【完結】仮面ライダーハルガ   作:じゅんけん

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 仮面ライダーハルガ、前回の3つの出来事!

1つ!炎のベルトをルイよりも前に手にしていたとされるイヴナは、黒いハルガとなったルイと激突。彼女は一命を取り留め、ルイたちの前から姿を消した。

2つ!キキスはカイラの口から、黒いハルガは巨大兵器を倒し続けると、いずれその身を滅ぼされると知る。一方でルイたちは、まだ現代に残っているオルタグアたちが、巨大ロボット殲滅のために戦っていることを知る。

そして3つ!再び彼らの前に現れたアイゼに、ルイが攻撃を仕掛ける。しかしどういうわけか、風のハルガことロウは蒼穹の風を引き起こし、ルイの攻撃を妨害したのだった!




EPISODE 15 蒼天の背

 

 

 黒いハルガの突撃は、風のハルガの激風によって妨げられた。不意を突かれたルイは蒼穹の渦に巻き込まれ、そのまま宙へ放り出された。

 

 ルイはアスファルトの地面に転がった。身体に痛みは残らなかったが、彼の心は揺らぎ始めていた。

 

「ロウ、、、」

 

 ルイは、前方に立つ風のハルガにいぶかる視線を向けた。蒼い戦士はこちらに背を向け、何も言わずにうつむいていた。なびくブロンドヘアは、知らぬ間に大気の中へ消えていた。

 

「なにやってんの!? 」

 

 ルイのそばに駆けつけたさくらが声をあげた。ロウははっとしたように顔をあげ、後ろを振り返る。彼は自分が投げ飛ばした仲間の姿を目にすると、途端に自分が成したことをはっきりと理解した。

 

「、、、すまない」

 

 彼は凍えるような声色で、己の過ちを詫びる。

 

「どうして邪魔をしたんだ」

 

 ルイはできる限り声を荒らげないように、胸中の焦りを堪えながら問いかけた。だが風の戦士は己の心の在り処が分かっていなかった。彼は両手で頭を抱え、膝を地面についてしまった。

 

「すまない、、、」

 

 青年は苦悩に満ちた言葉を吐いた。肩を落としてうずくまっているロウに向かって、ルイはそっとした足取りで近づいた。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「巨大兵器が襲った街のこと、結局分からずじまいだったな」

 

 地下アジトに帰ってきたルイは、ソファに座るや否や口を開いた。彼の言葉に、デスクに腰掛けているさくらが応じる。

 

「もう一度仲間と話せないの? 」

 

「うーん」と彼は唸った。「どこにいるのか聞くのを忘れたな」

 

「テレパシーみたいなので呼べないの? 」

 

 と、彼女は尋ねながらルイの隣に座った。

 

「それで話すには、相手の近くに居ないとだめなんだ」

 

「そうなの? 」

 

「ああ、口で喋る時と同じくらいの距離。100mぐらいまでなら何とかなるけど、もっと離れてたり、そもそもどこにいるか分からなかったら会話出来ないんだ」

 

「じゃあ仕方ないわね」

 

 さくらは背中を倒し、ソファのクッションに深く沈みこんだ。戦いのさなかに身体中に溜まった垢を吐き出すように、ふぅっとため息をついた。

 

「向こうが俺たちを見つけてくれるのを、待つしかないな」

 

「そっか」

 

 とさくらは答えた。それから顔を右に傾ける。彼女の視線の先には、青い服を着た青年が壁に寄りかかって立っていた。

 

「ねぇ、そろそろ教えてくれてもいいんじゃない」

 

 彼女がそう言うと、ロウはゆっくりと顔をあげた。

 

「どうしてあのとき、アイゼを庇ったの」

 

 無言。

 

「なにか理由があったなら言ってくれないと、これからも戦い続けるなら、なおさら」

 

「いや」

 

 と、ロウは重々しい口を開けて言った。

 

「なんでもない。風を出す方向を定め違えただけだ、すまない」

 

 返事を聞いたさくらは、ひとつため息をついて「そう」とだけ答えた。それから腑に落ちないような顔つきをして、ロウの傍から離れる。そのやり取りを聞いていたルイは、口を開いた。

