これまでの仮面ライダーハルガ!
青年ルイはある日突然、共に暮らしていた家族を全員殺害される。彼らを消し去った者たちの正体は、怪物オルタグア。ルイはその後、過去の記憶を失いながらも、戦士として怪物と戦う女性、さくらと出会う。運命のベルトと巡り会ったルイは、これ以上オルタグアの犠牲者を出さないため、炎のハルガとして戦うことを決意した。
そんなふたりの前に立ちはだかるようにして現れた、蒼き戦士、風のハルガ。その変身者はロウという名の青年で、オルタグアとともに人間の殺戮に加担していると思われた。
ある時、ルイは風のハルガの手によって、別世界シャングリラへ送り込まれる。ルイは恩師である先生と再会し、オルタグアの真意を知る。組織の正体はベロアグアと呼ばれる存在であり、その目的は人類を滅亡させること。そして、オルタグアは人間を襲っていたのではなく、人間をベロアグアから守るため、シャングリラに移送していたことが明らかになる。元の世界に帰還したルイは、さくら、ロウと協力して、全個体殲滅計画トラロックの阻止に成功した。
さくらは、記憶を失っていたルイがオルタグアの一人であることを知るとともに、これまでのオルタグアとの戦いが無駄であったという思いにかられる。暗然としていた彼女に、ルイは救いの手を差し伸べた。さくらは、記憶を取り戻したルイと彼のかつての仲間であるロウ、2人のハルガとともに、真の敵であるベロアグアと闘うことを決心したのだった。
EPISODE 12 漆黒の拳
人の気配のない、幅の広いアスファルトの道路。その両脇には、コンクリートの壁と柱が立ち並ぶ。
突然、道路の中央に振り下ろされる、黒い大きな塊。同時に、破壊の音が街に轟く。岩石のように堅いそれは、アスファルトの表面に亀裂を走らせた。
黒い大きな塊は、太い棒状の黒い塊に繋がっており、さらにそれは巨大な金属の装甲に結合している。巨大な兵器はその四肢を大胆に振り回し、街に並ぶ四角の列を壊して歪な形にしていく。ここには、悲鳴をあげる人間さえいない。
突然、金属質のある銃声が響く。それに続くように、宙をつんざく風の声と、燃え上がる火炎の花が、街を駆け巡る。
3つの影は、巨大ロボットの長い腕をかいくぐり、弱点と思われる頭部に攻め込んだ。刃が鋼とぶつかる音がしたかと思うと、辺りは熱風に包まれる。
「見事な戦い方ですね。あの人外と思わしき者どもは」
と男の声がしゃべった。左の頬に傷跡が残っていることの他には、取り立てて特徴のない男が、ビルの屋上に立って戦場を見下ろしていた。男は黒いスーツを着ている。
「そう、特にあの女の姿をしている者。」
男の頭にあるマイクロフォンの中の声が答えた。
「生身で戦っているようだが、他の装甲をまとったふたりにも劣らぬ、非常に優れた戦術を備えている。」
受信の具合が悪いのか、機械調の声がときおり歪んで聞こえた。
「巨大兵器の暴走は、あの3人に任せておけばおさまりそうですね。政府が出るまでもありません。」
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昼下がりの地下アジト。
戦いを終えた3人の戦士たちは、ひととおりの片付けを終えて、各々の嗜好で休息をとっていた。
「あの巨大ロボット」と、ソファに腰掛けたルイが口を開く。「一体どこから湧いてくるんだ。」
「これで4度目か。」
地下室の壁に寄りかかっているロウが応じた。
事実、三人がトラロックの発動を阻止してから、彼らはたびたび巨大兵器との戦闘に駆り出されていた。
「実はさ、」
デスクの前に座るさくらが声をあげた。ほかのふたりは彼女の方に耳を傾けた。
「あの巨大なロボット兵器、前に一度、この場所に出てきたことがあって。」
ルイは驚いた顔をして、彼女に尋ねる。
「大丈夫だったのか?」
「うん」とさくらは答えた。「私は大丈夫。だけど、この部屋がめちゃくちゃに壊されたのよ。床の下には穴が空いて、ここの天井もたぶん、全部崩れてたと思うわ。」
話を聞いているルイは、地下室の壁と天井をぐるりと見回した。いつもと変わらず頑丈な見た目をしていて、壁にも床にも傷ひとつなかった。
彼の疑問に答えるように、さくらが口を開いた。
「それなのに、次の日には元に戻ってたの。」
「どういうことだ」とルイは尋ねた。
