【完結】仮面ライダーハルガ   作:じゅんけん

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 仮面ライダーハルガ!前回の3つの出来事!

 1つ!悠刻ルイは、意識不明のさくらを、病院に搬送。

 2つ!さくらが寝ている病院に、爬虫類のオルタグアが現れ、人々を襲う!

 そして3つ!ルイは、なぜか元通りになったさくらの助けで、怪物を撃破する!




EPISODE 3 戦士ハルガ

 

 

「動くな!」

 

 再び警官の声がした。ルイとさくらは、背中合わせになって、彼らを囲む銃口を睨みつけていた。

 

 銃を握る警官たちの奥から、眼鏡をかけた男が現れた。その男は、黒いスーツに身を包み、ルイとさくらの方を見据えていた。

 

「お前たち二人に無差別大量殺人の容疑がかけられている。」

 

 と、スーツの男は言い放った。ルイは驚きのあまり、言葉が出なかった。

 

「ちょっと、どういうことよ!」

 

 さくらは刑事に問いかけた。だが、男は顔色ひとつ変えずに話を続けた。

 

「取り調べを行うので、警察署に来ていただきたい。」

 

 銃を握った6人の警官は、慎重な足取りでふたりに近づいた。

 

 抵抗すれば何をされるか分からない。ルイはそう考えて、その場でおとなしくじっとしていた。だが、さくらは違った。彼女は突然、ルイの腕をひっぱった。

 

 ふたりは警官のわきをかいくぐって走った。急いでその場から離れようとした。

 

 だがそのとき、幾台ものパトカーが、ふたりの行く先を阻むように到着した。

 

「えっ」

 

「なによこれ!」

 

 ルイとさくらは予想外の光景に思わず足をとめた。

 

 パトカーのドアが開いた。道路に対して斜めにならんだ車から、警官たちが現れた。あっという間に、2人の身体は警官らに拘束されてしまった。

 

「ちょっと、離しなさいよ!」

 

 と、さくらは叫んだ。警官は彼女の言葉に耳を貸すはずもなく、パトカーの方へ連れていこうとした。

 

 さくらは、2人の警官にがっしりと押さえられている両腕を支点にして、身体をひねらせた。右足を大きく振り上げ、前にいた警官の顔面にキックを見舞った。そのまま着地せず、両隣の警官の腹に連続で蹴りを入れた。警官らは彼女の身体から離れた。

 

 さくらはそのまま走り出した。が、周りにいた刑事に取り押さえられた。

 

「なんなのよ!」

 

 と、彼女は叫んだ。彼女の5mほど横で、ルイもさくら同様、3人の警官に身柄を拘束されていた。彼は警官らに対して抵抗しなかったが、さくらの様子を見ていたルイは、そぞろに後ろめたさを感じた。

 

 なぜ自分たちに疑いがかけられたかは分からないが、恐らく怪物に関係することだろうと、ルイは思った。彼はさくらを庇おうと、刑事に向かって言った。

 

「そいつはずっと病院で寝てたんだ。だから何もしてない!」

 

 ルイがそう言うと、スーツの刑事が冷たい表情をした。

 

「ついさっきまで寝たきりだったのに、急に病院を飛び出してきたそうだな。」

 

「それは、、」

 

 ルイはさくらの方をふりむいた。だが、彼女はうつむいていただけで、何も言わなかった。

 

「とにかく、一度話を聞かせてもらう。」

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 ルイは、警察署内の部室にいた。向かい合わせに置かれた机の向こう側に、2人の刑事が座っていた。刑事たちの後ろに、開かれたままの扉があった。

 

 部屋はせまく、2つの机のまわりを1人の人間がぐるっとまわれるだけのスペースしかなかった。窓がなく、殺伐とした雰囲気が漂っていた。

 

 ルイの前に座っている2人の刑事のうち、左に座っている男は小太りで、絶えず怒ったような表情をしていた。隣に座った男は、痩せた顔つきで、冷静な態度であった。その男の前には、小さな画面のノートパソコンが置かれていた。男は画面を眺めて、キーボードをかたかたと打っていた。