 

「話したくないなら、無理にとは言わない。けど、」

 

 ルイはロウの青い瞳に目を合わせた。風の青年の目の奥には、小さな波が行ったり来たりしていた。

 

「いつかは話してくれよ」

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 太陽が南の空に昇った頃。この日も、街の建物の中を幾つもの巨大な影が進行していた。だがいつもと違うのは、人間の叫び声が街の至るところから聞こえてくることだ。

 

「人がいるわ! 」

 

 巨大兵器の棍棒のごとき腕から逃げ惑う人々を目にしたさくらが、そう言った。

 

「戦いは俺とさくらが引き受ける。ロウはあの人たちの救出を頼む! 」

 

「わかった」

 

 ロウは炎のハルガの提案に頷いた。瞬く間に蒼穹の渦が彼の身体を包み込む。風の戦士は街の脅威から逃れる人々の元へ向かった。

 

 1体の巨大ロボットが、逃げ遅れた人々の方角に向かって突き進んでいた。それを確認した茶髪の戦士は、左腕に構えていた鎌を右手で取り外す。右半身を後ろへ逸らして大きく振りかぶった後、勢いよく前へ放り出した。さくらの手から離れた鎌は宙を貫き、巨大な装甲に激突した。

 

 背後から斬撃を受けた巨大兵器は足の動きを止め、ゆっくりと後ろを振り向く。次の瞬間、ロボットの頭部視覚カメラに映ったのは、凄まじき漆黒の拳だった。

 

 ハルガの一撃を受けた巨大兵器は、数歩後ろへ下がったあと、仰向けに地面に倒れ込んだ。アスファルトの上を、衝撃の轟音と亀裂が走り伝った。

 

 地面に横たわる巨体の前に、炎のハルガは着地した。

 

 顔を上げたルイは、前方の空を眺めた。空には蒼い点が浮かんでいる。蒼い光は弧を描くようにしてルイの元へ迫り、彼の目の前に降り立った。

 

「街の人の避難は終わった」

 

 ロウは報告する。

 

「速いな」

 

「鳥型の奴らが引き受けてくれた」

 

「なるほど」

 

 とルイは返事をした。視線を上空へ向けると、灰色の翼が人影を連れてはためいていた。

 

「、、、またシャングリラに送るのか」

 

「いや、それはないだろう」とロウは答えた。「今残っている数だけじゃ、人間を移送させるのに時間がかかりすぎる。テイラにも言われたしな」

 

 それから蒼い仮面はふぅと息を吐いた。

 

「それと、お前が言ってた通り、兵器が襲った街の中には、シャングリラに送られた人間たちが住んでた場所もあるみたいだ。」

 

「もあるってことは、全部じゃないのか。ここもそうだけど、、、」

 

 ちょうどそのとき、ブースターを展開したさくらがビルの屋上から颯爽と降り立った。装具が折りたたまれると、地面に立つ2人のハルガの方に向かった。

 

 それを見たロウは、焦ったように両腕を動かして咄嗟に蒼穹の渦を創り出した。そしてあろうことか、宙を舞うさくらの方に、その渦を差し向けたのである。

 

 風に呑まれたさくらは小さな悲鳴をあげて、渦の動きに合わせて回り出した。

 

「なにやってんだ! 」

 

 ルイは叫ぶ。ルイに咎められた風のハルガは、やや俯き気味だった顔をはっと上げた。そして両腕の力を緩めた。

 

 渦巻きから解放されたさくらは、しおれた様子で地面に向かって落下した。炎のハルガはすぐさま彼女の方へ飛んでいき、さくらが地面と衝突する寸前にその間に入り込んだ。

 

「大丈夫か!? 」

 

 さくらを抱きかかえたルイは、焦った口調で尋ねた。

 

「うん、、、大丈夫」

 

 彼女は弱々しく答えた。ルイは身体を震わせながら蒼い戦士の方に向き直った。

 

「なんのつもりだ! 」

 

 彼は怒鳴った。怒鳴ってから、相手の身体がいつになく粟立っているのを見て、思わず口をつぐんだ。

 

「分からない、見間違えた、、、」

 

「見間違えたって、、、」

 

