンディのエテ侯

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他愛もない話

 魔道士が操る風を帆に受けた大船が波を切る。

 

 船長が誇らしげに語るところによるとワーレンでもっとも足の速い船だと言う。

 船に明るくはないので、地球の歴史で言う何々に似たとたとえることはできないが、確かに普段タリスに入港する船とは形が違うように思われた。

 船体が細長くて帆の形も少し違うのかな。魔道による追い風を前提とした設計なのだろう。

 

 原作は戦争を題材としたゲームだったので、一部の杖に割り当てられた解錠や燈火のような少数の便利魔法を除くと、武器としての攻撃魔法と回復魔法くらいしか登場しなかったが、現実にこの世界で生きていると、色々な所で魔法が使われているのに遭遇する。

 それこそ今回の風の魔法を船の推力に利用するような。

 風の魔道を修めた船員は稀少かつ航海中に本人が倒れれば使えなくなる欠点もあるが、魔道の助けを借りた帆船は安定した船足を実現していた。

 

 特別仕立ての快速船の旅は快適だった。

 もっともこれはボクが船酔いをしない体質だから言えた話かな。同行者の中にはずっと寝込んでいる人もいた。

 考えてみれば、タリスへの道程はほぼワープの魔法でショートカットしたので、旅らしい旅というのは生まれて初めてだな。船旅に限定すれば前世を含めても初の体験だ。

 海賊退治で乗った船は軍事行動なのでノーカウントで。

 ワクワクしてきた。羽目を外しても許されるのではないだろうか。

 

 風を操るところを見学させてもらう。

 

「風を生み出しているのではなく、向かい風や横風の流れに干渉して、疑似的に追い風を作り出しているのか」

 

 感心した。直接帆に風を吹き付ける力技かと思いきや。ボク自身が使う機会はあんまりなさそうだけど、熟練の技術は参考になるなあ。あと単純に見ていて面白い。

 

「はい。ですので完全な無風になってしまうと、もう地獄ですね。力を振り絞って延々風を起こす羽目になる」

「それは大変だ」

「額に汗する肉体労働が嫌で魔道使いを志したのに、仲間と力を合わせて櫂を漕いでいる方がマシなんじゃないかって苦行が待っています」

 

 この船に櫂はないですがと笑って締める。

 今回の船旅では幸運にも風に恵まれて余裕のある様子の風魔道士から話を聞く。

 聞けばバレンシア大陸の出身だと言う。道理で魔道書を使っていないと思ったんだ。HPの消費が激しそうだ。

 どうしよう。今回のワーレン行では他の大陸から来た人間や異民族と出会えるかなと密かに期待していたのだけど、早速叶ってしまった。

 オマケにアカネイアの物とは異なる魔道に触れられた。

 興が乗ったので、お邪魔ついでに随員から魔道の使い手を招集して、魔道談議に花を咲かせた。議題はアカネイアとバレンシアの魔道の違いについて。また魔道の戦以外での活用方法。

 この道に踏み入れたばかりの初学者かつ一人だけ体格が明白に大きいマジが少しばかり居心地を悪そうにしていたのには、申し訳ないが少し微笑ましく笑えた。可哀想な気もするが、後学のためにも受け入れて欲しい。

 

「この船は優れた仕組みだけど。それでもまだ改善点があると思われた」

 

 風模様と何より個人の職人芸に頼っている。もっと操作難易度を下げれば、この形式の船を増やせるのではないだろうか。

 

「たとえば。そうだね。魔法武器という物があるよね」

 

 振るえば雷を落とす『サンダーソード』が有名だが、ユグドラル大陸には風の魔法剣『かぜの剣』が存在する。

 これがどういうことかと言うと、つまり魔道の心得がない剣士でも風の魔法を発動させられる魔法の道具が実在するということだ。

 その技術を応用すれば、殺傷力のない強風を起こせる魔法の道具も作れるのではないだろうか。それと風を操る魔道士の技を組み合わせれば、動力船の誕生だ。

 

「それならば、こういうのはどうでしょうか」

 

 ある魔道士が言った。

 

「陸上帆船。あるいは帆車でしょうか。馬車に帆を張って魔道で風を当てれば、馬が不要で、なおかつ高速で移動できるのではないでしょうか」

 

 いいね。面白い。

 

「もういっそ風車をくっつけて車輪を直接動かしちゃいましょう!」

 

 自動車だ!

 

「大きな凧を用意すれば空を飛べるかもしれませんね」

 

 飛行かあ。そう言えばこの世界のペガサスやドラゴンはどうやって空を飛んでいるんだろうか。魔法の力か。世界の理自体が地球とは異なるのか。

 

 そんな机上の空論めいた他愛もない話を楽しんだ。

 むろんこんなものは、製造にかかる技術や採算を度外視した与太話だ。話の種類としてはSFの類である。スペキュレイティヴ。サイエンスならぬソーサリーなフィクション。

 

 もっとも。この世界は二千年後もほとんど生活の水準が変わっていない世界なので、そう簡単には動力革命は起こりそうもないのんだよなあ。魔道に限定しなくても、火事場の炉に石炭が使われていて、鋼より頑丈な『銀』があるので、金属加工の技術さえ育てば、蒸気機関も産まれうるはずなんだけどね。

 

 船上での日々はこうして愉快なディスカッションと共に流れて行った。

 同時に重大な示唆を得た。

 

 生活を豊かにする魔道の利用。

 攻撃魔法よりは平和な使い方だと思うのだけれど、魔道は選ばれた者の特別な力だと思っている人種にはウケが悪いかもしれないな。

 果たして、人間に魔道を教えた大賢者ガトーあたりはどう思ってるのだろうか。あの神竜族は神竜族で宗教の皮を被せて精神の修練を義務付けたくらいなので、あまり好ましくは思ってくれないかもしれない。

 

 ボクの思考はだいぶ商人寄りというか、産業化された資本主義社会を念頭に考えている嫌いがある。これは前世のせいでどうしようもないが、気を付けないと他人の思惑を読み違えたり、逆に周囲を置き去りにする危険があるなあ。




 お待たせしました。
 原作を確認してたらとんでもないことが分かりまして。

 ワーレンの位置がですね。
 SFC『紋章の謎(第一部)』とDS『新・暗黒竜』とで違ってたんですよ。

旧紋:アカネイアの南東部 大陸東端にある突き出た部分 ペラティ南西の対岸
新竜:アカネイアの北東部 ガルダの港町の湾を挟んだ南 ペラティ北西 対岸と言うには遠い

 ペラティに寄るか寄らないかの影響が大きそうですね。
 もしかするとFC版では新竜と同じ設定だったのが、紋章の謎でペラティ行きが削除されたのに伴いワーレンの位置も変更されて、その後、新・暗黒竜でペラティのステージが復活した結果、元の位置に復したのかもしれません。

 あと同じくSFC版では削除されてた「13章 グルニアの木馬隊」。これによると、グラ王国のある島の東端にメニディ砦があって驚愕しました。

 本作では、ワーレンはSFC版準拠の立地、メニディ砦もグラ島内には存在しない、ということでお願いします。


 ちなみに。ランドヨットという帆に風を受けて陸上を走る乗り物は実在します。
 また石炭ですが、『Echoes』作中、鍛冶屋の炉を調べると石炭を燃やしていると明言されています。
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