【完結】仮面ライダーハルガ   作:じゅんけん

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 仮面ライダーハルガ!前回の3つの出来事!

 1つ!21歳の青年、悠刻(ゆうこく)ルイは、正体不明の怪物、オルタグアによって家族を失う。

 2つ!ルイは、オルタグアと戦う女、さくらと出会う。

 そして3つ!ルイは、炎のベルトの力で炎の戦士に変身。怪物を撃破した!




EPISODE 2 覚悟

 

 

「おい!しっかりしろ!」

 

 ルイは、自分の足元で倒れているさくらに向かってよびかけた。彼女は意識を失っていた。

 

「病院に行かないと」

 

 そう言ってルイは立ち上がろうとした。

 

 そのとき、小鳥のメカが甲高い鳴き声でルイを呼んだ。メカは、ルイの頭上を浮遊していた。彼が気づいて見上げると、もう一度鳴き声を放って、さくらとルイがこの場所に来たときの方角へ飛んでいった。

 

 ルイは、ショッピングモールの入口付近に白いバイクが停められていたのを思い出した。

 

「バイクか!」

 

 ルイはさくらを背負って立ち上がった。そして急いでメカのあとを追った。彼の予想は的中し、メカが飛ぶ先には、さくらが乗っていた白いバイクがあった。

 

 彼はさくらの身をバイクの後部に乗せた。すると、空中を浮遊していた鳥のメカが舞い降りてきて、さくらの身体をシートベルトのようなもので固定した。

 

 ルイはバイクの座席にまたがり、さくらの頭を自分の背中に寄りかからせた。

 

 ルイはエンジンをかけた。それと同時に、鳥のメカは上へ舞い上がった。小さな機械は高速で空を飛び始めた。ルイは、メカにつづいてバイクを走らせた。

 

 鳥のメカを追って3分ほどたったころ、ルイとさくらは、大きな病棟をそなえた病院に到着した。

 

 そこは、5ヶ月前に彼が入院していた病院だった。ルイは、家族のことを思い出した。彼の脳内に、昨日の惨劇の記憶が蘇った。今、あの家はどうなっているのだろうか。もうあの家で4人で食卓を囲むことはないのだろうか。

 

 ルイが絶望の混沌に悩まされていると、甲高い鳴き声が彼の意識を助け出した。ルイは我に返った。

 

 彼は急いでバイクをおりた。それから、さくらの頭をそっと座席に寝かせてから、病院の入口に駆けこんだ。

 

 

~〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「検査の結果ですが」

 

 と、白衣の男は口を開いた。

 

 さくらの身体検査が終わったあと、ルイは別室に通された。彼と医師は椅子に座って、向かい合わせになっていた。

 

 その男は、冷淡な印象だった。決して人情がわからないようなわけではないが、ルイが知っている穏やかな雰囲気の先生とは、対照的な人物だった。

 

 男が話しはじめた。

 

「心肺機能がかなり衰弱しています。」

 

「え、、」

 

 ルイは思わず動揺の声をもらした。医師は説明を続けた。

 

「今すぐ生命に関わるほどではありませんが、治療、場合によっては手術を受ける必要があります。」

 

 ルイはつばを飲みこんだ。さくらとは昨日会ったばかりだが、彼女の身の危険が、彼にも重く感じられた。

 

「そうなった場合、身元保証人の同意が必要なのですが、、あなたはご家族の方ですか?」

 

「あっ、いえ。おれは、、」

 

 と言いかけて、ルイは自分とさくらとの関係をどう説明しようか迷った。

 

 だが、白衣の男はルイの返事を最後まで待たずに、口を開いた。

 

「そうですか。意識が戻るまで、もう少しかかるでしょう。」

 

 そう言うなり、男は立ち上がった。

 

「では」

 

 と言って、医師はそそくさと場を去った。

 

 ルイは、しばらくの間、ぼぅっとしていた。

 

 しばらくして、彼は部屋を出た。さくらが寝ている病室を探しながら、病棟の廊下を進んだ。

 