 ルイはいよいよ相手のことを信じられなくなった。

 

「お前、やっぱり変だぞ。あのときから」

 

 ルイは風のハルガに向かって言葉を放つ。ロウはうなだれたような姿勢をして、口を噤んでいた。

 

「アイゼと戦った時に、なにかあったのか」

 

 相手はただ黙って口元を震わせていた。

 

「なんとか言えよ。もしかしてお前、あの女にキルアの面影を重ねて」

 

「黙れ! 」

 

 突然、慟哭のような怒鳴り声が青年の口から飛び出した。ロウの叫びは憤りを感じさせるだけでなく、己の言動を恐れているかのようだった。

 

 ちょうどそのとき、機械質の甲高い鳴き声がこだました。心のすれ違う戦士たちの上空を、黒い鳥のメカが旋回している。

 

「先に行っててくれ、、、」

 

 蒼い戦士はルイの方に見向きもせず、そう伝えた。彼の両肩は風もないのに震えていた。

 

「分かった」

 

 ルイは返事をした。それから、不安げな顔をしてこちらを見つめているさくらの方に向き直った。

 

「立てるか」

 

 炎のハルガはさくらの背中を腕で支えながら、上体を起こさせた。彼女の動きはやや鈍くなっていたが、外傷はひとつも見当たらなかった。

 

「大丈夫みたい」

 

「そうか」

 

 ルイはほっと一息ついた。

 

「行こう、フェルルが待ってる」

 

 彼は上空を漂う黒い鳥の機械に視線を送りながら言った。

 

「でも、、、」 

 

 さくらは不安そうな顔で、風のハルガと炎のハルガを代わる代わる見つめた。

 

「行こう。あいつなら立ち直れるさ」

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「キルアって、前に話してた、オルタグアの仲間? 」

 

 夕方の道をバイクで走行するふたり。常人離れした才力を持つ彼らは、マシンが噴き出すエンジン音に囲まれながらも、相手の声を聴き分けられるのだ。

 

「ああそうだ」

 

 とルイは返した。話しながら、彼女の身体が元通りの活力を帯びているのを確認し、密かにほっとしていた。

 

 彼は目指している方角を見据え、口を開いた。

 

「そしてロウの恋人だった」

 

「え、、、」

 

 さくらは戸惑いの混じった声をあげる。ルイはバイクのハンドルをぎゅっと握りしめた。

 

「キルアがいなくなって、あいつが一番つらい思いをしてる。あいつが最近弱くなってるとすれば、そのせいだ。」

 

「そんなことが、、、」

 

 彼女は今までの自分の風の青年に対する態度を思い返し、いくぶんか申し訳ない気持ちが溢れ出た。

 

「アイゼに、似てるの? そのキルアって人」

 

 さくらが問いかけると、ルイは口元を歪ませながら、首を横斜めに傾ける。

 

「いや、なにしろアイゼのやつ、顔をほとんど隠してるからなあ。似てるかどうかと言われても」

 

「そっか」

 

「でも、同じブロンドヘアだから、ロウにはきっと、、、」

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「何をしているのだ」

 

 アスファルトの上に佇んでいたロウの耳に、何者かの声が届いた。青年が顔をあげる。目の前には、白い布で覆われ、人の形をしたものが立っていた。

 

「誰だ」

 

「お前たちを勝利へと導く者だ」

 

 その荘厳で怪しげな声色には、聞き覚えがあった。

 

「まさか、テイラなのか」

 

 目の前の人物はロウの言葉には答えず、頭と思わしき部位をこちらに向けた。

 

「お前が想い悩んでいるのは、あのアイゼという女か」

 

「あんたに何が分かる」

 

 ロウは相手を打ち付けるような口調で言った。

 

「たしかに、お前の考えていることなど理解できまい。だが、悩み続ける苦しみから救ってやることはできる」

 

 青年は白い布の塊に、敵対心を突き出すような鋭い眼差しを向けていた。相手の身体は、ロウの周りを物音も立てずにゆったりと動き回っていた。

 

「アイゼと名乗る者、あれはベロアグアではない」

 

「だから何だ」

 

