ルイとロウは協力して、雷のハルガを撃破した!
さあ、世界の狭間に閉じ込められた人々を救え!
三人の戦士たちは、風のハルガが生み出す大気の流れを利用して目的地へ向かった。まず、彼らが戦っていた荒原から最も近い街の中心部へ行き、地下通路に繋がる穴の入口へとたどり着いた。そうしてそこからは、炎のハルガが纏う炎を灯火代わりに、地下装置の中央部へと突き進んだ。
その道中で、サンクは街の人々をシャングリラに送るための転送装置について、このように話した。
「こちらの世界にあるものをシャングリラへと転送するために必要なものは二つ。一つは私がロウたちに与えていた、ボイドリングの欠片だ。ボイドリングとは、任意の物体を現在存在している座標から別の任意の座標へと転送する力を持つもの。本来ならばその能力に一切の制限がない。しかし、リング本体ではなくその一部だけを使う場合、転送先の座標と元の座標との距離には制約がある。その上限はおよそ地球の半径くらいだ。だがあの世界──シャングリラは、地球から何億光年も離れた場所にある。そこでもう一つ必要なものが、地下転送システムだ。人間たちをシャングリラへ転送する際、まずボイドリングの欠片の力によって人々を転送装置に集め、そこから装置の中心にある、ほぼ完成形に近いボイドリングを使ってシャングリラへ転送していたのだ。そして、そのシステムはこちらから向こう側へ送るだけでない。逆のことも可能だ。シャングリラの人々を元の街へ戻すことができる」
「地球から何億光年も離れた場所って?」とルイが口を挟んだ。
「私の生まれ故郷さ」とサンクが答えた。「今はもう存在しないがな……。私は地球の住民たちを自分の星へ無理やり連れ帰ろうとしていたのさ。そうして、滅んだ故郷を再建するつもりだった」
「それなら、一体なんのために過去へ来たんだ?」とルイが質問を重ねた。「たしか、お前も未来から来たって言ってたよな? 俺たちとはまた別の未来から来たって」
「私は、何千年も未来の時代から来たのさ」とサンクが答えた。「まあ、私が生まれた星と、地球とでは時間の進み方が異なるから、正確な年月は分からないが。そして私の生きていた時代には、この星──地球には、生命体は存在していないのだよ」
「つまり、はるか遠い未来には地球の全生命が絶滅しているということか」と、二人の後ろで気流を生み出し続けているロウが言った。
「そうだ」とサンクは答えた。「だが、君たちのような人間がいれば、もしかすると、未来は変わるかもしれない」
それから数秒後に、彼らは目的地である転送装置付近に到着した。装置は黒色を基調とした六角形の台の上に半透明の球が乗せられているような形をしており、さらにその球を覆うように六本の支柱のようなものがあった。
半透明の球の中心部には銀色の輪のようなものがいくつも重なって浮いており、それらは互い違いの方向にくるくると回転していた。
「それで、どうやってみんなを連れ戻すんだ?」とルイが尋ねた。
「ボイドリングの操作方法は、私が心得ている」とサンクが返した。「ただ問題は、膨大なエネルギーが必要になるということだ」
それから彼は、目の前にいる二人の瞳を代わる代わる見つめながら、こう言った。
「ルイ。私を信じるなら、そのベルトを一度返してくれないか? ベルトに秘められた膨大なエネルギーが必要なんだ」
「……信じていいんだな?」
ルイが言った。サンクはその言葉に頷いた。
「だけど、どうやってベルトを渡せばいいんだ? これは俺たちの身体と一体化してるようなもんだし……」
ルイは疑問を呈したが、それに対してサンクは心配ない、と返事をした。それからルイの真正面に進み出ると、膝を曲げて身体を低くし、炎のハルガが身に着けている炎のベルトの前に手をかざした。それから口を結んで両目を閉じると、呪文のような言葉を唱え始めた。ルイが呪文のようであると感じたのは、サンクの話す言葉が全く聞き覚えのない発音と抑揚のついたものだったからである。