 ルイは、406と書かれた部屋の前で止まった。彼は病室のドアを開けた。

 

 白いベッドの中で、さくらがまぶたを閉じて寝ていた。彼女は、死んだようにきれいな顔をして、まっすぐ上を向いて寝ていた。

 

 彼は、さくらのベッドに近づいた。

 

 窓の外から、夕方の日差しが水平に差しこんでいた。ルイはオレンジ色の光を受けた。

 

 ルイは、今日自分の身に起こったことを思い出した。まだ身体の中に、ごうごうと沸き立つ炎の感触が残っていた。この燃えるように熱いかんじを、彼の身体は覚えているような気がするのだが、頭では全く思い出せない。

 

 突然、部屋の外から、悲鳴が聞こえた。ルイはドアの方にふり向いた。彼は、外の様子をたしかめようとしてドアに歩み寄った。

 

 すると、うしろからコツコツとガラスを叩く音がした。ふりかえると、窓の外に小鳥のメカがいた。

 

 2秒ほど考えたあと、ルイは悲鳴の正体を悟った。

 

「まさか、あいつらか!」

 

 メカは、下の方へ行った。それを見たルイは、406の部屋から飛び出して、病室が並ぶ廊下を突き当りまで走った。

 

 彼は病棟の階段を駆け下りて3階に着いた。ルイの目の前の廊下では、たくさんの人が倒れていた。ルイの脳裏に、昨日の悲惨な出来事がよぎった。が、彼は頭を振って、正気を取り戻した。

 

 ルイは、近くに倒れている男性に近づいた。

 

「大丈夫ですか?」

 

 と声をかけたが、返事はなかった。

 

 そのとき、彼の視界に灰色の影が映った。

 

 そいつの身体は、蛇のような鱗で覆われていた。その暗く濁った色合いと、溢れ漂う不気味さで、ルイの身体はぶるっと震えた。彼は、目の前の怪物は昨日さくらが話していたオルタグアだと思った。こいつが、人々を襲ったにちがいない。

 

 怪物はルイの方に近づいてきた。彼は、自分の肉体が熱くなるのを感じた。

 

 ルイは身体の奥底に力を込めて、炎を沸き立たせた。

 

 だが、次の瞬間、怪物は跡形もなく消えていた。病室のならんだ廊下が、しいんと静まり返っていた。

 

 ルイは唖然としていた。彼の身体はしばらく固まっていた。

 

 彼のうしろにある窓の外で、メカが浮遊していた。メカは、その小さな眼で、事件の有り様を捉えていた。

 

 

~~〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 4人の同志が、黒い壁の部屋に集っていた。その部屋には、大きな円形のテーブルと、スクリーンが置かれていた。座席に腰かけた6つの赤い眼と2つの青い眼が、スクリーンの画面を見ていた。

 

 大きな画面には、病棟の廊下で怪物が人々を襲う様子が映っていた。

 

「また人を襲ったっすね!」

 

 と、陽気な声があがった。声の主は若い顔つきの男で、赤いシャツに黒いジャケットを羽織っていた。シャツと同じ色に染めた髪にパーマがかかっていた。

 

「奴らの目的はなんだ」

 

 と、黒いバトルスーツに身を包んだ女が訊ねた。すらっとした長いブロンドの髪を、背中に垂らしていた。女の目つきは鋭く、4人の中で唯一、青い眼をしていた。

 

 彼らの間にしばらくの沈黙が流れた。静けさに耐えられなくなった若い男が、口を開こうとした。だが、それを制するように貫禄のある男声が発せられた。

 

「なんであろうと、始末するべきだ」

 

 男は、4人の中で最も大人びて、落ち着いた様子だった。深緑色の、軍人のような服をまとっていたが、溢れんばかりの筋肉で、身体の輪郭が浮き出ていた。

 

「ああ、炎のベルトがやってくれる」

 

 と、冷たい男の声が言った。男が着ているスーツは、灰色の生地に、赤と白の細い格子模様が入っていた。焦げ茶色の髪を右の方で分け、しっかりと整えていた。

 