 ロウは、大して驚いてもいないように素っ気なく応じた。白い布の塊は、彼の反応が意外だったようで、ふいに青年の方へ視線を送った。

 

「ほう、その様子だと、薄々気づいていたようだな」

 

 テイラがそう言うと、青年は緩やかに目を泳がせた。

 

「ならば、何を迷っている」

 

「奴がベロアグアでないとするなら、」とロウはやや荒々しい声を発した。「あいつは一体何者なんだ」

 

 ロウの瞳は相手を鋭く見つめていた。それまで青年の周りをゆっくりと移動していた白い布は、彼の目の前にとどまった。それから数秒ほど経った後に、布の隙間から質問の答えが出された。

 

「お前が最も愛する女だ」

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 風の戦士がオルタグアの導き手と対面した場所から、北東へ13マイルほど離れた地点。そこには自然と家屋が入り交じり、平穏な暮らしが送られていたであろう街並みが広がっていた。

 

 住宅街で、装甲で覆われた巨体を持つ兵器が黒き炎の戦士と交戦する。火花が舞い散る中で、住民たちは安全な場所を求めて走りまわる。

 

 避難する人々の集団は、街の中央に位置する正方形の広場にたどり着いた。彼らの多くはほっと安堵の息をつく。

 

 が、それもつかの間。鉄槌のごとく巨大な装甲が振り下ろされる。広場の噴水が粉々に砕かれ、水が噴き出した。

 

 その場で腰を抜かす者、来た道を戻ろうとする者、必死に他の逃げ道を探そうとする者で、その場は混乱に陥っていた。

 

「こっちよ! 」 

 

 女の声が叫ぶ。意識のある人々は、その声の発せられた方角へ一目散に駆ける。広場から住宅街へと続く道では、黒い銃器を抱えた茶髪の女が、逃げ惑う人々を誘導する。

 

 だがその先には、別の兵器の装甲が振り下ろされた。轟く衝撃音と風圧に恐れをなす人々。彼らには逃げ場が残されていなかった。

 

 そのとき、彼らの頭上で強大な赤色の光が放たれた。風の流れが変わったかと思うと、ロボット兵器と同じくらい大きな灰色の翼が彼らの前へ舞い降りる。巨大な怪物の羽ばたきが生み出す凄まじい風は、迫りくる巨大兵器を押し返した。

 

 目の前に現れた新たなる脅威に、人々の多くは悲鳴をあげた。

 

「大丈夫、彼は敵じゃないわ! 」

 

 街の住人の元へ駆けつけたさくらが諭す。

 

「あの鳥の背中に乗って! 」

 

 彼女は人々に避難を促した。ところが、彼らの多くは巨大なオルタグアを安全な生物とは認識しなかった。

 

「怪物だ! 」

 

「あれのどこが大丈夫なんだ! 」

 

 彼らは口々に怪物への恐怖を吐き出す。予期していなかった住民たちの態度に、さくらはいささか困惑した。

 

 一刻も早く皆を街から避難させなくてはならない。だがどうすればこの状況を理解してもらえるのか。

 

「あれが怖いなら乗らなければいい」

 

 突然、男の声があがる。混沌に陥っていた人々は皆、その声のした方を振り向く。

 

 黒いスーツに身を纏った男が、鋭い目線でオルタグアの身体を見据えていた。左の頬に赤い傷跡が残っていることの他には、取り立てて特徴のない男であった。それが理由で、人々は男に反感を抱いた。

 

「なんなんだあんたは! 」

 

「この街の人間じゃないだろう! 」

 

 彼らは口を揃えて男に反抗を示す。その態度に、傷の男はふっと口元を歪ませる。

 

「弱者が無理をする必要は無い。出来ないことをやろうとしても、見苦しいだけだからな」

 

 男の言葉に、人々は口をつぐむ。彼らと同じ場にいるさくらも、男の発言に口をあんぐりと開けていた。

 

「そしてあの兵器に踏み潰されたいという者も、ここに残ればいい。」

 

 そう言うと、男は巨大な翼の怪物に向かって歩き出した。オルタグアは首を前に差し出し、顔を地面につける。

 

