【完結】仮面ライダーハルガ   作:じゅんけん

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 仮面ライダーハルガ!前回の3つの出来事!

 1つ!炎のハルガの力を取り戻したルイは、さくらと協力してトラロックの発動装置を破壊する!

 2つ!ふたりは、風のハルガとオルタグアの協力で、組織の幹部ウッドを撃破する!

 そして3つ!オルタグアとベロアグアは未来から来た存在であり、組織を結成していたのはベロアグアであることが明らかになった!




EPISODE 11 激戦の予兆

 

 

「何なんだ、テイラって」

 

 荘厳な声がおさまった後、ルイは隣に立つ青年に尋ねた。

 

「オルタグアの導き手だ。」

 

 ロウはしばらく黙った後、そう言った。

 

「ルイが記憶を失くしたあと、テイラと名乗る者に出会った。やつは何者なのか、俺たちも知らない。それどころか、姿を見たことさえない。やつは、人間を守ろうとする俺たちに、とある計画を持ちかけた。それが、別世界シャングリラへの移送だ。」

「お前がシャングリラに行けば、記憶が戻ると言ったのも、テイラのやつだ。どうして元に戻ったのかは、知らないがな。」

 

「信じていいのか、そいつを」

 

 ルイが疑うような眼差しを向けると、ロウは首を横に振った。

 

「分からない。だが分かっていなくても、人間をベロアグアから守るために、俺たちは奴の言うことに従うほかなかった。」

 

 ルイは青年の言葉に頷いた。

 

ふたりの青年が謎の存在テイラについて語っている間、さくらはオルタグアとベロアグアの真実に完全に困惑し、地面にうずくまっていた。

 

「お前」と、ロウは彼女に話しかけた。「本当になにも知らなかったんだな。」

 

「さくらは、過去の記憶がないから」とルイがひきとった。「組織は人間を守るためにあると信じて、ずっと戦ってたんだよ。」

 

「お前と一緒か」と、風の青年は言った。「なら信用する」

 

 ルイは、さくらと目線を合わせるように、その場にしゃがんだ。それから黙って、彼女に手を差し出した。

 

 顔を上げたさくらは腕を伸ばして、彼の手を掴もうとした。だが彼女の腕はとたんに止まった。しばらくして、彼女の腕は引き戻された。

 

 さくらは誰の手も掴まず、己の意志で立ち上がった。それから何も言葉を発さずに、白いバイクへと急いだ。

 

「さくら、、、」

 

 白いバイクは鈍いエンジン音を轟かせて、その場から去っていった。鳥のメカ、フェルルがあとを追った。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「第2フェーズなど聞いていなかった」

 

 黒い壁と床と天井に囲まれた部屋で、男の声が言った。男は灰色のスーツを着ていた。彼の前には、金色の髪をした女が、彼女の着ているスーツと同じ色の壁に寄りかかっていた。

 

「私も知らなかったけど」とブロンドの女が答えた。彼女は目の前の男に視線を向けず、すんとした表情を浮かべていた。

 

「ダイラの命令らしいわ」

 

「なるほど」と、男は返した。

 

「だが、止めてくれて助かったよ。私はまだ、死にたくないからね。」

 

 カイラは冷ややかな笑みを浮かべた。相手は無言だった。

 

「人間を殲滅させるような電撃を浴びせられれば、ただじゃ済まないだろう。ベロアグアも、オルタグアも」

 

 そう言ってカイラはアイゼの眼を見た。

 

「ダイラは分かっていたのかしら」

 

「さあ。分かっていたとしたら、正気の沙汰ではないな。」

 

 男は再び冷ややかな笑みを浮かべた。

 

 ブロンドの女は、寄りかかっていた壁から離れ、その青い瞳をカイラの方に向けた。

 

「炎のベルトが、戻ったみたいだわ」

 

「案ずることはない。すでに膨大なエネルギーを抽出し終えた。」

 

「カルマエナジー、、、」

 

 アイゼは囁くように言った。

 