「わたしにも、わからないわ」
「夢でも見たんじゃないか」
と、ロウはぶっきらぼうに言う。
「夢か、幻覚か。」
「うん、そうかもしれない」
さくらは珍しく、風の青年の言葉に抵抗を示さなかった。
「でも、それがもし本当に起こったとしたら」と、ルイは話す。「やっぱり、この場所を俺たちに預けたカイラが関係しているよな」
「うん、、、」
「カイラの奴、一体なんのつもりなんだ」
「わからないわ、、、」
さくらは不安そうな声で言った。
「なんにしろ、」とロウが口を開いた。「この場所を把握されている以上、黙って居座るわけにもいかないだろう。」
「でも、バイクの燃料はここのやつしか使えないのよ。」
さくらが言い抗うと、ロウの額が歪んだ。
「それに、この部屋には戦う装備が揃ってるんだから。ここに飛び込むなんて無謀なことは、しないんじゃない、、、」
「そうだな、」とルイが答えた。「向こうが動き出すまで、こっちもひとまず安静といこう。油断はできないけど。」
ふぅん、とロウは低く唸る。彼の視線は、部屋のデスクに止まっている鳥のメカに向けられていた。その様子に気づいたさくらが口を開いた。
「フェルルの件は、たぶん大丈夫よ。」
ん、とロウは問いかけるような声を出す。
「情報を受信するアンテナはあるんだけど、逆にこっちからデータを送信する仕組みがなかったの。だから、こっちの情報が盗まれるってことはないはず。」
「フェルルの、中身を見たってこと?」
ルイは彼女に対して尋ねた。
「そうよ」とさくらは答えた。「戦闘以外の訓練も受けたことがあるの。これぐらいのことは、できる。」
「すごいな」
とルイは感心の声をあげた。黒い鳥のメカは、足をテーブルにつけたまま、翼を広げている。右翼には白い文字で”MK - II”と、反対側には銀色の文字で"056"と記されていた。
「そういえば、」とさくらが、少しの間の沈黙を破った。「これを見て欲しいんだけど」
彼女はデスクに座って、ラップトップのような機器を開いていた。ルイは彼女の方へ寄る。
「これ、前にも見たサイトか」
「うん」
画面上部には、白く細い文字で"CHYZEAN"と表記されていた。
「なんだそれは」
と、うしろから画面をのぞいていたロウが尋ねた。
「ああ、さくらが見つけたサイトなんだけど」とルイが説明する。「1年前この時代に来て戦っていた、オルタグアの目撃情報が載ってるんだ」
「写真があるのよ」とさくら。「かなり見づらいけど。」
「俺たちの戦っているところを、何者かが目撃していた、というのか」
ロウは半信半疑で尋ねた。
「うん、それもひとつやふたつじゃなくて、100件くらいの記事があるわ。ほとんどは文字が書いてなくて、写真ばかり。」
さくらは灰色の影が写った画像をいくつか青年に対して見せた。ロウは低く唸ったが、証拠を見せられたので、信じるほかなかった。
「それで、これなんだけど。」
さくらがそう言って表示させたのは、紅い影と、その周りに燃え立つ炎が写った写真だった。
「これって、、、」とさくらは確かめるように問いかけた。
「俺かな」
「お前だな」
ふたりの青年が続けて言うので、さくらは意図せず吹き出してしまった。ロウはちらっとさくらの顔を見た。
「街から離れたところで戦っていたつもりだったが、、、誰かに見られてもおかしくはない」
ロウはそう言うと、さくらの前に置かれたキーを押して、ページを下にスクロールした。最下部に到達すると、そこには白く小さな文字で、アルファベット3文字が綴られていた。
「ZKR、、、?」
さくらが疑問の混じった声で読み上げた。
「なにかの組織かな」とルイ。
「何者かは分からないが、」とロウは言った。「情報の統制が続いている限り、世間に大きく知れ渡ることもない。問題ないだろう。」
ロウが確信に満ちた態度でそう言ったので、謎多きインターネットサイトの話はそれで終わりになった。
「ねえ、」と、さくらがふいに口を開いた。
「オルタグアとベロアグアってさ、前から対立してたっていうのは、分かったけど。そもそも、一体なんなの?遺伝子的に人間と違いがあるって言ってたけど、どういうこと?」
「さあな」とロウはふざけてもいない様子で答えた。