それから異様な呪文が十秒ほど続いた後、突然、炎のベルトから ぱき という、石の砕けるような音がした。その直後、炎のベルトは溶岩のように粘り気のある液体に変化して、みるみる小さくなり、やがて一つの輪っかに集約した。それは真紅の色をした腕輪のようなものだった。
「これが、ベルトの本体だ」と呪文を唱え終えたサンクが言った。
「ベルトを作ったのはお前なのか?」とロウがそのとき尋ねた。「やっぱりお前が全ての元凶だったのか?」
ロウは冷静さを保ちつつも、その声色は棘のあるものに変化していた。サンクはしばらく沈黙を貫いたのち、そのことについてはあとできちんと話をする、と約束した。
それからサンクは、炎のベルトから先ほど取り出した腕輪に似た形の、エメラルドグリーンの腕輪を懐から取り出した。
「これはエンテルリング──私のベルトに埋められていたリングの一つだ。炎のベルトに埋められていたブリムリングと同等のエネルギーを持つ。これら二つの腕輪が持つ全エネルギーを解放して、転送装置に注ぎ込む。本来ならゲイルリング──風のベルトに埋められた腕輪の力も借りたいが、その力は万が一の事態のために使える状態にしておきたい。ロウ、緊急時にはお前の風の力が必要だ。頼んだぞ」
「分かった」とロウは答えた。
サンクは二つの腕輪をそれぞれ右腕と左腕に装着した。そして転送装置の台座部分に乗ると、六本の支柱のうちの一つに触れた。すると六本の支柱から白く光る電撃のようなものが半透明の球の中心に向かって流れ出た。それをきっかけに、半透明の球は少しずつ小さくなるとともに、徐々に明るさを増していった。やがてそれは人間の頭ほどの大きさになり、その明るさは直視すれば視力を失ってしまうのではないかと疑われるほどのものになった。
「できるだけ装置から漏れる光を見ないように!」とサンクが声を張り上げた。三人しかいない地下空間に、彼の声は響き渡った。
それからサンクは両手をそれぞれ半透明の球の両脇に据え、中心に向けてゆっくりと近づけていった。ばちばちという音とともに火花のようなものが散り、眩い閃光が連続的に放たれた。それでもサンクは装置から顔をそむけることなく、両目をしっかりと開け、球の中心でうごめく光を睨みつけていた。
ふいに地下空間が静かになった。しかしそれとは対照的に、装置の中心部からは強い光が放たれており、装置の周辺はほとんど真っ白になっていた。
ルイは目を瞑っていた。凄まじい光は、瞼越しに彼の眼球を焼き尽くしてしまうのではないかというほどであったので、彼は顔を腕で覆った。
ドクン という音が轟いた。それは心臓の鼓動の音にも、水中で弾丸を発射する音にも似ていた。
すでに光はおさまっていた。ほかに光源はなかったので、辺りは完全な闇に包まれていた。
突然、地響きのような音が轟いた。それとともに、上の方から砂や石ころが降り始めていた。
地下空間が崩れているのだ、とルイは思った。
そのとき、誰かが彼の左肩を掴んだ。ルイは驚いて振り向いたが、相変わらず真っ暗闇の中ではなにも見えなかった。
「俺だ、ルイ」という声が目の前から聞こえた。それはロウの声だった。
「ここを脱出するぞ。俺に掴まれ」
「サンクはどうした?」
「今俺が左腕に抱えてる。気を失ってるだけだ、心配するな」
ロウがそう言うので、ルイは手探りでロウの立っている場所を確かめ、その腰のあたり──ちょうど、風のベルトがあるあたりのところに両腕を回し、しがみついた。
暗闇の中で、風のハルガが生み出す気流がごうごうと轟いた。
岩の削れる音、崩れ落ちた瓦礫が轟かせる振動。そして、それらをもかき消してしまうほどの凄まじい風に覆われて、彼らは地上に向かって突き進んだ。
