この本がページを捲られる時に現れし聖なる定めに選ばれる剣士の名は……
『剣士』
それは南蛮の物語に現れる剣を持った戦士を指す。
かつて剣は戦争の最新兵器だった。
剣から弓
弓から銃
銃から戦車
戦車から船
船から航空機
そして航空機から……
『異能』へ
異能は人間が持つ超常現象を引き起こす力。
それが次代の戦争の主役へと移ろいつつあった。
異能といっても千差万別
わかりやすい怪力や
獣へと変貌する能力
さらには未来予知やただ鉄を操るのみの能力も
なんだって揃っているといってもいいだろう。
俺が保有する異能『
そんなわかりやすい能力ではなく、ちまちまとした前準備のいる面妖かつ面倒な異能。
正直もっとわかりやすく頭が良かったり一目で武器の全てを理解できる知恵などが欲しい。
概要は
書き記した物語に現れる剣士の能力を宿す異能生命体を生み出し纏うもの。
書き記すのは俺こと神山飛羽真が書かねばならない。
一度執筆してしまえば原稿や刷った初版の一冊が焼却でもされない限りはいつでも引き出せるようになる。
この異能を自覚したのは昔、地面に書いた文字列が熱を持ち我が身に変革をもたらしたことにより把握した。
もちろん、物語を綿密に執筆すれば異能は強く発現する。
剣士の命たる剣の具現化から始まり
籠手、
そして……
※※※
烈火を纏う剣が敵を薙ぐ。
その炎が発する熱はドロリと鉄を容易く断ち切る。
ゆえにそんな熱を受けた人体なぞ容易く焼け焦げ溶断、ぼとりと地面へと半身を落とす。
「バ、バケモノ……」
敵軍の兵士がそう呟く。ああ、間違いないだろう。
赤い外套は
長編として書き記した烈火の剣士。
それが今の俺だ。
「ああ、恐れろ。かつての戦地で英雄と謳われる軍人も
その兵士を刃で薙ぎ戦場の鎮圧を行う。
榴弾の直撃ですら仕留められぬ頑強な鎧を身に纏う俺は容易く殺されることはなく、そして
容易く死ぬ予定もない。
軍が拠点として配置した艦に俺と同い年の強制徴兵を受けた異能者の少女がいる。
「……熱い」
異能を解除し、その視界を騎士のものからたった11の少年相応の低いものに。
熱気を受けむせかえる火葬場にた臭いを持つそれは……
「オボッ……うぇ……」
今朝食べた
いつまで経っても人を斬る感触は慣れない。慣れたくもない。
悲壮な瞳、恐怖に染まった顔。
名前も知らない異国の日ノ本を脅かす兵士とはいえ、溶断され絶命し奪う所業を神が許したとて俺自身が許さない。
異能『
聖なる刃とは名ばかりの呪いを振りまく剣と文。
それが神山飛羽真を蝕み、示し、形どるモノだ。