「俺たちも、自分の身体のことをあまりよく分かってないんだ。」とルイがひきとった。「見た目も人間と変わらないし、生態の面でも、人間と同じらしい。大きな違いは、普通の人間に比べて少し瞬発力や運動能力が長けていることだけ。元から種族的な差異はなくて、小さな変異を起こした人間を人外呼ばわりしているだけだと言う人もいたんだ。」
「そう、なんだ」
さくらはルイの返答に驚いていたわけではない。自身の正体を知らないルイとロウに対して、どういう感情を向ければ良いか分からず、決まりが悪かった。
「そうよね、人間よね」
さくらは頷きながら、自分に言い聞かせるように言った。
「ベロアグアのことは、俺も詳しく知らないんだ。」
とルイが言った。
「分かっていることは」とロウが口を開く。「普通の人間よりも戦闘力が高い。俺たちオルタグア以上にな」
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黒い面に囲まれ、影すらも溶け込んでしまうような廊下を歩く、赤い髪の男。彼の頭の中には、新たなる戦闘道具のことしかなかった。1ヶ月ほど前に装備の開発者によって、新装備の完成品は自分が所有することを約束されたのである。この戦闘志向の若い男は、新しい装備の完成を今か今かと待ちわびていた。
「キキス」と、何者かが彼の足を止めた。後ろを振り返ると、灰色のスーツを着た男が、右手に黒いボックス型の装置を持って立っていた。
「これは、もしかして」
期待を込めた声で言うキキス。それに対して、カイラはこう言った。
「もしかしなくとも、君が求めているものだ」
男は冷ややかに笑う。だが、相手の方はその冷淡さを全く気にすることなく、満足そうに笑い返した。
「これを待ってたっす」
「炎のハルガと同等の力を、外部からのエネルギー供給なしで出力し続けられる道具。名前は君の望んだ通り、E2パルマナカルマだ。」
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巨大な影が、都心から数里離れた静かな街を進む。怪物の歩みに合わせて、大地に揺れが伝わった。
道路に沿って立ち並ぶ様々な高さの建物が、魔物とも呼べるほどの恐るべき巨大な腕部によって次から次へと崩れてゆく。大地の叫びに崩壊の轟きが混じり、辺りに響き渡った。
突然、その重低な響きに、けたたましい発動機音が加わる。それははじめ、耳を澄まさないと聞こえぬほどであったが、しだいに大きくなっていき、巨大兵器の聴覚装置に届いた。巨大なロボットは、彼らの行動計画を取り乱す者の方へ、その巨躯を振り向かせる。
巨大兵器の視界に、2台のバイクが並んで飛び込んだ。さらにはその上空を、蒼い光に包まれたなにかが飛翔している。
3つの動く物体は、巨大兵器の正面200mほどの位置で合流した。とくに、空を飛んでいた者は2台のマシンの数m後ろに降り立った。それは人の姿をしているようである。
バイクに乗った者は、それぞれ車体の左側に降りた。3つの顔は、はるか上にある巨大兵器の装甲に向けられていた。
右側に立った者と後ろに立った者の腰に、紅い炎と蒼い光が現れた。それぞれの身体に、炎と風を象ったベルトが装着された。
「変身!」
「変、身、」
掛け声と共に、ふたりの肉体を覆う紅蓮の炎と蒼穹の風。
燃えたぎる炎の横に立つさくらは、2枚の小さなプレートを取り出し、両手にひとつずつ持つ。プレートの中央部を指で触れ、それから上へ滑らせた。
さくらは2枚のプレートから手を離した。ふたつは白く光って、彼女の頭と背中にそれぞれ移動した。白い光が集まり、装備を形成していく。
同時に、紅い炎と蒼い渦は、ひときわ大きな光を放った。
紅い戦士と蒼い戦士の姿が現れた。茶髪の女には、特殊レンズ付きマスクと飛行用ブースターが装填されていた。
3つの影が、斜め上に向かって飛び出した。
まず、炎のハルガは右拳に集中した力を込める。直後に、巨大兵器の装甲に激突する熱い殴打。巨大ロボットは数m後ろへ退いた。
すかさず、蒼い渦が巨体を囲みこむ。すると、巨大兵器はぐるぐると回って上へ突き上げられた。宙に浮く巨躯に、紅い拳の殴打と光る刃の斬撃が凄まじい速度で走る。巨大兵器は轟音を鳴らして崩れ落ちた。
颯爽と地面に降り立つ戦士たち。だが崩れ落ちた巨大兵器の背後には、2体の兵器が戦士たちを待ち構えていた。