三人は高空にいた。風のハルガの力で空中に浮遊しているのだ。
そのとき、風のハルガの左脇に抱えられたサンクが意識を取り戻し、顔を上げた。それから自分たちが地上に出たことを知ると、下を向いた。その様子を横から見ていたルイもまた、彼と同じように地上に視線を注いだ。
そこには街が広がっていた。人の気配が全くしない、不気味なほどに静かな街。シャングリラに送られた人々が、かつて住んでいたはずの街だ。
道路の真ん中に、自分たちが出てきたのであろう穴がぽっかりと開いていた。その穴の奥に、何やら白いものがちらつくのが見えた。
次の瞬間、その穴の中から眩い光が発せられた。光の線は真っ白い柱のように、雲の上まで続いていた。それから間もなくして、光は止んだ。
ルイはもう一度下を見た。そして、あっという驚きのあまり、思わず風のハルガに掴まっていた腕を緩めそうになった。
そこには人間たちの姿があったのだ。
「成功した」とサンクが囁くように言った。「他の街の人々も、元の居場所に戻ったはずだ」
「良かった……」
ルイは安堵した。それから、人々の平和が取り戻されたこと、長き戦いが幕を閉じようとしていることに心を動かされ、涙をこぼした。
仮面を被っていたせいで見えなかったが、風のハルガ──ロウもまた、彼と同じであった。
しばらくした後、三人は街から数キロメートル離れた平原に降り立った。風のハルガは装甲を解き、ルイ、ロウ、サンクの三人は向かい合った。
「さっきの話の続きだが」と、開口一番にサンクが言い出した。「ベルトを作ったのは私だ」
「なんだって?」とロウ。
「しかし、呪いをかけたのは私ではない」とサンクが言った。「私が作ったベルトに呪いがかかっているわけではない。呪いがかけられているのは、お前たち自身だ。お前たちと、それからこの私に、どうして呪いがかけられているのかは、私にも分からないが。ただ、ベルトは自らの意志で、お前たちを選んだ。それは、お前たちが呪いにかかっていることをベルトが知っていたからかもしれない。そのベルトは、我々に力を与えることで、呪いによる苦悩からわずかながらにも我々を救ってくれるものなのかもしれないな」
それからサンクは真紅の腕輪がつけられている左腕を掲げ、話を続けた。
「この腕輪は九つのリングのうちの一つだ。風のベルトに埋められているゲイルリング、それから私のベルトに埋められていたサンダーリングとエンテルリングも、その一つだ──サンダーリングはさっき失くしてしまったが……。これらのリングは、それ一つでも絶大な力を発揮するが、複数のリングが集まれば、使い方次第で一つの文明を滅ぼしてしまうほどの力を持つ。私はそれが怖かった。かつて私の故郷で起こった惨事をもう二度と見たくなかった。だからベルトにリングを埋め込むことで、リングの存在を隠したのだよ」
サンクはそこで話をやめ、自分の腕から真紅の腕輪──ブリムリングを外した。そしてルイの方に歩み寄ると、その腕輪をルイに手渡した。
「ベルトがなければハルガの姿にはなれない。だが、ベルトはリングの力を抑制している。そのままで使うことができれば、今まで以上に強大な力が発揮できるはずだ。これは君が持っていてくれ。君なら、その力を正しいことに使ってくれるだろう。私はそう信じている」
「ありがとう」とルイは返した。
「ルイ、君がかつて家族と暮らしていた街はどこにある?」
「どうしてそんなことを聞くんだ?」とルイは聞き返した。
「ボイドリングの力で人々をこの世界に呼び戻すとき、一瞬だがシャングリラとの繋ぎ道が開いた。君の家族も、元の居場所に戻っているかもしれない」
それを聞いたルイは、二人に別れを告げると、慌ててその場を後にした。