「炎のベルトかあ」

 

 と、はじめに口を開いた、若くて陽気な男が言った。

 

「にしても、ダイラさんもつれないっすねー、俺たちは戦っちゃいけないなんて。おかげで全然楽しくないっす。」

 

 若い男が文句をたれると、軍服の男が諭すように言った。

 

「無駄に戦力を消耗しないための策だろう。おとなしくあの方の命令に従っておくのが吉だ。」

 

 若い男は子供のように不満そうな顔をして見せた。それから、ふと思いついたように言った。

 

「にしても、あの子大丈夫なんすかねー。死んだみたいな顔してたっすけど。」

 

 それを聞いたブロンドの女は、気に入らないという顔をして、若い男の方をきっと睨みつけた。鋭い眼差しを向けられた若い男は、怯えたふりをしてみせた。

 

 年老いた男が口を開いた。

 

「さくらはこれまでもひとりで戦ってきたんだ。おおかた問題ないだろう。」

 

 長老の言葉に、灰色のスーツを着た男が頷いた。

 

「ああ、ダイラの言う通りにしていれば、全ては解決するさ。」

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 日が沈み、空にはいくつかの明るい星が、街中の光に負けじとかがやいていた。

 

 ルイは、病院から1kmほど離れた公園のベンチに腰かけていた。財布に残っていたお金で夕食の弁当を買い、先程食べ終えたところだった。彼は、長い間何も食べていなかったので、またたく間に食べ終えてしまった。

 

 時計の短い針は9を指していた。ルイは、病院で起こった事件について考えた。

 

 彼が怪物を見失ったあと、看護師のひとりが3階に様子を見に来て、倒れている人たちの中でひとり立ちすくむルイを発見した。ルイは、自分が来た時には既に皆倒れていたと説明した。だが、怪物のことについては触れなかった。何も知らない人は怪物の存在を信じないだろうし、彼自身、オルタグアという怪物についてよく知らなかった。

 

 それから、たくさんの看護師と医師が来て、3階で倒れていた人たちは別の病院に搬送された。事件があったフロアは患者も見舞人も立ち入り禁止となった。院長の、病室で寝ている患者を最優先するという方針により、限られた数の刑事たちが3階の捜索に入った。

 

 ルイは、怪物の謎について思考をめぐらせていた。彼の家族と隣人たちが襲われたとき、彼らの身体は弾けるようにして消えた。だが、さっき病院で襲われた人たちは生死にかかわらず肉体が残っていた。さっきの怪物は、昨日の鳥型の怪物とはなにか違うのだろうか。

 

 わからないことだらけだった。立て続けに事件が起こったせいか、ルイの身体は疲労していた。しばらくして、彼は夢の世界に入っていった。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 翌朝、朝食を済ませたルイは、病院に向かった。秋の朝日が、枯れ葉の散った路地を照らしていた。

 

 ルイは病院の入口に近づいた。そのとき、彼の頭上からメカの声が聞こえた。上を向くと、鳥のメカがルイの頭上で浮遊していた。

 

 彼はすでに、メカの甲高い鳴き声は警告のサインであると知っていた。

 

「またあいつらか!?」

 

 ルイはそう言って、病棟に背を向けて駆け出した。だがしばらくして、彼の足は踏みとどまった。

 

 自分がここを離れている間に、怪物たちは再び病院にやってくるかもしれない。さくらやほかの患者たちが襲われるかもしれない。そのとき、誰が彼女たちを守れるだろうか。

 

 ルイは下をうつむき、迷っていた。そのとき、彼はふと、あの言葉を思い出した。

 

ー お願い、私の代わりに、やつらを止めて ー

 

 それは、さくらが意識を失う寸前に、彼に向かって発した言葉だった。ルイは、さくらとの約束を果たす覚悟を決めた。

 

 ルイがメカを見上げると、小さな機械は、彼の意志に感づいたかのように鳴き声を放った。それから右方向に小さく旋回し、空を飛び始めた。ルイはメカを追って走った。

 

