ブルアカ妄想短編集   作:ミラト

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こういうホシノ見たいよねって話。


私がずっと守るから

「うへ~、今日も疲れた~。さて、帰ろ~っと」

 

今日の仕事が終わったところでバイト先を後にする。

駅近くのスーパーで割引されている惣菜やデザートを数種類購入し、帰りの電車に数十分揺られ、アビドス地区にある自宅へ帰宅する。

 

そしてとある部屋の扉を開け、中にいる人物に声をかけた。

 

「ただいま~。えへへ、ちゃんといい子にしてたかい?先生」

 

「……ホシノ」

 

「今日は唐揚げが安かったから沢山買ってきたよ~。先生唐揚げ好きでしょ?すぐ温めてくるから待っててね~」

 

「……うん、楽しみだね」

 

「うへへ、じゃ、待っててね」

 

今夜も大好きな人と過ごす素敵な時間が始まる。

 

 

私がホシノに監禁されてからもうすぐ一週間が経とうとしていた。こうなったキッカケは数週間前まで遡る。

その日シャーレに一本の入電があり、外での依頼だったため当番であったホシノと一緒に急いで現場へ向かった。

息子がいつまでも帰ってこない、もしかしたら何かあったかもしれないから調査を依頼したいという内容だった。

既にヴァルキューレ警察学校には依頼済ということで、先に調査を行っていたヴァルキューレの生徒達と合流後、聞いた情報によれば身代金目的の誘拐事件ということだった。犯人グループの拠点は判明していたため、拠点へ侵入後速やかに制圧。子供の無事も確認できて一安心していた所に事は起きた。

 

「本当にありがとうございました!いくらお礼を言っても足りないくらいです……!」

 

「あはは、お子さんも無事でよかったですよ」

 

「うへ~、一件落着だね~」

 

「ピンクのおねぇちゃんも、せんせいもかっこよかった!ありがとう!」

 

「うへ、照れちゃうなぁ。おじさん嬉しくなっちゃうよ~」

警察官達が数人の犯人を拘束している中、私達は被害者の母親と子供と軽く会話をしていた。

しかし、ここの所徹夜続きで頭がそろそろ限界を感じていた。戻ったら流石に仮眠しなきゃと思いながらなんとか踏ん張っていた。

 

「……クソッ、こうなったらてめぇも道連れにしてやる……!」

 

するとさっきまで気絶していた犯人の一人がこちらに銃口を向け、数発発砲する。

 

「危ない!!」

 

「ッ!」

 

私は子供を庇うように咄嗟に動く。ホシノも即座に盾を展開しながらその犯人に接近する。

 

「しつこいなぁ……」

 

「クソッ、ふざけやが--」

 

至近距離でショットガンの引き金を絞って銃弾を数発叩き込み、完全に意識を失う犯人。その後すぐに警察官が駆けつけて拘束した。

 

「大丈夫?怪我は無いかい……?」

 

「う、うん、ぼくはだいじょうぶ」

 

「そっか、良かった……」

 

子供の無事を確認したところで、ホシノも元へ寄ろうと立ち上がろとうするが

 

「あれ……?」

 

急にお腹周りに激痛を感じ、手を添えると赤黒い液体が付着していた。

自分の血だと認識し、被弾してしまった事実を改めて自覚すると、痛みがさらに増して息苦しくなった。足に上手く力が入らず、その場で倒れてしまう。

 

「ッ!先生!!」

 

ホシノが血相を変えながら銃と盾を投げ捨てて走ってくるのを最後に、私は意識を手放した。

 

それから私が目覚めたのは一日かからなかった。元々外で待機していた救護班の迅速な対応により、特に重症には至らず、目立った後遺症も無かったが怪我の治療と日々の業務による過労もあって、しばらく入院することになった。

数多くの生徒がお見舞いに来てくれるなかでも、ホシノは毎日のように訪れていた。

 

本人曰く、「私が最後まで警戒していればこんなことにはならなかった」とのことで責任を感じているみたいだった。あの時は私も油断していたし、お互い様だよと色々言葉を並べて何回も慰めていた。

 

私が入院している期間は基本ホシノが当番を担当し、私も病室で出来る範囲で仕事を進めていた。ホシノはあまり気が進まないようだったが、何とか説得に説得を重ね渋々承諾してもらった。

 