 黒いスーツの男はその首の上に飛び乗った。それから2本の脚で立ち上がり、羽毛の生えた背中へ渡った。

 

 男の行動を見た人々は、どよめいた。だがそのうちの何人かは男の言った言葉に共感を示し、同じようにオルタグアの上に飛び乗った。その知人と見られる者共は、不安げな顔を見せながらも渋々あとに続く。

 

 黒いスーツの男は、地面に立ちすくんだままの住人たちを見下ろしていた。

 

「お前達は死ぬ覚悟が出来てるんだな」

 

 残された人々は、取るべき行動の選択に迷っていた。目の前の巨大な怪物を信じるだけの勇気が、彼らには足りないのかもしれない。

 

 そのとき、突如現れた巨大兵器の腕が、彼らが立つ道路の脇に並ぶ建物に突撃した。4階建てのビルは上から押し潰され、がらくたとなって地面に転がった。砂埃を浴びた人々は高い声で悲鳴をあげた。

 

「早く! 背中に乗って! 」

 

 異常な事態にとうとう冷静さを失った人々は、生き残るための本能に従って身体を動かした。オルタグアの首に這い上がり、背中の羽毛にしがみついた。傷のついた男はふっと口元を歪ませた。

 

 その場にいた街の人々が一人残らずオルタグアの背中に乗りかかった。すると、翼の怪物は上空に向かって羽ばたいた。

 

 オルタグアが空の彼方へ消えていくのを、さくらは見届けた。

 

「変わった人間もいるのね」

 

 そう呟くと、彼女は巨大兵器に立ち向かうべく、回れ右をしようとした。

 

 そのとき、上空から何者かの影がざっと降り落ちる。左の頬に傷跡のついた、黒いスーツの男がさくらの目の前に立っていた。

 

「あなた! 」

 

 さくらは上空を見上げた。生身の人間が高所から飛び降り、いとも容易く着地したことが信じられなかったのである。

 

「あれが、お前たちのやり方か」

 

「は? 」

 

 さくらは相手の異様さに呆れるばかりであった。

 

 突然、男は黒いスーツをひらりと開け、内ポケットから銃器を取り出した。上空を強く見据える視線の先に、黒い銃口を構える。男が引き金を引くと同時に、凄まじい音が響き渡った。

 

 さくらは、何が起こったのかを捉えることが出来なかった。彼女が状況を理解したのは、背後から巨大ロボットの倒れる音が轟いたときだった。

 

 衝撃音が耳に入った瞬間、彼女は後ろを振り返った。地面に伏した巨大ロボットの背中から、黒い煙幕がたっていた。

 

 彼女は驚きの目で男の方に向き直った。だが男の影は何処かへ消えていた。

 

 しばらくの間、さくらは茫然として立ちすくんでいたが、ふいに我に返り、ひとりで戦う仲間の元へと飛び立った。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「例の新兵器、試作品にしてはかなりの出来です。」

 

 地下道を駆け抜ける黒いスーツの男は、右耳に取り付けたマイクロフォンに向かって言った。男は右手に銃器を握ったままだった。

 

「未来人が創ったとされる自律型歩行兵器、あれを一撃で機能停止させました。」

 

「ご苦労。」

 

 通信相手は短い返事をした。

 

「しかし、代償も大きいですね。」

 

 そう言いながら、男は銃を握っている手をゆっくりと開いた。男の手の平には、赤黒い血が滲んでいた。

 

「人間が扱うにはやはり困難が残るようです。保留していた開発案を、進めたほうがよろしいかと。」

 

「ふむ。」と通信先の声が答えた。「君がそう言うのならば、そうかもしれないね。」

 

 男が進む地下道の先に階段が現れ、そこに地上の光が射し込んでいた。男は手を頭にやって通信を切ろうとしたが、相手は再び話し出した。

 

「しかし、大量生産型の戦闘兵器とはいえ、我々の手の届くところにあるという意味では、そんなに遠い未来ではないのかも知れないね、彼らの故郷は。」

 