ルイの背中を見送った後、サンクはロウの方に向き直り、こう言った。
「ロウ、君のベルトも彼と同じように、リングの状態に戻ることができるが、どうする?」
「俺はこのままが良い」とロウは返事をした。「このベルトにはそれなりに愛着がある。それに、もうこれ以上の強敵と戦うこともないだろう」
「そうか」
サンクはそれ以上は何も言わなかった。
「炎の腕輪の力を借りたのは、崩壊したシャングリラを一時的に復活させて、ルイの家族を救うためだったんだろ」
ロウはそう言った。その言葉にサンクは驚きのあまり、しばしの間表情を硬くしたが、その後にふっと笑みをこぼした。
「君は頭が良いのだな。そんなことまでお見通しとは」
ロウもまた、小さな笑みをこぼした。
「ロウ、私は君に謝らなければならない」とサンクが言った。「私は嘘をついた。私はあのとき、君の恋人を生き返らせると言った。だが本当は、そんなことはできない。彼女を生き返らせる方法も知らないし、彼女が今どこにいて、彼女の魂はどうなっているのかさえ私には分からない。本当にすまない」
「キルアの居場所なら分かっている」と、そのとき女の声がした。声の主はイヴナだった。彼女は二人のもとに近づくと、金色の腕輪を掲げてみせた。
「キルアはこの中にいる」
彼女はそう言った。
「イヴナ、キルアもさくらのように、この世に戻ってくることはできないのか?」
ロウがそう尋ねると、相手は首を振って、分からないと答えた。
彼女はその腕輪をロウの方に差し出して、こう言った。
「直接聞いてみたらどうだ」
ロウには彼女の言葉の意味が分からなかったものの、金色の腕輪を手にとった。
その途端、彼は黄金の輝きを目にした。
腕輪に触れたロウは、ありとあらゆる記憶の流れを垣間見たのだ。
雪崩のように降り注ぐ記憶の雨に、ロウは困惑するばかりであった。だがそのうちの一つに、彼の気を引くものがあった。
そこに映っていたのは、金色の髪の女だった。そしてその視線の先には、薄紫の髪の女が立っていた。
薄紫の髪の女は金髪の女に、黄金の腕輪を渡した。それから薄紫の髪の女は影をくらました。
薄紫の髪の女は、森の中にいた。彼女は戦いを辞め、動物たちとともに、平穏なひと時を過ごしていた。
その動物たちの中に、現世の生き物とはどこか気配の異なる、黒い毛の熊がいた。
熊は病に苦しんでいた。
薄紫の髪の女は、熊の病を治すためにあれこれと手を尽くした。自然の草木から作った薬を試したが、うまくいかなかった。
そうして彼女は、街へ出る決心をした。熊を治すための薬を探しに、彼女は再び人間が住む世界の中に身を投じた。
彼女はそこで、かつての戦いの戦友たちと敵の戦士たちに鉢合わせてしまった。
彼女は望んでか望まずか、再び戦いの渦の中に呑みこまれていた。
彼女はしかし、本当の目的を忘れていなかった。病に苦しむ熊を救うという目的を。
そして彼女はついに、探していた薬を手に入れた。
だがすでに遅かった。彼女が戦いに身を投じていた間に、熊の病状は悪化していた。
彼女が森に戻ったとき、熊はすでに死の間際にあった。熊は、かき消えてしまいそうな息を、半分開いた口の先からもらしていた。
薄紫の髪の女が熊をそっと抱きしめた。熊も、女の顔より大きな手で、彼女をそっと抱きしめた。
熊は安らかな表情で、永遠の眠りについた。
そこへ金髪の女が姿を現した。
二人の女がしばしの間言葉を交わした後、薄紫の髪の女が相手に一本の刀と、白い毛皮のコートを投げ渡した。
金髪の女はその場を去っていった。薄紫の髪の女はその後ろ姿をぼんやりと眺めていた。
そのとき、死んだ熊の肉体が泡のようになり、消えてなくなった。
薄紫の髪の女はしばらくしてから後ろを振り返り、熊の遺体が消えていることに気づいた。彼女は友の亡骸を懸命に探したが、どれだけ時間をかけても一向に見つからなかった。
