FE転生 レフカンディの侯子   作:レフカンディのエテ侯

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 これは前々話(籠の鳥)の話なんですが、一行を先導してくれた世話役の本好きの傭兵隊長はシーザです。
 シリウス仮面さんが傭兵の振りをして一行を観察してたとかはないです。同じ金髪でちょっと紛らわしかったかなと思ったので、念のため補足しておきます。


密約

 アカネイア歴603年晩春。

 アリティア王子マルス率いるアリティア軍が祖国解放の兵を挙げた。

 友邦オレルアンの地より故国に向けて船出した軍勢の中には、報恩に燃える多くのオレルアン人義勇兵の姿が見られたと言う。

 正史ではグルニア王国の将兵が占領していたアリティアの地であるが、今はグラ王ジオルが直々に王宮と国土の支配者として君臨している。

 この歴史では戦争の流れが大きく異なり、グルニア軍はオレルアン国境に兵力を集中せざるを得なかった。

 アリティアのコーネリアス王は同盟国グラのジオル王と連合し、オレルアンの救援に向かった。そして裏切りに合い非業の死を遂げることになる。

 正史ではアリティア軍の出陣は、パレス攻囲戦への救援であり、ジオル王の裏切りもカミュ率いる黒騎士団と対峙する中で起こったことを思うと、随分と様相が異なる。

 結果としてグラ王国が単独でアリティアを滅亡させることになり、その領有権をメディウスから認められた。

 それは言い換えると、単独で戦った結果、正史よりも大きなダメージを被ったグラ軍が、アリティアとグラとの二ヶ国をだいぶ無理をして支配していると言うことだ。

 対する新生アリティア軍も、正史における同盟軍に比べると、中核となるアリティア騎士団こそ生き残りの分だけ大きいが、全体としては小さかった。

 

「なんだか。序盤のステージを思わせるな」

 

 運命の采配というよりどこか作為的な物を感じてしまう。

 チュートリアル山賊団を越えた先の本格的なゲームの始まり。

 でも、まあ、これは思い込みだろうね。マルス王子がこの世界の主人公だという先入観が見せる錯覚だろう。

 現実には、この世界の王子はとっくに初陣を済ませ、一年以上前からグルニア軍やマケドニア軍を相手に戦ってきている若武者だ。

 ゲームの補正なんてない。段階を踏んで強くはなれないし、リセットもない。だからマルス王子がガーネフとメディウスを倒してくれる保証もないんだよなあ。今更だけど。

 

 だから、漫然と倒されるのを待っているわけにはいかない。

 

「ボクたちの敵はメディウスでありガーネフだ。違いますか」

 

 時間は十日ほど遡る。

 カミュ将軍との密談の席にミネルバ王女が登場した場面だ。

 ガーネフはともかく『紋章の謎』をプレイした人間としてはメディウスに同情する気持ちもあるのだが、現実にこの世界で生きている人間としては、滅ぼされるのは真っ平ごめんだ。

 

「違わない。その通りだ侯子ディオメデス。だからこそ私もこの会談に派遣されるのを承諾した」

 

 問い掛けに赤髪の竜騎士が賛意を示した。

 ゲームで見慣れた鎧姿ではなく、赤い乗馬服か軍服を思わせる革製の服を着ているのが新鮮だ。年の頃はエリス王女と同じくらいだろうか。十六から十八ほど。ボクが言えた義理じゃないが、まだ少女と言って良い年回りだ。

 

 プリンセス・ミネルバ。

 マケドニア王国の第一王女にして白騎士団を率いる美しくも恐るべき赤い竜騎士。カミュには譲るが、大陸有数の騎士の一人として数えられる猛将だ。

 並の天馬騎士では数騎掛かりでようやく足止めが叶うほどだと、戦場で相対したことのある天馬騎士たちが畏怖とともに語ってくれた。

 

 原作では父を殺した兄への反発とドルーアへの敵愾心を胸に抱きながら、兄の手で人質として差し出された妹を案じて、心ならずも戦場に出ていた。

 その割に奇襲作戦を気に入らないとして友軍を放って戦場を離脱するなど無鉄砲なところがある。

 これまたクール系と見せかけた我が道を行くパッション系の人種である。

 実のところ、既に王太子ミシェイルによる父王の弑逆と簒奪が行われた後なので、二人の仲は断絶している物とばかり思っていたから、名代として彼女が現れたのは意外だった。

 でもそうか。今から話し合う計画が上手く運べば、彼女にとっては願ったり叶ったりだ。乗り気にもなるか。

 

「レフカンディの侯子。それともタリスの王子と呼ぶべきだろうか」

 

 とカミュ。

 ここで言う王子とは、王の息子という意味ではなく、王女の配偶者程度の意味である。公と訳しても良い。現国主の妹であるミネルバの王女も同様。

 とはいえ、まだ婚約の段階なので。

 

「王子は御勘弁を」

「承知した。侯子のそしてタリスの切り札はミネルバ王女か。いや、王女は名代と言われたな。つまりミシェイル王子も一枚嚙んでいるわけだな」

「その通りだ。カミュ将軍」

 

 カミュの確認をミネルバが肯定する。

 ミシェイル王子との文通が始まったのは、パレス陥落よりも前、ちょうど戦士団を結成した辺りの頃だ。レフカンディの縁者としてではなく、タリスの後継者として、挨拶を行うという態で始まった。

 国交のない国だが、ワーレンの商人はすべての陣営と商売を行っているので、その伝手を辿れば手紙のやり取りくらいは行える。

 何度か文を交わし、互いに贈り物を贈り合う関係を構築した後で満を持して本命の提案を持ちかけた。

 

