FE転生 レフカンディの侯子 作:レフカンディのエテ侯
「ミネルバ姉様!」
「マリア!」
マケドニアの姉妹が抱擁し合う。
アカネイア南部ディール侯国。マケドニア軍が進駐するとある都市。接収した元領主の館の一室でマケドニアの王女たちは感動の再会を果たしていた。
王女マリアが同盟の人質として送り出されてから三年。定期的な面会こそ許されていたようだが、それは厳重な監視下でのこと。誰はばかることのない自由な対面に二人して涙を流しながら喜び合う。
マリア王女の年齢は十二歳だと言う。九歳で故郷と家族の元を離れたのはボクと同じだが、彼女の場合は人質だ。ボクには母様も一緒だったし、タリスではのびのびと過ごさせてもらった。オマケに前世持ちのボクとは違う純正の子供。どれだけ辛く苦しかっただろうか。それを思うと、目頭が熱くなるのを感じる。
マケドニアの家臣団の中にも貰い泣きしている人たちが多々見られた。中にはペガサス三姉妹と思わしき面々もいる。
「姉様、ねえさま。ちょっと痛いわ」
マリア王女が放してくれと訴えかける。どうやら感極まった姉姫に必要以上に強く抱きしめられた様子。
「ごめんなさい。とても嬉しかったものだから」
「姉様。ええ。わたしも嬉しいわ」
ボクはそれを離れたところから眺めながら、無事に成功してほっとしていた。
レスキューという魔法がある。
ワープとは逆に遠隔地にいる対象を目の前に転移させる救出の魔法だ。突出した味方の救出の他、ワープと併用しての首狩り戦術や畳み掛けたい時に攻撃を終えた味方を回収してボスの隣を空けたりするのに使用する。
いずれ必要になると信じて戦争が始まる前から確保しておいたのだが、今日こうして役に立ってくれた。
SFC版ではグルニアの王女ユミナ専用だったが、これも他の多くの魔法同様、DS版では誰でも使える杖になった。
そしてそれはこの世界でも同様だった。オマケに稀少性の割に使用難易度自体はライブの杖とさほど変わらないので、杖魔法を学んだ人間なら本当に誰にでも使える。
当然ボクも使えるが、今回はミネルバ王女本人が使用して、妹のマリアを救出することを望んだ。補助にレナと言う名の王女付きの女官が入った。
竜騎士の印象が強いミネルバが杖を使うことに違和感を覚える人もあるかもしれないが、杖魔法は女性王族の嗜みである。
例えば紋章の謎に登場する王女のうち七人中四人がシスターである。王宮の外で育ったグラのシーマを除外すれば実に三分の二がそうなる。貴族階級の男子が剣や槍を学ぶように、貴族の女子は杖の振り方を学ぶ。
この杖の使用感は口で説明するのが難しいのだが、簡略化して言うと、魔力の波を飛ばして、救出対象の魔力と接続、術者と対象の意志を同調させ、相手の同意をトリガーとして発動転移する。
その際に敵意や不信感が介在すると発動できないデリケートな魔法でもある。
今回の救出が成功したのは一重に姉妹の絆があっての賜物だろう。
でも、まさか、マケドニアを出奔する前のレナさんと出会うとは思わなかったな。
仲睦まじい姉妹の姿に貰い泣きをしている女官の姿をちらりと見る。赤い髪の美しい女性だ。今回の儀式魔法で王女の介添えを務めた熟達した杖魔法使いでもある。ミネルバ王女は魔力がそれほど強くないので、それを増幅する役目を果たした。
そういえば彼女、元々はミネルバ王女の側仕えなんだっけ。完全に失念してたので、不意を衝かれてしまった。
同名の別人ということはないと思う。
シスター・レナ。
リフ僧侶の出番が削られたSFC版の『紋章の謎』では最初に出会うことになる回復の杖の使い手だ。メディウス復活の生贄に捧げられた四シスターの一人でもある。
マケドニア貴族出身で、母方の祖父であるグルニアの宮廷司祭に師事して修行を積み、実家に戻った後はミネルバ王女の女官として仕えてたんだっけ。そして戦乱を憂い、苦しむ人々を助けるために祖国を出奔して、各地で奉仕活動を行っているうちにサムシアンに囚われ、その後は原作に続くと。
前日譚であるアカネイア戦記では、ドルーアに苦しめられる人々を助ける為にお金が必要で、その為にはお宝を頂戴するのが一番だと盗賊のリカードに唆されて、紅の剣士ナバールを用心棒に陥落後間もないパレス城に侵入するエピソードがある。
パレスの陥落にはグルニアからマケドニアに帰国する途上で遭遇したのか、マケドニアを出奔してからだったのかは定かではなかったが、こうしてまだミネルバに仕えていると言うことは帰国途中での出来事だったのだろう。
もしくは、これもまた変化した歴史の影響で、彼女の出奔が先延ばしになっているのか。
あれ!
