【完結】仮面ライダーハルガ   作:じゅんけん

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 仮面ライダーハルガ、前回の3つの出来事!

 1つ!かつて、オルタグアの仲間にルイやロウと同じく時空を超えられる者が存在したことが判明!

 2つ!かつてルイたちが倒したはずであったベロアグアのひとり、イヴナが戦士たちの前に立ちはだかる!

 そして、3つ!フェルルに連れられて街へやってきた3人は、イヴナとアイゼのふたりと鉢合わせた!




EPISODE 14 黄金の瞳

 

 

「誰だ、あいつ」

 

 ふたりの女の姿を目にした風のハルガは、そう言った。

 

「誰って、イヴナっていうんでしょ?あなたが言ったじゃない」

 

 さくらは動揺の色を示しながらそう答えた。ロウは首を横に振った。

 

「いや違う、あのブロンドヘアの方だ」

 

「組織の構成員の一人、アイゼよ」

 

 さくらは訝しげな顔をしながらそう答えた。

 

「ベロアグアと戦ってたんでしょ、知らないの?」

 

「そんな名前は知らないな」

 

「え」

 

 ロウの言葉に困惑したさくらは、炎のハルガの方を振り向く。ルイは彼女の方を見返して、口を開いた。

 

「たしかに、俺たちがかつてベロアグアと戦ったときには、あんなやつはいなかった」

 

「そんな」

 

「記憶が戻ってから、何かおかしいと思ってたんだ、、、」

 

「じゃあ、一体誰なの」

 

「おい! 」

 

 ロウは自分たちの前に立ちはだかる相手に向かって叫んだ。

 

「お前、何者だ! 」

 

 当然と言うべきか、マスクで表情を隠した相手は答えなかった。凛々とした青色の眼で、こちらを鋭く見据えていた。隣に立つ薄紫の方も、感情の読めない冷めた顔つきをしていた。

 

 双方は互いに身を構え、強い眼差しで相手を見た。

 

 薄紫の髪が突然、金髪の女の傍らから消えた。次の瞬間、イヴナの身体は黒い装甲をまとったルイの目の前に迫っていた。

 

 重ねられた2本の刃が、黒いハルガの装甲と衝突する。炎の戦士の身体は、凄まじい勢いで斜め上方向に打ち出された。

 

 ルイは、殴打のごとき斬撃を食らわせられたあと、仰向けの姿勢で宙を進んだ。だがすぐに自らの意思で前へ回転し、体勢を戻した。

 

 ルイは背後にそびえ立つビルの外壁に足をつけた。それから瞬きもしないうちに、自分を跳ね飛ばした相手の身体めがけて、飛び出した。超スピードで宙を貫き進む間に、右拳を後ろに大きく掲げた。

 

 はたして、その黒き殴打は女の腹に激突した。打撃を受けた相手は、アスファルトの上をほぼ水平方向に飛んだ。

 

 イヴナに攻撃を見舞ったルイは、相手と衝突した地点の真下の地面に着地した。立ち上がったルイは、女が消えていった方角の地面を見た。

 

 このときイヴナはすでに体勢を立て直していた。黒いハルガにも劣らぬほどの速度で、ビルの間を縫うように駆け巡る。あまりにも俊敏な動きなので、その影は常人の目に止まらないほどであった。

 

 黒いハルガは後ろを振り向き、その場に残った金髪の女と対峙した。ところがその直後、後ろから凄まじい勢いで飛んでくる影と直撃した。

 

「ルイ! 」

 

 さくらは叫ぶが、そこにはもう彼の姿はなかった。ルイの身体は、薄紫の影といっしょになって、ビルの間の宙を凄まじき速度で進んだ。

 

 あとに残ったさくらは、金髪の女を見つめる。そのとき、彼女の隣に立つ風のハルガが口を開いた。

 

「お前はルイのところに行け」

 

「え? 」

 

「イヴナの強さは桁違いだ。あいつ一人じゃ太刀打ちできない」

 

 蒼い仮面は、組織の構成員アイゼの姿を強く見据えていた。その様子を見たさくらは、青年の力を信じようと思えた。

 

「わかったわ」

 