「ああそうだ。そしてそれを永久的に利用し続ける道具、、、完成させるには時間がかかるが、時間稼ぎならすでに作ってある」

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 人の気配のない、静寂な芝生が広がる公園に、茶色の髪の女がひとり、脚を三角に折って座っていた。目の前に広がる住宅街の景色を、意志の抜けた目で眺めていた。

 

 この場所に着くより前に、彼女の中にはあの場から逃げ出してしまったことへのいたたまれぬ後悔があった。だがそこで引き返して、もう一度ルイたちと顔を合わせるほどの勇気はなかった。

 

 彼女が座る場所から左に10mぐらいのところに、柱が銀色の時計が立っていた。彼女が見上げると、短い方の針は3と4の間で、どちらとも重ならない具合に止まっていた。

 

 ひんやりとした風が吹いた。半袖のブラウスを着ていたさくらの身体を、ぶるっと震わせた。

 

「もう冬ね、、、」

 

 彼女が囁くと、嘲笑うように再び風が吹き、さくらの身体に寒さをしみさせた。

 

 しかしそれは、冬の風ではなかった。気づいたときには、彼女の身体は黒い拳に跳ね上げられていた。

 

 さくらはいささか痛みを感じながら、すぐに反撃にかかった。電撃銃を、相手が立っている方向に向けて撃った。

 

 相手は、黒い鎧の戦士だった。いや、違う。戦士ではない、空っぽだ。頭がないのだ。

 

 黒い機械は白い電気を帯びたが、構わずさくらの方にずんずんと進んできた。

 

 さくらはD506を取り出した。彼女の手に銃身が握られると、即座に銃口を正面に向けた。彼女の指が引き金に触れると、相手に連続射撃が浴びせられた。

 

 だが、凄まじい速度で鎧にぶつかる銃弾は、同じ速度で弾き返された。さくらの額に冷たい汗が伝った。

 

 そのとき、彼女のそばで、芝が踏まれて縮む音がした。人の影がさくらの前に立った。その背中に、彼女は見覚えがあった。

 

 黒い鎧が一直線にこちらに向かってきた。さくらの前に立つ青年は、ぶつかる寸前に、彼女の身体を抱えるようにして横へ転がった。

 

「なにやってるの!はやく変身しなさいよ!」

 

 芝生の上で身体を起こしたさくらは、躍起になったような口調で言った。彼女の前の青年には依然として、炎の気配がなかった。

 

 黒い鎧は、再びふたりに向かってきた。ルイは、さくらを庇うように、彼女の前に立ち塞がった。

 

 そのとき、ふたりの後方から、凄まじい風が吹いた。黒い鎧に、蒼穹の戦士が飛びかかっていた。

 

「なんで、戦わないの」

 

 さくらはルイの顔を見た。

 

「俺はな」と青年は前を向き、風のハルガと黒い鎧の戦闘を見据えたまま口を開いた。「今までオルタグアと戦ってきた時間は、無駄じゃないと思ってる。」

 

「え?」

 

「さくらがこれまで過ごしてきた時間も、無駄じゃない。オルタグアと戦ってなかったら、俺とも出会ってなかったろ」

 

 ルイは振り返って、さくらの瞳を見つめた。

 

「過去に落ち込んでいないで、未来へ進もう。そうすればきっと、いつか幸せを掴める。」

 

 さくらは、彼の顔をじっと見ていたが、ふいに視線を逸らした。

 

「ずいぶん、うぬぼれ強くなったのね。」

 

 そう言うと彼女は立ち上がり、黒いミニスカートをパンパンとはたいて砂を落とした。

 

「記憶が戻ったおかげかしら?」

 

 そう言う彼女の口元には、意地悪そうな笑みがもれていた。ルイは笑みを返した。

 

 炎の青年は、風のハルガと奮闘する黒い鎧の方に顔を向けた。

 

「いけるな?」

 

「うん」

 

 彼女の声色が元の調子に戻ったことを確かめると、ルイは軽く両腕を広げた。

 

 青年の腹に一筋の炎が現れた。それは紅く燃え盛り、彼の腰を取り囲むように螺旋を描いた。やがて炎の勢いが衰え、青年の腰には炎の象られたベルトが浮かび上がった。

 