炎のハルガが再び拳を強く握る。紅い掌から湧き出た炎は烈々と燃え盛った。
炎の打撃が金属の肌と激突。紅蓮の炎は巨大兵器の表面を焦がし、熱い炎と煙が立ち昇った。
攻撃を受けた2体の巨大兵器は、すぐさま反撃を始めようと、長い腕を掲げる。だがそこへ、蒼穹の渦巻きが投げ込まれた。
兵器の身体は大気の流れに捕らえられる。小さな嵐は巨大兵器が動くことを許さなかった。
さくらは素早く兵器の近くに接近し、短い間合いで戦いを挑んだ。驚異的な身のこなしで、一瞬のうちに兵器の脚部を斬りつける。鎌は金属を切り裂き、兵器の装甲に大きな傷を負わせた。
脚部にダメージを負った兵器は、なおも巨人のような姿勢で迫り、戦士たちに対抗しようとした。だがそのとき、茶髪の女の手には白いラインの走る黒い銃身が握られていた。
さくらは、巨大兵器の装甲の傷に向かって、電撃を走らせた。白く光る稲妻は、ロボットの内部システムにまで入り込み、その行動を狂わせた。2体の巨大兵器は、ちょうど力尽きた兵士のように前へ倒れた。
それを合図に、炎と風のハルガは上空へ向かって高く跳躍する。紅と蒼の光が、宙を舞った。
ふたりの戦士は、互いに向かい合う姿勢をとった。紅と蒼のキックが、巨大兵器の身体を貫いた。
闘いが終わった後、市街地には再び、ひとときの静寂が戻った。
突然、地面を蹴る音が背後から近づいてきた。ルイは即座に後ろを振り向く。そして自分に迫り来るものの正体を確かめるより先に、紅い拳を突き出した。
炎の殴打は相手のキックと衝突した。相手の影は炎のハルガの握りこぶしを蹴り、宙を回転して後ろへ下がり、地面に降り立った。
そこには、赤い髪の男が立っていた。
「キキス!」
と、ルイの斜め後ろにいたさくらが言った。彼女の顔は、今度ばかりは嫌悪に満ちていた。
「そんな怖い顔しないでほしいっす」
キキスは彼女に反発するように明るい調子で言う。そして、左脚を後ろへ下げ、体勢を低くした。胸の前に掲げられた男の手には、黒い六角形のものが握られていた。
「何をする気だ」
ルイがそう問いかけると、キキスはにんまりと笑って見せた。
「Here we goo」
そう言ってキキスは、六角形の上部にある小さなスイッチを押し込んだ。すると、、、
何も、起こらなかった。変わったことといえば、それを握る男の表情が疑心で歪んだことだけである。
「What…」
キキスはもう一度スイッチを押した。
「あっつ!」
キキスは突然そう言って、得体の知れぬ小型装置から手を離した。
それは男の手から離れた後、おとなしく地面に落ちるものだと、その場にいた誰もが思っていた。しかし、紅く光を放った小さな装置は、あろうことかルイの方に向かってきたのである。
小さな装置はハルガの装甲に達する寸前、横へ逸れた。紅い身体の脇を過ぎ去る。かと思うと、方向を変えてルイの周りをぐるっと一周した。それから、ひとりでに炎のベルトのサイドバックル部分に装着した。
その場にいた一同は息を飲んで、これから起こることを見守った。
炎のベルトに固定された、小さな装置の中央が上下に開いた。中から現れた機械の眼が紅い閃光を放つ。
紅いハルガの全身が、瞬く間に黒色に染まった。
さて、小さな装置の凄まじい熱の衝撃に倒れていた赤い髪の男は、真っ黒なハルガの姿をとらえた。彼の眼は、鋭く尖った刃のように、黒い戦士を見据えた。
黒い戦士とキキスは相対する。黒い戦士の身体からは真紅に染まった炎が舞い上がった。キキスは自分の胸の前に左手を掲げる。すると、彼の身体の中から長い棒状のものが出現した。
「Game on!」
赤い髪の男は掛け声をあげて薙刀を構える。次の瞬間、最初の一撃が交わされ、空気が割れる音が響いた。
キキスはさっきまでいた場所から一瞬のうちに移動し、黒き戦士の背後に立っていた。
だが、薙刀を持った男はよろめいた。それに反して、漆黒の戦士は一切動ぜずにいた。キキスは黒いハルガに一撃を与えられなかったどころか、反撃を食らっていたのである。
彼は黒い影の方を振り返った。薙刀を巧みに操り、俊敏な動きで戦士に挑んだ。しかし、漆黒の拳が空気を切り裂き、相手の攻撃を跳ね返す。
キキスは自分が劣勢に立たされていることを悟った。そのとたん、踵を返し、目にも止まらぬ速度でその場を立ち去った。