 

 ルイがこの部屋に入れられてすぐに、2人の刑事は、彼に逮捕までの経緯を説明した。

 

 昨日、病院で倒れた被害者たちは、別の病院に搬送された。だが、その数時間後に被害者全員の肉体が消滅した。その瞬間を、多くの人が目撃したため、警察はこれを真実として扱った。

 

 そして、事件現場に最初にいた人間がルイであったという事実が、病院の看護師から伝えられた。警察は取り調べを行うため、ルイが走っていった方角にパトカーを走らせたところ、橋の上にルイとさくらを目撃した。さらに、橋の一部が破壊された形跡を発見し、ルイに犯行の容疑がかけられた。

 

 また、彼と共に行動していたさくらに対しては、簡単な事情聴取を行うだけの予定だった。だが、身体の具合が良くなかったはずの彼女が、医師の許可なく病院を抜け出したという情報を手に入れ、ルイと共犯者であると容疑がかけられた。

 

 警察の捜索にしては話が飛躍しすぎだ、とルイは思った。だが、今こうして身柄を拘束されている以上、刃向かうことはできない。

 

 ルイは、はぁっ、とため息をついた。

 

「病院の人たちに一体何をしたんだ」

 

 と、太った刑事がルイに向かって問いかけた。

 

「いや、俺は何も、、」

 

「そんなわけがあるか!」

 

 と、気性の荒い刑事は唾を飛ばしながら大声で叫んだ。隣にいる細身の刑事は、同僚の怒号を気にかける様子を見せず、冷淡な口調で取り調べを進めた。

 

「病院で大勢の人が倒れている中で、あなただけが、無事だった。彼らが、どうやって殺されたのかを、目撃したのでは。」

 

 刑事は澄んだ表情でルイのひとみを見ていた。

 

 そのとき、しきりに抗弁するような若い女の声が、廊下を伝って響いてきた。さくらは別の部屋で、ルイと同じように取り調べを受けているようだ。ルイは、なんとなく、怪物オルタグアの存在は話すべきではないと思った。

 

「俺があそこに行った時は、すでにみんな倒れてたので、、」

 

「都合が良すぎるだろ!」

 

 と太った方の刑事が怒鳴った。隣の刑事は一瞬、同僚を横目で見つめた。それからルイの方を向いて、口を開いた。

 

「3階に降りた時、あなたは本当は、何をするつもりだったのですか。」

 

 ルイは、少しの間黙り込んで、どう返答すべきか考えた。

 

「4階の病室にいたら、部屋の外から悲鳴が聞こえたので様子を見に行きました。」

 

 ルイはできるだけそれっぽく聞こえるように、落ち着いた口調で応えた。

 

「なぜ、3階だと分かったのですか。」

 

「それは、、なんとなく、、」

 

 ルイはふいに、眠いと感じた。

 

「なにか知ってたんじゃないのか?」

 

 と、太った刑事が言った。ルイは、何も言えずにうつむいていた。

 

 痩せた刑事はノートパソコンのキーボードをカタカタと打った。そしてコンピュータの向きを変え、画面をルイに見せた。

 

「先程、あなたたち2人がいた橋の一部、破壊されていましたが、」

 

 画面には、ルイと怪物との戦闘で破壊された橋の一部が映っていた。幸い、戦いの様子は目撃されなかったようだ、とルイは思った。

 

「これについて、知っていることはありませんか。」

 

 痩せた刑事は冷たい目でルイを見つめた。

 

 ルイのまぶたはだんだんと重くなってきた。今朝の戦いでだいぶ体力を消耗したらしい。

 

 3時間ほど取り調べが続いたのち、ルイは留置場に入れられた。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 いつの間にか寝ていたようだ。彼は白い壁と檻に囲まれ、木目柄の床に顔をつけていた。顔をあげると、白い格子の向こうに、警官がひとり立っていた。