そして退院してすぐのこと、ホシノがお詫びもかねて退院祝いがしたいと自宅に招待され色々ご馳走になった後、飲み物に一服盛られ、眠ったところを手枷足枷を付けられて部屋に監禁されてしまった。

 

「ホシノ、どうしてこんなこと」

 

「もういやなんだよね~……先生が、大好きな人が私の前でいなくなるのは……だからごめんね?しばらくはこうしてずっと一緒にいてもらうから」

「仕事は大丈夫だよ。私や当番の子達で何とかやっていくから心配しなくていいよ」

 

「馬鹿なことはやめるんだ、今すぐ解放してくれ!今日のことは私もなかったことにす--」

 

「先生?」

 

普段だらしないような声からは想像できないような、低く鋭い声で呼ばれ体がこわばった。

 

「私さ、ずっと怖いんだ。ユメ先輩みたいにまたいつか、私が知らないうちに大切な人が目の前からいなくなっちゃうんじゃないかって」

 

無表情で近づいてくる。その目は黒く濁っていた。

 

「私にとって先生はもうかけがえの無い大切な人なんだよ?できれば私だけのことを見て欲しいし、私だけのことを考えて欲しいし、私のことだけで頭いっぱいにして欲しい」

 

「ホシ……ノ?」

 

そして力強く私を抱き締める。二度と離さないと言わんばかりに強く。背中に回された手は少し震えていた。

 

「だからこれからは私が守る。何をしてでも、先生は私がず~っと守るから」

 

 

「先生、大好きだよ。もう離さないからね……?」

 

 

結局私は抵抗できずにこうして今に至る。目の前にはホクホクに温められた味噌汁と白米、そして数種類のおかずが並べられていた。

 

「ささ、食べちゃお~」

 

「「いただきます」」

 

そして私達は他愛もない話をしながら食事を楽しんだ。

ホシノから色々と外の状況をよく聞いたりするが、特に大きく変わったことは無いらしい。

元々私が療養期間というのもあってかシャーレはしばらく当番の子達だけで回せるよう活動制限している。

しかしこの間にも私が処理しなければいけない仕事は溜まっていく一方だ。

 

「は~、お腹いっぱい。やっぱり一人より、先生と一緒に食べるご飯はより美味しくなるねぇ~」

「食後のプリンも良かったよね~、ついつい二つも食べちゃった。あれそこそこ高いやつなんだよ?たまたま賞味期限が近かったから割引されてて~、いやぁおじさんついてたねぇ」

「明日は私もお休みだし、何しよっか?先生と並んでお日様にあたって一日中お昼寝するのは絶対やるとして~、何かゲームでも--」

 

 

「ホシノ、もう辞めよう。こんなことは」

 

「……」

 

私がそう切り出すと、ホシノは表情を変えないままじっと見つめている。

 

「私が心配なのは今回の件で十分にわかった。実際そこまで想ってくれるのは先生明利に尽きるよ。ただこれはやりすぎだ」

「いくらシャーレに行動制限を設けているからと言ってそろそろ限界なはず。私が処理しきゃいけない仕事が溜まる一方だし、他の人達にも迷惑が掛かっている。ホシノならわかるはずだよ」

 

「……どうしても解放して欲しいの?」

 

「そうだね、これ以上皆やホシノに迷惑はかけられない」

 

「……また、あんな大変な思いしやきゃいけなくなるのに?また前みたいに大怪我するかもしれないのに?」

 

「それでもだよ。私はシャーレの先生だ。大人としてきちんと皆を導かないといけない責任があるからね」

 

「……」

 

「それに、私は大変な時はホシノや皆が手伝ってくれるでしょ?」

 

「私達が見てない時に無茶していつも表面上では何とも無いように振舞ってるくせに、結構限界ギリギリだった人は何処の誰かな~?」

 

「うぐっ……」

 

ここぞという時に鋭いなぁ……、今までバレてないと思ってたけど気付かれてたみたいだ。

 

「……どうしても戻りたい?」

 

「うん」

 

「……そっか、わかった。先生は先生だもんね」

 

そう言うとホシノは私についていた手枷と足枷を外した。やっと分かってくれたかと私は内心安堵する。

 

「先生のタブレットとスマホは玄関にある靴棚の上に置いてあるよ。……今までごめんね?おじさんのワガママに付き合ってくれてさ」

 

ホシノは俯いてそう言った。その声は若干震えているように聞こえた。

ようやく自由になった、喜ぶべきことなのに何故か内心は迷いでいっぱいだった。

 