待てよ。これまずくないか。
今まで気にしてなかったけど、サムスーフ侯国はほとんど戦禍を被ってないから、つまりレナさんがデビルマウンテンに足を運ぶ理由がないのでは。
うわ。本気で気づいてなかった。
先入観だなあ。ジュリアンとレナさんのカップル成立は自明の物として、どうにかして二人をサムシアンから救い出し、ナバールを説得する方法はないかと考えてたけど、ジュリレナが出会わない可能性は考えてなかったぞ。
そりゃあ、そうだよね。
マルス様とシーダが出会わなかった前例があるんだから、ジュリアンとレナさんが出会わないことだって十分起こりえる。
むしろ、これだけ状況が変わっているのに、同じことが起きる方がどうかしている。
ボクは間抜けだ。
どうする。ジュリアンとの恋を欠いた状態で、どうやってガーネフの洗脳を解く。
マチス? 元祖バカ兄貴にレナさんの説得を任せろと? あの男、原作でも『はなす』コマンドが出ないんだよ。
魂を砕かれた彼女たちを助けないという選択肢はない。
なぜなら、生贄のシスターが残った状態でメディウスを倒せば、残っているシスターの命を吸い取ってメディウスが復活するからだ。
わざわざ長々と儀式を行っていた以上、恐らくシスターの命を直接散らす方法では、不完全な復活にとどまるのだろうが、戦闘力自体はそれまで戦っていた時と変わらない。少なくともゲームの中では。
シスターの犠牲を容認してメディウスを倒すというのはなしだ。単純にメディウスを二回殺すというのが非現実的すぎる。
本当、毎度のことだけど、あちらを立てればこちらが立たずとは良く言ったものだ。次から次に問題が見つかる。順調に進展しているからこそ今まで見えなかった問題点が見えるようになった。そう信じたいな。
不幸中の幸いは、ガーネフがシスターを攫いだすのは、メディウスが一度倒された後、それを暗黒竜として復活させるためだ。
どれだけ順調に事が運んでも、戦争の終結までは少なくとも数年の猶予がある。戦争が続くことを猶予と表現するの強烈な違和感があるなあ。
この件も、後でじっくりと対策を練ろう。
なにせ、さっきからマリア姫がこちらをチラチラと見ている。
今は、このおめでたい場面で、しかつめらしくしているのは無粋だろう。
あ。目が合った。
「ねえお姉さま。こちらのステキな殿方はどなたかしら」
「ああ。紹介しましょう。こちらは」
ミネルバ王女の紹介にあずかり、マリア王女と交流を深めた。
魔力を増幅する儀式魔法
半オリジナル。『トラキア』に登場する「マジックアップの杖」の相当品
もしくは『新紋章』の「力の杖」の魔力版
正義の盗賊団事件
実は作者自身はレナさんがマケドニアを出奔してから起きたんじゃないかなあと思うんですが
本作では帰国の途上での出来事かつ陥落の時期も違うが遭遇したとしました
御都合主義だと笑ってね
あと良ければ評価ください!(直球)
評価・イズ・パワー モチベーション的意味で。
面白くなかったの低評価でも、「読んだ人に行動させる力があったんだ」って思えるので、普通にありがたいです。