 ルイの身体を、熱い炎が駆け巡った。彼の全身が、紅色のオーラに包まれた。

 

 青年の外界はごうごうと燃え上がっていたが、それと相反するように彼の魂は静寂な釜の中に燃えていた。

 

「変身」

 

 ルイの言葉とともに、炎が収束した。中からは紅い装甲の戦士が現れた。

 

 炎のハルガは、炎が大気の中に溶け込むと同時に、前傾姿勢をとって敵に迫ろうとした。

 

「あのアーマー、かなり硬いわ。」と、さくらが呼び止めた。「どうやって戦うの?」

 

「大丈夫だ」

 

 と、ルイは返した。

 

「風にのるんだ。」

 

 さくらは言われたことが分からず、茫然としていた。

 

「ロウ!」

 

 ルイが風のハルガの名を呼んだ。蒼い戦士は左腕で黒い鎧を押さえ込み、右手の平をこちらに向けて軽く挙げた。さくらはそのときようやく、自分が何をすべきかを悟った。

 

 彼女は、風のハルガに向かって一直線に走った。D606ブースターを装着するとともに、宙へ飛び立った。

 

 風のハルガは、さくらの方を振り向いた。彼は茶髪の女が自分に近づいてきているのを確認すると、戦っている相手を両手で前方に突き飛ばした。

 

 それから、両腕を大きく広げた。蒼穹の戦士の胸の前に、小さな渦巻きが起こった。みるみるうちに、蒼い渦は大きくなっていった。

 

 さくらは大型鎌を両腕に据えていた。風のハルガが作り出した蒼穹の渦を目掛けて飛び込んだ。

 

 彼女の身体は、瞬く間に渦の中に取り込まれた。そして、すぐに違う方向に向かって飛び出した。

 

 さくらの2本の鎌は、黒い影を目がけて超高速で大気を斬り進んだ。

 

 はたして、光る刃が黒い鎧と接触した瞬間、大きな火花が散った。

 

 黒い鎧は、右肩から腰にかけてを容赦なく切断された。その断面の外気と接する部分が、火の粉で橙色に光った。

 

 その背中から30mほど離れたところに、さくらの姿があった。

 

「ルイ!」

 

 彼女は大声で叫んだ。

 

「ああ、任せろ!」

 

 炎のハルガは、脚を曲げて深く構えた。そこから、凄まじい勢いで上空へ飛び出した。

 

 真紅の炎をまとったハルガは、空中で大きな火の玉となった。標的に向かって進みながら回転を続け、加速していった。

 

 黒い影との距離が20mほどに縮まった。ルイは右脚を前へ押し出した。

 

 紅い炎が、黒い影を貫いた。鎧は、爆炎に包まれた。

 

 着地した炎のハルガは、しばらくして立ち上がった。

 

 爆炎の煙が、風に流されて薄れた。芝の上には、割れて飛び散った黒い破片が残っていた。そのほかに、銀色に光る機械の残骸と見られるものが散らばっていた。その光景を目にした風のハルガは、ふっと息を吐いた。

 

「自分の使っていた兵器だけ差し向けて、俺たちに片付けさせたのか。あくどい野郎だ。」

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 黒い廊下を突き進む、赤い髪の男。彼は陽気に鼻歌を唄いながら、だがそれには似合わぬ重い足取りで歩いていた。

 

 キキスは、廊下の途中で立ち止まり、回れ右をした。そして、真っ暗な壁の中にすい込まれた。

 

 このとき、部屋の中にはアイゼとカイラが、一方は鋭い眼を差し向けて、他方は冷ややかな笑みを浮かべて佇んでいた。何者かの足音が聞こえた時、カイラは階段の方へ顔を向けた。男は、いつもの冷淡な調子とは打って変わり、大きく目を見開いた。

 

「ダイラ!」

 

 ダイラと叫ばれたキキスは驚いた。と同時に、灰色のスーツの男の普段とは大違いな慌てようを不審に思った。そして、カイラの視線が自分よりも少し上に向かっていることに気づいて、後ろを振り返った。