一刻も早く外の状況を知りたい。私にしかできない仕事がどれだけ溜まっているのか、連邦生徒会どころか各学園に多大な影響が出ているかもしれない。

 

しかしここで去ってしまえば目の前にいる彼女が今にも壊れそうな気がしてならない。私にとって大切な人を見捨てるような形になってしまってもいいのか……。

 

 

 

私は……

 

 

 

1 "部屋から出る"

 

2 "ホシノを抱きしめる"

 

 

 

 

1

 

"部屋から出る"

 

「とても楽しかったよ、本当にありがとう。……また明日」

 

そう別れを告げて部屋を後にする。今はとにかくここから出たいという気持ちが勝ってしまった。ホシノのフォローについては後々考えるとしよう……。

ホシノが言った通り、靴棚の上にいつものタブレットと私のスマートフォンが置いてあった。タブレットを起動させつつ、玄関の扉を開けて外に出る。

 

約一週間ぶりの外の空気を吸って吐いてを軽く繰り返す。シャバの空気が美味いとはこういうことなんだろうなと、くだらないことを思いながら、起動完了したタブレットに目をやる。

 

『先生!先生ですか!?よかった、やっと繋がりました……!心配したんですよ、も゛ぉ゛~!』

 

画面いっぱいに、涙でぐちゃぐちゃになったアロナの顔が映る。

 

「ごめんね、アロナ。心配かけて」

 

『ほんどでずよ!急にいなくなっちゃうんんですから、私……私っ……!』

 

更にモモトークには数百の通知が溜まっており、内容もだいたいは私の安否を確認するような内容ばかりであった。これは処理するのに一苦労しそうだと苦笑し、シャーレに向かって早足で歩く。ギリギリD.U行きの終電まで間に合うかどうかの瀬戸際だった。

 

 

 

 

近道をしようと、普段通らない路地裏に向かって歩を進めるが、しばらく進んだ後にその判断がよくなかったことを思い知らされる。

 

「止まりな!ここは私たちの縄張りだ。この辺りじゃ見ねぇ顔だが、何処かで見たような……?」

 

駅が視界に入り、後はこの直線の道を通れば到着するのを、たまたま近くに居座っていた二人の不良生徒に目を付けられ、銃口を向けられる。

 

「今急いでいてね。できればそこを通して欲しいのだけど……」

 

「はっ、そう言ってはいどうぞと易々通すと思うか?通りたければ通行料を置いていきな!」

 

やむを得ないと思い、胸ポケットに入れていた財布を取り出そうとするが、一人の不良生徒があっと驚いた表情でもう一人に語りかける。

 

「その腕章……。姉貴!こいつ例のシャーレの先生だぜ。あの時ピンク髪のちっこいやつと一緒に邪魔してきやがったあいつ!」

 

「なにっ!?確かにその見覚えのある紋章に顔……ははっ!そうか、そうか。ラッキーだぜ、あの時の憂さ晴らしには持って来いだなぁ?」

 

そういえば例の誘拐事件の時、拠点の防衛を数十人の不良生徒とヘルメット団がいたことを思い出す。まさかのあの時と子達とここで出くわすとは思いもしなかった。

 

「お前たちのせいで私の仲間の大半はお縄行き、依頼も失敗で持ち金もほぼ底を尽きやがった。相応の覚悟はしておけよなぁ?」

 

どうする?ここは一本道、隠れる場所も無く、全力疾走で回れ右しても銃で撃たれたら即アウトだ。ニマニマと気持ち悪い笑みを浮かべてじりじりと迫ってくる不良生徒達を目の前に思考を巡らせていると--

 

 

 

 

「やっぱり、先生には私がいないと駄目だね」

 

 

瞬間、私の後ろから見覚えのある盾が飛んでくる。一直線に飛んできた盾は片方の不良生徒の顔面に直撃し、体勢を崩す。

 

「ぐおぉ、痛ぇ!いったい何が--」

 

すかさず彼女は痛みで悶えている不良生徒に接近し、愛用のショットガンを顔面に向け、引き金を絞る。撃たれた不良生徒は、その衝撃で軽く吹っ飛び気絶した。

 

「てめぇよくも--」

 

「遅い」

 

もう一人の不良が銃口を彼女に向けるよりも速く、彼女のショットガンの銃口は既に不良生徒に向けられていた。

至近距離で数発放たれた散弾は、不良生徒の身体の至る所に直撃し、もう1人と同じように気絶に追い込んだ。

 