 

「目が覚めたか」

 

 警官は穏やかな口調で言った。ルイは自分が留置場にいることを思い出した。

 

「しばらく、取り調べは中止だ。そこで休んでなさい。」

 

 そう言って、温和な警官は立ち去った。ルイはほっと息をついた。

 

 留置場は静かだった。隣にも居室があるはずだが、誰も居ないようだった。

 

「悠刻ルイ。」

 

 突然、聞き覚えのない、冷たいかんじの声がした。顔を上げると、うすい灰色のスーツをまとった男が立っていた。男は、赤い瞳をしていた。

 

「誰だ!?」

 

「私の名前は、カイラ。」

 

 男がそう言うとともに、ふたりの間に立ちはだかる鉄格子が、キンと高い音を放った。それからすぐに、割れたガラスのように崩れ落ちた。

 

 ルイは口をぽかんと開けた。スーツの男は、ルイに向かって冷淡な笑みを浮かべて、話し出した。

 

「私は、君をサポートする組織の1人だ。」

 

「は、、?」

 

 ルイは困惑した。男は相変わらず無機質な笑みを見せたまま、口を開いた。

 

「少し話がしたい」

 

 カイラと名乗る男は、ルイに向かって手をあげ、出てこいという仕草を見せた。ルイは、崩れた鉄格子の破片の山をまたいで、檻の外に出た。ルイが男の顔を見ると、カイラはふと思い出したように言った。

 

「その前に、さくらくんも助けに行かなければならんな。」

 

 そのとき、紺色の服を着た警官たちが、二人が立つ廊下に入ってきた。

 

「君!何をしている!」

 

 と、警官の1人がカイラに向かって叫んだ。カイラは警官が現れても、落ち着いた様子を保っていた。左腕をあげ、手のひらを警官らに見せた。

 

 ルイは、自分の隣に立つ男の手を見て驚いた。彼の左腕は、金属のように照り輝く指と、ロボットのような関節でできていた。ふたりの前に立つ警官らも、男の左腕を見て驚愕していた。

 

 カイラはにっと笑った。すると、彼の手のひらから青色の稲妻が走り出た。警官2人に電撃が与えられ、少し遅れて床に倒れ込んだ。

 

「おい!やめろよ」

 

 ルイは男の行動に驚き、思わず叫んだ。

 

「気にするな、意識を失っているだけだ。」

 

 カイラはそう言って、廊下を歩き出した。ルイはあとを追った。

 

 警察署内を移動する途中、数人の警官と出くわした。そのたびに、カイラは機械めかしい左腕をあげ、相手を静かに気絶させた。

 

 ふたりは階段を上がり、2階に着いた。

 

「だから、私は知らないわよ!」

 

 奥の方から若い女の叫び声が聞こえた。カイラは廊下を進んだ。ルイもあとにしたがった。

 

 カイラとルイは、小さな部屋の前に到着した。室内では、興奮した様子のさくらと、取り調べを行う警官2人が向かい合っていた。ルイが取り調べを受けたときと同じように、警官は入り口に背を向けて座っていた。

 

 さくらがルイたちに気づいて、顔をあげた。2人の刑事も後ろを振り向いた。

 

 カイラが左手を男たちに見せた。青い稲妻が流れ出て、刑事らは座っていた椅子から転がり落ちるように倒れた。

 

「カイラ」

 

 と、さくらは嫌悪の混じった口調で言った。

 

「知ってるのか」

 

 ルイがそう尋ねると、彼女は頷いた。

 

「我々のサポート対象はルイ、君だけでなく、さくらくんもそうだ。」

 

 と、カイラが話した。 

 

「何よサポートって、全然助けてくれないくせに」

 

「こちらの戦力を調整中だ。もう少し待て。」

 

 と、カイラは諭すように言った。

 

「それに、今は彼が戦ってくれているだろう。」

 

 カイラは目線を少しだけルイの方に傾けて言った。

 

「あの、俺のこと、なにか知ってるんですか?」

 

