【完結】白光のブレイズマン   作:ふくつのこころ

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マルチバース設定上、一つの作品に色々なジャンルを混ぜられたらと思ってます。
前回は伝奇系だったので、今回のはじまりはSF系とかそういう感じで。


異世界チェイサー
異世界チェイサー:01


 黒装束にポニーテールを揺らす、口元を覆い隠した人物の名前はナナマチといった。

さる国の十二人で構成される特殊部隊“勇士”の七番目に名を連ねることから、“ナナマチ”といったコードネームを持つ。

 “勇士”の本拠地があるのは、天にも届きそうな摩天楼の中のとある階層でナナマチはそこに次の任務のことで呼び出されていた。

 優秀な成績で“勇士”を輩出してきた訓練生を優秀な成績で卒業し、国のために尽くすことはナナマチにとっての喜びでもあった。

 エレベーターに乗り、“勇士”達に配給されている特殊なデバイスをフロアが記載されている筈のパネルにかざすとエレベーターが動き出す。

 このエレベーターは建物の中を縦横無尽に動き回る移動手段であり、それ以外に言い表すことのできる名前を持たないため、便宜上、そのように呼ばれている。

 

「父上、ついにここまで来れました」

 

 装束の下に隠していたペンダントを取り出すと、その中に入れている写真を確認し、口元を覆い隠すマスクの下で口元を緩めた。

 同じような装いの父親と写っている写真とは名ばかりでどちらも笑いもしない、堅苦しいものとなっているが、ナナマチにはそれだけでも十分だったのである。

 自動設定がされていた目的地へと辿り着くと、ナナマチは降りて直線ですぐのところにある一室をノックした。

 

「失礼します。“勇士”第七番・ナナマチ、到着いたしました」

 

 その一室には“勇士”の筆頭、あるいは隊長の階級にある“ハンゾウ”がいる。

 そこでナナマチ達は秘密漏洩を鑑みて対面で任務を言い渡される形式となっており、必要とされる任務のたびに呼び出され、任務へと向かっていくのだ。

 ハンゾウが座っている席の後ろには街並みが広がっており、クリーンエネルギーを動力源とする一輪自動車が道路を走り、無音の空間の中で車の駆動音のみが響く。

 多数存在するマルチバース、ナナマチの国は多くのマルチバースの技術を手に入れ、その発展はとてもめまぐるしい変化を遂げていた。

 デバイスもエレベーターも、目下を走る一輪自動車も、どれも無数の可能性宇宙(マルチバース)によってもたらされた技術の結晶である。

 

「ハンゾウ隊長?すみません、デバイスを自己判断で使用させていただきます」

 

 普段ならば、厳格な声がナナマチを迎えるが、今日の訪問にはそれがない。

 生命反応を探るべく、デバイスを起動させるも、デバイスは反応を示さない。

 一度、二度、三度……とアプリを使用して周囲の状況をスキャンさせると、昔ながらの音を好む好事家によって改造された一輪自動車が爆音を上げて走り去っていく音がしたとき、ナナマチのデバイスは一つの生命反応をとらえた。

 

「隊長?隊長!?」

 

 それは、“勇士”の厳格な隊長であるハンゾウの反応そのものだった。

 いまにも消えてしまいそうな生命反応はナナマチのデバイスも弱弱しく反応しており、ナナマチがその方向へと駆け寄ると、血だまりの中に横たわった赤く染め上げた黒装束姿がある。

 “勇士”の筆頭であり、そしてナナマチの───父親だった。

 

「まさか、最期に私を看取ることになるのがお前とはな。ナナマチ」

 

「い、いえ!その、自分は……」

 

「いい、楽に話せ。……父の最期の願い、聞いてくれるか?」

 

「は、はい!」

 

 “勇士”筆頭のハンゾウともあろう人が太刀打ちもできなかった相手とは、未だ顔を知らぬ襲撃者の正体とは?とはやる気持ちを抑えられなかったが、ナナマチのハンゾウとの最期になるであろう親子の時間を無駄にすることはできなかった。

 グローブ越しにハンゾウからナナマチに渡されたものは、歪な形の道具のようなもの。なにか使い方があるのだろうが、の解析その使い方を一目では窺い知ることができない。

 “勇士”の筆頭・ハンゾウは優れた諜報隊員であり、“勇士”の中でも優れた体術の使い手であるため、後れを取ることはまずないだろうと思われる。

 ハンゾウを襲った襲撃者はおそらく、凄まじい体術の使い手であるか、あるいは人間ではない(・・・・・・)者なのか。

 

「“勇士”第七番、ナナマチ。お前に最後の指令を出す。これをお前に託す」

 