「……」

 

二人が完全に沈黙したのを確認すると、彼女はケロッとした表情でいつものように私に微笑んだ。

 

「よかったぁ~、怪我はない?先生」

 

「ホシノ……なんで……」

 

「もぉ~、せっかく助けたのにそんな顔はないでしょ~。ほら、笑顔笑顔~」

 

ニコニコとしたその表情が今は恐ろしい。何を考えているのか全く分からない。頭の中が「何故?」と思考と恐怖でぐちゃぐちゃになる。

 

「言ったでしょ?私が守るって。目を離した隙に危険に追い込まれているんだから~。意外と先生ってトラブル体質だよね~?」

 

何を怖がっている。目の前には私の大切な生徒、アビドス高等学校三年生の小鳥遊ホシノじゃないか。

 

「もうね、私分かっちゃった。このキヴォトスじゃ先生の周りは危険なものばかり。いつも仕事でボロボロになってる姿も見てられないし」

「確かに生徒第一に活躍するその姿はカッコイイよ?私も何回も救われて、すごく嬉しかったし、徐々に先生に夢中になってた」

 

一歩一歩、ゆらりゆらりと徐々に近づいてくるホシノ。私の脳裏にちらつく、監禁された直後に見せた背筋が凍るような彼女の無表情な顔が、私を恐怖に陥れる。

 

「でもいざ先生が死にそうになったり、また危険にさらされるところを見て、もう我慢できなくなっちゃった。先生を私の傍にずっと置いておかないと、また危険な目に遭うって分かっちゃったから……」

 

 

「だから……ね?二人で遠くに逃げちゃおっか。キヴォトスの外に行って、そこで一緒に生きていこう?」

ホシノが私の目の前まで近づいて歩みを止める。

 

何か言わなきゃ……。

私を危機から守ってくれたんだから、

ちゃんとお礼を言わなきゃ、

褒めてあげなきゃ、

ありがとうって、

流石ホシノって、

いつものように笑顔で--

 

「ホシ--」

 

「愛してるよ、先生。これから末永くよろしくね」

 

最後に映ったのは、ドス黒く濁った目をしながら満面の笑みを浮かべて、銃身を振りかざしている彼女の姿だった。

 

瞬間、頭に強い衝撃が走り、私の意識はそこで途切れた。

 

 

--その日、一人の生徒とシャーレの先生が行方不明になった。

 

数年に渡って彼女達の姿を見たものは誰もいないのだとか。

 

 

 

 

2

 

"ホシノを抱きしめる"

 

「へ……?」

 

へたりこんでいる彼女を優しく抱きしめる。これは予想していなかったのか、ホシノは顔を赤くして戸惑っていた。

 

「えっ、ちょっ、先生!?」

 

「……ごめんね、ホシノ。君が私の為にここまでやってくれたってのは分かっているよ。むしろここまでしないと私が止まらないって思ったんでしょ」

 

「……」

 

「まぁ、私も私で頑張りすぎなのかなとは思ってたけど、生徒の為と思えばこれくらいどうってことないって思ってた。この前のは不幸な事故とは言え、徹夜続きな頭で注意力が散漫になってたのは事実だし……。ヘイローを持たない私が一番注意しなきゃいけないのにね」

 

子供をあやかす様に、優しくホシノの頭を撫でる。彼女は抵抗せずに私に身を委ねていた。

 

「薬盛ったことや監禁のこととか色々と説教しなきゃいけないことは山ほどある。……だけどホシノと一緒に過ごしたこの時間は楽しかったよ。色々とホシノの意外な一面を知れたしね」

 

「……先生優しすぎない?だって、私……わたし……!」

 

徐々にホシノの声が震えを帯びていく。

 

「わたし…!ほんとうに心配したんだよ?わたしのせいで先生が死ぬかもしれないって…!大好きな人がまたいなくなっちゃうんじゃないかって…!だから、今度は、何をしてでも守らなきゃって、それで…、それで……!」

 

「うん……」

 

「ごめんなさい…!ほんとうに…ごめんなさい……!」

 

次第にぽろぽろと大きな雨粒のような涙を落としていくホシノ。詳しくは分からないが、過去に大切な何かを失った出来事が原因でこのように強引な手段に出てしまったのだろうと思った。

その出来事が今の彼女にどれくらい影響を及ぼしたのかは今回の件で多少理解できたかもしれない。

 