 ルイはそう尋ねた。すると、カイラは彼の方をふりかえって口を開いた。

 

「まとめて話をしよう」

 

 カイラはふたりに、ついてこい、というように目配せをした。男は廊下を歩き出した。

 

 さくらは、ふぅっとため息をついた。

 

「行きましょ」

 

 そう言って、彼女はカイラのあとに続いた。ルイもふたりを追った。

 

 先頭を歩くカイラは、途中で出くわした警官全員を、左腕から放つ電撃で倒した。ばたばたと倒れていく警官たちを前に、ルイは黙っていられなくなった。

 

「あの、こんなことしたらまずいんじゃ」

 

 ルイがそう言うと、カイラは立ち止まった。それからくるっと身体ごとルイの方を向いた。

 

「我々の戦力プレゼンテーションだ。これで当分、この国は私たちの為すことを邪魔しないだろう。」

 

「”為すこと”って?」

 

 ルイは尋ねた。灰色のスーツの男は、冷淡な笑みを浮かべて、こう言った。

 

「後ほど話そう。行くべき場所がある。」

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 ルイ、さくら、そしてカイラという男は、車の座席に腰をおろしていた。車内の座席は、向かい合った形に設置されていた。ルイの右隣にさくらが座り、ふたりの前にカイラが座っていた。

 

 ドライバーはいなかった。3人が乗る自動車は、運転から空調設備まで、すべてがコンピュータによって制御されているようだ。この自動車は、住宅の並ぶ道路を走っていたが、彼らの他に、道を走るものはなかった。

 

「私が開発した完全自律型自動車、リオンくんだ。」

 

 と、カイラが自慢げに言った。男は座席に深々と座り、ゆったりとした態度をみせていた。

 

 3人の中でくつろいでいたのはカイラだけだった。ルイは、慣れない車内で正体のわからぬ男と向かい合い、緊張していた。さくらは、この車に乗るのは初めてではないようだが、ずっと不満げな顔をしていた。

 

「あの」

 

 ルイが呼びかけた。カイラは小さく咳払いをしたあと、少しだけ身体を前に起こした。足を組み、その上に両手を置いた。

 

「君が変身した炎の戦士、あれはハルガと呼ばれている」

 

 男は突然話し始めた。

 

「ハルガ?」

 

 ルイは聞き返した。カイラは軽く頷いた。

 

「今、君の体内には、炎のベルトが入っている。ベルトに秘められし無限のエネルギーを利用して、君はハルガに変身することができる。」

 

 ルイは横にいるさくらをちらっと見た。彼女はルイと目を合わせ、頷いた。彼女は既にベルトの力を知っていたようだ。

 

「なぜ俺の、僕の身体の中に、ベルトが入ったんですか?」

 

「それはわからない。ただ、選ばれし者だけがベルトを所持できる。」

 

「じゃあどうして、俺が選ばれたんですか?」

 

 カイラはすぐには応えなかった。さくらもカイラの方を見た。3人の間にしばらくの沈黙が流れた。

 

「運命。」

 

 突然、カイラはささやくように、それでいてルイの心にはっきり響くように言った。

 

「すべてはそれによって定まる。他のどの力も干渉できない。」

 

 ルイは、男が自分を騙しているのではないかと思いはじめた。だが彼は、カイラはともかく、さくらに対してはそれなりの信頼を抱いていた。なので、彼女が何も言わないのなら、男の言葉を信じようと決めた。

 

「君にはその力と資格があるということだ。我々は、以前からそれを知っていた。」

 

「だから、こいつらは私を利用してあなたを探してたの」

 

 ずっと黙っていたさくらが言った。視線を他の2人のどちらにも合わせずに、そっぽを向いていた。カイラは彼女の言葉に反応を示さずに、話を続けた。

 

「ハルガであれば、あの恐ろしき怪物、オルタグアを倒すことができる。彼らの凄まじい戦闘力は君も体感しただろう。」

 