 そう言うと、さくらは白いバイクに駆け戻った。それから間もないうちに、けたたましいエンジン音をあげて、彼女の影はその場を去った。

 

 十字路にはふたつの影だけが残った。

 

「さて、」

 

 とロウは相手に向かって声をあげた。

 

「アイゼ、と言ったな。何者か知らんが、俺と渡り合えるかな」

 

 風のハルガは敵に対して宣戦布告を行うと、体勢を低くして両腕を構えた。

 

 対するブロンドの女は、相手の敵対心をその目で確かめたあと、ほとんど動かなかった。夕日の色に染まった地面の上に、両腕両脚をまっすぐに下ろして直立していた。

 

 相手が動かないのを見たロウは、早速風の攻撃をしかけた。すると相手はしなやかに身体を逸らし、蒼穹の渦をいともたやすくかわした。

 

(くそっ、こいつ、俺の風の流れを完全に掴んでやがる)

 

 一筋縄ではいかないと思った風のハルガは、上空へ向かって飛び立った。ブロンドヘアは相変わらず不動で、視線を上へやるだけであった。

 

 ロウは右腕を大きく振り下ろした。すると、高所から蒼穹の渦が打ち落とされる。と同時に、あらかじめ準備していた風が別の方角から相手に向かった。

 

 黒いバトルスーツの女は、無駄ひとつない身のこなしで、ふたつの渦を避けた。その直後、彼女の頭上に襲いかかる蒼い拳。しかし、その女は不意を突かれたような様子を全く見せない。むしろ相手の手を読んでいたかのように、ゆるやかな動きで身を前へ傾けた。そうしてそのまま、風のハルガの肩に向けて右手の平を押し出した。

 

 蒼い装甲は宙をよろめくように後退した。しかし風を操る力を持つ彼は瞬時に大気を己の意のままにし、上へ舞い上がった。

 

 ブロンドの女の真上に浮上した風の戦士は、両腕を大きく広げて手の平を真下に向けた。すると即座に、女の周り四方の先に、風の渦が創られる。相手は全く動じていない様子でじっとしていた。

 

 4つの竜巻が、女に迫り始めた。女はそのうちのひとつだけを颯爽と見据え、動き出す瞬間を見計らっているようだった。

 

 上空に留まったロウは、両手の平を広げていた。だがふいにその両方を閉ざして、拳を力強く握りしめた。

 

 すると、アイゼに襲いかかろうとしていた4つの風の渦は、8つに分裂した。それとほぼ同時に、その8つともがこれまでと比べものにならないほどの勢いで加速した。

 

 これにはさすがのアイゼもたじろいだ様子を見せた。女が行動を起こすより先に、8つの渦は彼女の身体を捕らえた。

 

 蒼穹に巻き込まれた女は、真上に向かって放り出された。そしてその行く先には、風のハルガの大きく振りかざされた拳が待ち構えていた。

 

 蒼い装甲とブロンドの髪がすれ違った。ロウの殴打が相手の身体に直撃する寸前、彼の視界に、青く輝く女の瞳が映り込んだ。

 

 

 

 風の戦士はアスファルトの地面に降り立った。彼の拳にはなんの感触も残っておらず、代わりに腹の中を風が駆け巡るような感覚に襲われた。

 

 彼は辺りを見回したが、女の影はなかった。

 