その黒毛の熊は、オルタグアの未来から来た存在だった。ロウもその人物のことを知っていた。
その人物は名をレイといった。
彼女は、意識と肉体の両方が、不完全な状態で過去に転送されてしまった存在だった。行き着いた先の過去で命を絶たれれば、それまで。元の時代に戻ることもない。
この時代で生涯を終えること以外に、選択肢はなかった。彼女には不幸な未来が待っていたのも同然だった。
しかし、彼女は心の友と出会えた。人でなくなってしまった自分を受け入れてくれた友と。その友の存在によって、彼女は幸せな最期を迎えられたのだ。
その記憶を見たロウは、薄紫の髪の女に感謝を捧げた。
(イヴナ……ありがとう)
それからも様々な記憶の断片が流れ込んできた。
ロウはその陰に、親しみのある気配を感じた。目に見えなかったが、間違いなくそれを感じとっていた。彼の目の前に、彼の恋人がいた。
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一方その頃、ルイはかつて記憶をなくしてから暮らしていた悠刻家の一軒家に向かっていた。
街にはけたたましく吠えたてる柴犬や、幸せを体現するかのように駆け回る子どもたちがいた。大人たちは、近隣の者たちと喜びを分かち合ったり、郵便受けから溢れ出るほどに溜まった手紙を取り出そうとしていたり、早速玄関でほうきを掃く綺麗好きな者もいた。
ルイは青い屋根の家にたどり着いた。彼はおそるおそるドアを開けた。
廊下の照明が灯っていた。
ルイは玄関で突っ立ったまま一言も発さず、家族の姿が見えるのを待っていた。
ドタドタと階段を駆け下りる音が響いてきた。それからすぐに、ツインテールの少女の顔がのぞいた。
「おにい! おかえり!」
少女は玄関に立っているルイの方に飛び込んできた。
「ただいま」
震える声でやっとそう言えた彼は、戦士たる者としてのベールを振りほどき、感情の流れ出るままに泣きじゃくった。
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私は孤独の中で沈黙していた。
私と同じように、さくらという少女はメメントリングの力によって消滅を免れ、リングの中に魂を宿した。そんな彼女は、一時的ではあるが、現世に戻ることができたそうだ。
私もまた、やろうと思えば元の世界に戻ることはできる。もう一度、一人の人間として生きられるのだ。今度は渦に呑まれて苦しむ必要もなく、幸福に満ちた人生が待っているのかもしれない。
でも、私はそれを望んでいなかった。長き戦いを経て目的を達成した今、私はただ安らかに沈黙していたかった。だからさくらとも距離をとって、悟られないようにしていた。
何も見えない空間。何も聞こえない場所。凍えるような寒さも焼けてしまいそうな暑さもなく、戦争の嵐もやってこない。この場所は心地が良い。何も考える必要がない。ただ静かに眠っていられる。
そのとき、何かを感じ取った。
何も感じないはずなのに、確かに感じられたのだ。とても懐かしい気配である。
その懐かしい気配はだんだん私の方に近づいてくるようだ。
「キルア! キルア!」
青年の声が私の名を呼んでいる。とても懐かしい声。優しく、奥深く、安心できる彼の声。その声はとても明瞭に感じ取れた。
「ロウ……」
彼が来てくれたことは素直に嬉しかった。
「キルアなのか……?」
「ロウ、どうしてここに」
私は馬鹿な質問をした。彼もそう思ったのか、私の言葉には返事をせず、しばらく黙っていた。
「ここで何をしているんだ」
彼がそう聞いてきた。
「もう疲れたのよ」と私は返した。「ここでゆっくりさせてもらうわ」
「生きることをやめようっていうのか」
ロウはそう言ってきた。私はそうだとも違うとも言わなかった。