 ルイは、これまで遭遇した、翼の生えた怪物と、身体中が鱗で覆われた怪物を思い出した。そして、やつらの犠牲になった人たちの記憶が蘇った。

 

「君に必要なのは、覚悟だ。」

 

 と、カイラが言った。男の表情は、いつの間にか厳格な顔つきに変わっていた。

 

「覚悟、、」

 

「戦う覚悟ではない、戦うという罪を背負う覚悟だ。」

 

 そう話すカイラの顔には、笑みはなく、ただまっすぐな赤い眼があった。

 

 少しの間、緊張感のある空気が流れた。突然、カイラはさっきまでの冷淡な笑みを取り戻した。

 

「君には、さくらくんと協力して、オルタグアを殲滅してほしい。」

 

「オルタグアって、一体なんなんですか、何が目的で人々を襲ってるんですか?」

 

 ルイは自分の前に座る男に尋ねた。

 

「それは」

 

 とカイラが言いかけたそのとき、車体が急ブレーキを掛けた。外を見ると、10体ほどの薄暗い大きな生物が、こちらをめがけて突進してきていた。

 

「噂をすれば」

 

 カイラが言い終えないうちに、自律型自動車リオンは車体の向きを変えずに、そのまま逆向きに走り出した。

 

 ルイたちが一瞬止まっている間に、怪物の群れとの距離が大幅に近づいた。彼らは、灰色の身体をし、頭から左右に大きな角が生えていた。リオンは、逆走を始めてから加速を続けていたが、怪物たちとの距離は離れなかった。

 

 ルイは、自動車のドアを勢いよく開けた。車体の上の部分に手をかけて、上に飛び上がった。

 

「何する気!?」

 

 と、さくらは慌てた様子で聞いた。ルイは、走行中のリオンの上にしゃがみこんだ。

 

「これが、俺がすべきことなんだろ。」

 

 ルイは強い口調で応えた。彼の腰に炎のベルトが現れた。

 

 ルイは、車体の上で立ち上がった。そのときのリオンは時速50kmほどであったが、彼の身体は強い風圧にも動じなかった。彼は鋭い眼差しで、迫りくる怪物たちを見据えた。

 

 彼の身体を炎が覆った。炎が風に吹かれて、リオンの走る向きと逆方向に、赤き疾風のごとく流れ出た。炎の幕が、迫りくるオルタグアに襲いかかった。角の怪物たちは、炎に噴かれて減速した。

 

 炎をまとったルイは、車体から飛びあがった。右拳を後ろに構えて、怪物たちに急接近した。

 

 熱き拳が、疾走する怪物たちの中心部に激突した。怪物は、彼の拳を中心に、外方向へ吹き飛んだ。

 

 炎のまじる爆煙の中心で、青い目をした戦士の影が立ち上がった。

 

 ルイがオルタグアと戦闘している間に、自動車に乗ったままのカイラとさくらは、ルイたちから離れていった。

 

「とめて!」

 

 と、さくらは叫んだ。彼女は車内でドアによりかかり、取っ手をつかんでいた。さくらは、今にも自律型自動車から飛び出そうとしていた。

 

「どうやって戦うつもりだ」

 

 と、カイラは冷たく言い放った。そのとき、さくらは自分が装備を持っていないことに気づいた。

 

「今向かっているところに、新しい装備を保管してある。」

 

 さくらは、ドアに寄りかかっていた体勢をもとに戻し、座席に腰掛けた。自動車リオンは、さくらが正しい姿勢で座ったのを確認すると、スピードを上げた。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 炎の戦士ハルガは、周りを囲む9体のオルタグアと対峙していた。怪物は、牛のような頭の左右に、大きな2本の角があり、大柄な肉体をしていた。彼らは青い眼でルイをじっと睨みつけていた。

 

 群れの中の1体が、ルイをめがけて突撃してきた。彼は一瞬体勢を低くしたのち、上に跳びあがって回避した。

 