 

~~~~~~~~~~

 

 

 その頃、炎の戦士ことルイは、迫り来る巨大兵器たちと奮闘していた。

 

 前方から振り下ろされる巨大な握り拳。ルイは瞬時に斜め横へ飛び上がって攻撃をかわす。相手の視界に獄炎が映り込むと、その頭部は粉々に砕かれていた。

 

 その間、戦士の背後で振りかざされる腕部装甲。凄まじい殴打は戦士の小さな身体へと迫り、衝突する。巨大兵器はルイもろとも既に倒されたロボットの装甲を押し込む。黒いハルガの身体は2体の装甲に挟まれ、押し潰された。

 

 だが次の瞬間、とてつもなく大きな力で弾き返されるロボットの腕。もう片方の装甲にできた窪みから飛び出した黒い影は、勢いを緩めずに目の前の装甲に突撃する。

 

 炎の拳が厚い装甲を貫通。巨体の中心部を射抜かれた兵器は、赤い爆炎と共に轟音を響かせた。

 

 2体の兵器を破壊した戦士は、高い建造物の上に飛び乗った。そうして周りを見渡そうとしたとき、黒い戦士目掛けて一気に攻め入る3つの長い腕。

 

 ルイは瞬時に下半身に炎をたぎらせ、真上へ飛び上がる。すると彼を狙っていた装甲は斜め上へと方向を変える。3体の巨大兵器は決して標的を逃がさなかった。

 

 ハルガの上昇速度は相手の攻撃には敵わなかった。斜め上へ弾き飛ばされる戦士の身体。放物線を描いて宙を舞い、アスファルトの地面に転がった。

 

「ぐはっ」

 

 凄まじい衝撃に苦痛を感じたルイだったが、負けじと立ち上がる。そして相手の方角に顔を向けたとき、彼の視界は巨大な装甲の色で埋め尽くされていた。

 

 ハルガの身体は、間違いなく地面に叩きつけられるはずだった。

 

 キン、と金属の擦れる音がした。彼の目の前に迫っていた大きな拳は、腕の装甲から斬り落とされていた。

 

 視線を左に向けると、白い稲妻を帯びた鎌を手にした女が、茶色い髪をなびかせて立っていた。

 

 女の攻撃で、巨大兵器は体勢を大きく崩していた。ルイはすかさず相手の頭部に迫り、炎の殴打を見舞った。

 

 ルイはさくらの傍らに降り立った。残る2体の巨大兵器は瓦礫の中を突き進み、ふたりの戦士に接近してくる。

 

 ふたりは同時に斜め上へ飛び上がった。それぞれ2体の巨大兵器を挟むようにして向き合うと、稲妻の刃と獄炎の拳を振りかぶる。次の瞬間、金属質の装甲は二筋の光に射抜かれていた。

 

 ロボットの巨躯が轟音を鳴らしながら崩れ落ちる中、ふたりは地面に降り立った。着地したあと、後ろを振り返って破壊された街の風景を眺めた。

 

「行くわよ」とさくらは気を休める暇もなく言った。

 

「どこへ」

 

「フェルルがアイゼの居場所を見つけたわ」

 

 と彼女は答えた。そしてルイの方に向き直り、赤い瞳で彼を見つめた。

 

「今度こそ蹴りをつけるでしょ」

 

「、、、ああ」

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 赤と白の2台のバイクマシンは、時速300kmで目的地に向かっていた。マシンと一体となったさくらとルイは、高い志しのこもった瞳で前方を見据えていた。

 

 彼らの目指す先には、太陽に照らされて白く光る雪景色が広がっていた。冬の雪原の中に、青く光る一対の瞳があった。

 

 






お読みいただきありがとうございます!


前回に引き続き、今回のサブタイトルは『蒼天の背』。

"蒼穹"の背でも良かったのですが、EPISODE 5 『蒼穹の風』と似すぎてるので、急遽変更しました笑。

読み方は皆さんにお任せしますが、筆者としては ”そうてんのそむき” という読み方がしっくりきています。背くを無理やり名詞形にしたわけです。

さて、今回のお話ではEPISODE 12に登場した"左の頬に傷の残った男"と、その"通信相手"が再び出てきましたね。彼らは何者なのでしょうか、、、

今後とも『仮面ライダーハルガ』をよろしくお願いしますm(_ _)m
次回、EPISODE 16 に御期待下さい。

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