 ルイと鳥のメカは、港の近くにたどり着いた。大きな橋の上に、トカゲ型の怪物が3匹いた。全身を覆う鱗が、太陽の光を反射して白く見えた。

 

 3匹の怪物は、ルイに気づいて彼の方に視線を向けた。頭を少し下に傾けて、しゅるしゅると妙な音をたてた。

 

 ルイは、身体にぐっと力を込めた。すると、彼の腰の周りが炎で覆われた。しばらくたつと、炎は煙と化した。消えゆく炎の中から、炎のベルトが現れた。

 

 ルイは、3匹の怪物のほうを強い眼差しで見据えた。右半身をややうしろに下げ、体勢を低くした。

 

「変身!」

 

 ルイがそう叫ぶとともに、彼の身体を、真紅の炎がまとった。彼の肉体は炎の中で、戦士の姿に変化した。

 

 ルイは、全身に赤い炎をまとったまま、3匹の鱗の怪物に向かって突進した。怪物たちは驚いた様子をみせた。が、その後すぐにしなやかに身体を動かして、ルイとの激突を避けようとした。

 

 燃える肉体が、1匹の怪物の脇腹を貫いた。

 

 ほかの2匹が、ルイに向かって滑るように走った。怪物たちは、彼を挟み撃ちにした。

 

 怪物と激突する寸前、ルイは上へ飛び上がった。ルイは炎と一体となって、空中から怪物たちに打撃を決めこんだ。彼の身体は、すでに戦いに慣れているようだった。

 

 ルイの炎で、3匹の怪物はかなりのダメージを負っていた。疑いようもなく、ルイが優勢だった。

 

 そのとき、ルイの頭上に灰色の影が2体、飛び込んだ。

 

 ルイは、すんでのところでふたつの影から身をそらした。その2匹は、はじめからいた3匹と同じ、全身を鱗で覆われた怪物だった。

 

 2匹の怪物は、しゅるしゅると音を立てて、負傷した3匹の方に走った。

 

 5匹の怪物たちは、1か所に集まった。それから輪をつくるようにして並び、互いの尾をくわえた。5つの肉体が消失するとともに、まばゆい輝きを放った。巨大な閃光に、ルイは目がくらんだ。

 

 目を開けると、そこには古代生物のような巨大な蛇がいた。とぐろを巻いて、ルイを見下ろしていた。蛇の頭は地面からはるか上にあり、ルイの小さな肉体をその大きく鋭い青い眼で睨みつけていた。

 

 巨大蛇は突然、口を大きく開けた。白く鋭い牙と、先がふたつにわかれた舌が見えた。

 

 蛇の口から、黄色い液体がルイに向かって放たれた。ルイは身体を転がすようにして避けた。蛇が放った液体は、橋のてすりに落ちた。コンクリート製のてすりは、またたく間に溶解して崩れ落ちた。

 

 ルイは、巨大蛇の持つ毒の力を目にしても、驚いた様子を見せなかった。

 

 彼は、巨大蛇の方に走った。拳に炎をまとい、渾身のパンチを殴り込んだ。だが、金属のように硬い鱗は傷ひとつつかなかった。

 

 巨大な蛇はルイの方に頭を向けた。彼は攻撃をさけようとして、上へ跳んだ。空を飛ぶルイは、後ろから大きな気配が迫ってくるのを感じた。

 

 大きな頭が、上昇する彼の身体を追い抜いた。蛇の大きな牙が、彼の身体に噛みつこうとした。

 

 ルイは全身にぐっと力をこめた。すると、彼の身体を熱い炎が覆った。巨大蛇の口の中が炎で焼かれた。怪物は唸り声をあげて、ルイから離れた。

 

 そのすきに、ルイは巨大蛇の頭を蹴って素早く下に降りた。

 

 ルイが着地するやいなや、巨大蛇の頭は、地面に下りてきた。それから、しゅるしゅると音をたてながら、地面を突き進んだ。そして瞬く間に、ルイの周りは大きな身体で囲いこまれた。