 

~~~~~~~~~~

 

 

 紅い炎が、薄紫色の髪の女に向けて放たれる。だが対象は俊敏に移動して燃え盛る炎から離れた。

 

 炎の戦士は女のあとを追う。ふたつの影は建物の外壁の間を高速で行き来していた。

 

 突然、薄紫の髪は動きを止める。迫りくる炎に向かって左手の刀を突き出した。

 

 ルイはそれをすんでのところで回避し、そのまま右拳を押し出した。相手は炎の打撃を刃で受け止める。

 

 彼らは互いの身体を投げ出すようにして離れ、距離をとった。

 

 イヴナは外壁に飛び乗った。そして両手を後ろに下げてじっと構える。相手の姿を見定めると、女は黒い戦士めがけて飛び出した。

 

 それとほぼ同時に、黒い戦士も相手に向かって直線上に飛び出した。宙で前方向に3度回転。最後の回転と同時に右脚を前へ伸ばす。炎に包まれた足の装甲を、敵の方角に向けた。

 

 宙を貫くふたつの影の跡に残る、薄紫と紅色の筋。それらが一点で繋がったと同時に、凄まじい爆炎が広がった。街中に猛烈な爆撃音が轟いた。 

 

 ふたつの影は、爆炎の中から飛び出る。炎のハルガは滑らかに地面に着地した。

 

 彼の数メートル先で呻き声があがった。イヴナは地面に伏していた。

 

 そのとき、バイクのエンジン音が響いてきた。それは次第に大きくなり、ルイの隣で止まった。

 

 白いバイクの到着とほぼ同時刻、太陽が西の地平線に沈み込んだ。

 

「倒したの? 」

 

 さくらは黒いハルガに向かって尋ねた。

 

「、、、いや、まだだ」

 

 仮面の青年はそう言った。ちょうどそのとき、暗闇の中で地面に寝ていた影がむっくりと起き上がった。暗がりの中で、鋭く光る眼がこちらを見つめていた。

 

「あーあ、疲れた。」

 

 イヴナは生温い口調でそう言った。これまで機械のように無表情な様子しか目にしなかったさくらは、相手の態度にしごく驚いた。

 

 イヴナの赤い瞳は、上へ飛び上がった。ルイは上空に顔を向けて身構えたが、女が再び帰ってくることはなかった。

 

「なんなの、あの人」とさくらが口を開いた。「まるで別人みたいだったわ」

 

 彼女がそう尋ねると、視界の端が明るくなった。振り向くと、隣に立つ青年の身体を紅い炎が取り巻いていた。それから炎は徐々に弱まっていき、ルイの素顔があらわになった。

 

「あいつは夜になると性格が変わるんだ。」

 

 人間に戻ったルイが、そう答えた。

 

「それと同時に、より凶暴になる。さっきはまだ太陽が沈んでないうちに体力を削ったからなんとかなったけど、戦い始めるときに日が沈んでたら、、、」

 

 そこでルイは言葉を止めた。

 

「沈んでたら、何? 」

 

 

 しばらくした後に、ルイは口を開いた。

 

「獣だ。」

 

 と彼は言った。

 

「あいつは獣みたいになる。」

 

 さくらは彼の言葉を聞いて思わず笑いそうになった。が、ルイはいつまでも真面目くさった顔をしている。それがさくらの背中をぞっとさせた。

 

 そのとき、彼らの背中側から風が吹いた。振り向くと、蒼い装甲がふたりの方へ近づいた。

 

「イヴナは」

 

 と、蒼い仮面は尋ねた。

 

「逃げられた」

 

「そうか」と風の戦士は答えた。「こっちもだ」

 

 ロウは続けて言った。

 

「アイゼ、、、あいつもベロアグアなのか」

 

 風の戦士はさくらの方を向いて尋ねた。彼は、どういう訳か変身を解こうとしなかった。

 

「うん」

 

 とさくらは答えた。それからふと思いついて、慌てて言い直した。

 

「いや、それは知らないわ。だって組織の連中がベロアグアと呼ばれる種族だってことを知らなかったんだもの」

 

 蒼い仮面は無言。

 

「ただ、ベロアグアたちに肩入れしてるのは間違いないわね」

 

 うぅん、と彼女の隣に立つルイは唸った。

 

「元々存在していたベロアグアが今になって出てきたのか、それとも俺たちが戦ってない半年の間に新たなベロアグアが誕生したのか」

 

「そんなことってあるの」

 

 と、さくらはルイの言葉に疑問を呈した。

 