「もし……」と、彼が言った。「もし、生きることだけが幸せの形ではないと、そう思っているのなら、生きることが幸せだと思えるようになるまで、生きてみないか」
彼の言うことはよく分かるようで、よく分からなかった。昔から彼はちょっと不思議なところがあって、私はそれをずっと感じていた。けれどそのちょっと不思議な彼に、私は何度も救われた。
今の彼もちょっと不思議なことを言った。そのせいで私はちょっと不思議な気持ちにさせられて、こんな返事をした。
「そうね。あなたの言うとおりにするわ」
私はほとんど投げやりだった。
投げやりというのは良くない行為かもしれない。まっとうに生きることから逃げ出して、ただ流れに身を任せる行為。責任から逃避しようとする、不真面目な選択。でもそれは、投げた先が的から外れているといけないのであって、投げた先がちゃんと的の中に収まっていさえすればいいのだと思う。
それでいいのかもしれない。いや、それでいいのだ。そうやって生きていけばいいのだ。
── 完 ──
『仮面ライダーハルガ』を最後までお読みいただきありがとうございました。
この作品は、僕が人生で初めてネットに連載した小説です。何も知らないままに、ただ自分の妄想を形にしたいという思いから始めた作品。終わってから見返すと、ダメなポイントはいくつでも見つけられます。キャラクターのエピソードを見せるタイミングが下手だったり、説明が不足していたり、そもそも起承転結の構造すら立っていなかったり……。そんな作品ですが、自分の中ではやはり思い入れがあり、大切な作品です。
劇場版や最終回では、それまで登場しなかった設定や要素などを描きました。これは、元々計画していた続編に繋がる要素だったものです。ですが色々考えた末、続編は作らないことにしました。(とはいえ、可能性がゼロと決まったわけではありません。未来は誰にも分かりませんから。)なので、読者の皆様の頭の中で、お好きなように、キャラクターたちのその後のお話を想像していただければなと思います。
この作品を読んでいただいた皆さま、本当にありがとうございました。僕はこれからも小説家を目指して頑張ります。
最後に、僕が自己満足のために書いた、『仮面ライダーハルガ』の主題歌をお楽しみ下さい。ごきげんよう。
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『戦慄のRiver』
作詞:じゅんけん
作曲:SunoAI
歌を聞く
希望の星 なくなるとき
張り裂けるほどに想う魂が
果てなき闇を切り裂く宇宙のRiver
誰かの声聞こえて 走り出しても
しゃぼん玉みたいに消えてゆく命
一瞬の迷い 消えない恐怖 震えが止まらないけど
僕がヤるか 君が死ぬか 運命はこの手に
Gonna change our future
終わらぬ旅 逃げ出すたび
君という鎖に抱きしめられて
嵐さえも震えるように
希望の星 なくなるとき
張り裂けるほどに想う魂が
果てなき闇を切り裂く宇宙のRiver
にじんだ記憶の中で 叫んでみても
星屑みたいに散ってゆく願い
一瞬の瞋恚 消えない妄執 怒りが鎮まらないけど
僕が死ぬか 君がヤるか 審判下すとき
Gotta change our future
変わらぬ愛 忘れるたび
君という刃に奮い立たせられて
悪魔さえも怯えるように
炎の星 消え去るとき
君と共に立てた誓いが
終わらぬ夜を切り裂く涙のRiver
一瞬の光 消えない影 揺らめき無くならないけど
僕は生きるか 君は生きるか 心燃えるとき
Wanna change our future
旅が終わり 時が止まり
君という呪いが生き続ける
未来はまた無限大に
希望の星 なくなるとき
張り裂けるほどに想う魂が
終わらぬ夜を切り裂く涙のRiver