ブレイズマン。
自動人形達のデータにも存在する、この宇宙唯一の存在・発火能力の超人。
自動人形達だけを器用に炎の拳で破壊すると、ナナマチを救い出した。
「どこまでも、貴方
「ブレイズマンは一人だろ?」
「何のことでしょう、ねッ!」
ダダルキは形勢が不利と見るや、右手首にあるブレスレットのスイッチを入れる。
すると、ダダルキの身体を青い戦闘服が包み込み、自動人形・ポーンジョーはダダルキが纏うスーツのように装着されていき、巨大化する。
さながら、鋼鉄の城。
ポーンジョーのキング、そう呼べる姿にダダルキは変わった。
数十メートルはあると見られる巨大ロボット、スーパーロボットと呼んでも差し支えはないだろう。
「テメェ!デカくなりやがったな!」
『おや、卑怯とは言いますまいな?』
マイク越しにダダルキはおどけたような仕草を取るも、地上にいるナナマチとブレイズマンに射撃攻撃を繰り出すと、地面に小さくクレーターが出来上がっていく。
ブレイズマンは炎の障壁をナナマチの前に張ることでスーパーロボットの攻撃を遮断する。
『いくつもの雑兵の活躍ありきで“城”は守られる。私はそうした“城”の主になりたいのですよ、ブレイズマン!!行きなさい、
王城。
ポーンジョーと名付けられた自動人形の集合体だったような鋼鉄の城。
ナナマチはその鋼鉄の城が周囲の建物を破壊し始める寸前、すぐさま周囲に人を近づけなくする人払いの道具を使用した。
自分でもブレイズマンに加勢しようと思った理由がよくわからないのが本音だったが、短い間でも、信じるに足る分には十分な関係を築いていた。
「明殿!王城には隠された能力があります。それだけには注意を……ッ!」
『おや、口が過ぎますよ?ナナマチ。かつての仲間の秘密をベラベラ話すのは感心しませんね?』
ナナマチが王城の巨大な左手に捕まってしまうと、拘束を解くためにブレイズマンは何度も何度も蹴りを入れる。
しかし、二メートル五十センチほどのブレイズマンに対し、王城は数十メートルもの大きさを誇る巨大ロボットである。
「ナナちゃんを離せ、ブリキ野郎!!」
毒も持たないような、小さな虫が人間にぶつかっても効果がないように今のブレイズマンの攻撃もスーパーロボットには効果がまるでなかった。
悪態を嘲笑うように王城に軽く蹴られるだけでブレイズマンの身体は宙に浮かび、右手が蠅を叩くように地面へと叩きつけられる。
子供が親を駄々を捏ねて叩くよりも効果のない、そんな無駄な抵抗でしかなかった。
ギリギリとナナマチを締め上げる手の拘束は強化スーツを脱いでいる今、自力で解くことができず、ナナマチも無力を感じていた。
叩きつけられたブレイズマンは王城の左足に踏みつけにされ、地面にズブズブと沈んでゆく。
「明殿ぉ!わ、私のことは構わずに逃げてください!!このままだと、貴方はあの人を一人にしてしまいます……」
精一杯の声を張り上げる。
父を失ったナナマチはもう故郷のヤドリギには帰ることはできない。
反逆罪に等しいことをやらかしたも同然なのだ、このまま潰されても仕方がないと済ませられる。
だが、ブレイズマンこと藤本明は違う。
彼には小野寺芳乃という、母親がいる。
藤本明には帰るべき場所がある。
あの優しい女性・小野寺芳乃から、自分とは違う明るさと優しさを持つ藤本明を奪ってはならない。
ほんのわずかな間でも、ナナマチは明や芳乃の優しさに触れ、変わり始めつつあった。
世界の侵攻を目的とする部隊の“勇士”、その第七席。
これまでの任務のために侵攻した世界は全てヤドリギのための礎となり、滅んできた世界も数多くある。
世界を滅ぼす一因ともなっている、自分が芳乃と明親子の手を取ってはならないと思うと、一筋の雫が頬を伝う。