「ああ、考えられなくはない」とルイは応じた。「オルタグアの未来もベロアグアの未来も、この時代から派生された可能性の一部。俺たちは、ひとつの可能性でしかない未来に生きる、不確定な存在だからな。生まれる時も、消える時も突然だ。」

 

「消える、、、」

 

 さくらは怯えた声でそう囁いた。その不安げな瞳はルイの横顔を見つめる。

 

「急にいなくなるの? 」

 

「そうなるかもってだけだよ、心配するな」

 

 ルイはさくらを安心させるような笑みを浮かべてみせた。

 

「急に消えるようなことが起こってたら、俺たちの戦いはとっくに終わってるだろうしな。終わってないってことは、消えないってことだ」

 

「そっか、」

 

 とさくらは安堵の息をもらした。

 

「そうよね、そんな簡単に消えたりしないわよね」

 

「ああ」

 

 ふたりがこのような会話をしている最中、風のハルガはただ黙ってふたりのそばに颯爽と立っていた。

 

「ねえ、人間の姿に戻らないの?」

 

 さくらは、戦士の装甲を身に纏ったままの青年に対して、そう尋ねた。仮面の中のロウは、しばらく黙ったままだったが、ふいに口を開いた。

 

「俺にはバイクがないんだよ」

 

 青年はそう言った。それを聞いたふたりは、ロウがマシンの代わりに風に乗ってアジトへ戻るということを理解した。

 

「あ、そっか」

 

 とさくらは頷いた。

 

「帰るか」

 

 ルイがそう言って、ふたりは白いバイクに向かった。

 

「俺のバイク、置いてきちゃったな」

「もう、仕方ないわね。どっちが運転する? 」

「さくらに任せる」

「じゃあ私が後ろね」

 

 さくらとルイは、このような、そしてこれに類した会話をしていた。ふたりの様子を眺めていた風の青年は、ひっそりと付け足すように囁く。

 

「、、、だから、俺はライダーじゃねえ」

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「イヴナはどうした」

 

 黒い部屋に足を踏み入れた金髪の女に、カイラはそう尋ねた。

 

「一人でどこかへ消えた」

 

 マスクを外したアイゼがきっぱりと答えると、男はそうか、と頷いた。

 

「元々単独行動を好む性根だからね、仕方ないさ」

 

 カイラの返事を聞くと、ブロンドの女はそれっきりで部屋から立ち去ろうとした。

 

「いつまで続ける気なんだ」

 

 女の足は、その言葉に引かれるようにして留まった。アイゼは男に背を向けたまま、黙りこくっていた。青い眼は哀愁の色を放っているようだった。

 

「いや、なんでもないさ。余計なことを言ったね」

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「そういえばさ」とさくらは口を開く。

 

「イヴナって人、執拗にルイばかり狙ってるように見えたんだけど、過去になにかあったの」

 

 さくらとルイ、それにロウの3人は、今日もカイラに与えられた地下アジトに集う。

 

 ルイは彼女の問いかけの答えを捻りだそうとして唸った。が、見つからなかった。

 

「戦うのが好きなだけじゃないかな」

 

 ルイは不確かな口調でそう言った。そのとき、地下室の壁に寄りかかったロウが口を開いた。

 

「あいつはたぶん、俺たちの中でルイのことを一番憎んでる」

 

「どうして? 」

 

 とさくらは尋ねた。

 

「炎のベルトは、元々イヴナが手に入れたものらしい」

 

「えっ」

 

 ルイは驚嘆の声を漏らした。最初から自分の身に現れたものだと思っていたからである。

 

「だがお前たちも知っての通り、ベルトを使える者は運命で定められている。だから、炎のベルトはすぐにイヴナの元を離れ、ルイの身体に宿ったんだ」

 

「そんなことが」

 

 さくらは言った。ルイも彼女と同様に、自分のベルトが辿った過去に驚いていた。

 

「なんでロウは知ってるんだ」

 

 ルイがそう尋ねると、意外にもすぐに返事が返ってきた。

 

「テイラから教えられた。俺が知ってることは、大体奴からの受け売りだ」

 

「一体誰なんだろう、テイラって人。神様なの? 」

 

 さくらの言葉に、ロウは声をたてて笑った。いつもの彼とは違う態度に、彼女はいくらか不審を抱いた。

 