「大丈夫」

 

そう言って泣きじゃくるホシノを安心させるように抱きしめる力を強くする。

 

「少なくとも私は死ぬつもりは毛頭ないよ。必ず生きて君たちを最後まで導いていけるように頑張るさ。それが先生としての……大人としての責任だからね」

 

「せんせい……」

 

「……今からは[シャーレの先生]としてじゃなく、私個人として言うけど……今ある幸せを棒に振るようなことはしてほしくない。私が惚れた女の子にはいつまでも笑っていてほしいんだ」

「ホシノには頼れる人達が沢山いるからさ、一人で抱え込まずにちゃんと他の人に相談してほしい。もちろん私に言ってくれたら、どんなに仕事が溜まってようが真っ先にホシノの元へ必ず駆けつけるから」

 

「うあぁ…」

 

「だからさ、これからも私と一緒に生きて欲しい。こんな監禁みたいな形じゃなくて、ちゃんとした形で、君と一緒に」

 

「せんせいっ……うああぁぁぁぁぁ…!」

 

そうしてホシノはおさえていたものが堰を切って溢れるように泣きだした。

私は以降なにも喋る事無く、ただただ彼女が泣き止むまで頭を撫で続けた。

 

 

 

 

「うへ~、今日の仕事終わり~。おつかれ~先生」

 

早いことにあの出来事から数週間が経った。

あの後私は先生と一緒に各方面の人達に謝罪しに行った。先生は私を庇うように立ち回っていて、私への処罰は比較的軽く収まった。

アビドスの後輩達にも謝罪しに行って、皆は許してくれたが、シロコちゃんは

 

「ん、ホシノ先輩だけずるい。先生は私とも同棲するべき」

 

と捕食者の目をして先生をかっさらおうとした。皆で止めるのに一苦労したものと言っても、ノノミちゃんは半分シロコちゃん側だったので余計に大変だった。

 

仕事の方は予想以上で、先生が不在だった期間も含めて、大量に溜まっていた。先生はもちろん、当番の子達と私の三人体制でこなしていき、ここ最近で何とか先生一人でも処理できるところまでいったが本当に大変だった。

 

「お疲れ、ホシノ。予定より早く終わったし、せっかくだから何か食べに行こうか?」

 

「いやぁ~、おじさんへとへとでしばらく動きたくないよ~。でもお腹減ったし、出前にしようよ~」

 

「お、いいね。何かリクエストは?」

 

「お任せするよ~」

 

「じゃあ、ピザにしよっか。久しぶりに私が食べたい」

 

「お、いいね~。私シーフードで~」

 

「はいはい」

 

そして先生がスマホを操作し始めるのを見て、私はごろんとソファに横になる。やはりシャーレのソファは丁度良い座り心地で寝てしまいそうだ。先生がよくここで寝てしまうのもよくわかる。

 

ボーっとしながらふとあの時のことを思い出す。

 

[私が惚れた女の子]

 

[一緒に生きていきたい]

 

そう言って私を抱きしめてくれる先生を頭の中でリピートし、へにゃっとだらしない顔になる。今でも夢なんじゃないかって思うほど実感が無い。

 

(うへ~……先生、ほんとに私のこと……えへへ)

 

あれ以降、このことについてはお互い言わないようにしている。誰かに知られても困るし、多分改めて私から言っても、先生の今での行動からしてその場しのぎの噓じゃないってことは分かっている。

それでも先生が他の女の子と楽しそうにしているのはやはりいい気はしない。

 

もし先生が私を捨てて他の子のところに行こうものなら、また先生を拉致して、誰もいないキヴォトスの外へ行って二人で暮らすつもりだ。

 

(おじさん意外と独占欲強いからさ……まぁ大丈夫とは思うけど、それでもやっぱり不安なんだよね~)

 

注文を終えた先生は、コーヒーが入ったマグカップ二人分を持って来てくれた。私はそれを受け取ってから一口啜り、ほぅと一息つく。おじさんくさいねと笑う先生の発言から話が弾み、ピザが届くまで楽しく談笑した。

 

ねぇ、先生。私、先生が思ってる以上に独占欲強くて嫉妬深いからあまりおじさんを不安にさせないでね?

 

私も先生の隣でずっと守るから。

先生にふさわしい女の子になれるように頑張るから。

 

 

だからさ、先生……

 

 

 

 

私を裏切らないでね?

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