 

 ルイは巨大蛇の砦から抜け出そうと、再び上へ跳び上がった。だが、蛇の頭が素早く彼を追い越し、砦に天井の蓋をした。

 

 蛇の身体はだんだん彼に迫ってきた。鉄のような鱗で覆われた壁に、彼は為すすべがなかった。しまいに、彼の身体は鱗の縄で縛りあげられた。

 

 ルイは蛇の縄から抜け出そうとして、もがいた。全身に炎をまとったが、鉄壁の鱗には何の効果もなかった。

 

「うぐっ」

 

 鉄のように硬い身体に縛られて、ルイはうめき声をもらした。

 

 ゆっくりと、しかし着実に、彼の体力は削がれていった。ルイは、巨大蛇の口が襲ってこないように、炎をまとっておくので精一杯だった。

 

 そのとき、遠くから小さな音が聞こえはじめた。音はしだいに、けたたましいエンジン音になった。

 

 白いバイクがこちらに向かっていた。バイク乗りのヘルメットの下からはみ出た茶色い髪が、風になびいていた。

 

 こちらに向かっているのは、さくらと、彼女のバイクだった。

 

 さくらのバイクは、巨大蛇との距離が200mほどのところに迫った。さくらは、バイクを走らせたまま、右手をハンドルから離し、腰のうしろにまわした。彼女の手に、小型の銃が握られた。黒い銃身に白いラインが走り、日光に照らされて輝いていた。さくらは、銃口を怪物の頭の方に向けた。

 

 さくらは小銃の引き金を引いた。すると、銃口から細い稲妻が走り出た。小さな雷は、目にもとまらない速度で怪物の目玉に飛びこんだ。

 

 目玉に電撃を与えられた怪物は、身体を大きくうねらせた。その反動で、ルイを縛っていた鱗の縄がゆるんだ。ルイは炎をまとってとび上がり、巨大蛇の身体から抜け出した。

 

 ルイは地面に着地した。大きくなっていたエンジンの音が、彼の前で止まった。顔を上げると、さくらのバイクはルイの近くに到着していた。

 

「これ使って!」

 

 と、さくらはバイクから飛び降りながら叫んだ。

 

「お前、、!」

 

 昨日意識を失って倒れたはずのさくらが、軽々と身を動かすのを見て、ルイは驚いた。

 

 さくらは唖然としているルイに向かって再び声をあげた。

 

「はやく!」

 

 ルイは、さくらの元に駆け寄った。そして言われるがままに、白いバイクにまたがった。

 

 突然、車体が唸り声をあげた。ルイの身体から炎がひとりでに溢れ出た。

 

 バイクは炎で覆われた。各部が変形し、車体が真紅に染まった。

 

 ルイがハンドルを握ると、エンジンは紅蓮の炎を噴きだした。

 

 前を向くと、蛇の怪物はとぐろをまいて体勢を立て直していた。鋭く青い眼で、こちらを見据えていた。

 

 彼は巨大蛇をめがけてバイクを走らせた。

 

 ルイは3秒ほどで怪物のふもとにたどり着いた。ルイは、赤いバイクを蛇の身体に乗り上げた。そのまま勢いをゆるめず、鱗でおおわれた身体の上を突き進んだ。

 

 巨大蛇はルイを振り落とそうとして、身体をうねらせた。だが、彼のバイクは、怪物の身体から離れずに走り続けた。車体のうしろに、火炎の跡が残っていた。ルイはらせん階段のように、蛇の身体を登っていった。

 

 ルイは巨大蛇の頭部に到達した。彼は炎のバイクとともに、そのまま突き進んだ。彼のバイクは蛇の頭の上を後ろからまわるかたちになった。

 

 車体が巨大蛇の視界に映りこんだ。その直後に、赤いエンジンは燃えたぎる炎を怪物の眼に見舞った。怪物の視界は、炎で覆われた。

 

