FE転生 レフカンディの侯子   作:レフカンディのエテ侯

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ありがたくない風物詩

 蛮族という兵種がある。

 それは兵種なのかというツッコミはもっともなのだけど、ファイアーエムブレム的には斧を使って戦う兵種の一つなのだ。古のRPGではエルフやドワーフがそのまま職業扱いだったりしたので、これもそういうものなのだと思って欲しい。

 主に敵として登場するが、作品によっては味方が蛮族に成ることもできた。

 蛮族になるってなんだ?

 頭の中の宇宙空間に猫の顔が浮かんでくるな。

 

 まあ要するに異民族である。出稼ぎ感覚で略奪に来る。地球の歴史で言えば騎馬民族やヴァイキングが近いのではないかと思う。剣ではなく斧を持ってくるのもそれっぽい。普段は地元で農業に従事しているのだろう。

 

 タリスでは彼らは海を越えて北からやって来る。

 大陸中原で行われるアカネイアとドルーアの覇権戦争とは、ほぼほぼ無関係のありがたくない風物詩である。

 気になって蛮族出身の商人に尋ねてみたことがある。ある程度時期が決まっているのは農閑期の副業だからかと。するとその通りだと返って来た。同時にそんなことを気にするアカネイア人(南蛮人)は珍しいとも言われた。

 

 上陸した蛮族たちは集落や修道院を襲い、略奪し、人を攫って行く。ノルダの奴隷市場の商品の出所だったりするのが頭の痛い所だが、そういう時代なのだと言う外はない。何の慰めにもならないが、アカネイアで売り買いされるだけマシですらある。

 

「もちろん攫われないようにするのが一番なのは言うまでもないことだ」

 

 当たり前だが、農奴や小作人を連れ去られて喜ぶ農園主はいない。自ら武装したり傭兵を雇って自衛する。ボクたち母子に与えられた騎士隊も普段は農園を巡邏している。

 

 ボクが所有する荘園の一つに蛮族が襲来した。

 運の無いことだ。騎士隊長のウーナが率いる班に当たるとは。空中から飛来した天馬騎士の一当てに、狼狽え騒ぐ最中へと矢が雨と射掛けられ、騎兵たちが突撃した。蹂躙の一言。騎士たちは傷一つ負わずに略奪者たちを殲滅した。

 

 ボクは屋敷の執務室で報告を受けていた。

 働いてくれた騎士たちを褒め、文官から提出された被害を受けた村への補償の案に許可を出し、裁判権を有する地主として犯罪者たちに科す刑罰の執行を命じる。

 最初は凄惨な報告に聞くだけで気分が悪くなったが、もう慣れてしまった。すでに日常となった光景だった。

 

 ただし今日は一つ珍しい客がいた。

 

「それで捕えてきたと。珍しいね。キミたち戦って死ぬのが最高の名誉なんじゃなかったっけ」

 

 典型的な蛮族の格好をした男が一人、縄を打たれて跪いている。

 タリス人の盗賊の場合は割と素直に捕まってくれるのだが、北方から来る蛮族の場合、宗教的な情熱に由来する敢闘精神を発揮して、死ぬまで戦いを止めないのだ。

 だから本当に珍しい。

 

「ああ。喋ってくれて構わないよ。ていうか、こっちの言葉分かる?」

「直答を許すと仰せだ」

 

 ボクの言葉にもまだ躊躇う様子で怯えた顔をウーナに向けたが、彼女の言葉に意を決したと見えて、ボクの目を見ながら語りだした。

 

「へへへっ。こりゃどうも」

 

 腕が動けば頭でも掻いていそうな男の口から、少し訛りはあるが実に流暢なアカネイア語が流れ出す。いや流暢というかこれは母語か? すると訛りじゃなくて方言か。

 

「それがですね、お坊ちゃん、あたしはこんな恰好(ナリ)してますけどね、アカネイア人なんでさあ。あんな戦争狂いのアッパラパーどもと一緒にされちゃ迷惑ってんですか? あっ! すいやせん、すいやせん、お貴族さまに偉そうな口を。どうか命ばかりはご勘弁を」

 

 立て板に水。目を見てきたことといい、意外と度胸があるのか、それかテンパりすぎて必要以上に口が滑らかになっているのか。聞いてもいないことまで喋りはじめる。

 聞けば元はサムスーフの住人で、北の蛮族に攫われた後農奴として働かされていたが、口八丁で取り入って船の漕ぎ手に成りおおせ、略奪の旅にも同行を許されるようになったのだと言う。

 

「いや、あたしも、なんとか逃げ出そうとしてたんですがね、やっこさんたち、オツムの弱そうな顔して目ざといのなんの。逃げる隙なんてありゃしない。だから、だからですね、あたしもまあ心苦しくはあったんですが、生きてくために仕方なく。はい。やむにやまれぬ仕儀だったんです」

 

 思わず苦笑した。

 これは何人かヤッてるな。

 

「縛り首が妥当なところだけど」

「ひぃぃっ! なにとぞ、なにとぞ、命ばかりは!」

 

 悲鳴を上げて這いつくばる。後ろ手に縄を状態でそんなことしたら。あ、顔から突っ込んだ。すごい音したな。

 

「早合点だね。だけどって言ったでしょう」

「へっ。じゃ、じゃあ」

「キミさ、口で成り上がったって言ったよね。話せるの? 蛮族の言葉」

「はっはい! カタコトですが日常会話くらいなら行けやす! 覚えろとおっしゃるなら、死ぬ気でもっと上手くなりやさあ!」

 

 必死の形相で赤べこになる。

 

「いいね。奴隷としてとはいえ現地に滞在した経験のある言葉の分かる人間」

 

 数年は先の話だが、マルス王子たちは蛮族の盤踞する北の大地に軍を進める。

 この男が知っているのはその中の一部族の言葉でしかないが、それを取っ掛かりとして、北の民への理解を深められれば、それは必ずや、マルス王子の助けとなるだろう。

 

「キミの経歴には同情するべき点もある。情状酌量の余地はあると思わないかい。ウーナ」

 

 騎士隊長に話を向ける。感心しかねるという表情をしているが、異を唱えるつもりはないようだった。

 

「決まりだ。キミには通訳兼語学教師になってもらう。最低限の給金も出そう。詳しい仕事の内容は、後で人を送るからその指示に従ってよ。っと。そうだ名前を聞いていなかったね。いつまでもキミというのも不調法だ。名前を教えてもらえるかい」

 

 男は心底安堵した様子で満面に愛想笑いを浮かべながら名乗った。

 

「へい。ゴメスと申しやす」




なぜぽっと出のゴメス(原作2面ボス)がこれまでで一番台詞の多い登場人物に。
北の蛮族(氷の部族想定)がヴァイキング的な生き方をしていて、タリス他に対して、週末のお父さんたちが車で買い出しに行くショッピングセンターみたいな認識だというのは独自設定です。

あと騎士隊長の名前はウーナに決まりました。
名前の由来は、原作ゲームでキャラをロストしまくると救済で補充される志願兵ユニットがドイツ語の数詞の名前なので、それを参考にしつつ、1(unus)の女性形unaとしました。
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