 ハンゾウがナナマチの手に握らせたのは、宝石がはめ込まれているバングル状のアクセサリーだった。

 ナナマチは任務の関係で多くの可能性宇宙に行ったことがあるが、その中でもハンゾウに渡されたバングルの正体は掴めなかった。

 

「これは……?」

 

「それを“炎を継ぐ者”にくれてやれ。その力は我々には強大すぎる。すぐに“炎を継ぐ者”がいる可能性宇宙(マルチバース)の座標を探し当て、()と合流しろ。()は私の古くからの知人だ。古い映画の侵略者(インヴェーダー)のような我々であっても、必ず力になってくれる良い奴なんだ。

確か奴の名はブレイズマン、ブレイズマンといったか。さあ、早く行け。

追手が───」

 

 ハンゾウが最後まで言葉を言い切る前にその身体は死角から放たれた、光線によって消失してしまう。

 ナナマチ達“勇士”に配備されている、装備の一つであり、証拠と目撃者を消滅する用途に使われる光線銃だった。

 目の前で父を失ったことに感情が揺さぶられるものの、それが表面にあらわすことなく、身体を震わせながらも立ち上がるのはハンゾウの遺した言葉通りに約束を果たそうとするナナマチの意思なのか。

 いまばかりはナナマチはハンゾウを失った喪失感で叫びたい気持ちでいっぱいだった。

 

「よりによって、君がいましたか。ナナマチ隊員。そのバングルを渡してもらおうか。ハンゾウ隊長が死んだ今、“勇士”の責任者はこの私だ」

 

「ダダルキ!貴方という人は!」

 

 チェスの歩兵(ポーン)の名を関する自動人形(オートマトン)のグループを引き連れながらも、眼帯の男が周囲の摩天楼の明かりによって照らされれば、ナナマチは襲撃者の正体を推測することができた。

 ナナマチ達、“勇士”は訓練と配備されている装備によってきわめて超人に近い能力を発揮することができる。

 しかし、その相手が可能性宇宙(マルチバース)の一つから奪った技術によって生み出された自動人形であるなら?

 ダダルキと呼ばれた眼帯の男は“勇士”達の装備開発の担当とハンゾウに並ぶ“勇士”のナンバーツーでもある。

 ハンゾウの命を奪った犯人と考えるには、あまりにも妥当だった。

 

「ハンゾウ隊長の死は仕方がなかったのだ。これ以上、我々の世界は可能性宇宙(マルチバース)の技術によって命を繋ぐことができないなどとのたまった。これは裏切りだろう?我々、総合統一国家“ヤドリギ”は多くの可能性宇宙を切り捨ててもなお、生き残り、発展していくことを誓った。

我ら、“勇士”はその希望となるものを探しに危険な現地任務を行っているというのにね」

 

 自動人形によってじわじわとナナマチを囲もうとしているのがダダルキから見て取れる。

 ダダルキは技術職の人間だ、その頭と技術を買われ、“勇士”の二番手(ツヴァイ)の席にいるにすぎず、訓練を受けてきた第七番であってもナナマチとは天と地ほどの力量差がある。

 それを補うための自動人形の護衛は目算でざっと8体ほど、装備をフルで使ってもギリギリ切り抜けられない。

 なにより、ダダルキの手には“勇士”の持っている装備を強制停止することができる手段があるため、ナナマチの手持ち武器の中で最も頼りになりそうな光線銃はただのおもちゃに成り下がってしまっていた。

 

「かくなる上は!!」

 

「おや?斥候部隊でしかない、我々に頼る先でも?我々、“勇士”の味方となりうるのは手綱を持っている総合統一国家(この国)だけだぞ?ナナマチ隊員」

 

 ナナマチはデバイスによる可能性宇宙移動のための座標を設定し、隊長の席の背後にあるガラスに向かって走り出す。

 その強化ガラスを脚力増強ブーツの出力を上げ、ガラスを思い切り蹴破って、壁を走るように駆け下りた。

 可能性宇宙移動の開始まで少し時間がかかるため、追手の自動人形たちが襲い掛かってくる。

 

【座標検索を行っています。音声認証によるキーワードを伝えてください】

 

 デバイスが登録者(ユーザー)のナナマチを可能性宇宙の一つに転送するために必要なエネルギーの準備を完了すると、最後のキーとなるキーワードの音声入力を求めた。

 

「させるか!」

 

「キーワードは、“勇士”ハンゾウ隊長が仰っていた……“ブレイズマン”!!」

 

【検索が完了致しました。可能性宇宙(マルチバース)へと転送致します】

 

 自動人形がダダルキから指示を受け、その凶刃に変形させた腕を以て集団でナナマチを囲んだとき、ナナマチは粒子と化して姿を消した。

 

「逃がしておかないぞ、ナナマチ。大いなる力は私が手に入れる」

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