「まさに、神かなにかだ。俺たちが知りようもないことを知ってるし、姿も現さない」

 

 ふぅん、とさくらは相槌を打った。

 

「そもそも、ふたりはどうやってベルトを手に入れたの」

 

 彼女の疑問に、ルイが答える。

 

「さくらが初めて俺の変身を見たときと同じかんじだったよ。戦ってるさなかに突然、ベルトがどこかからやってきて、、、その後、ハルガの姿に変わってたっけ」

 

―お前に不死の力を与えよう―

 

「ふぅん、意外とシンプルなのね」

 

「ああ、ロウは何か覚えてるか?」

 

―お前が払う代償はたったひとつ―

 

「ロウ? 」

 

 名前を呼ばれた青年は、はっと顔を上げた。ふたつの顔が、こちらを見つめていた。

 

「ああ、そうだな。俺もそんな感じだった」

 

 ロウの咄嗟の返事を聞いて、さくらは訝しげな表情を浮かべながらも再び口を開いた。

 

「でも、運命で決められてるっていうのが、ピンと来ないわよね」

 

「まあ要するに、誰が使うものかは最初から決まってたってことだよな」

 

「この話はやめにしよう」とロウが割って入った。

 

「そんなことを喋っている間に、街は襲われてる」

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「ほんとにあれを使い続けたら、炎のハルガはいつか倒れるんすか? 」

 

 疑心のこもった顔と声色で、赤い髪の若い男は言った。彼の前では、灰色のスーツを着た男が、大小様々な大きさのモニターに向かっていた。黒い画面に、白と緑のアルファベットが細かく立ち並んでいた。

 

「ああ」

 

 両手をキーボードの上でせわしなく滑らせながら、カイラは応じた。

 

「パルマナカルマは、倒したロボットの内部に凝縮されている炎の力、カルマエナジーを吸収する特性を持つ。それは装置の内部に自動で蓄積されてゆく」

 

 そこまで言うと、カイラはキーを打つ手を止める。ゆっくりと顔を上げたあと、後ろに立つキキスの方を振り返った。

 

「そして、いずれ限界が来る」

 

「限界突破したら、どうなるんすか? 」

 

 若い男はいささかの好奇心と期待の色に染まって尋ねた。

 

「使用者の体内に、濃縮された炎の力が一斉に逆流する。そうなってしまえば、、、」

 

「なるほど、丸っ焦げになっちまうってことっすね! 」

 

 キキスは突然、明るい口調でそう言い放った。

 

「カイラさんは相変わらず天才っすね! 」

 

 そう言葉を残して、赤い髪の男はガラスのドアに向かい、カイラの研究室を出ていった。

 

 キキスが退出した後、カイラはひとり囁いた。

 

「君の単純さのほうが、よほど天才的だ」

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 街の一角で巨大な影が蠢く。周りを飛び交う小さな影と奮闘しているようだ。

 

 ふいに、暴れていた巨大兵器の動きがピタリと静止する。そのとたんに、金属の装甲は足元から順に粉々に崩れていった。街中に轟音が響き渡った。

 

 破壊された巨大ロボットの影から、3つの影が飛び出した。闘いを終えた戦士たちは、路地中央に集まった。

 

「それにしても、人気のない街ばかりだな、奴らが現れるのは」

 

 と、地面に舞い降りた風の戦士が言った。

 

「ああ」と炎のハルガは返した。「偶然にしちゃできすぎてる。まるで故意に人のいないところを狙ってるみたいだ」

 

「でも、なんのために」

 

 彼の傍らに立っていたさくらがそう尋ねる。ルイは答えが分からなかったので、ただ首を傾げた。

 

「まさか、私たちが来るよりも先に、街の人がみんなやられちゃったなんてことはないよね」

 

 さくらが放った言葉の色に、彼女を含めた3人の戦士たちは背筋が凍るような感覚に襲われた。

 

「まさか、、、」

 

 炎の戦士は震える声で言った。

 

「それはあり得ない。」

 

 恐れをなすさくらとルイに抵抗するように、風の戦士が強く言い放った。

 

「奴らがどれほどの戦力を備えていたとしても、一人残らず消え去るなんて、そうすぐには成し得ない」

 