 

 そこには、紫色の布に身を包み、素肌がすべて隠された人の形が立っていた。キキスは思わず、階段を転がり落ちそうになった。

 

「ベロアグアとオルタグアの戦争が、再びはじまる。」

 

 紫の布の塊は、頭が入っていると思われる部位すら微動だにせず、鋭く響き渡るような声を発した。そこにいた組織の三人は、無言で彼らの指導者の影を見つめた。

 

「歩兵の駒争いは終わりを告げる。お前たちが直接戦場に出るんだ。人類を殲滅させるためにな。」

 

 そう言うと、布を被った人影は紫色の小さな電気を散らした。気づいたときにはすでに、真っ黒な壁の中に消えていた。

 

 紫色が消えてから、部屋の中はしばらく妙に殺伐としていた。が、突然若い男が口を開いた。

 

「やっと、ダイラさんから許しが出たっすね。これでなんにも気にせず戦えるっす!」

 

 赤い髪の男はよほど戦いを好むと見えて、有頂天だった。ブロンドの髪の女はそんな男の様子に、哀れむような眼差しを向けていた。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「じゃあ、ルイも一度、シャングリラに行ったんだ。」

 

 戦いが終わったあと、ルイの身に起こった有様を聞いていたさくらが、確かめるように尋ねた。彼女の右肩には、鳥のメカ、シャルルが黒く光る小さな鉤爪で、白いブラウスにしがみついていた。

 

「ああ」とルイは答えた。

 

「でも、なんでルイがこの世界に帰ってきてすぐ、ベルトが戻ってきたの?私が初めてルイの変身を見た時もそうだったけど。」

 

「運命の力だ。」と、風の青年がひきとった。「ベルトにかけられた力で、ルイと炎のベルトは、必ず遭逢する運命なんだ。」

 

「そういえば、カイラも似たようなことを言ってた。」

 

「まさか、奴らがそんなことまで知っていたとはな」

 

 ロウは鼻先でふんと笑った。

 

「ルイが変身するのを初めて見たとき、何か違和感を感じなかったか?」

 

「違和感って」とさくらは答えた。「あのとき、ルイは家族を失ったばかりで、私は1人でオルタグアと戦いに行って、、、」

 

 それから彼女は、炎の青年の方に目を向けた。

 

「ルイが、私を助けに来てくれたよね」

 

「う、ん」

 

 と、ルイははにかむように返事をした。

 

「それに、」と茶髪の女。「とても落ち込んでたはずなのに、『1人で戦ってる気がしたからさ』なんて言って」

 

「俺、そんなこと言った?」

 

「ふっ」

 

 ロウはまたも鼻先で笑った。

 

「まあ、運命の巡り合わせでその場所にたどり着いたってことだ。」

 

「そんなことない!」とさくらは言った。「あれはきっとルイの本心だったわ。今はわかる。」

 

 さくらはそう言ったあと、ルイの置かれた状況を理解しつつあった。この1ヶ月ほどの短い時間に、彼の身にはとてもひとりで背負い切れるとは思えぬほどの運命が降り注いだのだ。

 

「大丈夫なの?急に記憶が戻って、混乱してない?」

 

 さくらは彼の心境が気にかかり、ルイに問いかけた。

 

「大丈夫。」と、ルイは相変わらずの平静さで答えた。

 

「そう、ならいいけど。」とさくらは答えた。「ルイは強いわね。」

 

「君のおかげだよ」

 

 とルイは言った。さくらはちょっとだけ恥ずかしそうな顔をしてみせた。

 

「それより実は、記憶が戻っても分からないことがあるんだ」

 

「なんだ」とロウが応じた。

 

「前に一度、オルタグアがシャングリラに移送させようとした人たちの身体が、すぐに消えなかったことがあったんだ。」

 

「え?」

 

 さくらは驚いた調子で聞き返した。

 

「ほら、君が倒れて病院に行ったとき。その人たちの身体は数時間後に消えたらしいから、今はシャングリラにいるはずだけど。その後俺たちは訳あって警察署に行って、そこで話を聞いたんだ。」