 ルイはオルタグアの群れの外側に着地した。怪物たちはすぐにこちらを向き、突進してきた。

 

 ルイは激突してくる1体の怪物に、炎の拳骨をくらわせた。それと同時に、全身をそらすようにして横に飛び、下半身に炎をまとった。空中で身体を回転させ、別の怪物の角に炎の脚を振り下ろした。

 

 5体の怪物が、ルイを囲むように突撃してきた。彼は左拳に力を入れ、熱を集中させた。相手との距離が50cmくらいに縮まると、熱い腕を自分の周りに振り回した。炎の拳が彼らの頭部に激突した。

 

 爆煙がたった。煙の中から、ルイがダメージを与えた怪物たちと入れ違いざまに、5体ほどの同じ種類の怪物が現れた。ルイは横へ身を翻そうとした。だが、こちらに突進してきた2体の怪物と衝突した。

 

 ルイは5mほど突き飛ばされた。彼はすぐさま立ち上がって、顔を上げた。すると、彼の視界には、30体ほどの怪物の群れが映っていた。彼が戦闘に気を取られている間に、ずいぶんな数の仲間が合流したらしい。

 

 ルイは群がるオルタグアを前に、困惑していた。怪物たちは今にも飛びかかってきそうだ。

 

 突然、彼の視界に、左から白いバイクが走り出た。バイクの乗り手は、右手に黒い銃器を持っていた。バイク乗りは車体を宙で回転させながら、マシンガンのような音を立てて、怪物たちに弾丸を浴びせた。輝くヘルメットの下から長い茶髪がのぞいていた。

 

 白いバイクが着地した。多くのオルタグアが、彼女が放った銃弾に倒れた。それから少し遅れて、20体ほどの怪物の肉体が消え失せた。

 

 そのとき、真紅のバイクがどこからともなく現れた。ルイの方に疾走し、彼の目の前で止まった。

 

「あなたのマシンよ!」

 

 白いバイクに乗ったさくらはそう叫んだ。ルイは目の前の真紅の車体にまたがった。

 

 彼はハンドルを握り、エンジンを噴かせた。彼の前にいる生き残った怪物は、最初に彼らが出現した方角に向かって走り出した。ルイはすぐに後を追った。

 

 怪物の群れは、市街地を走り抜け、左右を緑に覆われた道に出た。ルイとさくらは彼らを追った。

 

 ふいに、ルイの隣にさくらのバイクが現れた。

 

「こっちは任せて!裏からまわって!」

 

 ルイはさくらの言葉に従い、脇道にそれた。

 

 さくらは白く輝くバイクを加速させ、目の前を疾走するオルタグアをさらに追い上げた。

 

 彼女が被っているヘルメットの内部画面には、マシンの移動速度が表示されていた。76、77、78、、、。その時速は、一般道路で認められている最高速度をとうに超えていた。

 

 怪物たちは列を成して直線上に並び、地を駆けていた。オルタグアの群れは、さくらのバイクに追いつかれるまいと、加速を続けた。牛型の怪物たちは、生身で走っているとは信じがたいほどのスピードで疾走していた。

 

 突然、群れの前方に、真紅のバイクが現れた。赤い車体に乗ったルイは、身体を前に倒し、両手でハンドルを固く握りしめていた。彼は凄まじい速度で怪物たちに向かって突き進んだ。さくらは彼の姿を確認すると、ハンドルを右にきった。

 

 ルイのバイクが、群れの先頭を走る怪物と激突した。そのまま勢いを緩めず、群れの中を貫いた。さくらはその1mほど横を走り、ルイとすれ違った。

 

 巨大な爆発が連鎖的に起こった。

 

 赤いマシンは20mほど進み、止まった。ルイはしばらくの間、バイクから降りずにじっとしていた。

 

 秋の夕日が、戦士ハルガの背中を照らしていた。

 

 






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<注意書き>

・本作は作者独自のフィクションであり、実在する人物や団体と一切の関係はありません。
・エピソードの更新頻度は不定期です。ご了承ください。

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