「対ドルーアの秘密条約」

 

 一言で言えばこうだ。

 

 親アカネイアの父親を殺害してまでドルーアに通じたミシェイルだが、その実はアカネイアを滅ぼした後はカミュと組んでドルーアをも叩き潰す気でいた。

 マケドニアとグルニアで世界を二分するつもりだったのか、あらためて雌雄を決するつもりだったのかは定かではないが、これについては作中でミシェイル本人がミネルバに語っている。

 ただこれカミュ本人と何も諮っていない皮算用っぽいんだよなあ。

 なので、そこだけを見るとだいぶ甘い見込みで行動しているなと言わざるを得ないのだけど、恐らくだが、マルス王子さえ登場しなければ、ミシェイルの思い描いた通りの流れになっていた可能性が高い。

 メディウスを倒せたかは一旦棚上げしよう。

 原作時空でのアカネイア大陸の情勢は、ドルーアによる世界征服がほぼ完了し、残すはオレルアンで解放軍(反乱軍)を組織して抵抗を続けるハーディンとその一党のみであり、その彼らもだいぶ追い詰められていた。

 それはつまり忠実な部下たちを脱走兵にしてまで逃がしたニーナが再び絶体絶命の危機に陥るということだ。

 カミュが後々までずっとニーナを気に掛けていたことは、わざわざボア司祭の没収された魔道書をマルス王子を経由で返却に現れ、助けてやってくれと頼むことからも明らか。

 その状況でミシェイルからメディウスを討たないかと誘われたら、カミュの性格的に同意する可能性が十分にある。と言うより、ニーナが殺されるのを看過する光景が想像できないんだよなあ。絶対、反旗を翻す。そして全てが終わった後に去って行く。

 

「ミネルバ王女の白騎士団を始め、マケドニアの竜騎士たちがタリスを守る。そこまで行かずとも攻撃に参加しないのであれば、ニーナ王女を守り切れる勝算は確かに高いな。ディオメデス侯子も大魔法メティオをも操る熟達の魔道士だと聞く」

 

 カミュ将軍には、ボクのことが主家の姫君をなんとかして助け奉ろうとする忠臣に見えているのかもしれない。ボクからすればタリスを守り切れれば、なんだけどね。

 なんだかアベコベでおかしくなっちゃうな。ドルーア側のカミュ将軍がアカネイア王女の身を案じて、アカネイア貴族のボクがニーナ姫の安否自体にそれほどの価値を置いていないの。

 

 現在のボクの目標はタリスの独立を保つことだ。

 モスティン王とその重臣たちと何度も話し合いを持ち、ボク個人の家臣団にも諮ったが、ニーナ姫をタリスに迎えることがその助けになると結論付いた。

 

「しかし。よろしいだろうか王女。我がグルニアがそうであるように、貴国もまた王族をドルーアに人質として差し出されているはず。アカネイア陣営のタリスに与力しては、妹君の身に危害が及ばないだろうか」

「案じていただき感謝する将軍。だがそれについては侯子から一つの策を授けられてな。私などは単純なので砦の内部からさらって逃げるくらいしか思いつかなかったのですが、なるほどその手があったかと膝を打つ代物でした。と言うのも」

 

 永らく胸の内を悩ませてきた憂い事が取り除かれるとあって、隠しきれぬ喜色を滲ませるミネルバ。武人たらんと作った口調が崩れかけている。

 

「いえ聞かないで置きましょう。我らが敵はガーネフだ。王女もアレの悍ましさは御存知でしょう。彼の魔人ならば人の頭の中を暴く程度の事、可能だとしても驚かない」

 

 聞いてくれと語りだしたミネルバを、やんわりと嗜めるカミュ。

 

「あっ。そうですね。んっ。すまない。確かに言われてみればその通りだ。忠告感謝する。侯子もすまなかった。少し、浮かれ過ぎていた」

「いえいえ。無理なき事かと」

「それだけ私に信を置いてくださった証拠と思えば光栄だ。ならば私も応えないわけにはいかないだろう。必ず無事で引き渡すことを約束する。王女、侯子、どうかニーナを助けてやってもらいたい」

 

 こうして交渉は成った。

 

 同年同月。アリティア軍の蜂起から間もないある日。

 アカネイア南部のディール要塞に軟禁されていたマケドニア王国第二王女マリアが白昼忽然と姿をくらました。同じ部屋の中で監視していた世話役の証言するところ、机に向かい読書中であった王女は、急に何かに驚いたような顔をしたかと思うと座っていた椅子から立ち上がり、そのまま瞬きするうちに消えてしまったと言う。

 

 要塞司令部はこれを人質の不当な奪取ないし脱走と判断しマケドニア王国に抗議する。

 マケドニア王太子ミシェイルは、これを不服とし、逆にドルーアが自国を貶める為に行った謀略と断定。即日、ドルーア帝国との絶縁を宣言。宣戦布告の後、手始めに発端となったディール要塞を襲撃し、これを陥落させた。




603年の晩春、主人公が暗躍する裏で遂にマルス王子が兵を起こしました
一年前倒しなので15歳のマルス様です

ところで、時間経過を意図的にボカシながら書いてたんですよ
原作が事件は何年に起きたとしか書かないスタイルなので、踏襲しようかなあと思ってそうしてたんですが
そうしたら自分でもどれくらい経過したか分からなくなっちゃって
これ、分かりにくいだけで害しかないなと思いました
今回から季節とか何月の出来事かとか書いてくことにしました
投稿済みの過去の話は加筆するより、そのうち年表を作って、貼り付けようかなと思います(予定は未定)
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