『泣いているのですか?ナナマチ。私と同じ悪党である、貴女が?貴女はヤドリギの世界侵攻の為の部隊に所属し、数多の世界を滅ぼしてきた。そんな貴女が泣いているとは、面白い冗談ですねえ!!』
王城の手の拘束がより強まり、ナナマチが痛みに苦しむ声を漏らすと、ダダルキは面白がるように笑い声を上げる。
その時だった、左足から熱い感触を覚えたのは。
徐々に温度は上がっていき、左足は燃えるように熱くなって行っているのがわかる。
「助けてください!ブレイズマン!!助けて、明殿!!!」
涙ながらにナナマチの叫ぶ声が響いた後、王城の姿勢を崩すように地面から昇ったのは真っ白な光だった。
燃え盛るように熱く、けれども、決してただ熱いわけではない。
安心させるような暖かさを感じつつも、その場に現れたのは、王城と同程度のサイズの体格となった炎の超人。
「ゼアアッ!!」
左拳を空に力強く突き上げ、静かな夜空に雄叫びを上げるブレイズマン。
ブレイズマンの能力をナナマチは詳しく把握しているわけではない。
けれども、ブレイズマンである藤本明であれば、応えてくれると思ったのだ。
右拳を突き出すような、ファイティングポーズをとり、王城と取っ組み合う。
一撃一撃が等身大以上のパワーを誇り、鋭い巨大な手刀が胸へと炸裂すると、衝撃でナナマチが手の拘束から解放される。
空へと放り出されたナナマチをブレイズマンが受け止めると、優しく地面にナナマチを下ろした。
『ブレイズマン。その力を侮っていましたが、貴方の力を解析し、パワーアップした王城で他の世界を侵攻するとしましょう』
王城が三つの部位に分離すると、ブレイズマンの周囲を囲む。
放出されたエネルギー弾がブレイズマンとナナマチを狙い、ブレイズマンはナナマチを庇って直撃してしまう。
一体を狙って肉弾戦を仕掛けても、他の二体が一対一の状況を作り出すことを許さない。
ブレイズマンのエネルギー、ブレイズエナジーをリング状にした
燃え盛る炎のようなエネルギーを纏うことで蹴りをパワーアップさせれば、頑強な王城にダメージを与えられるのではないかと思った。
その意図を汲んだのか、王城は三つの部位と再度合体し、ちょうど接合部分に挟まったブレイズマンの足に勝利を確信する。
『これでまさにチェックメイトですねえ!?ブレイズマン!!王城のパワーを前にいくら巨大化した貴方であれど、脱出することはできないでしょう!?』
「ああ、それが
ブレイズマンの声色に籠る感情が昂ることで王城を駆る、ダダルキの視界に見えるブレイズマンのエネルギー感知メーターの数値が大きく跳ね上がるのが見える。
呼吸を整えるようなブレイズマンの唸り声、それが完了する瞬間に王城は腕を変形させた砲台を出現させ、エネルギーを溜める。
「明殿!あれをまともに食らってはいけない!いくら、ブレイズマンの肉体でも耐えられません!」
「了解した!」
ナナマチのアドバイスを超人になったことで発達した、聴力で聞き取り、無理矢理足を引き抜く。
高温の炎のような青色となった、エネルギーを纏った足でワンツーと蹴りを入れたあと、エネルギーをチャージしている砲台を引き抜いた。
その引き抜いた砲台を空へと投げ飛ばすと、王城の体躯を蹴り上げ、空中に浮かんだ王城に狙いを定める。
『まさか、これほどとは!!
「なんで、なんで
負け惜しみのように聞こえた、ダダルキの言葉。
しかし、勝利を目前にしてブレイズマンは隙を晒さず、青い炎の光線を腕から噴き出して焼き払った。
青い炎は王城を塵一つ残すことなく、全て焼き払ったかと思えば、そのまま消滅してしまった。
消滅を確認したあと、ブレイズマンから明に戻ったあとはナナマチに近づき、手を差し出す。
「一緒に帰ろう、ナナちゃん」