戦いの様子を見ていたさくらと風のハルガは、黒いハルガの無双っぷりに圧倒され、茫然としていた。だがその表情はすぐに引き締まった。さらなる戦いの相手が現れたのである。
彼らの視線の先には、黒い装甲でかためられた巨人の影。巨大兵器は5体で、3人の戦士のまわりを取り囲んでいた。
黒い戦士は体勢を低くした。そして地を蹴って巨大兵器に向かって疾走。次の瞬間、手前に立つ巨大兵器の装甲が黒い拳によって粉砕されていた。
漆黒のハルガは飛び上がる。宙で身を回転させ、巨大ロボットの頭上に飛び乗った。その頭部に、炎の殴打を叩きつけた。
炎の力は彼の体中を駆け巡り、漆黒の拳は破壊の嵐を巻き起こす。巨大ロボットたちは黒い戦士の猛攻に晒されながらも、その長く頑丈な腕を振り回して対抗した。
街の建造物は巨大ロボットたちの荒々しい攻撃によって揺れ動いていた。しかし、黒い戦士はその建物の間を素早く飛び回る。高いビルの壁を駆け上り、その上から巨大ロボットたちに炎の一撃を浴びせた。
最後の1体の巨大ロボットが立ちはだかる。黒い戦士は力強く息を吹き、炎の力が最大限に引き出される。彼は一気に飛び上がった。巨大ロボットの頭上に現れた黒い戦士は、炎の拳を叩きつける。真紅の炎が巨大兵器を包み込んだ。
爆発と共に、黒い戦士は地面に降り立った。その影は不死身の戦士にさえ見えた。
しかし突然、彼の身体は気の抜けたように、よろよろと近くの壁に向かった。炎に包まれて戦士の姿を解いたルイは、建物の壁によりかかる。
「ルイ!」
と、さくらは呼びかける。彼女に対して、ルイは力の抜けた声を返した。
「あぁ」
青年のただならぬ様子を察して、さくらは彼の元へと駆けつけた。壁に身をもたれさせるルイは、疲労困憊していた。
「大丈夫?」
さくらが尋ねると、ルイは再び弱った声でああ、と返した。
蒼い光が、ふたりのもとへ迫った。風のハルガは戦士の装甲を解いて、ルイに近づいた。
「大丈夫なのか」
ロウの眼は、ルイの顔と彼の手の中に握られた、小さな黒い装置を交互に見つめていた。
「力が、、、デカすぎた」
ルイはそう言って、疲労のあまりに震える己の手の平を見つめた。
そのとき、彼らを戦場に導いたメカの、柔らかい鳴き声が聞こえた。フェルルは3人の頭上に浮遊していた。
「帰ろう」
とさくらが口を開いた。
「立てる?」
さくらとロウは、たったひとりで得体の知れぬ巨人どもを叩きのめした戦士の身体に、腕を回した。
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黒いテーブルの座席に、灰色のスーツの男が、右脚を左脚の上に重ねて腰かけていた。その隣にはブロンドの髪の女が、哀愁漂う姿勢で座っていた。
部屋の壁際に、赤い髪の男が不服げな顔をして立ち尽くす。
「炎のハルガに、奪われたっす」
「そうか」
そっけない返事が返ってきた。キキスは男に詰め寄った。
「ていうか、あれ、生体認証で俺にしか使えないようにするんじゃなかったんすか?」
キキスの疑問に対して、カイラは何も言わない。
「カイラさん、完成したらあかい男に渡すって言ってたっすけど、まさか最初から、、、」
「まあ落ち着くんだ。たしかに、あれがルイの手に渡るように仕組んだのは私だ。」
そうしてカイラは冷淡な笑みを浮かべる。
「だがはたして、あの青年はどこまで使い続けられるかな」
キキスはいかにも納得のゆかない表情を見せていた。ふたりの言葉に耳を傾けていた女は、口を開いた。
「なぜそんな珍妙な手を使う。」
「そうっすよ」とキキス。彼は畳み掛けるように、目の前の男に詰め寄りながら言った。「これからは俺たちが戦場に出るって、ダイラさんも言ってたじゃないっすか。」
ふたりの問いかけに対して、カイラはこう返した。
「ハルガの力を侮ってはいけない。ウッドのようになりたくはないだろう?」
ブロンドの女はカイラの返答に納得したのか、視線を横へ逸らした。キキスの方は、男の言葉にはっとさせられずにはいられなかった。
「ウッドさん、やられたんすね。ハルガの奴らに、、、」
赤い髪の男は、誰も座っていない座席を見つめた。黒い部屋の中に、しばらくの沈黙が流れた。
部屋の外では、一筋の刃が、黒い壁の前で異様に輝きを放っていた。
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