 

 ルイはここで、青年に向けていた視線を、さくらの方へ動かした。

 

「さくらは聞かなかったの?」

 

「うん、今初めて聞いたわ。」

 

「なんだ、お前たち仲良く犯行でもしたのか。」

 

 と、風の青年はいたずらっぽい口調で言った。ルイは彼の顔をちらっと眺めたが、男の表情はさっきともそんなに変わらずだった。

 

「なっ、違うわよ!ただ勘違いされただけよ」

 

 ロウが少しも笑わないので、さくらはむっとした顔を向けた。

 

「あのときは俺も、ハルガの力を取り戻したばかりだったから、分からなかったけど。ロウはなにか知ってるか?」

 

「ルイ、それはいつの話だ」

 

「いつって、、、たしか、俺が記憶を失くしてから、初めてハルガに変身した日の、翌日くらい。」

 

「、、、そっちにも影響が出ていたんだな」

 

 ロウは数秒間の沈黙の後、そう言った。

 

「え」とルイ。

 

「どういう意味?」

 

 ふたりの話を聞いていたさくらも気になって尋ねた。

 

「おそらく」と、ロウが話し始めた。「それと同じとき、シャングリラでは災害が起こっていたんだ。」

 

「災害?」とルイは聞き返した。

 

「火災だ。突然、街中でほとんど同時に炎が燃え上がった。あんなことは初めてだった。俺と何人かの仲間たちは燃え上がる炎を消すために、シャングリラの街中を周っていった。だから、お前が炎のベルトを取り戻したことにすぐに気づかなかったんだ。」

 

 そういえば、先生も災害があったとか言ってたな、とルイは思い返した。

 

「それで、街の人たちはどうなったの?」

 

 本当に心配している顔のさくらが、そう尋ねた。

 

「ああ、それが奇跡的に、被害はほとんどなかったんだ。数名の被害者は出たがな」

 

「そうなんだ」

 

 と、さくらは神妙な顔つきで答えた。

 

「でも、ルイの家族は無事だったのよね」

 

 さくらはルイの方を見た。彼は優しく笑って見せた。

 

「ああ、これからは心置きなく戦えそうだ」

 

「よかったね」

 

 さくらも笑みをこぼした。だが隣の青年は顔をゆるめなかった。

 

「ルイ、あのな」

 

 ロウがなにか言いかけると、ルイは首を傾げた。風の青年は開きかけていた口を閉じ、違う形にしてもう一度開いた。

 

「その鳥は、、、」

 

 ロウは、さくらの肩で休んでいる黒い鳥のメカを指した。

 

「あっ、うん」とさくらは応じた。「鳥の形をしたメカで、私たちの戦いをナビゲートしてくれる。フェルルっていうんだけど」

 

 彼女は、ルイの方を振り向いた。

 

「ルイにも言ってなかったね。」

 

「ああ」とルイが答えた。「それってカイラが作ったんだよな」

 

「うん、、、マーク2って書いてるけど、形は前のとほとんど一緒。」

 

「前のは俺が壊した。」

 

 突然、風の青年がそう言った。ふたりにとっては思ってもみない言葉だったので、それを聞いたルイとさくらは驚いて青年の顔を見た。ロウはただ正面を向いて、つんとしていた。

 

「ベロアグアに俺たちの計画が漏れてはいけないと思ったからな。」

 

「ふーん。」

 

 と、さくらは半分疑うような目線を向けた。

 

「でも」とルイが口を開く。「組織、、、というか、ベロアグアのことだけど。俺たちを裏切ったはずなのに、なんで新しいメカを作ってよこしたんだ?」

 

「確かに、やってることが変よね。」

 

「俺たちの情報を盗むためじゃないか」

 

 と、またも風の青年はふたりの心を揺るがすような言葉を口にした。

 

「まさか」

 

「でも、ありえるな、、、」

 

「だとしたらますます変ね。」とさくらは言った。「トラロックが発動する前に、シャルルを通じて装置の場所のデータを送ってきたのよ。あなたも見たでしょ?」

 