 ルイは宙に浮くバイクの上で立ち上がった。そのまま脚で車体を前に蹴りだした。彼の身体は宙へ跳び上がった。それと同時に、彼の身体は回転し、怪物の方を向いた。

 

 彼の身体を紅蓮の炎がまとった。ルイは空中で右半身を後ろにそらし、右拳を奥に構えた。

 

 彼の身体は放物線を描くように飛んだ。ルイは怪物の口元をめがけて、急加速で突き進んだ。怪物と彼の距離が1mにも満たないところまで接近した。ルイは右半身とともに右腕を大きく前に突き出した。

 

 炎の拳が、怪物の喉を突き抜けた。

 

 ルイは巨大蛇の肉体を突き抜けたのち、地面に斜め向きに激突した。彼の着地した足が、路地のアスファルトを削りとった。

 

 彼は立ち上がった。彼の背後で、巨大蛇の肉体は、頭部から順に崩れるように消えていった。

 

 さくらが彼のほうにかけよった。

 

 炎がルイの全身を取りまいた。彼を覆う炎が解かれると、彼の肉体は人間に戻っていた。

 

「大丈夫なのか」

 

と、ルイは自分のところにかけよってきたさくらに言った。

 

「うん」

 

 と、さくらは生気あふれる声で応えた。

 

「急に身体がもとに戻ったのよ。どうしてなのかわからないけど、自分でもびっくり。」

 

 彼女はルイをまっすぐに見つめながら、興奮した口調で言った。

 

「もしかして、あなたが何かしてくれたの?」

 

「いや、俺はなにも」

 

 ルイは、彼女の元気さになかば圧倒されながら、そう答えた。

 

「怪物と戦うので、精一杯だったから」

 

 ルイがそう言うと、さくらはすこし驚いた顔をした。それからすぐに、嬉しそうな笑みを浮かべた。

 

「約束、ちゃんと守ってくれたんだ」

 

 ルイは、さくらの満足げな顔を見て、たしかに元に戻ったようだと思った。

 

 しばらくの沈黙のあと、さくらが口を開いた。

 

「あなたにまだなにも話してなかったね、ベルトのこととか、怪物のこととか。」

 

 さくらにそう言われて、ルイは、自分の変身や怪物の謎について気になっていることを自覚した。

 

「うん、俺もちょうど、聞きたいことがあったんだ。」

 

 ルイがそう言うと、彼女はそっか、と頷いた。

 

 そのとき、さくらは、ふとなにかに気がついた様子を見せた。

 

「あれ、私のバイクは?」

 

 ルイは、先程、空を飛びながらバイクを乗り捨てたことを思い出した。彼は、ちょっとした罪悪感に背中を押されて、口を開いた。

 

「ごめん、戦ってるときにどこかに飛ばしちゃった」

 

「もう!」

 

 とさくらはふくれた顔をして言ったが、本当に怒っている様子はなかった。

 

「探すしかないわね、」

 

 そう言って彼女は歩き出した。が、2、3歩進んだところで立ち止まった。

 

「どうした」

 

 固まっている彼女を見て、ルイはさくらに駆け寄ろうとした。そのときだった。

 

「動くな!」

 

 突然、男の叫び声がした。目の前に、警察の制服を着た男が拳銃を構えていた。

 

「えっ」

 

 ルイは驚いて立ちすくんだ。彼の前にいる警官は慎重な歩調でこちらにゆっくりと近づいてきた。ルイは思わず後ずさりした。

 

 さくらはルイのほうにふりかえった。そして驚いた顔をして、彼に向かって叫んだ。

 

「うしろ!」

 

 ルイがうしろをふりむくと、いた。制帽をかぶった警官が銃を構えて、こちらを睨みつけていた。彼は、さらに別の方角からも男たちが近づいていることに気づいた。

 

 2人は6つの銃口に囲まれていた。

 

 






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<注意書き>

・本作は作者独自のフィクションであり、実在する人物や団体と一切の関係はありません。
・エピソードの更新頻度は不定期です。ご了承ください。

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