「それならいいけど」

 

 と、さくらはまだ不安げな声色で応じた。

 

「俺達の仲間が住民をシャングリラに送った街、ってことはないか?」

 

 彼の発言にほかのふたりは振り向いた。

 

「なにかの理由があって、巨大兵器たちがその街に向かってるとか」

 

「あり得るな」

 

 と風のハルガは言った。

 

「俺もすべてを把握してるわけじゃない。あいつらに聞いてみるしか」

 

「そういえば、今どこにいるの、オルタグアたち。まだ生き残ってるんでしょ? 」

 

 さくらがそう言ったちょうどそのとき、翼のはためく音が聞こえてきた。空を見上げると、1体の鳥の影がこちらに近づいていた。

 

 鳥型のオルタグアは、ルイの前に降り立った。彼の傍らにいたさくらは少し身構える。かつて人々を襲う怪物だと信じて戦っていた相手を、仲間として受け入れることは簡単ではなかった。

 

「大丈夫、なのよね」

 

「ああ」

 

 と風のハルガが返事をした。

 

「リリィか! 」

 

 オルタグアと向かい合ったルイは、突然歓声をあげた。

 

「知り合い? 」

 

「ああ、元の時代では、よく一緒に遊んでた」

 

 その後、翼を生やしたオルタグアはルイの前に立ったまま、首を傾げたり片脚を上げたりしている。ルイは怪物の前で無言で立っていた。

 

 さくらが彼の様子を不審に思ったそのとき、

ふいにルイが口を開いた。

 

「トラロックから免れてこの時代に残った仲間たちは、手分けして巨大兵器が湧いてくる在り処を探してるらしい」

 

「えっ」

 

 とさくらは驚きの声を漏らした。だがそれは青年の言葉に対してではなかった。

 

「今喋ってたの!? 」

 

「俺たちオルタグアは、テレパシーのようなもので意思疎通が出来るんだ。」

 

 旧友と久しぶりの再会を果たしたルイの代わりに、ロウが話した。

 

「怪物の姿でこの時代にいるやつは、人間のようには喋れないからな。元の時代では、普通に話すが」

 

「そうなのね、、、びっくりした」

 

 さくらがふっと息をついていると、ルイが再び口を開いた。

 

「戦闘能力の高い仲間たちは、俺たちとは別の場所で兵器と戦ってるらしい。だが、今この時代に残ってる仲間は50体ぐらいだ。直接戦力は俺たちで、、、」

 

 そのとき、灰色の翼がはためいた。ルイは、どうしたんだ? と問いかけるようにオルタグアを見つめた。

 

 鳥のオルタグアは、街の一角に向けて鋭い視線を向けていた。一同がその先に目をやると、そこには黒い影が映った。頭の方は黄色く光っていた。

 

「アイゼか! 」

 

 ルイはそう言って身構えた。それから鳥のオルタグアの方を向いて、何度か首を動かした。ルイの合図を受けた彼の旧友は、翼をはためかせて上空へ飛び立った。

 

 ルイは仲間が退避したのを確かめると、敵の方角を見据えた。そして右拳に十分な力を蓄えると、前方へ大きく跳躍した。

 

 黒い拳がアイゼの方へ迫った。そのときだった。

 

「よせ! 」

 

 風のハルガの怒鳴る声が聞こえた。その直後に、ルイの突撃は蒼穹の風で妨げられていた。

 

 






お読みいただきありがとうございます!
ここで、ちょこっと裏話。

CHAPTER 2 最初のお話、EPISODE 12 のサブタイトルは漆黒の拳。
続くEPISODE 13 は薄紫の刃。

、、、と来て、今回EPISODE 14 のサブタイトルは『黄金の瞳』

我ながらグッジョブ!(最近K.Kオーグ推しになりつつある。)
しばらくは「(色を表す二文字)の 〇」で続けようかなと思います。

なお、今回のお話を読んでくださった方はお分かりかと思いますが、
「黄金の瞳」というのは、瞳の色が黄金なのではなく、
黄金(の髪の女)の瞳、という意味を込めました。瞳の色はきれいな青色ですね。

今後の彼女が起こす行動や明かされる真実、それに対するキャラクターたちの反応を、楽しみにしていただければと思います。
今後とも『仮面ライダーハルガ』をよろしくお願いしますm(_ _)m

次回、EPISODE 15 に御期待下さい。

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