 そう言いながら、彼女は風の青年の顔を伺った。

 

「ああ」

 

 と、ロウは無愛想に答えた。

 

「考えられることとすれば、ベロアグアの中に、裏切り者がいる。」

 

「もしかして、カイラが、、、?」とルイが応じた。「これまでも、なにかにつけて俺たちを支持していたし、俺たちを騙してたとしたら、あそこまではしないっていうか」

 

「でも油断はできないわ、、、」

 

 と、さくらは言った。彼女自身、組織の誰を信じてよいか分からなかった。

 

「あなたたちオルタグアの導き手、テイラっていう人も、本当に信用していいのかわからない。」

 

「それは俺たちも一緒だ。」と、風の青年が応じた。「今は信じるしかないだろう。」

 

「そうだな」とルイは答えた。

 

「ベロアグアと戦って、人類を守る。それが今の、俺たちの使命だ。」

 

 さくらは力強く頷いた。

 

「しかしウッドの奴」と彼女の横で風の青年が口を開いた。

 

「あんな、高速で移動する能力を備えていたとは知らなかった。」

 

 ロウがそう言うと、さくらは少し驚いた様子を見せた。

 

「そうなの?」

 

「ああ」とルイは頷いた。「かつてはあんな力を持っていなかった。それにあのトラロックの装置、、、一体どうやって作ったんだ」

 

「奴らも変わったらしいな」とロウが口を開いた。「力ずくで倒せるものじゃない。相当骨が折れるぞ」

 

 風の青年の言葉に、ルイは頷いた。

 

「でも、こっちも変わったよ。」

 

 そう言って、彼はさくらの顔にちらりと視線を向けた。

 

「一年前は、さくらがいなかった。」

 

 彼女は面食らったような顔をした後、少し笑って見せた。しかし、やはりもどかしく照れくさいので、顔だけそっぽを向いて、視線の先だけ残していた。風の青年はさくらの様子を見て、口元を歪ませた。

 

「あなたも笑うのね」

 

「、、、悪いか」

 

 ふたりは妙な眼差しで見つめあっていた。が、知らずうちに互いに睨み合っていたので、ルイはふたりの視線を遮るように割って入った。さくらはふぅっと軽く息を吐いたが、風の青年の方はやはりなんとも言わなかった。

 

「これからは、さくらの記憶を取り戻さないとな。」

 

 ルイは希望と可能性に満ち溢れた笑顔を、ふたりに向けた。夕日が彼の顔を赤く照らしていた。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 湖の水面は、真紅の太陽で赤く染められていた。水の揺れるところから陸に向かって、静かな風が吹き抜けていた。

 

 湖のほとりを、ひとりの男が歩いていた。湖の側に少し突き出た場所に、人間一人分くらいの高さの石が立っていた。

 

 男は石碑の前に近づくと、歩みを緩めた。だが男の足取りは、まるで石の前で立ち止まりたくないかのようにゆらゆらとしていた。しばらくしてどうにも動き続けられないところまでやってきて、ようやく男の足は地面の上で静かに止まった。

 

「すまない、ルイ君」

 

 緑山はひとり、石碑に向かって話しかけた。その視線は、はじめ石碑の中央あたりを向いていたが、だんだんと地面へ落ちていき、しまいには自分の足元しか見ていなかった。

 

「私は、私は医者のくせに、、、嘘を吐くことでしか、君を、守ってやれなかった、、、」

 

 男は言葉を吐き出すと、膝から地面に落ち、その場にへたりこんだ。男の正面に立つ石碑には、次の3つの人名が並んで刻まれていた。

 

 

 悠刻 龜哲

 悠刻 蝶里

 悠刻 未来

 

 

 

 

―CHAPTER 2 につづく

 

 






お読みいただきありがとうございます!感想、評価などよろしくお願いします。

さて、仮面ライダーハルガ CHAPTER 1 炎と風の交戦編 は、EPISODE 11にて終幕です。次回からは、新たな章が始まります。

CHAPTER 2 未来人の激戦編に、御期待ください。

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